2012年3月12日(月)18時半、大阪市北区の大阪市役所において、「大阪府市エネルギー戦略会議」の第2回会合が開かれた。この戦略会議は、大阪府と大阪市が電力消費自治体としての立場から、我が国の今後のエネルギー戦略策定に一石を投じる目的で設置されたもので、今回の会合では、電力・エネルギーを取り巻く状況を把握するために、電力供給者である関西電力の担当者を招き、情報開示を求めた。
(IWJテキストスタッフ・久保元)
2012年3月12日(月)18時半、大阪市北区の大阪市役所において、「大阪府市エネルギー戦略会議」の第2回会合が開かれた。この戦略会議は、大阪府と大阪市が電力消費自治体としての立場から、我が国の今後のエネルギー戦略策定に一石を投じる目的で設置されたもので、今回の会合では、電力・エネルギーを取り巻く状況を把握するために、電力供給者である関西電力の担当者を招き、情報開示を求めた。
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関西電力の岩根茂樹常務は、昨年(2011年)の需給実績を説明した。これによると、「昨年夏の電力供給力のピークは8月9日の2947万kW(キロワット)で、その時は、原子力は4基で337万kW稼動していた」とした。また、昨年夏の想定最大需要3138万kWに対して、原発が稼働しない場合、供給力不足はマイナス25%になると予想していたが、実際の需要は、平成23年8月9日の2784万kWにとどまった。しかし、その時の供給力(2947万kW)から、仮に原発と揚水発電をマイナスした場合の供給力は2398万kWとなり、「昨年夏の最大電力2784万kWに対して、13.9%不足していた」と説明した。また、原発による供給力が減ると、揚水発電の供給力も減ることを説明した上で、「原発が停止していれば、昨年7月から9月の間の41日間で、283時間の供給力不足が生じていた」と説明した。
一方、「昨年までの10年間に、最大電力が3000万kWを下回ったのは、昨年を除き、2009年だけである」とも付け加えた。また、火力発電所のフル稼働によって、点検が十分に行えていないとしたほか、LNG火力発電所の設備が限界に近づき、石油火力発電所の稼働増に頼らざるを得なくなっているとし、原発の全基停止によって、年間4000億円以上燃料費が増え、「国富が流出する」と述べたほか、「エネルギーを安定的に供給し、電気料金を安定させることは、関西経済の発展に不可欠」「収支の面からも、安全が確認された原子力の再稼動が必要と考えている」などと主張した。
同社原子力事業本部の高杉政博氏は、関西電力管内の原発について、福井県において1970年以来、加圧水型炉で11基運転していることを説明したほか、福島第一原発の事故について、「地震による地すべりで鉄塔は倒れたが、原子炉の停止や非常用電源などは正常に動作した」とし、「津波によって冷却できなくなったことが事故につながった。重要な設備には浸水防止対策を行うことや、電源や水源を確保することが大切であるという知見が得られた」などと語った。その上で、「緊急安全対策によって、十分に安全性が守られるとは考えているが、もし万一、放射能が外に出るという時も、セシウムを取れるようなフィルターを付けて、土壌汚染を極小化するという形の対策も今後取らせていただきたい」と述べた。
これに対し、出席した委員からは質問や指摘が相次いだ。古賀茂明委員が、福島第一原発のようなシビアアクシデント(過酷事故)が起きた場合、放射性物質がどのように拡散するのかのシミュレーションの有無や、大阪府南部にまで飛散してくる可能性について質問したのに対し、関西電力側は、山地や降雨などの条件を考慮しない平面的なシミュレーションは存在するとした上で、大阪府南部にまで飛散してくる可能性については、「分かりかねる」と返答した。
飯田哲也委員は、福島第一原発事故について、「地震でも全く健全だったとは検証されていない」としたほか、高レベル放射性廃棄物の取り扱いについて、「再処理は明らかに行き詰まっている。事故が『垂直的な破局リスク』だとすれば、こちらは『無限にかかる時間リスク』である」と指摘した。また、大学や学会、マスコミなどに対する電力業界からの資金提供によって、原子力安全神話が形づくられてきた問題を指摘し、資金提供先を具体的に明らかにするように要望した。