GDPマイナス成長で日本はますます「貧乏」に! もはやアベノミクスはKO寸前! 富岡幸雄氏、菊池英博氏、植草一秀氏の三専門家に直撃取材! 2016.3.8

記事公開日:2016.3.9取材地: テキスト
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(取材・記事:城石エマ、記事構成:岩上安身)

 GDPが再びマイナスに転じた。昨年、2015年4~6月期にマイナス1.6%となり、7~9月期はかろうじてプラス1.0%、ところが四半期ぶりに10~12月期のGDPはマイナスに転じたことが明らかとなった。アベノミクスの限界は誰の目にも明白である。

 ボクシングで言えば、ダウンを取られたあと、立ち上がりはしたが、再びダウンしたようなもの。3ノックダウンシステムなら、あと1回のダウンでKOである。

 ところが、である。2016年3月8日付の日本経済新聞は以下のように報じている。

 「2015年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%減、年率換算では1.1%減だった。2月15日公表の速報値(前期比0.4%減、年率1.4%減)から上方修正した」

 まるで、1.4%から1.1%に修正されたことが「朗報」であるかのような報じ方である。「上方修正」されたとは「速報値」の話であって、GDPは明らかに「減少」している。「マイナス」である。経済記事は、書き方ひとつで読者に与える印象がまったく変わる。安倍政権に遠慮し、おもねったこの記事の書きぶりはあまりにみっともない。

 さらに、安倍総理の開き直りと虚勢が実に見苦しい。少しでも経済政策を批判されようものなら、金切り声をあげ、ヒステリックにわめきちらし、マスメディアは新聞もテレビも安倍政権相手にすっかり萎縮してしまって、この経済的な苦難を危機感をもって報じようとしない。

 こんなへっぴり腰のメディアの記事や論評ではあてにならない。IWJは、中央大学・富岡幸雄名誉教授、経済アナリストの菊池英博氏、政治経済学者の植草一秀氏に取材を行い、アベノミクスがGDPのマイナス成長に及ぼした影響について聞いた。

GDPマイナス成長を受け、中央大学・富岡幸雄名誉教授が「アベノミクスは有害」と猛批判! 「デフレ脱却は目前」という詭弁!

▲中央大学・富岡幸雄名誉教授―2014年12月1日、IWJ事務所で岩上安身がインタビュー

▲中央大学・富岡幸雄名誉教授 ――2014年12月1日、IWJ事務所で岩上安身がインタビュー

 「アベノミクスなんて崩壊してるじゃないの。有害ですよ。その結果がGDPにマイナスというかたちで出てるんじゃないですか。経済の実質なんて良くなってないよ」

 アベノミクスの失策は、もはや「失策」という程度の言葉では難じきることができない――。中央大学の富岡幸雄名誉教授は、IWJの取材に対し、「有害」という言葉でアベノミクスをこき下ろした。

 2015年3月8日に内閣府が出した「2015年10~12月期GDP速報」によれば、当該期間の日本経済の成長率は実質年率マイナス1.1%である。「デフレ脱却は目前」という安倍総理の発言は、「詭弁」としか言いようがない。

「アベノミクスでマイナス成長になるのは当たり前」経済アナリストの菊池英博氏が冷笑! 「アベノミクスは日本全体を貧乏にしている」!

▲経済アナリストの菊池英博氏―2014年11月22日、IWJ事務所で岩上安身がインタビュー

▲経済アナリストの菊池英博氏―2014年11月22日、IWJ事務所で岩上安身がインタビュー

 経済アナリストの菊池英博氏は、安倍政権が異次元緩和と呼ばれるほど異常な量の金融緩和によって日本経済の底上げをはかろうとしてきたその手法を根本的に批判する。今回のGDPマイナス成長は「当然だ」として、その理由を次のように述べた。

 「金融では日本経済の成長はできないんですよ。それは小泉構造改革の頃からわかっていることです。実際、安倍政権になって、黒田東彦・日銀総裁のもと、3年間、異次元金融緩和政策を行っても、GDPはプラスになっていないじゃないですか。それどころか政府は、金融緩和でゆるめたお金を、投機マネー、つまり『博打』に使ってしまったんです」

 年金資産を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、2015年7~9月期に7兆8899億円もの損失を出したことは記憶に新しい。政府は国民の年金資金を「博打」につぎ込んだあげく、大損をしたのである。そのツケは国民に回される。本当に国民は踏んだり蹴ったりではないか!

円安にしたのが大失敗! GDPがマイナスになるのは当たり前!~菊池氏が叱る、何から何まで問題だらけのアベノミクス

 さらに菊池氏は述べる。

 「円安にしたのが大失敗。円安にすれば、物価がどんどん高くなってしまう。そうすれば企業の収益は結局マイナスになります。だから個々人の収入もマイナス。個人の実質所得が3年間くらいマイナスなのが良い例です。マイナス成長になるのは当たり前のことですよ」

 「金融政策で日本経済を成長させることはできない」と述べる菊池氏は、経済成長のためには「財政支出による有効需要の喚起が必要」であるとする。財政支出を削減し金融緩和に頼るアベノミクスは、まさに真逆の効果をもたらしている。

 アベノミクスは、国民に何をもたらしたのか? 菊池氏は次のように述べる。

 「金融緩和によって国富が流出しているんです。国富というのは、我々の所得が流出しているんです。その分だけ日本は貧乏になっているということ。かえって日本を貧乏にしているのが、金融緩和なんです」

 アベノミクスが国民にもたらしたのは、「国富の流出」という国民への深刻な裏切りだけである。

 これは、ひょっとして「わざと」なのではないか、という気さえしてくる。わざわざ、日本の豊かな富を国内に回さず、地方やローカルな中小資本に回さず、国民に、子どもに、子どもを育てる若い層に、働く女性に、介護や保育や福祉などに回さない。若い世代が結婚も、子どもをもつこともできないほど貧しくする。当然、生産年齢人口が少なくなる。そこで、待ってましたとばかり、外国からの移民受け入れを進めようとする。

 おかしな話である。「アーミテージ・レポート」で移民の奨励が記されているが、日本で人口の再生産ができないように、移民を入れさせようとするのはなぜか。大きなおせっかいではないか。さらに、日本語を英語化しようとは、どういうことか。

驚きの事実! イメージの悪い民主党政権のほうがはるかに経済成長率が高かった!

▲政治経済学者の植草一秀氏 ― 2014年11月25日、IWJ事務所で岩上安身がインタビュー

▲政治経済学者の植草一秀氏―2014年11月25日、IWJ事務所で岩上安身がインタビュー

 政治経済学者の植草一秀氏は、アベノミクスの恩恵が一部の大企業にしかもたらされておらず、大部分の中小零細企業にとってはむしろ「害悪」しかもたらしていないと述べる

 「第二次安倍政権がスタートしたのが2012年12月。2012年の10~12月から2015年7~9月のまる三年、12四半期の成長率の平均は+0.8%でした。

 ところが、その前の2009年10~12月から2012年7~8月のまる3年の成長率平均は、+2.0%。つまり、民主党の時の方がはるかに高かったのです」

 失策がここまで自明でありながら、アベノミクスが「良い効果」をもたらしているかのような報道や論評ばかりが目立つ。なぜなのか。植草氏は次のように述べる。

 「2012年11月14日の、当時の野田佳彦総理と野党第一党の党首だった自民党の安倍晋三総裁との党首討論で、この日の株価が8664円、これが去年の6月には20868円まで上がりました。この株価の上昇を受けて、景気が良いという話が広がったのです」

 しかし、株価が上昇したからといって、日本経済全体に恩恵がもたらされたことにはならない。株価上昇の恩恵を受ける東京証券取引所の一部上場企業は、日本全体の法人数約400万社のうち1900社程度、すなわち0.05%である。もはや、「1%と99%」の利害対立ではなく、「0.05%と99.95%」なのである。残りの99.95%の人々にとって、経済成長の恩恵が行き渡らないのであれば、それは明らかに失策だ。

 大多数の国民に対する「背信」である、と言ってもいいし、国民国家単位で豊かになることを目指すナショナリズムをも裏切っている。

 経済のパイ自体が大きくならない中で、一部の企業に富が集中することは、中小零細企業にとっては害悪となるばかりであった。「この構造全体を把握することこそ、アベノミクスを正しく評価する上で欠かせない」と植草氏は述べる。

 経済全体の構造を把握した上で見れば、「日本経済は緩やかな不況を続けていると言っていい」と植草氏は述べた。今回のGDPマイナス成長は、アベノミクスの正体を表しているということだろう。

 植草氏によれば、GDPのマイナス成長は2016年1~3月期にも続く見込みである。甘い汁を吸うのは一部上場の大企業だけであり、99.95%の国民は「デフレ脱却は目前」などという総理の言葉を信じたりすべきではない。

 また、メディアは、安倍政権からどんなに脅かされようとも、グローバル企業の広告スポンサーからの明示的ではない圧力がかかろうとも、この99.95%の利益に立つ報道をすべきである。それができない、というならば、やはり、市民によって直接支えられる独立メディアである我々IWJのような存在が、歯を食いしばって、真実を報じ続けるしかない。

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