<福島第一原発汚染水問題・徹底分析特集!> 特集3. むしろ、これで漏洩しないわけがない「役立たずのストッパー」( IWJウィークリー15号より) 2013.9.2

記事公開日:2013.9.2 テキスト
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(文責:岩上安身 取材:箕島望・大西雅明 記事構成:原佑介)

ストッパーとして機能しえない24時間365日開きっぱなしの排水弁

 不可解なことは、パトロール体制だけではない。

漏洩が発覚したタンクは、26基の貯水タンクが集まる「H4」と呼ばれるエリアにある。漏水に備え、タンク下は各エリアごとにコンクリートで舗装されており、ぐるりと堰(せき)で囲まれている。

 堰には、エリア内に雨水が溜まらないように排水弁が設置されているのだが、東電は、なぜかこの排水弁を、常時、開けていたという。つまり、堰はストッパーとして機能しておらず、水が漏洩すれば、むき出しの地表に汚染水がだだ漏れする状態にあったというのだ。

▲<参考>2013年8月19日東電撮影常時「開」状態にあった排水弁と水たまり

▲<参考>2013年8月19日東電撮影常時「開」状態にあった排水弁と水たまり

 なぜこのようなことが起きたのか。東電は「少ない流出量でも分かるように、コンクリートを乾いた状態にしておく必要があった」と説明するが、その場合、もし、雨の日に汚染水がタンクから漏洩していれば、防ぐ手立ては何もないことになる。

 真っ当な管理を考えれば、排水弁は常時、閉めておき、雨が降って堰内に水が溜まった際には、溜まった雨水をサンプリングし、安全を確かめてから放出するのが筋だろう。

 もし、排水弁が閉まっていれば、300トンのうち半分以上の汚染水が堰内にとどまったとみられている。漏洩も、今より早期発見ができた可能性が高く、そうなれば、堰外に流れ出る前に回収できたかもしれない。未然に防げた事故だったのである。

残念な東電、残念な政府

 常時「開」という運用方法について、相澤副社長は誤りだったと認め、謝罪する一方、2012年4月、原子力安全・保安院の承認をとっていたことも明らかにした。これで汚染水問題は、東電だけでなく、政府の監督責任も問われることとなった。

 21日に開かれた汚染水対策ワーキンググループで、更田豊志原子力規制委員は、排水弁が開いていたことについて、「何のための堰なのか」と批判したが、保安院の業務を継承していた規制委員会も、排水弁の運用方法については承知しており、問題を見過ごしていたことが明らかになっている。

 規制機関である旧保安院、規制委員会でさえ、この程度の危機意識しか持ち得なかったのだから、今回の汚染水漏洩は「必然」だったとさえ言える。「東電任せにしていてはダメだ。国が前面に出て対策に乗り出すべきだ」と主張する論者もいるが、国が責任主体になってさえいれば、問題はすべて未然に防げたかどうか、かなり怪しい。

 今後も、どのような事故が連続するか予断を許さないが、福島第一原発が抱える、あらゆるリスク対策の抜本的見直しが必要なのは明白だ。

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