崎山比早子氏講演会「真実の〈放射能障害〉とは…」リスクはなぜ過小評価されるのか ー国会事故調査で見えたことー 2012.12.3

記事公開日:2012.12.3取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山/奥松)

 2012年12月3日(月)18時30分より、福島県猪苗代町の猪苗代町体験交流館「学びいな」で、「崎山比早子氏講演会『真実の〈放射能障害〉とは…』リスクはなぜ過小評価されるのか ー国会事故調査で見えたことー」が行われた。崎山氏は、東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)で委員を務めた。被曝量に関して、崎山氏は「低い線量だから安全、ということはない」と話した。

■全編動画 ※講演会途中からの映像となっております。何卒ご了承ください。

  • 講師 崎山比早子氏(高木学校、元国会事故調委員、元放射線医学総合研究所主任研究官、医学博士)
  • 日時 2012年12月3日(月) 18:30〜
  • 場所 猪苗代町体験交流館「学びいな」(福島県猪苗代町)
  • 主催 猪苗代町、猪苗代町保健衛生連絡協議会

 冒頭で崎山氏は、原子力発電の問題として、「核分裂エネルギーを使い、蒸気を発生させタービンを回す仕組みにおいて、核分裂は非常に大きい熱量を持つが、蒸気を作る以外の余分なエネルギーは、排熱として60%以上が海に捨てられている」と話した。さらに、ストロンチウムやセシウムなどの放射性物質を、核分裂生成物として発生させることを説明した。また、核兵器の材料となるプルトニウムも生成されることから、「原子力発電は非常に危険である」と話した。

 続いて、被曝における人体への影響について、「問題になるのはDNAを損傷させることだ」と語った。「DNA自体には、自然に切れるような損傷もあるが、その場合は設計図通りに修復されるので問題ない。しかし、放射線を浴びることで複雑に損傷を受けると、正確に修復できなくなり、それが変異につながる」と説明した。

 そして、「一度にたくさんの放射線を浴びると、修復自体が間に合わなくなって、細胞が死んでしまう。100%の人が亡くなる線量は6000~7000ミリシーベルト、50%の人が亡くなるのは3000~4000ミリシーベルト」と話した。これらは比較的短時間に影響が出るため、急性障害と呼ばれる。急性障害では、放射線を浴びた人すべてに身体的影響がでるという。崎山氏は「100ミリシーベルト以下でも安全ではなく、DNAを損傷させることは間違いない。晩発障害を発生させる可能性がある」と話した。

 さらに、国際放射線防護委員会における被曝線量と発がん者数の考え方を紹介し、「1万人が1ミリシーベルトを浴びると、がんになるのはひとり。10ミリシーベルトだと10人」と話した。「ある線量以下だと発がんリスクがゼロになる、ということはない。一定の線量以下だから安全だ、ということはないのである。国際的にも、被曝量に安全とされる量がないのは定説である」と語った。

 続いて、崎山氏は、福島第一原発の事故調査で明らかになった東電の内部資料を示し、「東電にとってのリスクは、原子炉の長期停止、自然災害発生による規制強化であった。また、原子炉改修工事もリスクであり、これらを阻止するために、原子力安全・保安院やICRPへの働きかけを行ってきたことが明らかになった」と話した。さらに、「非ガン性影響についても、電力会社にとって過度に厳しい放射線防護要求とならないよう研究を進める必要がある、と資料に書いている。低線量被曝のリスクをないものにしたい電力会社や原子力推進派は、放射線専門家に常に圧力をかけていた」と語った。

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