【岩上安身のツイ録】「皇祖神」は伊勢神宮に祀られる天照大神という女神!神話が事実を反映しているなら、天皇家は初代から紛れもなく女系!女系・女性天皇の否定は「皇祖神」の否定に他ならない! 2019.5.5

記事公開日:2019.5.5 テキスト
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(岩上安身)

 平成から令和へ。天皇の譲位による代替わりは、海外でも報じられた。

 しかし、米紙ニューヨーク・タイムズは5月1日付記事で、女性・女系天皇を認めない日本の皇室制度により、「皇室が存続の危機に瀕している」と指摘した。同紙は、女性・女系天皇を禁じる法律は明治時代に定められたもので、126代以上にわたる記録では、8人の女性天皇がいたことを指摘している。

 この報道を受けて歌手の宇多田ヒカルさんが以下のようにツイートした。

 「『新しい天皇の即位式の映像見て、人口減少で存続の危機にあるのは経済国家としての日本だけでなくその皇室もだってことに気づいたわ』という下りから始まるニューヨーク•タイムズ紙の記事を読んで、日本の皇室の長い歴史の中には、女性が天皇だったことが何度もある(8人、10代)と知り驚く」

 岩上安身はそのツイートにリプライする形で、以下のようにつぶやいた。2019年5月4日の岩上安身のツイートを加筆、修正して掲載する。

 その女性天皇らが、大きな働きをしていることにも注意。壬申の乱を経て権力を握った天武天皇は初めて「大君は神にしませば」と、神格化された天皇でしたが、天武天皇が始めた事業は彼の死後、妃であった持統天皇が即位し、引き継ぎます。

 特に持統天皇が引き継いだ記紀の編纂は大事業で、特に神代の巻で描かれた女神アマテラスと、アマテラスが孫のニニギに「天孫降臨」の神勅を下すくだりは、7世紀の宮廷事情を反映しています。

 天武天皇が崩御したのち、皇后の立場で政務を執っていた持統は、我が子の草壁皇子の即位を望んだものの、草壁は早逝してしまいます。次に持統は、草壁の子、自分にとっては孫である軽皇子を即位させようと目論むが、軽は当時7歳と幼く、持統は自ら天皇に即位します。持統の権威・権力は高まりました。

 皇位継承の資格を持つ皇子は他にもいましたが、天武と自分との間の子である草壁を失った持統にとって、後継者は、その草壁の息子で、自分の天武にとっては孫である軽皇子でなけらばならなかったのです。そこで天武の命じた記紀の編纂が、物を言うことになりました。

 女帝でかつ、その祖母から一気に世代交代して孫へと皇位継承が行われることが少しもおかしくはないのだと、当時の皇族・貴族ら支配層を納得させる物語(イデオロギー)が必要だったのです。それがアマテラスの最高神化・皇祖神化と、天孫降臨にあたり、孫のニニギに神勅を下す、という物語です。

 持統天皇は、記紀の編纂によって過去の歴史を縛り、未来においても呪縛力のある神話と歴史の入り混じった書物を作らせたのですが、他にも、天武天皇の政策を引き継ぎ、完成させたものとして、飛鳥浄御原令の制定と藤原京の造営、そして神宮の式年遷宮が挙げられます。

 天照大神を祭る伊勢神宮の式年遷宮は持統天皇の時代に、第一回が行われたのだ、ということを知らなくてはなりません。かつて、天照大神は、皇室の最高神の地位にありませんでした。

 天御中主尊(アメノミナカヌシ)を筆頭に現れた高皇産霊尊(タカミムスヒ)、神皇産霊尊(カミムスヒ)の三柱の、造化の三神が最も古く、特にタカミムスヒが長く皇室の最高神とされてきました。

 長く皇室の最高神として崇められていた高皇産霊尊(タカミムスヒ)は、7世紀後半から8世紀初め、すなわち天武天皇から持統天皇の時代に、最高神の座から没落し、代わって天照大神が最高神の座につきます。持統天皇が自分の自分の孫への皇位継承を、天照大神になぞらえた結果だと言われています。

 僕は、「皇統」は男系男子に限られてきたという政府の言い分を批判してきました。「皇統」の最初に位置する皇祖神の天照大神が女性の女神であり、そもそもから女系なのに、なぜ後代の人間がさかしらに男系男子にこだわるのか。

  • 「『皇統』は『男系』に限られてきたという菅官房長官には、そもそも『皇祖』が女神の天照大神とされている矛盾を説明せよ、と言いたい。記紀の記述を文字通り信じるならば、『皇統』の始まりは女性であり、女系。違うというなら記紀の記述の何が事実ではないのか明らかにせよ。虚構と史実を峻別せよ」(岩上安身のツイート、2019年5月2日)

 天照大神を「皇祖皇宗」とすること、アマテラスから孫のニニギが生まれたというのは、あまりにも大きな矛盾を含む。アマテラスが実在の人物で、後に神格化されたなら、子供を生み、孫にも恵まれるということもあり得よう。しかし高天原が、天上世界だとすれば、それは空想の世界というべきである。

 空に人が浮かんで生きて、住めるはずがない。高天の原での出来事が一連、全て空想に過ぎないなら、アマテラスが、孫のニニギに向かって「天下って、地上を統べよ」という「天壌無窮の神勅」を下したという日本書紀の記述は、空想の産物となり、天照大神に始まる「皇統」の支配力、呪縛力は失われる。

 天照大神は実在の人物の神格化ではなく、太陽を神格化した抽象的な観念に過ぎない、という場合も同様である。その場合も天照大神を始め神々と神武以降の地上の天皇125代は、何の繋がりもなく、天皇の、他に隔絶する神聖性は失われ、天皇家の歴史は、単なる地上の王権の歴史となる。

 天皇家は、大和盆地の一角で力を握った地方の豪族のひとつに過ぎず、その後、支配地域を拡大してゆくも、天や神から支配権の正当性を付与されたわけではもちろんない。もちろん、「天壌無窮の神勅」という、アマテラスの権威に保証された地上支配の正当性は、想像のでっち上げということになる。

 しかし、あろうことか現代の国会で、この「天壌無窮の神勅」をフィクションではなく史実であるかのように発言する議員が現れた。2016年11月17日、衆議院の憲法調査会で、自民党の安藤裕議員が、「皇室の地位は日本書紀における”天壌無窮の神勅”に由来するもの」であると発言したのだ。

 安藤議員は、だからこそ天皇の地位を定めた憲法第2条を、「早急に今、改正すべき」と訴えた。「皇室は憲法以前から存在しており、我々が手を出せないところにあるからこそ、権威なのです」とも述べた。とんでもない復古主義であり、論理矛盾である。

 憲法に先んじて存在したものは、ただそれだけで尊いというなら、近代科学やよりも古墳や埴輪や化石の方が歴史が古いので、「権威」があり、尊重して拝んでいなければならないことになる。また、記紀を振りかざしても、日本の歴史よりも古い歴史を持つ中国やエジプトに頭が上がらないことになる。

 古さを誇るだけでは、価値はない。どうしても記紀を史実として信じたいという向きには、アマテラスから神武天皇まで「血脈」が記されているのだから、それを史実として議論してもらいたい。そうすれば日本の皇室の始まりはアマテラスという女性であり、日本の皇室は女系であったことが明らかとなる。

 記紀を尊重すれば、天皇の資格を持つ後継者が男系男子であるべき理由はどこにもない。女帝は当然として(持統天皇の事績をもって、単なるつなぎなどと言える者がいるのか?いたら歴史を何も知らない無知蒙昧である)、そもそも天皇家はアマテラスを皇祖神としてその直系とする限り、女系である。

 そもそも側室をおかず、正室のみ、その長男で、代替わりできた明治から大正、昭和、平成の4代は稀有な例であり、125代の天皇の記録を見れば、世継ぎは側室の子供の方が圧倒的に多い。側室を設けず、かつ頑迷に女帝・女系を排する家父長制的近代天皇主義者は、いずれ天皇家を滅ぼすことになるだろう。

 かといって、天皇家に側室を認め、国民は一夫一妻制を守れというのも事実上、不可能な話である。制度としての側室など、身分の上下があり、身分が上の者は財力にものを言わせて、側室、妾を囲うことができた時代の話である。民主主義にはそぐわない。天皇家も一夫一妻制にしたのは、必然だった。

 上智大学教授で元日本テレビディレクターの水島宏明氏は、ヤフーニュース(個人)の中で、4月30日に放送された「NHKスペシャル」が、「過去400年間で側室の子どもではない天皇は109代の明正天皇、124代の昭和天皇、125代の前天皇(今の上皇陛下)の3人のみ」だと伝えたことを報じ、「側室という制度がなくなった以上、『女性天皇』を認め、『女系天皇』を認めない限りは、(天皇制は)『自然消滅』してしまう可能性が高い」と書いている。

 また、岩上安身は2019年1月8日、国家神道の問題点について、連投ツイートし、ツイ録としてまとめている。ぜひこちらもご覧いただきたい。

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