2012年12月9日(日)13時から、福島県郡山市のWiZ国際情報工科大学校で、「小出裕章氏講演『福島第一原子力発電所事故と放射能汚染 ~企業家のなすべきこと~』」が行われた。小出氏は、福島の地で働き、復興のために考え、苦闘してきた人たちに向けて、この原発事故によって、福島がどのような事態に陥ってしまったのか、これから何をするべきかを語りかけた。
(IWJテキストスタッフ・富山/奥松)
2012年12月9日(日)13時から、福島県郡山市のWiZ国際情報工科大学校で、「小出裕章氏講演『福島第一原子力発電所事故と放射能汚染 ~企業家のなすべきこと~』」が行われた。小出氏は、福島の地で働き、復興のために考え、苦闘してきた人たちに向けて、この原発事故によって、福島がどのような事態に陥ってしまったのか、これから何をするべきかを語りかけた。
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小出氏は、1999年に、茨城県東海村のJCO臨界事故によって被曝した大内久氏と篠原理人氏を、医学会が総出で治療しようとした時の状況を説明した上で、「放射線は、細胞をも被曝させ、遺伝情報も染色体もバラバラにしてしまう。放射線というのは、生き物から見ると桁違いのエネルギーで、強烈な破壊力を持っている」と述べた。また、被曝のリスクは低線量に至るまで直線的に存在し続け、これ以下なら安全である、という閾値がない点を説明し、「被曝というのは、安全も安心もない。被曝量は、できる限り少なくするべき」と警鐘を鳴らした。
「国は人々を見捨てた」と憤る小出氏は、「皆、仕事があり、人や地域との繋がりがある。逃げたい者は勝手に逃げろと国は言っている。汚染地に留まれば、身体に傷がつき、避難をすれば、心に傷がつく」と、原発事故の重さを改めて語った。
被害の重さをどう見るかについて、小出氏は、まず土地が失われてしまう点を第一に挙げ、「過去の戦争では、日本は負けたが土地は残った。土地があれば生きていくことも可能だが、放射能で汚れた土地は、失われてしまう。皆さんは、なんとか傷を癒して、町を復興させるために仕事をしているが、金銭勘定できない被害が、山ほどある」と語った。また、政治家やマスコミに金をばら撒いて支配してきた東京電力のあり方を批判し、「国は金を渡して、東電をなんとか生き延びさせようとしている。その金は、どん底に突き落とされた福島県民のお金でもある。金銭勘定で解決できる被害は、東電に賠償させるべきである」と主張した。
国が避難区域の基準に定めている積算放射線量が、年間20ミリシーベルトであることに対して、小出氏は「19.9ミリシーベルトだったら、そこに住めということになるが、仮に20ミリシーベルトぎりぎりの値で被曝した場合、赤ん坊の31人に1人は、やがて、がんで死ぬことになる。危険を受け入れることができるかどうかが問われているが、なんとか子供だけは被曝から守っていく方策を取ってほしい」と述べ、子供の避難を呼びかけた。
続けて、『除染』という言葉の用法に誤りがある、と指摘した。「例えば、汚染された土を移動させることはできるが、放射能を消すことは不可能である。私は『移染』という言葉を使っているが、移染をして、子供を被曝から守らなければいけない」と述べた。また、「汚染された土などは、もともと東京電力福島第一原子力発電所の原子炉にあった核分裂生成物であり、東京電力の所有物である。東京電力に持っていくのが良いのではないか」と述べた。
最後に、過疎地に原発が押し付けられてしまう構造について、小出氏は「過疎に苦しみ、財政に困窮していたからこそ、原子力発電所を受け入れざるを得なかった。そして財政が膨らみ、やがて、次の原発を作ってほしいという要求が、住民側から出てきてしまう」と説明した。そして、「言葉は悪いが、これは麻薬だと思う。人の金で立つのではなく、自分の力で立つということ。そういう町づくりをやらなければいけない」と訴えかけた。