うまく凍らない海水配管トレンチに「凍らせるために人は送っている」と理解求める~東京電力「中長期ロードマップの進捗状況」に関する記者会見 2014.6.27

記事公開日:2014.6.27取材地: テキスト動画
このエントリーをはてなブックマークに追加

 2014年6月27日17時30分から、東京電力にて「中長期ロードマップの進捗状況」についての記者会見が開かれた。海側遮水壁、陸側遮水壁が完成すれば、遮水壁内の汚染水は隔離されると東電は考えており、それまでは水位、水質を監視していく考えを示した。

■全編動画

  • 日時 2014年6月27日(金) 17:30~
  • 場所 東京電力本店(東京都千代田区)

進捗、トピックスの説明

 「事故から3年3か月経つが、いまだ周辺の皆様、社会の皆様にご迷惑、ご心配をおかけしていることをお詫びする」。福島第一原発廃炉推進カンパニープレジデントの増田尚宏氏は、冒頭、こう陳謝し、会見が始まった。

 最近の主なトピックスについて増田氏から説明があり、個別の詳細につては白井功氏が合わせて約35分かけて説明した後、質疑応答に入った。

地下水バイパス、累積7回8635立方メートルを海洋排水の実績

 地下水バイパスの運用が始まり、これまでに7回8635立方メートルを海洋排水したが、海水のサンプリング調査の結果から、放射能濃度の変化はないと東電は判断している。

 現在1日に300トン程度を6日間くみ上げ、分析して排水している。揚水井(地下水のくみ上げ井戸)No.1~11、は3mずつ水位を下げ、現在の水位はOP9~11m。No.12はトリチウム濃度が高いため1m下げて、水位を制御している。

 運用開始後から1か月が経つが、東電は「現段階で地下水位の低下は明確に見えていない」と判断している。雨の影響があると東電は考えており、地下水バイパスの効果を判定するのに、まだ時間を要するという。当初、効果を確認できるまでは2、3ヶ月かかると想定されていたが、何ヶ月ぐらいで効果が確認できるか、具体的に示せる状況ではないとの見解だ。

 水位の低下が遅いのは、くみ上げる量以上の水が降雨によって入っている可能性があるためだ。アスファルト舗装をしていないので降雨が流れ込み、影響が出ていると東電は考えている。今後舗装し、降雨で地下水位が上がらないようにすることも一つの手として考えているという。

地下水バイパス、揚水井No.12のトリチウム濃度上昇について

 揚水井(地下水のくみ上げ井戸)No.12のトリチウム濃度が上昇していることに対し、福島県議会でも「トリチウム上昇傾向が続くなら、No.12井戸のくみ上げ停止を求める」との声があがっていると記者が指摘。

 これに対して東電は、濃度変化の傾向を監視しており、現在は運用目標値(1500Bq/L)を超えているが、1700Bq/L程度で安定しているため、このままくみ上げを続ける考えだ。万が一また変化すれば、その時にまた考えるという。「そこは約束させてもらう」と増田氏は答えた。

港湾内全面の海底土被覆工事を行う

 港湾内の海底に堆積した放射性物質が舞い上がり、拡散することを防止するため、建屋に面した”開渠内”は、海底を被覆工事している。残っている港湾内についても、放射性物質の舞い上がりを防止するために全面的に被覆工事を行うことが発表された。

 ベントナイトスラリーまたは山砂スラリーにセメント混ぜたもので被覆を行うことを計画しており、6月30日に着手、2015年3月までに完了させる予定だという。

1号機建屋カバー解体

 1号機原子炉建屋オペフロに堆積しているがれきから、ダストが舞い上がるのを防止するため、2011年11月に建屋カバーを設置している。使用済燃料プールからの燃料取り出し作業を実施するにあたり、建屋カバーの解体に7月から着手することが報告された。

 1号機カバーは、2013年5月に発表された当初予定では、2013年冬に解体見込みだった。昨年8月に3号機瓦礫撤去作業時にダストの舞い上がりで作業員の身体汚染が発生した。そこで1号機の作業でもダスト舞い上がり防止を検討し、目途がついたので作業を開始するという。その検討に時間が掛かり、作業の着手が遅れたという。

 ダストの舞い上がりを防止するため、飛散防止剤を散布し、上部ダストを吸引するなど、ダスト舞い上がり防止対策を徹底して行うと東電は発表し、それとともに、放射能濃度測定をしながら着実に実施していくことを計画している。

3号機オペフロの除染、結果は当初予定の1/100に満たない

 3号機燃料取り出しに向け、オペフロ瓦礫撤去を行って線量低減のための除染効果の確認をした。その結果、当初は1/100の効果を見込んでいたが、その1/3しか低減せず、十分な効果が得られていないことが報告された。

 高圧の水で表面をコンクリを剥離、吸引している。床の損傷が大きい箇所があり、表面の剥離、吸引がうまくできていないと東電は考えており、追加の除染方法を検討している。

 また、空間線量の分布を測定した結果、床の損傷が大きいエリアからの線量影響が大きいことが分かったため、遮蔽物を置いて線量を下げることを検討しているという。作業は2014年9月以降に実施予定だ。

3号機SFP燃料取り出しは来年度上半期が目標

 3号機SFP(使用済燃料プール)燃料取り出しは、中長期ロードマップに記載された通り、2015年度上半期の燃料取り出し開始を目指している。

 設備の設置のために人が立ち入る必要があり、そのため1mSv/hを目標に作業エリアの線量を下げることを目指している。つまり、承前のオペフロの除染等で線量を下げなければならない。

 線量低減に向けて行程の精査をしているが、「行程ありきではなく、安全第一に作業を進める」と増田尚宏氏は明言している。

暫定事務棟の第一期工事完了、まず400人が執務

 福島第一原発の暫定事務棟の第一期工事が6月末に完成し、現在福島第二原発敷地内で執務している約400名が7月中に移転する予定。残りは9月に完成し、追加で約600人が移転する。最終的には合計約1000人が暫定事務棟で執務することになる。

 事務棟は、福島第一原発の入退域管理施設のそば、鉄骨2階建ての建物で、現場機能の一体化、効率化が図られると期待されている。

廃炉推進カンパニー設置から3か月

 廃炉推進カンパニーができて三ヶ月、廃炉カンパニーの現状と今後について、増田氏は「廃炉推進という言葉を付けたことにより、皆の意識が変わってきた」という。現場に落ち着きがでてきて、ふつうの現場になってきたと所感を述べた。

 メーカー出身3名のバイスプレジデントについては、「期待以上に働いてくれてありがたい」と謝意を述べ、プロジェクト管理でも、メーカーに伝わり易いなど、コミュニケーション上頼もしいという。バックグランドも違い、示唆に富み、技術的なコメントも多く、「アドバイザーというより仕事に溶け込んで、一緒に仕事をしている感じだ」と感想を語った。

 要員の確保に関しては随意契約を取り入れ、長期的安定的に要因を確保できるようになってきたという。一方、作業員の移動バス、入退域手続きに時間を要するなどが作業員のストレスになっており、なるべく早く改善していきたいということだ。

下部透水層からトリチウム検出「遮水壁で止められる」

 地下水の観測、分析の結果、下部透水層からトリチウムが検出されたことについて、東電は、護岸の水ガラス地盤改良工事、降雨の影響で、上部透水層の水が下部透水層に流れるリスクがあるが、原因が難透水層起因か構造物起因かはまだ不明だという。

 海側の遮水壁は、下部透水層の下の難透水層まで届いている。下部透水層が汚染されても、海まで流れていかないようになっている。凍土式の陸側遮水壁が完成すれば、凍土遮水壁内の汚染水は隔離されると東電は判断しており、「完成するまで水位、水質を監視していく」と増田氏は答えた。

 東電は、万が一海側の観測孔から高い濃度のものが出てきたら、ウェルポイントでくみ上げて汚染水として取り扱えばいいと考えている。遮水壁を迂回して海洋に出る水は、凍土壁よりも山側から来る水になる。山側水が下部透水層まで汚染している状況ではないと思ってるため、もし外に回って出ていくとしても汚れていないと思っている。汚れが出てきた場合は、上流側の水も監視するなど対策するとしている。

うまく凍らない海水配管トレンチの凍結止水について

 タービン建屋と海へつながる配管トレンチとの間で、汚染水を閉じ込めるための”凍結止水”を行っているが、うまく凍っていない。規制委員会からは、海水配管トレンチに対してリソースを集中し、優先順位を高くしてやるべきではないかという意見が出ているが、東電は具体策をどう考えているのか。

 増田氏は、「凍らせるために人は送っている。もっと違う対策が必要なら別の人間に入ってもらうが、今は、終わらせるために努力する人間に頑張ってもらう」との考えを示した。さらに、凍結が完了するまでの措置として、モバイル装置で中の水を浄化することも平行して行っている。「ほったらかしてリスクを高いままにするのではなく、リスクを下げる作業も平行して行っていることも理解してもらいたい」と弁明した。

サブドレン、運用開始時期は未定

 サブドレンが9月に設置予定となっているが、実際にいつ稼働させるのか、目標はまだ立っていない。

 「サブドレンから地下水をくみ上げる必要があると思っている」と増田氏は言うが、そのくみ上げ方や時期は決まっていない。

 さらに、くみ上げたサブドレン水の処理についても、「広く、皆さんと議論しながら決める必要がある」と述べるにとどまった。稼働時期についても、「焦らず、しっかりやるべきことをやって考えていきたい」という。最終的には海洋放水しかないのだが、地元漁協、県、自治体と協議して考える必要があると述べた。

 つまり、具体的なことはまだ何も決まっていない。「時期については調整にも入っていない。関係者としっかりと相談して、了解をいただかない限り、そういうことはないと思っている」と増田氏は話した。

英国セラフィールド社との連携状況

 廃炉推進カンパニーは、英国セラフィールド社と連携している。その状況について増田氏は、5月に情報交換を進めていこうというメモを交わしたと説明した。

 その後は1ヶ月ほど掛けて話し合いを続け、東電からは線量の高い所の作業マネジメントに興味があると提示、セラフィールド社からは、ALPSやそのプロジェクトマネジメントに興味を持っているという提示があった。

 最初からあれもこれもやるよりは、テーマを3~4に絞った方が良いという話はついているというが、その先はこれからつめていくという。

■■■■■■

以下、東京電力ホームページより、リンクを表示

中長期ロードマップの進捗状況

2014年6月27日(廃炉・汚染水対策チーム会合 第7回事務局会議)

IWJの取材活動は、皆さまのご支援により直接支えられています。ぜひ会員にご登録ください。

新規会員登録 カンパでご支援

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です