原発メーカー・日立の「植民地経営」と原発事故が意味するもの 2012.10.28

記事公開日:2012.10.28取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

(IWJテキストスタッフ・富田/奥松)

 2012年10月28日(日)14時から、京都市下京区の下京いきいき市民活動センターで、アジェンダ・プロジェクトが主催する講演会「原発メーカー・日立の『植民地経営』と原発事故が意味するもの」が行われた。講師の朴鐘碩(パク・チョンソク)氏は、1970年代の日立就職差別事件の裁判の原告で、裁判に勝訴して日立製作所に入社した。職場の人権問題に取り組み、企業内植民地主義を批判してきた朴氏は、福島原発事故に関して「日立は原発メーカーとして謝罪すべきだ」と語った。

■全編動画

  • 日時 2012年10月28日(日)14時
  • 場所 下京いきいき市民活動センター(京都府京都市)

 「1951年に9人兄姉の末っ子として生まれた」との言葉でスピーチを始めた朴氏は、昨年11月に日立製作所を定年退職し、今は日立の情報・通信部門で嘱託として働いていると自己紹介した。そして「今日は、日立製作所の職場の実態と、戦後の植民地主義の象徴である原発体制の関係を話す」と述べた。

 「福島での事故後も、原発メーカーの日立、東芝、三菱重工は、原発の輸出で稼ぐ考えを崩していない。日立は、多くの現地住民が原発の建設に反対しているリトアニアやベトナムへ、原発輸出を計画している」。朴氏はこう述べて、福島第一原発事故による放射能汚染への有効な手立てが見つかっていないにもかかわらず、原発ビジネスを推進する日本の重電メーカー3社を批判し、「日立の正規労働者は、原発事故の現場で作業に従事したのか。放射線量の高い危険な現場で働く末端の作業員の日当は高いと言われているが、本当のところはわからない」と語った。

 朴氏はさらに、「原発推進をあおる経団連が推奨する、利益・効率優先の抑圧的な経営は、働く者を正規、非正規、派遣労働者に見事に分断してしまった」と語り、「原発事業で莫大な利益を稼いできたメーカーは、なぜ、社会的責任を問われないのか」と訴えた。また「日立の職場内には『もっと安全な原発をつくればいい』『日立の原発は大丈夫』『社内で政治的な話はしない』といった風土がある。いわゆる、企業の論理に根ざしたものだ」と指摘した。

 日立就職差別事件に関しては、「日立の労組幹部は、あの事案を見て見ぬふりをした」と振り返り、「日立の企業内組合が、原発メーカーの責任を経営者に問えないのと同じ構図だ」と解説した。その上で「上意下達が当たり前の、日立のような日本企業に社内民主主義が育くまれないのは、労使の合意事項だからだ」と強調した。

 なお、朴氏は「私の日立批判は、愛社精神が前提で建設的なものだ。日立製作所が同じ歴史を繰り返さないためにも、原発事故で犠牲になり、引き裂かれてしまった住民に対し、原発メーカーとして謝罪するのが筋だと思う。そして、人類を破滅に導く原発事業から早期に撤退し、廃炉技術、自然エネルギーの開発に転換することを提唱したい」と語った。

 質疑応答では、朴氏が日立を定年退職する折の集会に、就職差別事件の裁判で弁護を担当した仙谷由人氏(元官房長官)が出席したことに関して質問があった。「仙谷氏は、大飯原発再稼動推進の中心的人物だが、集会では再稼動が話題になったのか」との問いかけに対し、朴氏は「集会では原発の話題は一切登場しなかった。仙谷氏は地元の徳島に帰る途中に、集会に立ち寄ったのだが、話題は裁判のことだけだった。しかし、彼は徳島に帰ったとたん、再稼動の3文字を口にしている。私は、集会で原発に関する彼の考えを訊いておくべきだった。ただ、今後も会う機会はあるので、言うべきことはきちんと言うつもりだ」と回答した。

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です