「国民の知る権利は全くないということだ! 国民の知る権利について、どう考えてるの? 文科省は!」
民進党の桜井充・参議院議員の気迫みなぎる声が部屋に響くと、文科省職員は黙ったまま、ただうつむいた。
2017年11月15日、国会内において、大塚耕平新代表体制の発足に伴い、民進党が新たに設置した「森友学園・加計学園疑惑調査チーム」の会合が開かれた。
林芳正文部科学大臣が大学設置・学校法人審議会(設置審)の答申を受け、14日に加計学園の岡山理科大学獣医学部の新設を正式に認可したことを受け、設置審での議論について、文科省の担当者から説明を求めた。
座長を務める桜井議員は冒頭の挨拶で、加計学園獣医学部の認可について、「普通の獣医学部を作りたかったが、今のままのルールでは作ることができないので、結果的には国家戦略特区を悪用して、(獣医学部を)作ったあとは自由に何でもやっていくということになるんじゃないか?」と述べ、認可決定に疑問を表明した。また、「非常に大きな問題をはらんでいて、認可されたからそれでおしまいということではない」と、この問題を徹底して追及していく姿勢をみせた。
▲文科省職員を追及する桜井充・参議院議員(右)と川合孝典・参議院議員(右から2番目)。左手奥が、内閣府の塩見英之・地方創生推進室参事官
なお、民進党の会合の30分ほど前まで開かれていた立憲民主党の会合では、内閣府の塩見英之・地方創生推進室参事官が呼ばれていたにも関わらず、姿を現さなかった。担当者は「塩見参事官と連絡が取れない」と弁明していたが、直後に開かれた民進党の会合には、しっかりと出席していた。この点にも疑問が残る。
- 日時 2017年11月15日(水) 15:00~
- 場所 参議院本館(東京都千代田区)
文科省職員が「訴訟リスク」という言葉で審議を誘導!?「設置審とはなんだったのか? 設置審の存在意義に関わる問題だ!」杉尾秀哉議員が追及
「認可」判断に至るまでの審議の過程では、審議の取りまとめ役の委員から「設置審としてこれ以上認可を先延ばしにすれば、学園側と訴訟を含めたトラブルになる可能性がある」という発言があったことや、それを受けた他の委員が「訴訟という言葉を聞かされ、何も言えなくなった」などと述べていることが、NHKなどの報道で明らかになった。
杉尾秀哉・参議院議員はこの報道を紹介したうえで、「設置審とはなんだったのか? 設置審の存在意義に関わる問題だ」と述べ、文科省職員が「訴訟リスク」という言葉で、審議を認可の方向へ誘導したのではないかとの疑念を示した。
▲文科省職員に質問する杉尾秀哉・参議院議員
この杉尾議員の質問に対し、文科省の松尾泰樹(まつお ひろき)・大臣官房審議官(高等教育担当)は、「個々の委員の発言は控えさせていただく」と詳細な回答を拒否したうえで、設置審での審議においての訴訟リスクについては、「こういうリスクがあるのは大前提でございます」と述べた。
▲「訴訟リスクは大前提」と答える松尾泰樹(まつお ひろき)・文科省大臣官房審議官(高等教育担当)(中央)
松尾審議官の発言が認められるのであれば、設置審の委員は、莫大な建設費をかけた獣医学部キャンパスの建設が進む中、加計学園から訴えられる訴訟リスクを負わされた状態で、認可の答申を出したことになる。見方によっては、「脅し」に屈したとも受け取れる。実際にこうした発言があったのかなかったのか、その真偽を明らかにするためにも、設置審の議事録は公開される必要がある。
「議事録は作っていない」の一点張り! 録音もしていない!? 議員からは「ふざけるな!」と怒声が飛ぶ!
桜井座長は議事録の公開を求めたが、松尾審議官は「議事録については作っていない」と答え、あくまで審議の要旨をまとめた「議事要旨」のみを公開すると説明した。文科省職員のこうした通り一遍の回答に対して、桜井座長は「国民の知る権利は全くないということだ!」と怒りをあらわにし、改めて議事録の提出を求めた。
元総務官僚の小西洋之・参議院議員は、自身の経験から「こういう審議会の仕事はよくやりましたが、必ず録音して議事録を作ります」と指摘し、「(審議の)録音はされてますか?」と質問した。
この質問に対し、文科省職員が「議事録作成のための録音はしていません」と答えると、議員たちからは「録音してなかったら議事要旨も作れないじゃないか!」などの意見が飛んだ。
▲「録音されてますか?」と質問する小西洋之・参議院議員
続けて、小西議員が「組織として設置審の審議を録音してないんですね?」と確認すると、文科省職員は「個々の会議の詳細は分かりません
と回答を避けた。この回答に会場は騒然となり、議員からは「ふざけるな!」などと、文科省職員に怒りが向けられた。
「総理のお友だちにだけ特権を与える行政行為」文科省元事務次官の前川喜平氏も懸念を表明! 認可されても幕引きは許されない!
林文科大臣が正式に加計学園獣医学部を認可したことで、開学へ向けた主要な法的手続きは完了したことになり、2018年4月開学へと、一気に進む可能性が出てきた。
しかし、この設置審の議事録も公開されないうえに、加計学園獣医学部が国家戦略特区の規制緩和を受ける条件として閣議決定された、いわゆる「石破4条件」をクリアしているかどうかという問題も、いまだに説明されていない。
文科省元事務次官の前川喜平氏は、林大臣の認可決定を受けて、「総理のお友だちにだけ特権を与える行政行為であり、我が国の大学行政に大きな汚点を残しました。認可がされても、決して幕引きとはなりません」とコメントを発表した。
前川氏の言うとおり、この加計学園問題をこのまま幕引きさせては、決してならない。設置審の審議にも疑念が持たれ、閣議決定された4条件を満たしていないとの指摘も出ている。総理への「忖度」や、国政の「私物化」で、行政が歪められたのではないかという国民の疑念に答えるために、政府は全てをオープンにした特区諮問会議を開き、加計学園獣医学部の申請内容が本当に4条件を満たしているのか、国家戦略特区の目的に適っているのか、国民の目の前で正々堂々と審議し直さねばならない。
IWJでは加計学園問題のキーパーソンである日本獣医師会顧問・北村直人氏や黒川敦彦氏に岩上安身がインタビューをしている。また、記者を今治や岡山にまで派遣し、積極的にこの加計学園問題を追及してきた。こちらの記事も、是非あわせてご覧いただきたい。