2018年11月に原則40年の運転期限を迎える茨城県の東海第二原発。事業者の日本原電は運転期間を延長して再稼働させたい意向だが、東日本大震災以降、所有するすべての原発が停止して経営的苦境にあり、新規制基準を満たす安全対策費用を調達できない状況だ。
原子力規制委員会は「経理的基礎」の審査において、日本原電に誰が融資保証をするのかを問い、東京電力と東北電力が経済支援を行う意向を表明した。しかし、福島第一原発事故を起こし、国から巨額の公的資金が注入されて破綻をまぬがれている東電が、老朽化した他社の原発の再稼働のために資金援助を行うことを疑問視する声も多い。
2018年5月16日、東京都港区で行われた原子力規制委員会の更田豊志委員長の定例会見では、この東海第二原発の再稼働への資金援助に関する質問が集中した。
テレビ朝日の記者は、「東電によれば、日本原電への経済支援には前提が2つあるという。まず、東海第二原発が再稼働して全電源となりうること。そして今後、十分に安いコストで電力供給が受けられること。ただし東電は、正確には支援する判断をしているわけではなく、取締役会で決定したわけでもないと繰り返し言っている」と述べ、この状況で、規制委員会が求めた経理的基礎が十分に担保されていると考えられるのかと尋ねた。
更田委員長は、審査において確認する経理的基礎は外形的にならざるを得ないとし、「ただ、その前提の置き方について、東電の真意を質したい思いもある。前提があまりに曖昧なものであるなら、常識として(経理的)基礎の要件と呼べるものではない、ということもあるだろう」と答えた。
読売新聞の記者から、「5月30日に規制委と東電の小早川智明社長との会合が予定されている。直接、社長から何を聞きたいか」と訊かれると、更田委員長は、「東電の言う『前提を置いている、取締役会で決定したわけではない』という意味を、経営トップの小早川社長から直接うかがいたい」とした。
NHKの記者は、「東電の日本原電への経済支援を確認することは、東海第二原発の審査の一環なのか」と質問。さらに、小早川社長の意思が明確に確認できなかった時は、どうするのかと問いかけた。
更田委員長は、「許可に至る判断プロセスの一環だ。東海第二原発の最終的な(運転期間)変更許可は委員会が出す。その判断には、小早川社長から聞き取った情報が反映されるだろう」と話し、以下のように続けた。
「東電は国に支えられている組織であり、その判断には政府の関与がある。日本原電の経理的基礎の要素のひとつが、東電からの支援だというなら、その東電は、自分たちだけで判断ができる状態ではないので、その繋がりで資源エネルギー庁の意思を確認しなければいけない」