2013年6月7日(金)19時から、京都市中京区のこどもみらい館で、講演会「“事実を知りたい”という遺族の願いに寄り添って―学校事故と第三者委員会の役割とは―」が開かれた。京都精華大学人文学部総合人文学科の住吉剛准教授が自身の経験を交え、いじめや学校事故への対応、再発防止策を検討する独立の第三者委員会のあり方について解説した。
(IWJテキストスタッフ・松田/奥松)
2013年6月7日(金)19時から、京都市中京区のこどもみらい館で、講演会「“事実を知りたい”という遺族の願いに寄り添って―学校事故と第三者委員会の役割とは―」が開かれた。京都精華大学人文学部総合人文学科の住吉剛准教授が自身の経験を交え、いじめや学校事故への対応、再発防止策を検討する独立の第三者委員会のあり方について解説した。
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主催者の「歩む会」は、2012年7月、京都市立養徳小学校で、夏休みのプール学習中に浅田羽菜さん(当時1年生)が亡くなった事故に関し、その原因究明や事故訴訟の情報を発信するグループ。この事故では、市教育委員会が第三者委員会を設置し、専門家を交えた調査を行うことを約束している。
講師の住友剛氏は、教育学、子どもの人権論の専門家。兵庫県川西市で常設され、調査や第三者機関のモデルとなっている「子どもの人権オンブズパーソン」で、同市内の公立中学校で起きた部活動中の熱中症死亡事故の調査などを担当した。
「学校事故で子どもを亡くした遺族に共通するのは、我が子がなぜ死んだのか、事実を知りたい、という思いだ」と住友氏は指摘する。「どう受け止めてよいのかわからない中では、きちんと説明がなされることが一番のケアになる。また、悲しみや辛さを十分におもてに出す『喪の作業』ができる場も必要だ」と語った。
住友氏は「事故の再発防止には、事実経緯や原因を把握することが必要不可欠である」と語る一方、「過去の事例では、調査結果が遺族に伝えられないなど、学校・行政の対応が不十分なケースもある。遺族へのバッシングが生じるなどして、十分な防止策につながっていない例もある」とした。「遺族は孤立しがち。事実を知る手段も限られており、最後には民事訴訟しか残されていない。遺族側にとっても、学校・行政側にとっても、第三者委員会のあり方が重要だ」と述べた。
また、住吉氏は、在職中に担当した部活動中の熱中症死亡事故の経緯を具体例として挙げ、オンブズパーソンの取り組みを解説した。オンブズパーソンは、子どものいじめ自殺や不登校の防止、被害にあった子どもへの相談窓口などの機能を持ち、市の機関や制度への調査、制度の是正勧告、要望を出すことができる。
その中で、「遺族や在校生への心のケアや防止策検討などを、学校・行政は現実として担えていない。事実経過の検証を中核の作業として、委員会が公平・中立的にその内容を整理し、説明していく必要がある」とした。また、羽菜さんの事故のケースに関連して、「子どもの自殺に比べ、プール事故など、学校事故での検証作業は未だ不十分。今回のケースが、死亡事故での第三者委員会のモデルになるかもれない」と期待をにじませた。
その上で住吉氏は「遺族からの呼びかけは、学校・行政に変わってほしいという願いが込められている。学校・行政が、そうした呼びかけに誠実に応える力を取り戻すためにも、第三者委員会は必要不可欠だ」と訴えた。
講演後、質疑応答が行われた。「学校・行政からの、遺族への説明が不十分になる理由は何か」という問いに、住吉氏は「情報を開示することで、議会、マスコミや地域社会からの反応など、その後に起こることへの恐れがあるからではないか」と答えた。また、第三者委員会の設置に時間がかかることについて、「遺族の方々が10動いて、ようやく1進む、という状態。事故が起きた直後から、遺族へのサポートや説明がなされるチャンネルを作らなければならない」と強調した。