2010年1月19日(火)、原口一博総務大臣オープン記者会見の模様。冒頭に地域主権戦略大綱、消防職員の団結権のあり方、地方公務員給与の「渡り」の再調査、言論の自由に関連したクロスメディアの所有規制についての報告。質疑応答ではクロスメディアの問題点について述べた上で、規制に関する議論の必要性に言及した。
2010年1月19日(火)、原口一博総務大臣オープン記者会見の模様。冒頭に地域主権戦略大綱、消防職員の団結権のあり方、地方公務員給与の「渡り」の再調査、言論の自由に関連したクロスメディアの所有規制についての報告。質疑応答ではクロスメディアの問題点について述べた上で、規制に関する議論の必要性に言及した。
■全編動画
原口「おはようございます。
名古屋の河村市長との会談もございまして、とてもご取材いただきましたけど、閣議後の記者会見、少し予定の時間より遅れまして申し訳ありません。
これからいくつかご報告をさせていただきます。
まず、地域主権戦略大綱でございますが、今日、閣議の後の閣僚懇で、鳩山内閣の一丁目一番地である地域主権改革、これに対して地域主権戦略大綱、これを夏に向けて策定をしてきたいと。
一括交付金、あるいは義務づけ・枠づけ、そして、基礎自治体への権限移譲、こういったことについて、しっかりとやるんだというお話をさせていただいて、各省の協力をいただくということをお願いしたところでございます。
また、消防職員の団結権のあり方についてですが、関係者の意見を聞きながら検討を行うため、消防職員の団結権のあり方に関する研究会を開催することといたしました。
地方公務員給与の「渡り」の再調査についてですが、昨年末に公表した地方公務員の「渡り」について政府三役会議で再調査の指示をしております。本日、小川政務官の名で、各都道府県知事、政令指定都市区長あてに調査文書を発出しました。具体的な資料については、事務方から説明をさせます。
それから、新たなマスメディア、あるいは言論の自由というところについですけども、通常国会、この通常国会に、通信と放送に関する法体系、これを60年ぶりに見直す法案を提出することとしたいということは既に述べた通りでございまして、マスメディアの集中排除原則の基本的な部分を法制化し、その遵守、維持を徹底化する予定でございます。
また、クロスメディア、この所有規制については、その基準の明確化や有効性について、これまでも問題提起が、総務委員会でずっとなされています。
これは何かというと、この間も申し上げました。新聞と、あるいは放送と、様々なメディアを、同一資本が一色で支配をするということは、言論の多様性について大変問題であるという考え方でありまして、現行のルールが言論の多元性を確保する観点から十分に機能しているか否かを検証し、見直す必要がないかよく検討し、結論を得ていきたいというふうに考えています。
私のほうからは以上です。今日はちょっとすいません、タイトになっているので、質問を少ししぼらせていただきますが、後で政務三役会議、これはフルオープンでやらしていただきますので、そこでも質問の機会を設けたいと思いますので、よろしくお願いします」
朝日新聞「幹事社の朝日新聞から質問をお願いいたします。
小沢幹事長の秘書の、および元秘書の方、3人が逮捕された政治資金規正法違反のことについて、あらためて、今回の事件に対する大臣のご所見と、一部で政治資金規正法に対する見直し等も発言されているようですが、そのあたりもお願いします」
原口大臣「そうですね。あの政治資金については、これは規制法というのは、政治活動の自由、これをしっかりと保障し、その上で、その前提の上で、国民の皆さんに正しくその実態を公表して、そこで国民の皆さんのご判断を仰ぐという、これが政治資金規正法の中身であります。
で、このことが、例えば、ザル法ということを長らくメディアの中でも言われてきた。ということは、何を言っているかというと、人によって解釈が違ってみたり、あるいは、それを遵守すべき人達から見ても分かりにくい、法の予見性といいますけれども、それはあってはならないことでありまして。
私は前から、これは私の持論ですけれども、誰が見ても一つの解釈しかない、誰が見ても分かる、それから、多くの政治資金規正法が、これが参入規制になってはならない。すべての人が候補者たりえる、そのためにも議論を進めていくべきだというふうに考えております。どうぞ」
わたしは、真っ先に挙手して、質問機会を得た。
総務省の記者会見は、挙手して社名と個人名を名乗るのではなく、先に声をあげて質問をしたもの勝ち、という、まるで囲みかぶら下がりのような、雑然とした無秩序感が支配している。遠慮していると、時間がなくなって、最も重要なテーマである、クロスオーナーシップ、あるいはクロスメディアの問題について、質問できなくなってしまう。
この問題については、記者クラブの記者たちは、本質的な部分について質問しようとしない。仮に質問が出ても、記事にならない。新聞・テレビなどの既存マスコミに任せきりにしていると、大臣が記者会見で自ら発表しているのに、このテーマがこの世でまったく存在しないかのような事態に陥ってしまう。
小沢幹事長に対する捜査情報は、現時点では外部に出るはずがない情報なのに、連日騒々しく報じられ、他方で、報じられなくてはならない重要なテーマは、黙殺され、国民の大多数が知らないまま、という正反対の「異常事態」が、今、この国では進行中なのである。
岩上「今、冒頭お話がありました、クロスメディアの問題、クロスオーナーシップの問題。これ、今インターネットも入っております。非常にわかりにくい用語です。クロスオーナーシップとか。ごくごく一般の国民が、分かりやすいように、大臣の口からですね、直にダイレクトに国民にメッセージを与えるように、ご説明いただけないでしょうか」
原口大臣「クロスオーナーシップというのはですね、要するに、自由な言論、あるいは多様な言論。例えば、何かことがあると、すべてのチャンネルが同じことを同じように報道してしまえば、それは多元的なものを見るということについては、非常に厳しいし、あるいは一つの巨大な資本が、新聞も雑誌もあるいはテレビもラジオも全部を、すべてを統合すれば、その資本の思惑によって、言論が一色になる。
これはいけませんね、という考え方で、各国ですね、例えば、新聞社が放送局に対する出資の割合はこれぐらいですね、ということを決めているわけですね。これを称して『クロスオーナーシップの規制』というわけです。
厳しいところ(国)になれば、(出資比率が)5%とか、そういうものもあります。ただ、日本の場合は、各紙媒体メディア(新聞社)が放送局を育て、そして一緒になってこれまで発展してきた、そういう経過もある。だから、よその国と日本とを同等に議論というのも、これもアンフェアでしょう。それから、今、大変厳しい状態なので、ジャーナリズムそのものが死んでしまうということはあってはならない。それは、言論の自由の基本になります。
ただ一方で、今までの紙媒体メディアあるいは、その地上波メディアに対して、インターネットメディアというものも出てきた。そういう意味では、様々な自由、国民が真実にアクセスできる。あるいは知る権利をしっかりと獲得するために、本当に今の状況でいいのかという議論が出てきている。これがクロスオーナーシップの規制に対する考え方の基本だと、私は承知しています」
亀松「すいません、J-Castニュースの亀松と申します。
関連の質問になりますけれども、クロスメディア、もしくは、クロスオーナーシップのことについてですね、特派員協会であったり、前回のこちらの会見であったり、あと、昨日のぶら下がりでもですね、お話されているということなんですが、いわゆる新聞とテレビは基本的に何も報道していない……」
原口「この間もこの質問、ありましたね(笑)」
亀松「まさしく、それはクロスオーナーシップが今、実際日本で支配されている結果の弊害ではないかと思うのですが、言論一色になってしまっていると。そのような現状についてどのようにお考えでしょうか」
亀松記者は、何について日本の言論が一色に染まっているか、明示して質問はしなかったが、常識的に考えれば、小沢幹事長が政治収支報告書に4億円の記載がなかったという「図式?」の集中報道を指していることは明らかである。
原口「私はメディアのあり方については、総務大臣としてはできるだけ、慎重に言葉を選びたいと考えてます。
それぞれのジャーナリストの人達が、自らが足で稼いだ、あるいは汗を流した中で、記事を作っていらっしゃる。
ただ、総務大臣として発出してることが、あるシナリオについては、ドーンと出るんだけども、別のことについては出ないということは、これは一般論ですよ、あったとすると、やはり何らかの編集の中で情報の意図的な、出したり、出さなかったりというのがあるというは、総務大臣としては、あまり好ましいことではない。
だから、やはり、なぜ私たちがフルオープン化をしようとしているかというと、それも、生の情報をずっと流していただければ、どこかを切り取って、都合の良いところだけはやめる、あるいは都合の悪いところだけは隠すということができなくなりますよね。
私はICT(※Information and Communication Technology。情報や通信に関する技術の総称。いわゆるITと同義)の発展というのは何が大きいかというと、情報に戸を立てられなくなる。どんな独裁国家であろうが、どんな強権的なものであろうが、あるいは、そこに既得権益の壁が厚かろうが、新たな情報ツールによって、国民は真実を知る、生の情報を知ることができる。これが大事だというふうに考えています」
原口大臣は、テクニカルタームを多用し、感情に訴える要素を慎重に排除して話す傾向がある。この回答もそうだが、しかしその内容はとても重要である。
メディア側が、ある特定の情報については洪水のように報じるが、別の情報については報じない。そうした恣意的な「情報操作」が、ネットなどの技術発展とともに、記者会見などを記者クラブのみに占有させず、フルオープン化してゆくことで、無効化されることを指し示しているのである。
言葉遣いはとても柔らかく丁寧だが、情報をめぐる権力構造の旧体制を破ろうとする、秘めたる強い意志を感じる。
毎日新聞「すいません、毎日新聞の望月ですが、今のクロスメディア規制のところは、民主党のインデックスにも掲載されていると思うんですが、そこを超えてですね、大臣としては、検討するための、組織なりを起ち上げるというか、前進するということですか」
原口「そうですね。これはICTの、今日もタスクフォースが開かれて、その中でもご議論をいただいている。
今、何をICTのタスクフォースを望月さんに4つ起ち上げて、それぞれ、未来の競争条件は何かということも議論していただいている。
その一方で、言論の砦を守るためには何をすればいいかということを。言論の砦ということだけではなくて、例えば、今日いらっしゃるような一人一人のジャーナリストのその権限をどのように守っていくか、ということも合わせて、今度は、前に言っていた日本版FCC(※FCCは米連邦通信委員会 Federal Communications Commission のこと。これについての言及は、2009年10月6日の原口大臣会見を参照)と昔言っていた、あの放送の権利、放送や報道や情報通信の中で国民の権利を守るためのフォーラムの中でもしっかりと、例えば分科会を作っていただいて、議論していただきたいと、こう考えています」
NHK「すいません、NHKの山下ですが。そうすると、その議論を踏まえて、夏までとされている通常国会に結論を出して、法案に向けて提出するということなんですか?」
原口「今回、申し上げているのは二段階です。
一つは、いわゆるマス排規制(マスメディアの集中排除)。このマス排については、今度の夏までの間にはきっちり入れる、ということを明言しているわけです。
もう一つのクロスオーナーシップの規制については、まずは議論を見ながら、前進をしていきたい。この国会で出来るかどうかというのは、この段階で言える話ではないというふうに思います」
(続く)