2019年7月21日(日)20時より東京都千代田区の都市センターホテルにて行われた、第25回 参議院選挙 れいわ新選組 開票センターの模様を中継した。山本太郎代表、れいわ新選組候補者、ボランティア市民が会場に集まり、開票結果を見守った。比例代表 特定枠の舩後靖彦氏、木村英子氏の2名が当選を果たした。れいわ新選組はこの2名の当選に加え、比例区の得票率は4.55%に達し、政党要件を満たした(※「国会議員が5人以上」もしくは「直近の衆院選か参院選での得票率が2%以上」で政党として認められる)。
- れいわ・N国に交付金配分へ 「政党」認定、活動で恩恵(朝日新聞、2019年7月22日)
大手メディア各社による開票速報が流れる中、れいわ新選組代表の山本太郎氏のテレビ中継の合間に、会場の記者と山本代表および候補者との質疑が行われた。IWJとしては、候補者それぞれが取り組んできたテーマについてうかがいたいと考えていたが、多様すぎて、とても質問時間には収まらないので、主として労働問題に絞って質問を試みた。以下、ハイライト動画に収めたその質疑の模様を記す。
IWJ「インターネット報道メディアの小野坂です。個々のスペシャリストの街宣を取材させていただきまして一つひとつ勉強させていただきました。ただ、スペシャルな話だけれども、みなさんがリレーションを持って大きなシステムと戦おうとしているはずなのに、それをお伝えできなかったことを、メディアとして後悔しております。
おうかがいしたいのは、安冨さんが街宣でおっしゃられていた、知的障害者の代表も国会に送らなければならないという点、山本さんの国会のシステムを変えていこうというお考え、三井さんや渡辺さんが取り組まれてきた働き方の問題、そうした(問題それぞれ)のシステムの問題について、この場でおうかがいしたいと思います」
安冨歩(東京大学東洋文化研究所教授)氏「今回、重度障害者の方が2人当選されて本当にすばらしいことだと思いますが、私は知的障害者の方も国会議員、各地で議員になってほしい、そういう人たちが持っている感性とか言葉とかって、すごく大きな力があって、いわゆる健常者で弁の立つ人だけが政治をするのはおかしいと思っています。
そんなこと、普通の政党ではありえないかもしれないけど、れいわ新選組なら視野に入れていけるのではないかと思っているんですけど、代表に聞いたわけではなく私の意見なので、この場でどう思っているか聞きたい」
山本太郎代表「いいんじゃないですか。だって障害者って(全国で)900万人以上いるんですよね。その中の代表の一人として入っていくこともできるでしょうし、衆議院ならブロックという戦い方もできますし、そうした方々と一緒にやっていくことも重要だと思います。とにかく、当事者が一番のスペシャリストであるということが私たちの根本ですから、そういうアプローチもあるだろうと思います」
渡辺てる子(元派遣労働者・シングルマザー)氏「働くものにとってのシステムということですけど、大きく2つに分かれると思うんですよ。国が決めている関連法令と企業の側のシステムがあると思うんですが。しかしこの仕組みは企業性善説に立っていると思うんですね。だからこそいつも労働者がいつも憂き目にあうということになっていると思うので、企業が悪いことするっていう前提に立った、仕組み・法律を作っていくべきだと私は思います。
今の決め事いうのは労働者抜きで労働者のことが決められているということがあると思うんですよ。それを国政で訴えるということが必要になると思っています。そうしないと企業が変わるのを待っていても、百万年経っても変わらない、そういうふうに思っています」
三井義文(元セブンイレブンオーナー)氏「コンビニに関して言えば、(法的に)全ての者が雇う側と雇われる側という概念しかない、そういう国は日本しかないんですよ。ところがご存知のように、事業者だけど組織に組み込まれなければならない。そういうのはタニタでしたっけ、自分の企業の一部を事業者として契約するという記事が出てましたけど(※)。すでに海外では、現場に合わせた法律ができあがっているのに日本の法律は遅れていますよ。私は、フランチャイズは組織に組み込まれるんだったら『中間経営者』というドイツの概念を提案したい。その上に則って本来あるべき業界法、フランチャイズ法が日本だけないんだから、完全に永田町に操られて行政が動いているから。その上にはコンビニは自分の利益だけ取りたいという形があるんで、仕組み自体が遅れている日本をまともにするだけの話です」
(※)タニタ社長「社員の個人事業主化が本当の働き方改革だ」(日経ビジネス、2019年7月18日)
こうした候補者それぞれの回答に接すれば、これまで深く考えず当然のように思っていた働き方が、それほど当たり前のことではないと気づくことができるように思われる。
また、全都在宅障害者の保障を考える会代表などいくつかの会の代表を務める木村英子候補が当確と発表された際は、次のような質問をした。
「IWJの小野坂です。今後参議院の議事をどう変革していくか、全体の変革につなげていくことは難しいことだと思うんですけど、それにあたって、たとえば、議事に、健康上の理由で欠席してもかまわないという形で対応と称して、意外にも排除の面が出てくる、そうしたことに直面したときにどう対応していくのか、ということをお聞きしたいと思います」
木村氏「排除された場合は、無理やり入っていきます。どういう差別をそこでされるかわかりませんけれども、楽しみなところは、障害者の方と接したことのない方たちは世の中に多いですから、国会の議員さんたちがどんなふうに私と接してもらえるのか、それを楽しみにしています」
木村氏が議員となることで、午前中から次の日の未明にかけて審議を詰め込み、強行採決を繰り返す現在の自公政権のあり方を問い直す、強烈なきっかけになるのではないかと思われる。長時間の議事は、法律の制定をめぐる議論の場としてふさわしいのだろうか。重度障害者の議員に苦痛を与える審議をして、福祉・介護の法律を作るというのは本末転倒なのではないか。こうした様々な問いを生み出す「当事者の議員」の存在の意味や、今後の展開など注視していきたい。
なお、記者との質疑の中で、朝日新聞のある記者の質問をきっかけに、メディアのあり方について、候補者それぞれからお話をうかがう場面もあった。こちらもハイライト動画に収録した。
朝日新聞記者「朝日新聞のフジワラです。山本代表もおっしゃってましたけど、新聞・メディア各社があまり取り上げない現実と、それと打って変わってこれだけ盛り上がったということがありますが、この古い報道のスタイルに関して、改めて代表の見解をお願いします」
山本「本来、政治は人々が動かすものである。でも多くの人々の中でもう政治どころではない、とてもじゃないけど生活が変わるとは思えない、と多くの方々が政治から離れてしまっていますね。離れるばかりでなく、リアルにそれどころではない、時間がない。そんな政治に気にしている暇があったら休みたいという方々が大勢いらっしゃると思います。
その中で政治を取り戻そうじゃないか、コントロール権を取り戻そうじゃないか、というのがれいわ新選組なんです。その中では首が締まっている、苦しんでいる方々の気持ちがわかる当事者が、ちょっと話が長くなりますが、実際にリアルに、自分事として捉えてもらうことができる言葉を、それぞれがアプローチしていったと思うんですよね。ある意味、ここにいらっしゃる方々はスペシャリストだと思っています。選挙期間短い間だけですが、その方々と聞いてくださった方とのコミュニケーションというところでかなり熱が高まっていったと思うんですね。
これは、この1回だけの勝負では決まっていかない。というより、1(議席)が2(議席)になり政党要件を得て、全然負けてないと思っているんですね。これは本当にみなさんの個性豊かなメンバーのお力だとおもうんですけど。私一人でやったら1(議席)しか獲得できないものを、政党要件まで獲得できるようになったのは、これだけ魅力のある方々がそろった結果だと思っています」
朝日新聞フジワラ記者「改めて新聞・メディアに対して見解をお願いします」
山本代表「あのー、もっとガチンコでケンカしてほしいと思いますね。明らかにおかしな報道が続いていると思うんですよ。昨日かな、党首全国を駆けるとかいう内容だったんですけど、言葉を選ばずに言うと、どこまで自民党のお尻なめるんだろうな。本当にひどいんですよ、内容が。争点が全く見えないというか。それだけ見てたら(自民党に)票を入れちゃうわな、というのが夜の9時台に流れるんですね。みなさん、メディアに言いたいこと一人ずつ」
安冨氏「今回の選挙ではインターネットの力が日本でも拡がってきたことの一つの表現だと思います。それがなかったら、れいわが2議席とることは絶対になかった。ということは、メディアのみなさんがまもなく、あなた方の存在基盤が失われつつあるということだと認識してほしい。それはメディアだけではないです。私がいる大学もそうだし、いろんな既存のシステムそのものがですね、それが崩れ始めているということをメディアが認識し、それに対して対応していかないと、この国ごと崩れてしまうと思います」
蓮池透(元東京電力社員。元北朝鮮による拉致被害者家族連絡会事務局長)氏「マスコミのみなさんにお願いします。タブーを捨ててください」
渡辺氏「新聞という紙媒体がなくなる、なくなると媒体の人が言っているですけど、ネットのように芸能ニュースも政治もフラットに流されるのではなくて、紙媒体のように見出しの濃淡、扱いが違う紙媒体って大事だと思うんですよ。だから大事な新聞にがんばってもらいたいんですよ」
大西恒樹(元J.P.モルガン銀行資金部為替ディーラー)氏「ちょっと真面目な話させてもらいますね。今回のれいわ新選組の主要な政策の一つに、消費税廃止というのがありますね。消費税はもちろん争点になっていますね。10%に上げるとか言ってます。マスコミのみなさん、本気で税収で、政府の借金返したらどうなるか知ってます? ありえないってことわかってます? 税金で政府の借金を返すなんてことはありえないんですよ。そのことを理解していないんです。
今回れいわ新選組が、消費税ゼロを掲げたロジックがあるということをつっこんでくれれば、いかに既存の政党が言っていること、政府与党が言っていることが、本当に間違っているかということがわかるはずなんですよ。みなさんの仕事と言うのは、真実をしっかり知って、暴くことなんですよ。そのね、根本的な能力が足らないんですよ。今回議席を取ることができたら最初に何をしようかと思っていたかというと、みなさんに対してレクチャー本気でやろうと思っていました。お金の発行の仕組み、財政の仕組み、ちゃんとまともに説明してあげようと思いました。それを知らない人が多すぎるんですよ。
みなさんはそれを伝える使命があると思っているんですよ。今回の消費税増税、あり得ない話なんですよ。財政金融的にあり得ないんですよ。生活が困るとかもちろんありますよ。あり得ない仕組みなんですよ。何で、アメリカでMMTみたいなものが出てきたのか、みなさんちゃんと理解しています? してないでしょ、それでよく報道批判だって言えますよね。いい加減にしてくれって本当に怒ってますよ。みなさんを敵に回したいんじゃなくて、本当にわかってほしいんですよ。わかった上で報道してほしい。それが世界中の方々のためになるからです。ぜひ取材にきてください」
三井氏「コンビニ問題ですけど、長年マスコミの人とは話しましたけど、現場ではわかったって言いながら、何で本社帰ったらそれが消えるんですか。ようするに上司に言われて、それで負けてんでしょ。みなさんジャーナリストという真実を伝えるこの職業を選んだんじゃないんですか? いつからサラリーマンになっちゃってんの。こっちがガチンコで戦っているところを取材しているんだったら、そっちもガチンコでやってほしいよね。
それともう一つ言いたいけど、コンビニの本部は、マスコミなんていくらでも操作できると思っていますよ。なめられているのはあなたたちだけだから、それをよく理解してほしい。なめられているのは、あなたたち。いざとなったらコンビニで(新聞を)売らないよって言われるだけで、真実を伝えていないという現実。これをみなさんが変えてください。俺たちがこの世界を変えようとしているんだから一緒に変えようじゃないですか」
辻村千尋(自然保護NGO職員)氏「僕がお伝えしたいのは、僕が全国の自然保護の現場を歩いて、いろんな人の声を聴いてきました。その声が中央に届かない。それは何でか。みなさんが報じてくださらないからです。苦しんできた人たちの声、弱者の声を拾うのが、マスコミさんの仕事だと思っています。仕事上、そういうことを書いてくれたこともあります。でもみなさん政治部の方ですよね、圧倒的に環境部は弱すぎるんですよ。だから声にならない。だけど本当にそこで苦しんでいる人の声をとらえるというのがマスコミの仕事だと僕は思うので、ぜひそういう仕事をしていただきたいと思います」
野原善正(沖縄創価学会壮年部)氏「私が要望したいことは、今回の選挙戦で公明党を創価学会の真実を暴露してきましたけど、私が申し上げたことを包み隠さず報道してほしいという、そういう気持ちでいっぱいです。何はともあれ、創価変革の反転攻勢ののろしが上がってきたと思います。この路線でずーっとやっていきたいと思います。包み隠さず報じてください」
山本代表「(朝日新聞記者に対して)社内でもいろいろあったんですか。逆質問してみようか。やめときますか」
この後、会場に駆けつけたれいわ支援者の方より、切実な内容を含むご発言があった。そこではメディアに対して厳しい批判が寄せられた。これについては、メディアに代わって安冨氏が根本的な回答を加えた場面とともに、本記事ハイライト動画「メディア批判」でご視聴いただきたい。
踏みつけられ、隠されてきた当事者の怒りと前向きな意見。
これを受け止めない報道に意味はない。
新聞・テレビの存在基盤が失われつつあるということを認識してほしい! れいわ新選組の候補者それぞれが挑んだ日本のシステムの機能不全!https://iwj.co.jp/wj/open/archives/453828 @iwakamiyasumi
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