谷岡郁子議員「支援法は、もはや違法状態」国の基本方針を策定しない姿勢を批判 ~「子ども・被災者支援法」勉強会 2013.6.2

記事公開日:2013.6.2取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・富田充)

 2013年6月2日(日)13時から、福島県いわき市のマリンホールで、いわき母笑みネットワークが主催する「『子ども・被災者支援法』勉強会」が行われた。講師は支援法の成立に尽力した谷岡郁子氏(みどりの風・参議院議員)。谷岡氏は、参加した地元住民に向かって、「国を動かすのは、あなたがた」と呼びかけた。

■全編動画

  • 講師 谷岡郁子参議院議員(みどりの風代表)

 昨年6月に、国会で成立した「子ども・被災者支援法」は、今なお、宙ぶらりんの状態が続いている。具体的な内容を定める、基本方針の策定が遅れているためだ。谷岡氏は「策定されない状態が、1年も続いたことになる。支援法は、中身が毎年見直される法律である以上、これは、もはや違法状態と言える」と懸念を表明し、国が基本方針を策定したがらない理由を、「福島原発事故を、大変な事故ではなかったことにしたいのだろう」と説明した。

 谷岡氏は、放射線被曝と健康被害の因果関係が明確にならない点を、「国は、隠れみのにしようとしている」と指摘し、次のように述べた。「大気の中には、発がん性物質がいろいろ存在する。低線量被曝をした被災者が、がんになっても『被曝の影響とは断定できない』との切り返しが100%可能になる。将来的に、被災地にがん患者が増えた場合、国は『あなたのがんは、統計上、被曝によるものではない公算が大きい』などと応対したいのだろう」。

 谷岡氏は、そういう逃げ道を国に与えないためにも、支援法を骨抜きにしてはならないと力説。「支援法には、原発事故が当人の病気とは無関係だと国が証明できない限り、医療費は減免される(=国が負担する)と書いてある」とした上で、「放射性物質と健康被害の科学的解明は、まだまだ発展途上。だから、支援法は予防原則に立脚している」と強調した。「甲状腺がん以外にも、白血病や白内障などに対象枠を広げている。この辺は条文には書かれていないが、議事録には国会で答弁されたことがちゃんと残っている。支援法では、避難生活を強いられることで悪化したうつ病も、国が面倒を見なければならないとされている」と、きめ細かな医療支援を盛り込んであることを説明した。

 そして谷岡氏は、先ごろ、自身が2012年度の補正予算に賛成したことで、野党の存在をないがしろにしたとの批判を浴びたことに触れ、「賛成したことには、停滞する支援法に突破口をつくる狙いがあった」と明かした。「今、福島から山形や新潟に自主的に避難している人たちのための、高速料金無料化や借り上げ住宅の期間延長という、新たな施策が具現化している。これは大きな前進で、『補正予算に賛成すれば、ボーナスが得られる』という、われわれの読みは的中した」と述べた。

 高速料金無料化や借り上げ住宅の期間延長は、今年、復興庁が新たに示した「原子力災害による被災者支援政策パッケージ」の中の項目だが、谷岡氏は「この政策パッケージは、支援法を代替できるほどの内容ではない」としている。「支援法と政策パッケージとでは、まるで次元が異なる。支援法はさまざまな面で扱う範囲が広いが、政策パッケージはそうではない。健康面では、甲状腺がんだけが対象の病気だ」。

 参加した市民との討議では、女性市民が「今はまだ、放射線による健康被害が表面化していないため、被災地の住民には安穏としたムードが漂っている。だが、被曝の現実がある以上、それを前提に、今後のことを考えていかねばならないと思う。しかし、教育現場は、とてもそうなっていない」と発言。谷岡氏は「みなさんが、声を上げなければ状況は変わらない」との言葉で鼓舞したが、その女性は「私は声を上げてはいるが、声を上げる住民の数が、圧倒的に少ない」と、さらに訴えた。

 谷岡氏は「考えると不安になってしまうから、『とりあえず大丈夫、ということにしよう』との価値観が広がっているのだと思う。ただ、住民に対して『大丈夫』を繰り返す役所や学校の職員が、本当のことを知っているのかといえば、それはノーだろう」と語ると、その女性も「私たちが、放射線に関する情報を教えて感謝されたことが、現にある」と同意を示した。

 別の女性市民も、学校の怠慢を批判した。「明らかに、すぐに雨が降るという状況なのに、校庭で体育を続けている。それで雨が降り出したら、ようやく体育館に移動する。体育館は最初から空いていたのに、なぜ(天候を見て)屋内で授業を行おうとしないのか。先生方に、子どもを放射線被害から守ろうという気構えがあるのか」。その女性はさらに、「学校が、安全説を唱える学者を招いて放射能に関するセミナーを開いた。クイズ形式で、笑いながらレクチャーが行われた。私は腹が立って退場したが、子どもたちはそれを信用している」と憤った。

 これを聞いた谷岡氏は、「私は、絶対に危険だと言うつもりはないが、危険性がある以上は、避ける努力をすべきだ」と語り、一方で、「飲酒や喫煙とは違い、大気汚染による罹病を、自己責任原則に回収させることはできない」とも述べた。そして、谷岡氏が「あのお母さんは神経質だとか、あのお母さんがいるから、周りにいる私たちもパニックになる、といったクレームを、皆さんは受けたことがあるか」と問い掛けると、会場のほぼ全員が「ある」と即答した。

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