「主文。被告人は無罪」。4月26日、東京地裁104号法廷。大善文男裁判長は、陸山会事件の被告となった小沢一郎・元民主党代表に無罪判決を言い渡した。それから2週間後、控訴期限である5月10日前日の、5月9日。小沢一郎・民主党元代表に対し、検察官役の指定弁護士(2009年5月に施行された改正検察審査会法で導入された「強制起訴」の仕組みで、検察官に代わって起訴し、公判を担当する役割を担う弁護士のこと。URL: http://bit.ly/hzUhXm)が控訴を決めた。
一審での無罪判決を不服とし、「見過ごすことができない事実誤認がある」というのが控訴理由である。
周知の通り、この陸山会事件では、容疑の段階から、マスメディアは小沢氏を犯罪者扱いし、「クロである」というイメージを国民に徹底的に刷り込む異常なメディアスクラムを繰り返してきた。当初は、検察側のリークを、マスメディアが批判も検証も行わないまま木偶の坊のように垂れ流しているだけ、とみられていたのだが、そうした状況は、検察が不起訴を決め、検察審査会(起訴に関する検察官の裁量権の適正な行使に民意を反映させるため、英米の起訴陪審から示唆を得て設けられた制度。URL: http://bit.ly/JygLx2)において不透明なプロセスで強制起訴議決がなされた際も、それ以降も変わらなかった。「推定無罪」の原則などどこ吹く風、ひたすら「小沢バッシング」が続けられた。
しかも、驚くべきことに、検察を強制起訴へと誘導するために作成された検察の捏造捜査報告書がネットに流出する事件が起きたあとも、さらに、一審で無罪判決が出てからも、こうした記者クラブメディアによる狂気じみたメディアスクラムにほとんど変化はあらわれなかった。彼らの所業を、「犯意なき木偶の坊の過ち」として免責することはできない。
その挙句、今回の控訴決定である。今後、小沢氏の政治活動の制限はされない、とはいうものの、この控訴決定により、実質上、「被告人扱い」が、記者クラブメディアによってまだまだ続くことになるのは必至である。
推定無罪の原則、あるいは、被告人の人権を無視した裁判と報道。司法はどこまで落ちるのか、検察はどこまで暴走し続けるのか、そして、メディアは自らを顧みることなく、「木偶の坊」面をして、思考停止の一方的なバッシング報道をいつまで続けるのか。
さらに、新たな証拠もなく、捜査報告書の捏造まで明るみに出て、無罪判決が下された事件を、指定弁護士らはどうやってくつがえすつもりなのか。いったい、この控訴の目的は何なのか。
元最高検アドバイザーで、検察審査会制度にも詳しい、山下幸夫弁護士にお話をうかがった。
(続く)
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