2012年2月17日(金)、文部科学省にて開催された「第23回原子力損害賠償審査会」では、初期段階(9月~12月)の紛争解決センターの活動状況報告と、賠償指針策定に向けた論点についての議論が行われた。
(IWJ・原佑介)
2012年2月17日(金)、文部科学省にて開催された「第23回原子力損害賠償審査会」では、初期段階(9月~12月)の紛争解決センターの活動状況報告と、賠償指針策定に向けた論点についての議論が行われた。
■イントロ
紛争解決センターの報告によると、12月までの賠償申し立て件数は521件。月が38件、10月が80件、11月143件、12月260件と、申し立てが月を増す毎に増加傾向にある。個人と法人の比率は約8:2であり、弁護士代理による申し立ては全体の約2割となっている。和解成立件数は、2件(2月16日現在では963件、うち、和解成立件数は5件)。申し立てから和解成立までの審理期間を目標3ヶ月としており、目標を達成しているとはとても言いがたい状況にある。同センターは、今月末までの和解案提示見込みを約50件としている。
和解成立遅延の要因は、先んずる和解成立が、今後の賠償の先例ともなるため、心理に新調を要したこと。また、東電による、答弁書における認否留保の多さ、中間指針に明記されていない事項や財物価値の喪失・減少について積極的な心理促進の態度が見られないこと等が挙げられた。遅延解決に向け、「一部和解」、「仮払い」の促進や、同センターのスタッフ増員を課題とした。
その後の賠償指針策定に向けた議論では、避難区域を解除し、住民の帰還後、いつまでを賠償の期限とするかという議論も行われた。避難区域解除後、地域ごとに◯ヶ月後で避難費用や避難の精神的損害の終期の線引きをしたいようだが、家に戻れったとしても、インフラ、仕事、コミュニティ、事故前のような生活基盤が整わない以上、個人差も大きく、地域ごとでも一律で賠償を打ち切るという方針は、現実的であるかの疑問は残る。
また、帰宅困難区域は、これまで月毎に支払われていた慰謝料を、避難先での速やかな生活再建を考慮し、「一括支払い方式」を導入することとなった。自主避難者への賠償範囲や、汚染度、除染度も今後焦点となり、具体策の決定までは、まだ時間がかかる。議論の進捗は著しいとは言えず、今後、不本意でも「多数決」という手法で指針が決定される可能性があることも示唆した。