岩上安身による緊急インタビュー 第375回 ゲスト 海渡雄一弁護士 2013.12.9

記事公開日:2013.12.10取材地: テキスト
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★本日、2013年12月9日(月)20時過ぎより、岩上安身が海渡雄一弁護士に緊急インタビューを行いました。以下、インタビュー概要です。

岩上安身「12月6日、秘密保護法が可決した直後『バーナムの森は動いた』とする檄文を発表した。温厚な海渡氏が『ふざけるな』と何度も口にされている。これをキーワードにインタビューを進めていきたい」

海渡氏「シェイクスピアのマクベスの一節。『国民は馬鹿だからすぐに忘れるだろう。後は経済対策とオリンピックだ。と安倍さんは思っているが、これが終わりの始まりだ』と思ってこのタイトルを付けた」

海渡氏「日比谷野音で集会で登壇した際に、みんなの党と維新の会の修正案で『首相を第三者機関にする』『原則60年』を紹介した時に、思わず『ふざけるな!』と口に出してしまった」

海渡氏「法案成立後に廃案運動というのは過去にあった。盗聴法(通信傍受法)の際にも反対法案を出し続けた。廃案にはならなかったが、国民の権利を奪う内容を妨げることができた。この法案も施行までの1年は簡単に廃案にできる」

海渡氏「まずはこの法案に誰が賛成して誰が反対し、誰が棄権したのか。これを覚えておき、次の国政選挙で賛成した人間は落とすような国民運動にしなければならない」

海渡氏「自民党で唯一反対したのは二之湯智議員。報道を見ると『勘違いだった』と。しかし勘違いするものかな。民主党は全員反対。みんなの党は、真山勇一議員、寺田典城議員、川田龍平議員が反対した」

海渡氏「しかしみんなの党の他の議員も欠席した。これも驚き。国民の訴えかけがあったからだろう。また自民党で欠席した赤池誠章議員も、理由が分からない。これも明らかにする必要がある」

海渡氏「民主党の全員反対。実は当初は欠席方針だった。しかし一旦全員議場の外に出た際、廊下で蓮舫議員はじめ『反対票を入れたい』との声が起こり、その場で決を採ったところ出席すべしが圧倒的多数だったので議場に戻ったという」

岩上「公明党はやはり創価学会。創価学会といえば創始者んぼ牧ロ常三郎氏と、戸田城聖二代目会長も治安維持法で逮捕・投獄されている。牧口氏は拷問の末、栄養失調で捕まった。この背景をふまえ公明党ももっと動いて欲しいところ」

海渡氏「福島みずほ議員が出させた内閣官房の逐条解説。古い資料だが、解説資料はこれしか存在しない。前から何度も開示要請していたにも関わらず、採決直前ギリギリに持ってきた」

海渡氏「資料をみると、逐条解説には『適正評価を拒否した場合など、不利益な取り扱いを行わない』などの条項があるが、現法案では無くなっている。どんどん条文が書き換えられている。これは恐ろしい話」

海渡氏「省庁間のやり取り(法令協議)の資料も出てきたが、これはごく一部。省庁間のやり取りでどんどん条文が書き換えられているが、これは『官僚だけ』で決めている。国会にも出されていない」

海渡氏「この資料について審議されていない、ということが、この法案成立過程に瑕疵があると言えるのではないか。今後もこの資料を分析し、さらに他の資料も請求していく」

岩上「いまだ残る様々な問題点。参議院採決の際の速記録に『議場騒然、聴取不能』としか書いていない」

海渡氏「盗聴法の採決の際も『聴取不能』の速記録だったが、後で委員長が言い加えて、書き換えられた」

海渡氏「しかし今回の速記録は、『何を言ったか』を後で聴き取れるかが問題。石井浩郎議員が『議長!』と言った発言が唯一書かれている。サインプレーもどうやら失敗している。失敗した強行採決だったのではないか」

海渡氏「法案の差し止め訴訟というのがカナダで起きている。弁護士を密告者に仕立てあげようという法律案を作ろうとする動きがあった。英国には存在する法案。カナダで法律が作られ、法律施行前に弁護士会が一斉に反対した」

海渡氏「弁護士会は法律の差し止め訴訟を起こし、勝った。ただ、日本で今まで成功した例はない。『はいやります』と安請け合いはできない。これについては、もっと勉強していきたい」

海渡氏「この法案が存在し、黙々と密告状を書いているのが英国の弁護士。英国の弁護士は信用しない方が良い。『依頼者の秘密は守るが、疑わしい行動をしている場合は、たまに政府に密告しているよ』と」

海渡氏「少し脱線しました。海外からの批判について。国連の特別報告者が懸念表明。続いてモートン・ハルペリン氏という元NSCの安全保障の専門家が『21世紀最悪の法律だ』と横列に批判した」

海渡氏「ハルペリン氏は核密約の米国側担当者。彼は核密約についても『日本国民は知るべきだ』と言っている。そして極めつけはピレイ人権高等弁務官が懸念表明した」

海渡氏「すると安倍総理が『電話で修正案を説明したらピレイ氏は「評価する」と言った』と答弁した。これは検証しなければならない。外務省に会談記録が公電として残っているはず。情報開示請求もできる」

海渡氏「ピレイ氏の発言の全体を明らかにすべき。これに対する総理答弁の前日、自民党の部会では『国連の分担金を引き上げるべきだ』『罷免すべきだ』などと発言している。恐ろしいこと」

海渡氏「これは1933年の国連脱退と同じ雰囲気。国連にはここまで文句を言って、しかしハルペリン氏には一切文句を言わない」

岩上「すでに秘密保全に関する日本の法制度には、国家公務員法、自衛隊法、日米相互防衛援助協定(MDA協定)、日米刑事特別法などが整備されている。重罰規定もある」

海渡氏「秘密保護法第9条には『外国政府には特定秘密を提供できる』とある。この外国とは米国を指す。日本は米国への諜報は放棄している」

岩上「米国は日本で諜報やり放題で、日本は米国に情報を献上し放題」

海渡氏「日本政府の中枢に米国の諜報員がいるが、彼らが罰せられることはない。ロシアや中国の諜報員が発覚したら大問題になる」

岩上「森大臣は答弁で、過去の文書に遡って指定できると発言」

海渡氏「まず、人間の寿命を考えた時に原則60年で公開というのはありえない。当事者が生きているうちに検証しなければ意味がない。60年は愚策」

海渡氏「今後のことについて話したい。まずこの法案の成立過程の全貌を明らかにすること。そして国民が覚えていること。これが政府が一番高をくくっているところ。忘れないように定期的に集会を開いたり、など努力が必要」

岩上「この法案で原発情報が隠されるという懸念は多いが、戦争準備という部分に関しては議論が少ない」

海渡氏「日本版NSC、秘密保護法は国民への引き締め。敵がいるんですよ、と国民に刷り込む効果がある」

海渡氏「そしてもう一つのセットである国家安全保障基本法が、次に上程される。これは戦争の手続きに関する法律。戦争をするかどうかは別として、戦争準備体制が整う」

海渡氏「昔の資料で『防諜週間、あなたの隣にスパイがいる』というチラシがある。戦争に反対すると『おまえスパイだろ』と言われ、戦争に反対できなくなる時代が来てしまう」

岩上「国会前抗議、若い人が増えている印象だった。様相が変わってきている?」

海渡氏「いてもたってもいれなくなって、地方から出てきたという若者が多かった。これはこれまでに無いこと」

海渡氏「自民党改憲案の21条『集会・結社の自由の規制』の考え方と、今回の秘密保護法の考え方は全く一緒。さらに憲法13条『国民は個人として尊重される』が、改憲案では『公益・秩序に反しない限り』がつく」

岩上「9条の会、というのがあるが、であれば13条の会、21条の会、97条の会があっても良いのではないか」

海渡氏「私は最も重要なのは21条の『表現の自由』だと思っている、大事な条文がたくさんある」

海渡氏「最悪改憲しても日本はすでに『身体の自由と安全、移動の自由、思想・良心の自由、差別の禁止、法の下の平等』を保障した自由権規約という国際条約を批准している。ツワネ原則はこれに則ったもの。憲法21条と同じ」

岩上「海渡氏の檄文。『秘密保護法での逮捕者第1号を弁護するために、あらかじめ1000人の弁護団を組織しておこう』と」

海渡氏「1000人は勢いで書いたが、多くの弁護士から一緒にやろうと声をかけられた」

海渡氏「共謀罪の考え方がすでにこの法案に入っている。25条に『共謀し、教唆し、又は煽動した者は、三年以下の懲役に処する』とある。これを捜査するには密告と、メールや電話、室内の盗聴しかない」

海渡氏「最後に。この話を聞いて怯えている人もいるだろう。それが体制側の目的。これに対する我々の答えは『これで怯んではいけない』ということ。皆で渡れば怖くない、と怯まない人達を増やすこと」

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