10月31日投開票を迎える、第49回衆議院選挙。麻生太郎自民党副総裁の「温暖化で北海道産米が美味くなった」発言が、温暖化で苦しんでいる北海道の農業水産業者の現実を無視しているとして、物議を醸している。さらに岸田文雄総裁までがどう趣旨の発言をしたのだからたまったものではない。
▲麻生太郎氏（wikipediaより）
問題の麻生発言は10月25日、北海道小樽市であった衆院選の自民公認候補との街頭演説でなされた。
「年平均気温が２度上がったおかげで、北海道のお米がおいしくなった。昔、北海道のお米は『厄介道米』と言われるほど売れない米だった。農家のおかげですか？ 農協の力ですか？ 違います。温度が上がったからです」
北海道農民連盟は翌26日、即座に「今までの北海道米を作る生産者の努力と技術を蔑ろにするような発言は断じて許されない、強く抗議する」との談話を出した。
北海道を凱旋で訪れた枝野幸男・立憲民主党代表、蓮舫氏も麻生発言を批判、大激戦区4区の大築紅葉氏も麻生発言は看過できないと怒りをあらわにした。
北海道では激戦区の勝敗の行方を左右しかねない影響が出ているが、岸田文雄総理は26日、BSの番組で「お米は関係者の努力によっておいしくなっている。麻生氏の発言は適切ではなかった。申し訳ない」と謝罪したが、当の麻生氏本人からはなんの謝罪もないままだ。北海道に応援演説に現れた安倍晋三元総理も、麻生発言についてノーコメントであった。
枝野幸男代表は札幌街宣で、「冗談じゃない」北海道の農家の努力と苦労、国民の暮らしを見ていないと麻生発言を批判！
枝野幸男・立憲民主党代表は、10月29日札幌市手稲で行った街宣で、麻生副総裁の発言に対し「冗談じゃない」北海道の農家の努力と苦労、国民の暮らしを見ていないと麻生発言を批判した。
「（政治を）変えるために具体的な提案もしています。北海道ですから農業です。
私も東京で（麻生発言を）聞いてびっくりしました。温暖化のおかげで北海道の米が美味くなった。冗談じゃないですよね。北海道の皆さんの努力でいろいろな品種改良をして、寒さにも強く、美味しいお米を作った。
そして、この温暖化のおかげで水産業も、獲れる魚が変わってしまって苦労されている。農家の皆さんだって、気候が変われば、ご苦労をされる。全く国民の暮らしなんか見ていない。温暖化によって地球が危ないという危機感を持っていないトンでもない発言でした。
私たちはもう一度、戸別所得補償制度を復活させたいと思っています。農業も水産業も林業も単なる金儲けではない。水や緑や空気を守る。災害を防ぐ役割もあったりもする。水産業は国境や陣地を守ってくれてもいる。にもかかわらず、気候が変動すれば、天候によって獲れたり獲れなかったりする。そして今回のように米の値段が暴落することもある。
そういうことがあった時でも最低限の暮らしは保障しましょう。なぜなら、農業を営んでいる、林業を営んでいる、水産業を営んでいる。営んでくれているだけで、社会全体に役立つ仕事をしていただいている。そうした皆さんに最低限の生活を保障するのは当たり前でしょう。
今日も警察の方に警備をしていただいている。警察の皆さんだって消防車だって、みんな金を産み出しているわけではないけれども、世の中のために必要な（仕事をしている）。一次産業もそういう役割がある。だから戸別所得補償制度で最低限の暮らしを支えさせて下さい。最低限の暮らしを支え、所得を補償する。それこそが実は、経済を立て直すのに必要な景気対策なのです」
北海道4区、立憲候補・大築紅葉氏は、街宣後のぶら下がりで、は「農家さんたちが品種改良を重ねて努力の賜物で出来たお米」がコロナ禍で売れないという現実を無視した麻生発言は看過できないと怒り！
北海道4区、立憲候補・大築紅葉氏は、10月27日行われた街宣後のぶら下がりで、「農家さんたちが品種改良を重ねて努力の賜物で出来たお米」がコロナ禍で売れないという現実を無視した麻生発言は看過できないと怒りをあらわにした。
横田「麻生さんの発言について一言」
大築候補「あの発言については看過できないと思います。
北海道のコメ農家、この2ケ月で行かせていただいたのですが、今年、お米がすごく美味しいのです。すごい一杯とれたのです。でもコロナ禍で外食産業が閉まっていたではないですか。それで米が残ってしまっていて、美味しいはずなのに、そういう問題さえもあるのです。
農家さんたちが品種改良を重ねて努力の賜物で出来たお米を、あのような発言をされたことは私は看過できないと思います。私はこれからしっかりと勉強をして、北海道の農業に寄り添って生きていきたいと思います」
横田「（麻生さんはまだ謝罪もしてないのですが）麻生発言は大きな争点になりそうだと？」
大築候補「大きな争点というよりも、それは自民党の中でしっかりと、自民党は与党なので。『北海道にしっかりと向いてください』と伝えて下さい、横田さん。
『北海道は大切ですから。北海道を蔑ろにしないで下さい』とお伝え下さい」
横田「結構、接戦という報道もありますが、今日の手ごたえはいかがですか。けっこう反応がありましたね」
大築候補「まだまだ自民党は強いですから。巨大な敵に立ち向かわないといけないので、最後まで気を抜かずに駆け抜けます」
横田「足、速いですね」
大築候補「山登りが好きなのですよ。コロナが収まったら一緒に山登りをしましょう」
横田「寿都町の核のゴミの問題も触れられていましたが」
大築候補「（町長選の投開票が）昨日、終わりましたから」
横田「地域振興だったら（核のゴミ文献調査ではなく）他のやりかたもあると？」
大築候補「私は、核のゴミは北海道で受け入れないという条例がありますので、その条例に基づいて、みんなで決めた条例ですから、受け入れる必要はないと思います。
受け入れなくても北海道には無限の可能性があります。美味しいお米もあります。美味しい魚もあります。豊かな海もあるし、山もあります。
必ず、それのかじ取りの仕方で、北海道は元気になっていきます。私はここで育ったから信じています。そして、北海道を外からも見てきました。この北海道、必ず活気づけていきます」
横田「泊原発の再稼働も必要がないと？」
大築候補「（原発）再稼働に頼らなくても必ず北海道は前に進めます。大丈夫です、横田さん」
横田「自然エネルギー立国？」
大築候補「自然エネルギー立国！」
大激戦の北海道4区、終盤情勢は!?
総選挙最終盤で野党による、麻生太郎副総裁の“温暖化で北海道産米が美味しくなった発言”の徹底追及がスタートした。
立憲民主党の蓮舫代表代行は10月27日に麻生発言が飛び出した北海道四区で、野党統一候補の大築紅葉氏の応援演説をし、麻生発言を批判、枝野幸男代表も29日に札幌入りをして大築氏の隣で、上述のように麻生発言を批判した。
枝野代表は批判だけでなく「戸別所得補償制度」を目玉とする政策提言も行った。麻生発言で愚弄された農家を含む農林水産業関係者（一次産業従事者）への支持拡大を狙う。麻生発言に不快感を抱くのは、コメ農家だけでなく、温暖化の影響に苦しんでいる水産業関係者も同じだからである。
麻生発言について、立憲民主党の石川香織候補（北海道11区の前衆院議員）が、「これを小樽で言うセンスに強烈な違和感。温暖化の影響が大いにあると言われる近年の不漁魚についてはどうコメントするのでしょうか」とツイート。これをすぐに北海道4区の大築氏がリツイートした。
温暖化による赤潮発生で北海道の水産業が大打撃を受けている真っ最中に、麻生副総裁は「温暖化にはいいこともある」と発言したのだ。地元漁業関係者が怒り心頭に発して当然である。麻生発言は一次産業関係者を敵に回しかねないものだ。
岸田文雄総理は26日夜の民放番組で、麻生発言について「適切ではなかったのかなと思う。申し訳ないと思います」と述べたものの、当の麻生副総裁自身が謝罪したという報道は未だにない。自民党は危機感の乏しい。
麻生氏と並ぶ党内実力者（キングメーカー）の安倍晋三元総理も10月28日、麻生発言を隣で聞いていた中村裕之・前衆院議員（北海道4区の自民党公認候補）への応援演説（札幌市）を行った。しかし麻生発言に対する釈明はなかった。先に街宣をした中村氏自身が訂正と謝罪をしたのに、安倍元首相は年金問題に関する自慢話で以下のように触れただけであった。
「（中村氏から）さっき話が出た麻生さんなんかは81歳ですよ」
応援演説後、安倍元総理を直撃した声掛け「安倍さん、麻生さんの発言について一言。温暖化について。温暖化でコメ（が美味くなった）」に対し、「ちょっと静かに」と言って指を口の前に立てた。
車に乗り込んで出発する時に再び、「安倍さん、麻生さんの発言について一言、お願いします」と叫んだが、安倍元首相は私の問いかけには答えないまま、手を振りながら走り去って行った。
安倍元総理と麻生副総裁は、くだんの麻生発言については、二人とも重要視していない。
<関連記事＞
Tweet
