「総理の発言は、傍観者のように見える」
立憲民主党の逢坂誠二衆議院議員は、2017年11月28日の衆議院予算委員会で、大阪府豊中市の国有地が、安倍総理夫妻と関係の深い学校法人・森友学園に格安で売却された問題について、安倍晋三総理をはじめとする政府関係者に対して質疑を行った。
この件では、国と学園側との会話の録音データも新たに発覚。総理夫人である安倍昭恵氏の関与が強く疑われている。しかし、この日の答弁でも、安倍総理は昭恵氏が「私人」であるという認識を変えなかった。
▲立憲民主党・逢坂誠二議員
これまで政府は、「当該の土地にはごみが埋まっているため、撤去費用分の約8億円を値引きした」と説明していたが、会計検査院は11月22日、「根拠が不十分」「異例の取引」との調査報告書を提出した。この報告への受けとめを尋ねた逢坂議員に対し、安倍総理は、「財務省も国交省も重く受けとめ、今後の対応も含め、内容をさらに検討していくことになるんだろう」と他人事のように応じた。
また、財務省の太田充理財局長は、前任者である佐川宣寿前理財局長の答弁について訊かれると、「その時々の、最善であった」と発言。この問題に対する財務省の姿勢が改めて問われるものとなった。
以下、逢坂議員の質疑応答を文字起こしし、リライトしたうえで掲載する。
「各省で内容をさらに検討することになるんだろう」 ~会計検査院の報告を受けても、傍観者のように答弁する安倍総理
逢坂誠二議員(以下、逢坂議員)「立憲民主党の逢坂誠二でございます。どうぞよろしくお願いいたします。川内(博史)議員の質問を引き継いで、総理に改めて確認をさせていただきます。総理は、今回の森友学園との土地の取引について、適正だと総理御自身の口でこれまで言ったことはないということでよろしいでしょうか
▲安倍晋三総理大臣
安倍晋三総理大臣(以下、安倍総理)「先ほど答弁を紹介させていただいたとおりでございまして、しかし、当然、その中において、独立した会計検査院が調査を行い、そして政府として全面的に協力をさせていただくということを申し上げたとおりでございまして、今回、会計検査院からの調査の結果が出たわけでございますが、それに対しましては真摯に受けとめさせていただくということでございます」
逢坂議員「私は会計検査院の報告後の話を聞いているのではなくて、これまでの答弁の中で、総理自身がこの森友学園との土地の取引について、御自身の考えとして適正だと言ったことはないということでよいかということを確認しているんです」
安倍総理「これは先ほど答弁させていただいたとおりでございますが、先の通常国会においては、国有地売却の問題について、基本的に処分を担当している財務省や国土交通省から適切に処理していたとの答弁があったところであり、私もそのように報告を受けていたところであります。御指摘のあった答弁については、そのような理解の上で申し上げたものでございます」
逢坂議員「すなわち、各省から報告があった、各省からは適切に対応しているんだという報告があった、それを総理は信頼して、先のような答弁をした。御自身の口から、自ら適正だと言ったことはないということでよろしいですか?
安倍総理「2点、私は今まで答弁をしているところがございますが、1点は、先ほど御紹介をさせていただいたとおり、国土交通省そして財務省を信頼しているという趣旨の話をしたわけでございます。
もう1点の答弁は、今回の国有地の売却については、財務省や国土交通省から、法令等に基づき適正に手続が行われ、また価格について適切な算定がなされた旨、すでに説明しているところであります。つまり、財務省と国交省からこういう説明がなされているという紹介をしているところでございます。
そして、同時にそれは、今申し上げましたように、適切に処理をしていたとの答弁があったところであり、私もそのように報告を受けていたところでございまして、その報告を受けていたということも含めて答弁を行った、こういうことでございます」
逢坂議員「総理の口、みずからでは適正だということは言っていないということに理解をいたしましたけれども。そこで、総理、今回会計検査院から報告書が出ました。この報告書を受けて、その前に総理、この会計検査院の報告書はお読みになられましたか?
安倍総理「詳細に読む時間はございませんから詳細には読んでおりませんが、概要については報告を受けております」
逢坂議員「ぜひ、個別にかかわるところも非常に興味深い内容が書かれておりますので、事務方から十分なレクを受けていただきたいとは思うんですが。概要をお聞きになられたということですので、総理、これは、この概要の報告を受けて、これまでの各省からの報告、これまでは信頼をしていたということでありますけれども、これについては、その信頼、適切さについてはどのように判断なされるでしょうか?
安倍総理「それぞれ、本日すでに財務大臣あるいは国交大臣から答弁があったとおりでございまして、それぞれ、財務省もそして国交省も重く受けとめ、今後の対応も含め内容をさらに検討していくことになるんだろう、このように思います」
逢坂議員「傍観者のように見えるんですがね。総理自身が、このことについて、『各省から適切に対応していますと報告を受けていた、それを信頼している、そして国民に対しては、各省はこういう説明をしていますので』ということも総理としては認識をしているということを、これまでも答弁をしている。
そして、その中で、今度は会計検査院から『適切ではないんだ』という報告が出た。適切ではないということは2つの意味があって、法に違反している可能性があるということと、不当だということ、このことを先ほど説明がありましたけれども、そういう報告を受けた段階で、総理としては、これまで各省から適切だと報告を受けていたことについてどのような御見解をお持ちになられますか?
安倍総理「この報告が出たわけでございますが、当然、先ほど、これは昨日(11月27日)も答弁をさせていただいたところでございますが、今回の事案について、検査院の御指摘を受けた上において、当然、各省においてそれを精査し、そして分析し、また、今回の事案についてどこが問題であったかということをそれぞれの省において的確に把握し、そして同時に、また今後こうしたことが起こらないような対応をとっていくということが求められているんだろう、このように思います。
それは、会計検査院は、この事案だけではなくて、多くの事案についてさまざまな指摘がなされるわけでございます。そうしたときにもそういう対応をとっていくことになるわけでございます」
行政は私物化され、不透明な意思決定の後、文書は破棄される ~森友・加計問題を通して浮き彫りになる問題の根幹とは?
逢坂議員「総理、この森友学園の問題と加計学園の問題、この2つの問題というのは、なぜこれほどまでに国会で議論されなければならないのか、この点についてはどうお考えですか」
安倍総理「この問題については、森友学園につきましては、私の妻が名誉校長を務めていたということ、そして加計学園については、理事長が私の友人だったということについて議論が行われてきたということでございます。
ただ、森友学園につきましては、妻も私も、今回の価格交渉の値引きには一切かかわってはいないということは申し上げてきたところでございまして、かかわっていたという事実は全く出てきてはいないということも申し添えておきたい、こう思う次第でございます。
また、加計学園の問題につきましても、私からの指示等を受けた者は、文部大臣も、あるいは前川(喜平・前文科事務)次官も、1人もいないということはすでに委員会の審議で明らかになっていると思うわけでございまして、本来であればそれが問題の核心であろう、このように考えております」
逢坂議員「私は、この森友学園、加計学園、両方に共通することがあると思っているんです。1つは、今総理がお話しになられた、総理の奥様がかかわっていたのではないか、総理の非常に親しい友人が理事長を務めているから、そこが何か不都合なことがあるのではないかということで、いわゆる『行政の私物化』というふうに言ってよいかもしれませんが、その問題がある。それについては、総理は今、全くそれは問題がないんだという答弁をされましたけれども、私は、それは全く証明されていないというふうに1つ思っておりますが、1つは行政の私物化という問題があると思っています。
もう1つは、意思決定の過程の不透明さ、これが非常に大きい。私は、どちらかといえば、こちらの意思決定過程の不透明さ、ここにこの問題の根深さを感ずるわけでありますけれども、これが2つ目の課題だと思います。
さらに、3つ目は何か。その意思決定の過程におけるプロセスを後づけできるような情報がほとんど出されないということ。文書が廃棄されたとか、あるいは記録があるとかないとか、あるいはわかっている方がいるのにそのことを言わないとかですね。私はこの3つの問題があると思っているんですが、総理、いかがですか」