2013年1月23日(水)14時から(昼の部)と18時から(夜の部)、岩手県盛岡市の盛岡市中央公民館で、「環境ジャーナリスト青木泰氏学習会」が行われた。これは、大阪のがれき広域処理問題の有志らが、「放射能汚染問題に積極的に取り組んでいる環境ジャーナリストの青木泰氏に、盛岡で話をしてもらいたい」として、カンパで旅費や経費を集めて実現した学習会である。青木氏は、がれき広域処理のこれまでの経緯と問題点について説明し、さらに、広域がれき処理の受入れ状況、住民監査請求での具体的な活動方法などを話した。
※配信状況により録画が一部欠けており、一部音声の聞き取りにくい場面がございます。何卒ご了承ください。
- 日時 2013年1月23日(水)14:00~
- 場所 盛岡市中央公民館(岩手県盛岡市)
昼の部は、広域がれき処理問題の現状を語ることから始まった。青木氏は「北九州市では、去年の8月から今年の3月31日まで、宮城県と岩手県の2万3000トンのがれき処理契約をした。その処理業務は延長する予定が、急に打ち切られた。宮城県のがれきは、16都府県に持っていくはずだったが、東京、北九州、茨城県だけになり、期間も2年間の予定が、本年度だけで終了した。それらについて、新聞などは『処理を前倒しにした』と言って、真実を公表していない」と話した。
続けて、青木氏は「岩手県のがれきは、大阪、静岡、埼玉、富山、秋田などに持っていく予定だった。去年の5月21日、環境省は広域化推進として、がれきの総量の見直しをした。それまでは、静岡7.7万トン、埼玉5万トン、富山は5万トン、秋田も5万トン、大阪は17万トンを処理、と言っていたが、去年の8月7日の工程表改訂で、静岡2.3万トン、埼玉1万トン、富山は1万トン、秋田も1万トン、大阪は3.6万トンと発注量が激減した。常識的に、考えられない見積変更だ」と述べた。
さらに、「埼玉県は、野田村のがれき処理を請け負った。去年9月6日に持ち込みが始まったが、12月26日には処理が終わってしまった。1万トンと言っていたがれきが、ふたを開けてみると1000トンしかなかったからだ。なぜ、ここまで数値が違うのか。(見積り段階では)土砂がついていたため、というのが、環境省の発表であるが、『木くずの9倍以上の土砂がついていた』と言うなど、かなり矛盾した言い訳がまかり通っている」と指摘した。
青木氏は「なぜ、こういう事態になっているかというと、住民が監視していたからだと思う。つまり隠し通せなかったということ。当初、400万トンを広域処理化する予定だった。そのうちの約9割が宮城県で、残りは岩手県。そもそも、法律では、がれきなどの廃棄物は発生した市町村で処理しないといけない。しかし、自分たちでは手に負えないとして、12市町村は県に処理を委託した。そして、宮城県は県内を6区に分け、事業を大手ゼネコンに丸投げした」と、がれき処理が当事者から離れて進められる実態を説明した。
続けて、「もはや、当初の訴えのように、被災地でがれき処理がこなせない、処理できないという理由が成り立たなくなった。たとえば石巻地区では、木くずが当初115万トン計上されていたのが、変更後4万トンになっていた。なぜ、数量が激減したかを宮城県の担当者に質問したら、「発酵して消えた」と答えた。また、1トン当たり2万円の処理費で鹿島JV(複数企業の共同事業体)に発注したにもかかわらず、北九州市とは約1万トンのがれき処理を1トン当たり約7万円で再契約している。なぜ、高いところに再発注したのかを宮城県に問うと、「がれき処理を受けてくれたことに対する感謝の気持ちだ」と担当者が答えた。これは地方自治体法違反である。岩手県の方が、まだ、宮城県よりは良心的だ」と話した。
夜の部では、まず、昼の部と同じ内容の、がれき処理の広域化について説明があった。青木氏は「宮城県は366万トン、岩手県はお付き合いのように、1割ほどの34万トンほどを広域処理する予定だった。しかし、がれきの広域処理の必要性はもうない。住民の反対運動の成果は現れている。北九州市では、試験焼却の後、裁判に訴えた。さらに住民監査請求を申請した」と、具体的な対抗手段について説明をした。
青木氏は「鹿島JVは、津波堆積物なども含め、1トンあたり2万円で約1000万トンを約2000億円で契約していた。見直しの結果、400億円に減ったが、これも住民たちの反対運動の成果である。実態として、大量のがれきがないのに、広域処理するのはおかしい。また、鹿島JVより高い金額で、契約し直すこともおかしい」と、がれきの広域処理の不明瞭さを訴え、住民運動の重要性を語った。