大阪「維新」を考えるつどい 2012.3.5

記事公開日:2012.3.5取材地: テキスト
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(IWJ大阪・松田)

 2012年3月5日(月)、大阪市北区のエル・おおさかにて法律家8団体共催の「2条例案にNO! 大阪『維新』を考えるつどい」が開かれた。

 (※中継不可のため、ペン取材のみ)

  • 日時 2012年3月5日(月)
  • 場所 エル・おおさか(大阪府大阪市)
  • 主催 主催
    連合大阪法曹団、大阪労働者弁護団、民主法律協会、大阪社会文化法律センター、自由法曹団大阪支部、青年法律家協会大阪支部、大阪民主法曹協会、日本労働弁護団大阪支部

 このつどいは、大阪維新の会が同府市で打ち出す教育基本条例、職員基本条例をめぐる法的問題点や違憲性について批判し反対を強く訴えるために、在阪の法曹でつくる8団体が合同で催した。大阪の法律家、労働組合、学識者でつくる団体・民主法律協会の城塚健之幹事長が「昨年のダブル選挙以来、大阪は混乱の極みにある。橋下氏は次々と敵を作り叩くという手法で支持を取り付けている一方、現場の職員らは萎縮しきっている。我々は法律家としておかしいことはおかしいと訴え続けなければならない」とあいさつした。続いて連合大阪法曹団の北本修二代表幹事が「アンケートやメール調査など次々と問題が生じているなか、数多くの各団体がいち早く声明を出し批判を展開した。公務員が政治活動することは憲法で保障された権利だが、あたかも違法行為であるかのような誤解が広がっている。一般労働者と公務員の分断も進み、橋下氏はそこに漬け込む。その暴走を食い止める運動を進めていきたい」となどと述べ、2条例や橋下手法をめぐる状況を報告した。

 神戸大学の浦部法穂名誉教授が「民主主義が民主主義を滅ぼす」と題して講演。浦部教授は、大阪維新の会や橋下氏をナチスやヒトラーと比較。ヒトラーが入党した当時のナチスの前身・ドイツ労働者党はミュンヘンの小さな地域政党であったことを紹介し、「演説などで人心を掌握するヒトラーへの人気を背景に、ナチスは国政に進出した。その過程でさまざまな政党が擦り寄っていったことは、維新の会とよく似ている」と類似性を指摘した。

 また橋下氏の強い支持基盤には、国民がもつ権力への依存意識があるとした上で「血縁地縁、あるいは企業など帰属すべき集団が融解していくなかで権力依存が加速した。結果として権力を監視する憲法や法律への共感は薄くなり、それらを足蹴にするような橋下手法に支持が集まるのではないか」と分析した。

 講演後、府市の職員労組幹部や教員らが登壇。「いわれなき攻撃を受けるなかで、まるで戦前のようだという声も上がる。自分の発言が逐一監視されているような気持ちになり、職場の人間関係もギスギスし始めている」なとど語った。教員からは「経済格差や家庭の事情もあり、子供たちはそもそも同じスタートラインに立っていない。一律の学力テストなどで競争にさらされ、負けた学校は統廃合されれば進路の幅も狭くなる。教育を受ける機会がどんどん減っていく」「過度な負担で、過労死や心理的な疾患になる教員もいる。条例がさらなる負担増につながる」といった現場の声が発表された。

 最後に「教師や自治体職員に対する不当な人権侵害に抗議するとともに、住民との協力共同により、真の公教育・地方自治の実現に向けて、全力を尽くすことを誓う」とうたったアピールを採択した。


 参加者は法曹のほか労働組合の関係者ら。在阪の法曹8団体の共催集会は、労働者派遣法改正といった大きな動きに伴って開かれており、回数は多くない。それだけに2条例の反対をテーマにした今回の集会は、在阪の法曹がもつ危機感の反映と言える。しかし、橋下氏や維新の会への支持はマスコミ各社の調査で5割を超えるなど、批判の声が共感を得ているとは言い難い。

 法律や憲法を軽視する橋下手法への支持の一部は、高待遇とされる公務員をバッシングすることで、民間労働者と同じレベルに引き下げ溜飲を下げるという、ある意味下世話な願望に依拠している。しかし公務員の処遇を引き下げたところで、民間労働者の待遇が上がるわけでもなく、浦部教授が「公務員が高待遇という過剰なイメージが醸成される一方、一般労働者の地位向上が全く議論されないことが問題」とするのは、重要な指摘だろう。

 違憲・違法が常態化した環境で働く、まさに一般の労働者からの共感を得、どのように巻き込んでいくか。アピールにある「住民との協力共同」をいかに実現するか、今後の運動が試されていると言える。

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