安保法は「違憲」か「合憲」か!? 初めて司法で争えるチャンス!国が避けてきた議論を司法の場に引きずり出した東京高裁!~現役自衛官の訴えを門前払いした一審判決を取り消し 2018.2.9

記事公開日:2018.2.10 テキスト
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(文・IWJ編集部)

 「国は安保法制をめぐる憲法議論を避けてきた。これは、国民に説明すると言ってきた国の対応と矛盾する。正々堂々と議論し、それにもとづいて司法が判断を下すことが望ましい。そうでなければ、既成事実だけがどんどん進んでしまう」――。

 現職の自衛官が、安保法制にもとづく防衛出動命令は憲法9条に反するとして、国を相手に、命令に従う義務がないことの確認を求めた裁判で、東京高裁の杉原則彦裁判長は2018年1月31日、東京地裁に審理を差し戻した。これをうけて、「安保法制違憲訴訟の会」の共同代表である福田護弁護士はIWJの取材に、国が避けてきた憲法議論が司法の場で正々堂々と議論されることを望むと期待を寄せた。

 「安保法は違憲か合憲か」、国会では決着のつかなかったこの国民的問いが、東京高裁の判決によって議論されるチャンスが出てきたのだ。

 東京地裁は2017年3月、「防衛出動命令が発令される具体的・現実的可能性があるということはできない」とし、原告に「訴えの利益」がないとして、裁判での審理をおこなわず、門前払いした。しかし、東京高裁は「出動命令に従わない場合、刑事罰や懲戒処分を受ける可能性があり、訴えの利益はある」として、この判断を取り消している。

 「安保法制違憲訴訟の会」の福田護弁護士は「地裁が門前払いした請求に対して、中身の審理に入るよう判断したこと自体が重要な判決だ」と東京高裁の判断を高く評価。国が避けてきた安保法の憲法議論が、これで実現するかもしれないとポジティブな見込みを話す。

 「安保法制違憲訴訟の会」はこれまで、安保法による自衛隊の出動などに対する「差止訴訟」と、平和的生存権と人格権侵害などに対して「国家賠償請求訴訟」を提起。安保法の違憲性を訴えてきている。全国21地裁に計24件、集団訴訟を起こし、今年1月24日時点で原告の数は7152人に上るという。

 なぜ、東京高裁は今回、一步踏み込んだ判決を下したのだろうか。福田弁護士はその理由を「裁判の利益が典型的にあるのは自衛官本人。原告が自衛官であることが一つの大きな要素ではないか」と指摘。国が上告する可能性に言及しつつも「ここから切り開いてもらえるのは大変ありがたい」と今後の裁判の行方に期待を寄せた。

「存立危機事態が生じることはおよそ想定できない」!? これまで主張してきた安保法の立法事実を裁判で否定した国

 驚くべきことは、国は今回の裁判を通じて、「存立危機事態が生じることや防衛出動命令が発令されることがおよそ想定できない」と主張してきたことだ。これまで、安保法制の立法事実としてきた主張を裁判では簡単にくつがえしたのだ。

 「存立危機事態」が生じないならば、なぜ、解釈改憲を通じて集団的自衛権の行使を決め、「戦争法」とも呼ばれる安保法制を強行採決したのか。

 この点について東京高裁は当然だが、国の主張を正面から却下している。

「存立危機事態が生じることや防衛出動命令が発令されることがおよそ想定できないという被控訴人の主張は、平和安全法制整備法による自衛隊法の改正が平成27年にされていることに照らし、採用することができない」(判決要旨から引用)

 「専守防衛」という憲法9条が許すギリギリの範囲を超えて、防衛大臣が敵基地攻撃論を振りかざし、実際に外国を攻撃可能な長距離射程のミサイルを購入しようとする。すべては「存立危機事態」がありうるという前提で進められてきた話ではなかったか。裁判での国の主張は、安全保障をめぐる政策の数々と全く矛盾している。

 そういう意味でも、今回の東京高裁の判決が確定し、中身の議論へと移れば、国も裁判所も安保法をめぐる憲法議論に正面から向き合う必要が生じる。それは大きな意義を意味する。

 しかし、「統治行為論(※)」を盾に、高度な政治的判断は司法が口を出さないというカードを裁判所が切る可能性もあると指摘する弁護士もいる。福田弁護士は国の上告とあわせて、「統治行為論も一つの可能性として考えておかなければならないだろう」と指摘した。

(※)統治行為論とは、「国家の存立に関わる高度に政治的な問題については、裁判所は違憲審査を回避する」という法理で、日本では、在日米軍基地の違憲性が問われた「砂川裁判」や、衆院解散の行使権の合憲性が問われた「苫米地裁判」で適用されている。

※本稿はIWJ会員に無料で発行している「日刊IWJガイド」2018.2.6日号から転載し、編集・加筆したものです。

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