【IWJ検証レポート】「土人差別暴言」擁護の松井一郎府知事と実刑判決を受けたレイシストの認識との共通点!鶴保庸介沖縄担当相も傍観——上海紙が「シナ人」発言を伝える! 2016.10.28

記事公開日:2016.10.28 テキスト
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(取材・編集協力:福田玲子・ぎぎまき 文:岩上安身)

 「ネットでの映像を見ましたが、表現が不適切だとしても、大阪府警の警官が一生懸命、命令に従い職務を遂行していたのがわかりました。出張ご苦労様」

 大阪府警の機動隊員らが抗議派市民を「土人」「シナ人」などと罵倒した一件を受けて、松井一郎大阪府知事は10月19日、上記のようなコメントをツイッター上で流した。当然のことながら、直後から、松井知事の意見に批判が集中。差別暴言を不適切発言程度にぼかして事実上容認し、職務を一生懸命遂行したのだと、労までねぎらうかのようなコメントは一気に炎上した。

▲松井一郎府知事の10月19日のツィート
▲松井一郎府知事の10月19日のツィート

 沖縄県の翁長雄志知事は20日の記者会見で「『よく頑張った』ということになると、沖縄県民からすればちょっと筋が違う。県民への配慮が足りないのではないか」と松井知事に対して不快感を示したが、機動隊員擁護に対する批判は識者たちからも相次いだ。

 教育評論家の「尾木ママ」こと尾木直樹氏は、「沖縄の住民へのお詫びと機動隊員への戒めがまったくないのは如何なものでしょうか!?」と自身のブログでつづり、脳科学者の茂木健一郎氏もツィッターで「知事として言うべきことはそこではない気がする」と投稿。作家の平野啓一郎氏も同様、「今回の『土人』はやるせないほど絶望的に間違っている。大阪府知事の沖縄に対する根深い差別意識」と怒りをあらわにした。

 各方面からの批判を受けて、松井知事は謝罪や発言の撤回を行うかと思いきや、翌日20日の登庁時の囲み取材で、「表現は悪かったし、反省すべきだと思う」と述べたが、「個人が特定され、大手メディアも含めて徹底的に叩くのはやり過ぎ」とメディア攻撃に向ける論点のすりかえを行った。そして、「混乱を引き起こしているのはどちらなんですか」とヘリパッド建設に反対する市民を「過激」であると非難し、問題は機動隊員ではなく反対派の市民にある、と矛先をそらしたのである。

記事目次

「土人」「シナ人」は単純な罵倒語ではなく、歴史に根ざす差別的な罵倒であり、「言葉のかたちをした凶器」である!!

 この「土人」暴言問題が表に出てから、「大阪はガラが悪いから」とか「ヤクザと大阪府警の人材の質に差はほとんどない」などといった話が、ネット上でしばしば目につく。投稿者の多くは関西の出身のようだ。「大阪はガラが悪い」というのは自己卑下のようでもあるが、これは裏を返せば「ガラが悪い自慢」でもある。こんな話が続けば、問題の本質から話が見当違いの方向へそれてゆくばかりである。

 「アホ、ボケ、コラ」でも「おい、てめえ、バカヤロ―」でも、単純な罵倒語に過ぎない。どちらも下品であり、ガラも悪いし、ほめられるものではないが、日常の社会生活のフリクションの一場面で用いられることは、ありえなくもない。

 しかし「土人」や「シナ人」は違う。日常で用いられる単純な罵倒語ではない。これは歴史に根ざす差別的な罵倒である。不当な差別を受けてきた者に対して、現実に、蔑み、見下して使われてきた、許されざる差別語なのであって、いいかえるなら「言葉のかたちをした凶器」なのである。

 どんな人間同士であっても、差別語という凶器をふるうことは許されない。まして、権力を執行する実力組織の構成員が、このような「凶器」を用いることが、許されるはずがない。

 松井知事は差別暴言を吐いた機動隊員を、「一生懸命」に「職務を遂行」していたとかばうが、その「職務の遂行」に際して、隊員が沖縄県民を「土人」と見下す差別観に貫かれていたなら、「一生懸命」に職務を遂行すればするほど、その差別観は強化されてしまう。そして「土人」暴言そのものは、その職務を貫く差別観の一発露に過ぎない、ということになる。

 「一生懸命」でさえあれば、何でも許されるわけがない。差別は過ちであり、悪事である。悪事に「一生懸命」になるのは間違いであると人の上に立つ府知事たる者が、ただすことができず、逆に拍車をかけるとはどういう了見なのか。

 府知事の過った認識を問いただすべく、IWJは大阪府に取材を申し入れ、報道担当から、大阪府としての統一見解なるファックスを入手した。

松井一郎府知事の問題ツィートに関する大阪府の「統一見解」とは!?  IWJが入手したFAXを掲載!

▲10月20日、大阪府が発表した「沖縄における機動隊員の発言に対するツィッター発言について」

 これが、大阪府から公式に発表された「統一見解」の中身だ。通りいっぺんの謝罪はあるものの、その実、「差別」という事の本質は直視せず、事実上松井府知事のツイッターの発言を正当化する、ごまかしのコメントである。

 松井府知事がツィッターで「出張ご苦労様」と述べたコメントのあて先は、「日々厳しい業務を遂行している警察官すべてに対して述べたもの」と弁明しているが、これは文脈上ありえない。松井知事は「土人」発言をした若い機動隊員の姿をビデオで見た、とした上で、「一生懸命」に「職務を遂行している」と評価し、「ご苦労様」とねぎらっているのである。「土人」暴言隊員へ向けたものであることは明らかで、「警察官全てに対して述べた」という大阪府の「統一見解」は詭弁に過ぎない。

 さらに2日後の21日に開かれた府議会総務常任委員会では、自民党の密城浩明府議会議員が松井知事に対し、「大阪のリーダーとして、言ったらあかんことは言ったらあかんと諭すべきだ」と指摘。しかし、松井知事は、発言内容を撤回しない強硬な姿勢を見せたどころか、逆ギレ気味に密城議員が質問を事前通告しなかったことを責め、「一部の偏った情報しかとらずに一方的な批判をする。議員として失格だ」などとお門違いの非難を展開し始め、府議会は2時間以上にわたって中断するに至った。

 火に油を注ぐような行為に、おそらくは世間から批判の声が殺到したのだろう。翌22日、松井知事の態度は急にトーンダウンした。大阪市内で開かれた常任委員会で「発言は許されるものではないということが正確に伝わらず、誤解を与えた。言葉足らずだった」と釈明したのだ。「正確に伝わらず」というが、ツィートを書いたのは松井氏本人である。何をとぼけたことを言っているのだろうか。書いた松井氏とツィートを読んだ読者の間に、媒介者は存在しない。しかも、「この警察官が社会的に抹殺されるようなのはおかしい」と、やはり問題の矛先をメディアや受け手側に向け続ける態度を改めることはなかった。

全国初の「ヘイトスピーチ条例」を施行した大阪市だが、松井府知事の目線は差別主義者と同じだった!

▲大阪市「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」について
▲大阪市「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」について

 大阪市は2016年7月1日、全国で初となる「ヘイトスピーチ条例」を施行。ヘイトスピーチを「特定人等に対する憎悪若しくは差別の意識又は暴力をあおること」「特定人等を相当程度侮蔑し又は誹謗中傷するものであること」などと定義し、これを抑止することを目的に掲げた。

 いち早く画期的な取り組みを実現した自治体を抱える大阪府のリーダーともあろう、松井一郎知事が、「土人」「シナ人」発言を単なる「不適切表現」に矮小化し、問題の鉾先をメディアや反対派住民に向けてきた罪は決して小さくはない。こうした言動はヘイトスピーチ条例そのものの否定を意味し、差別を抑止するどころか、助長しかねない。

 10月25日、金田勝年法務大臣は参院法務委員会で、民進党の有田芳生議員の質問に対し、「土人という言葉は差別用語だと思わないか」と問われ、「その言葉のみを捉えてどう思うかと言われれば、同じように思う」と、「土人」は差別用語にあたるという認識を示した。「シナ人」はもちろん「土人」という言葉は差別用語であり、「不適切な表現」「言葉足らずだった」という松井知事の言い訳ではすまない問題なのだ。

「チーム関西」の差別主義者2人が高江でわめき散らす様子を放置する機動隊

 「土人」「シナ人」発言問題が起きた日と同じの10月18日、ヘリパッド建設工事に反対する市民らに抗議するため、2人の男性が高江の工事現場を訪れた。その2人とは、「在特会」や「チーム関西」などの右翼系団体に所属する荒巻靖彦・西村斉両氏だ。

 2人はともに京都朝鮮学校公園占用抗議事件(2009年)(※1)とロート製薬強要事件(2012年)(※2)を起こした人物である。荒巻氏は3事件に関わった容疑で逮捕、起訴され、いずれも有罪判決を受けているが、特にロート事件では実刑判決が確定し、ほかの2事件の執行猶予取り消し分も含めて懲役刑に服していた。2015年10月に出所したばかりの人物だ。

(※1)京都にある朝鮮第一初級学校が勧進橋児童公園を不正に占用していると2009年12月に同校の校門前で「在特会」ら右派系市民団体のメンバーらが暴力的な抗議街宣を行い、威力業務妨害罪に問われた事件。初級学校側は都市公園法違反により罰金10万円の略式命令を受け、「在特会」は約1226万円の賠償命令と街宣の禁止を命じられている。

(※2)「在特会」らの元幹部ら4人が、ロート製薬株式会社による韓国人女優キム・テヒのCM起用に抗議するとして、2012年3月2日に同社本社を訪れ、従業員を脅迫して竹島の領有権問題やキム・テヒ起用の是非に関する同社の見解を回答するよう求めたことにより、強要罪に問われた事件(Wikipediaより)

 荒巻・西村両氏は18日、機動隊が反対派の市民をまさに排除している後ろで、堂々とトラメガを使いながら、「おまえらは目先の数千円のお金で正義の味方面している」「支那の手先になっている」「(警官に対し)安全に排除してくださいね。あいつら同じ日本人ちがいますからね」などと、事実無根の主張を言いたい放題繰り広げた。その暴言まじりの街宣行動を、現場にいた機動隊は注意することもなく、放置した。

 その一部始終は、本人たちがツィキャスを使って配信している。その映像を見ると、「前科ある差別主義者は野放しにし、反対派の市民を力づくで排除する機動隊」という構図が、現場で当たり前のように展開されていることが分かる。

荒巻靖彦氏と笑顔で会話を楽しんでいたのは「土人」発言をした機動隊員

 さらに驚くべきことに、「土人」暴言をした29歳の巡査部長が、トラメガで「シナ朝鮮の犬が!」と喚き散らしていた荒巻氏に対して話しかけ、「どっから来はりましたん?」と、柔らかい口調で声をかけ、会話を楽しんでいた様子が確認されている。

 荒巻氏自身も自身のツィッターで、「今回、土人発言した大阪の機動隊員は動画にも出てくるけど私を止めて、笑顔で優しく私に声をかけてくれた機動隊員でした。あのような根っからの優しさを持った機動隊員が普段あの土人共から浴びせられる罵詈雑言や暴力に毎日耐えてる現状を目の当たりにして公務員も人間やで沖縄に居る機動隊は本当に」とつぶやいた。

 荒巻氏のツィートは、「無用の衝突を起こす反対派の行動こそが問題で、それを制止するために機動隊は一生懸命、命令を遂行している、ねぎらうべき存在であり、多少の暴言は許してやろう」という、松井一郎知事の見解とほぼ通じている。松井知事の発言はこれに、「不適切だったが」という言い訳を付け足しただけである。

 差別や人権問題に徹底して背を向ける府知事の開き直りが社会に与える悪影響で、沖縄への無理解とさらなる差別が広がることを恐れる。松井府知事の責任追及と、知事のリコールが真剣に検討されるべきである。そうでなければ、今後、高江でのヘリパッド建設工事に反対する市民への侮辱や蔑視の野放しの横行、そして暴力的な排除の正当化につながるのではないかと、強い懸念を覚える。

 問題は松井知事だけではすまない。絶望的にさえ感じるのは、沖縄・北方担当に就いた鶴保庸介大臣についてである。

 鶴保大臣は10月21日の記者会見で「土人」発言問題について聞かれ、「これは間違っていますよとか言う立場にもありません」という理解しがたい答弁を口にした。沖縄・北方対策担当大臣という職責にある人物の発言とは到底思えない。

 鶴保大臣といえば9月16日の記者会見で、辺野古の新基地建設問題をめぐる政府と沖縄県の違法確認訴訟について「注文はたった一つ、早く片付けてほしいということに尽きる」と言い放った人物である。

機動隊が抗議市民を羽交い絞め、ロープで縛り排除、炎天下で放置〜救急搬送された抗議市民は7名超

 そもそも松井知事や鶴保沖縄相らは、機動隊らが「職務の遂行」のために、高江で現実に何をしているのか、本当に知っているのだろうか。

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