2012年3月21日(水)、世界貿易センタービル(東京都港区)にて行われた、「TPPの推進と日中経済についての講演会(社団法人世界貿易センター・株式会社世界貿易センタービルディング合同)」の模様。
今回の合同公演会はTPPの推進と日中経済をテーマに開催された。講演では、経済産業省において国際貿易・産業問題を担当する岡田氏が登壇。ASEAN+3および+6について、ASEAN++としてまとめられ「物とサービスと投資のワーキンググループ設立が合意、間もなく立ち上がる」「いよいよ中核での議論が始まったと言える」と述べた。またTPPにおいて、外国人の投資家が訴えることで、日本の国内制度の変更や国家主権への影響が懸念されている投資協定「ISDS制度」(ISD条項)を説明。「協定があると外国から投資を受け入れることができる」「投資したほうも理不尽なルール変更で損害を被ることがない」と利点を強調した。そして米国通商代表部(USTR)のウェンディー・カトラー氏が来日した際の発言を引用。医療保険制度の改革や単純労働者の受け入れなど、アメリカがTPPで目指していないとされる5項目を挙げ、「懸念事項のいくつかはTPPでは議論されていない、求めていないと、あえて彼女は言っている」と言明した。
- 開会挨拶:(社)世界貿易センター会長 堤富男氏
- 講演:『日本をめぐる自由貿易協定の動き-TPPを中心に-』経済産業省 経済産業審議官 岡田秀一氏
- パネルディスカッション:
潮田道夫氏(毎日新聞論説委員・社団法人世界貿易センター理事)
大西康夫氏(アジア経済研究所〈JETRO〉新領域研究センター長/前ジェトロ上海センター所長)
浜野信也氏(㈱三井物産戦略研究所取締役副社長/所長)
三浦宏一氏(社団法人世界貿易センター[東京]専務理事/社団法人先端技術推進機構 理事長)
- 閉会挨拶:事務局からのお知らせ 「日中プロジェクトクト」等
- 報告:(WTCA2012アジア太平洋地域総会北京帰国報告)社団法人世界貿易センター(東京)副会長 児島明氏
パネルディスカッションにおける各氏の発言要旨は以下の通り。
浜野氏 TPPにおいて海外から問われているのは、貿易自由化に対する姿勢そのもの。戦後の経済発展の原動力の一つは貿易。また資源・エネルギーを輸入しなければならない、それに見合うように輸出をしなければならない構造的宿命がある。仮にTPPに参加しなかった場合、すぐに影響が出るとは思わないが、5年、10年たった時のガラパゴス化の始まりになる懸念がある。何でも自由化すれば良いわけでわなく、自由化しても影響を少なくする取り組みがあってしかるべきで、参加した後の影響について議論が行われるべき。誤解に基づいた反対論があり、推進論者の啓蒙活動が滞っている。産業界をあげて広報を行うべき。
大西氏 日中韓の連携を妨害する意図でTPPが出てきたという議論があるが、そうではないという議論をするため、論点として日中韓FTAを考える。日中韓FTAの研究は2001年から各国シンクタンクが参加、2007年に影響評価を発表した。研究終了が宣言され、2012年の首脳会議で本格的な交渉に入ろうという段階。目的としては、生産材を域内で加工して欧米向けに消費財を輸出する。欧米諸国は経済危機、将来的には東アジアで生産・消費する構造へ変化が必要。東アジアの生産ネットワークを高めることができ、消費財の貿易障壁を引き下げ、構造変化の促進効果がある。知的財産権を含む高レベルの経済連携が望ましい。
潮田氏 TPPではアメリカが戦略論、地政学論でくると迷惑な気もする。しかし、そういったことを承知してやるべき。一方、中国の重みが増す中で、中国に対して物事が言えるかどうか、アメリカですらものが言いにくくなっているのが現実だと思う。TPPで大切なのは、ルール作りに日本が主体的に影響力を及ぼすチャンス、重要な役割を果たすチャンスと捉えてこの問題に当たっていくべき。日中韓でどこまで高度なFTAを結べるか疑問。TPPという選択肢を持って日中韓にあたることは、自由化の度合いを引き上げていくために重要。国内の調整は難しいが取り組んでいく問題。