【第261-265号】岩上安身のIWJ特報!「ナチスの手口」を阻止せよ! 参院選最大の争点・緊急事態条項がなぜ危険なのか~升永英俊弁護士インタビュー 2016.7.4

記事公開日:2016.7.4 テキスト独自
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(岩上安身)

◆ヤバすぎる緊急事態条項特集はこちら!
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 このメールマガジン「岩上安身のIWJ特報!」を編集・執筆しているのは、6月30日。天下分け目の戦いである参議院議員選挙の投開票日まで、残り10日を切った。

 安倍総理は、今回の参院選の争点を「アベノミクスの是非」であるとしているが、これは目くらましである。今回の参院選の最大の争点は、改憲、とりわけ自民党改憲草案第98・99条において新設が明記されている「緊急事態条項」の創設である。

 最大野党である民進党は、今回の選挙での「改憲勢力による3分の2議席阻止」を掲げている。しかし、民進党の岡田克也代表の問題意識は、依然として「憲法9条改正が本丸」という認識にとらわれており、「緊急事態条項」が最重要で最も危険である、という認識には至っていない。

 しかし、「緊急事態宣言」が一度発令されてしまうと、行政府である内閣の権限が極端に肥大化し、総理大臣が予算措置まで行えるようになる。あらゆる権限が公権力に従属する状態におかれ、基本的人権は事実上停止される。

 私が「緊急事態条項」の危険性について繰り返し警鐘を発するのは、過去に、この「緊急事態条項」を悪用して独裁体制を確立した事例が存在するからである。言うまでもなく、ヒトラーが率いるナチス・ドイツだ。

 ナチスは、1933年2月27日に起きた「国会議事堂放火事件」に際して、「緊急事態宣言」を発令。首都ベルリンが位置するプロイセン州だけで、共産党員など、「反ナチス」勢力を5000人も逮捕した。このことにより、ドイツにおける「反ナチス」の動きは決定的にくじかれ、3月5日の選挙ではナチスが勝利。3月23日の「全権委任法」成立へとつながった。つまり、「緊急事態宣言」が発令された時点で、独裁への道は、もうストップをかけることができない状態となったのである。

 安倍政権で副総理兼財務大臣を務める麻生太郎氏は、2013年7月、「ナチスの手口に学んだらどうか」と発言した。この「ナチスの手口」こそ、上述した、「緊急事態条項」を用いた独裁体制の確立に他ならない。

 このことにいち早く気づき、新聞の意見広告やFacebookなどで警鐘を鳴らしてきたのが、升永英俊弁護士である。私は、2016年1月11日と5月30日の2度にわたり、升永氏に単独インタビューを行い、「緊急事態条項」の危険性について、じっくりと話を聞いた。

 今月の「IWJ特報!」では、2回にわたるインタビューのフルテキストを、1本にまとめて刊行する。参院選の投票を行う前に、ぜひ、全文をお読みいただきたい。

記事目次

ナチスは緊急事態条項によって独裁政権をつくった~条文を読んだだけでは分からない自民党改憲案の怖さ

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▲升永英俊弁護士

岩上安身「みなさんこんにちは。ジャーナリストの岩上安身です。緊急事態条項(※1)こそ、参院選の最大のテーマであると、昨年末から私どもは、このことを幾度も幾度も幾度も幾度も言い続けてまいりました(※2)。毎日発行している日刊ガイドでも、必ず書くようにしております。それほどこの問題は重要な問題です。

 耳にタコができるという方もいらっしゃるかと思いますが、ぜひこの問題についてお調べになってください。または、本日これからお話をうかがう先生のインタビューを、ぜひ多くの方と共にご覧になっていただければと思います。

 自民党はこの参院選で3分の2議席を取って、憲法を改正すると言っているのですが、『本丸は9条だ』、『9条の前にお試し改憲だ』と、攻めこむ側守る側もそんな意識でいます。

 しかし、これは大間違いです。9条は本丸ではありません。緊急事態条項こそ万能カード。これを手に入れられたら、あとは9条改正の必要もまったくありません。たった一発で、ジ・エンドになります。このことを分かっていない方が、護憲派の方でも多すぎるのではないでしょうか。今日は、この問題についていち早く警鐘を鳴らしてきた、升永英俊弁護士にお話をうかがいます。升永先生、よろしくお願いします」

升永英俊弁護士(以下、敬称略)「よろしくお願いいたします。

 緊急事態条項というのはどういうものかということが新聞などで報道されていますが、現在国内における議論ではこういうことになっています。

 緊急事態条項というのは、まず東北大震災がありました、あるいは原発が津波で破壊されましたが、ああいう緊急事態になったときに、政府が緊急に事態を処理するような権限を臨時的に短期間持っておかなきゃいかんだろうと。それは国民の財産や生命を守るのに必要なんです、という説明をされていて、私自身も実はそう考えていました。それはそうだよねと。

 短期間でやるんだから、その緊急事態が終われば、正常に戻って議会が法律を作り、行政が正常に行われるとなるんだから、例えば一ヵ月とか二ヵ月の間、国民の身体、財産が害されるような事故が起きた、あるいは例えば津波が来た、あるいは原発が破壊された、あるいはテロが起きたというようなときにやるのは、やむを得ないんじゃないか。そう私も考えていました。

 しかし、全然私の考えていたことと違うと気がついたのは、恥ずかしいんですが、三ヵ月前なんです。三ヵ月前は、緊急事態条項というのは、僕は反対なんだけれども、それはそれでそういうものがあったほうがいいという議論もありうるなと。

 その程度のことだったんですが、三ヵ月前に気が付いたのは、民主国家、近代国家であるドイツで、当時のナチスが独裁政権を、たった数日間で作ってしまったのは、緊急事態条項によってだった(※3)のだと初めて気が付いたんです。

 それまでナチスの独裁というのも、議会で多数決で国民がナチ党を選び、多数決で議会に全権委任法を通して、一応国民の選挙に従った代議士が多数決で全権委任法を通したんだから、それはそれで当時のドイツの特殊事情からしてやったことだと考えていた。日本のそれも目前の危険のような現実味を持っていると、私は考えていなかった」

岩上「自民党憲法草案98条、99条(※4)の緊急事態条項で、新設されるわけですね。これは憲法9条改正とは比べものにならないほど怖い。しかし、民主党(当時、現・民進党)の岡田克也(※5)さんとか、憲法9条改正こそが本丸であると、まだおっしゃっているわけですよ。いまだに、岡田さんは事態が飲み込めていない。

 驚くべきことですが、こういう人たちに、緊急事態条項こそは本当に本丸で、こっちが入ればもうすべて終わってしまうんだということを伝えたい」

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▲民進党・岡田克也代表

升永「私がそれを言いたいのはなぜかといえば、緊急事態条項そのものを見たって誰にも分からないからです。私も分からなかった。だから緊急事態条項を読んでこの怖さを理解しようと思っても不可能です。

 ナチスの場合、1933年の2月28日に緊急事態命令が出て、数日間のうちに5000人が逮捕されています。このことを知らないと、緊急事態条項の自民党案の条文をいくら読んでも、怖さは分からない」

岩上「法律家、あるいは法律に詳しい政治家、官僚、そうした人たちが法文だけを字面で読んで、これまでの常識に当てはめて考えている限りであれば、怖さは伝わらない」

升永「絶対伝わらない。私が感じなかったもの。怖さは分からなかった」

岩上「歴史という事実があるわけですね」

升永「現実に、ナチス・ヒットラーは数日間で、5000人の人間を緊急事態命令のもとに逮捕し、拘束した。強制収容所に送り込んだ。それで数日間で独裁は完成したんです。単に5000人が逮捕されただけで、それで民主主義国家、6000万人も当時いるドイツ民主主義国家、先進国ですよ、当時。当時は、日本と違って。それはイギリス、フランス、アメリカ、ドイツ、イタリア、こうした国が世界の先進国。

 そのうちのドイツ、しかもワイマール憲法(※6)下の民主主義国家であるドイツが、数日間で、緊急事態命令によって逮捕された。それは5000人、数日間で拘束するわけですから、国会議員も含めていなくなっちゃうわけです。だから、この日本は1億2000万人いますけれども、発信力のある人というのは、僕が思うにおそらく日本でも100人ぐらいしかいないんじゃないでしょうか。岩上さんも含めて。私は発信力ないですよ」

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▲全権委任法成立後に演説を行うヒトラー

岩上「いや、そんなことはないですよ」

升永「私に発信力はないです。だけど、そういう発信力のある人100人、多くて1000人。ナチスはそうした人を5000人です。国会議員も含めて。5000人を収容所に入れたら、残っている人が声をあげられるわけがないじゃないですか」

岩上「そうですね」

升永「しかも、緊急事態命令の中に、基本的人権や表現の自由、通信の秘密、出版の自由、集会、これを一切禁止する命令が出ているわけです。緊急事態だからということで。そこでそれに反したら逮捕拘束されるわけでしょ。誰がやりますか?5000人のなかでその勇気ある発信力のある人はいないわけですよ。残った人の中にいますか?いない。だから日本を独裁国家にするのは非常に簡単です。

 5000人、岩上さんも含めて拘束すれば、日本は独裁国家になります。岩上さん以外に、今だってあれこれ発信している人は1000人いないでしょう」

岩上「100人のうちには入らないかもしれませんが、1000人のうちとなってくると、そろそろ入ってくるかなという気がしてきます。ちょっと嫌な感じがしますね。でも升永先生も危ないんじゃないですか」

升永「私も危ないでしょう。5000人の中にはいるかどうか知りませんし、著名じゃないですけれど」

岩上「いやいや、先生は新聞に広告出されていますよね(※7)。その新聞広告をちょっと見せていただけますか?これを新聞にドーンと。ちょっと見せてください。新聞の全国紙にこれをお出しになっているんですよね」

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▲升永英俊氏が新聞各紙に出した意見広告

升永「はい」

岩上「これは大変お金がかかると思うんですが、先生はこれを自費でやられていると。『ナチス憲法、あの手口学んだらどうかね(※8)』と。これは麻生太郎(※9)さんの例の発言なわけですが、そしてそこに言論の自由の否定だとか、緊急事態宣言のことであるとか、そうしたことが書かれている。この意見広告の反響はどうですか」

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▲麻生太郎副総理兼財務相

升永「あると思います。あれだけ書かれたら気が付かないわけがないですよ、と新聞記者の方が言っておられました。あれほどどぎつく書いてあればと」

岩上「この意見広告のデザインやフォントが升永先生のデザインなんですね。こうした問題を啓蒙されているということで、本日はその升永先生にお話をうかがいたいと」

升永「啓蒙じゃないです。啓蒙とか慈善活動とか、そういうレベルじゃない」

岩上「啓蒙じゃない?」

升永「全然啓蒙じゃない」

岩上「そんな生ぬるい話じゃないと?」

升永「啓蒙じゃない。命がけの話じゃないですか」

岩上「もう緊急布告みたいなもんですか」

升永「だってこれは言論の自由を奪われるかどうかの瀬戸際でしょう。啓蒙なんてのんきな。しかもあと6ヵ月しかない」

岩上「そうです。本当に6ヵ月しかない」


(※1)緊急事態条項:いわゆる国家緊急権。国や時代によってその呼称は異なるが、概して戦争や災害など国家の平和と独立を脅かす緊急事態に際して、政府が平常の統治秩序では対応できないと判断した際に、憲法秩序を一時停止し、一部の機関に大幅な権限を与えたり、人権保護規定を停止するなどの非常措置をとることによって秩序の「回復」を図る権限のことを指す(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1NAJRGC)。

(※2)幾度も、言い続けてまいりました:たとえば2015年12月19日、岩上安身は日弁連災害復興支援委員会前委員長の永井幸寿弁護士にインタビューを敢行。永井氏は、災害時には緊急事態条項は必要なく、むしろ国家に権力を集中させるという点で、極めて危険であると指摘している。

 他にもIWJでは、澤藤統一郎弁護士、梓澤和幸弁護士、岩上安身による鼎談を書籍化した『前夜~日本国憲法と自民党改憲案を読み解く』の中から、「第九章 緊急事態」を抜粋し、pdf化して公開している。

・【特別掲載!】基本的人権を停止させ、国民が「公の機関」の指示に従う義務をうたう「緊急事態条項」を警戒せよ!~『前夜・増補改訂版』より抜粋第2弾!「第九章 緊急事態」をアップ!

(※3)ドイツで、当時のナチスが独裁政権を、たった数日間で作ってしまったのは、緊急事態条項によってだった:1933年2月28日、ドイツで「緊急事態宣言」が出ると、わずか数日中に約5000人が司法手続きなしで逮捕・予防禁され、行方不明になった。

 1932年11月6日に行われた選挙では、66.9%の有権者がナチス以外の政党に投票していたにも関わらず、「緊急事態宣言」後の1933年11月12日の総選挙(投票率95%)では、ナチスを支持する票が、全体の92%になっていた。司法手続きなしの、逮捕・予防拘禁・その後の行方不明を知って、恐怖心と無力感と諦観から、ナチスを支持したと考えられる(NETIB-NEWS、2015年11月13日【URL】http://bit.ly/22tVolT)。

(※4)自民党憲法草案98条、99条:98条の1項には以下のようなことが書かれている。

 「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」。

 緊急事態が宣言されるとどうなるかについては、草案の99条に書かれている。「緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない」。

(※5)岡田克也:民進党所属の衆議院議員(9期)、民進党代表(初代)。ジャスコ創業者の岡田卓也は父。イオン取締役兼代表執行役社長の岡田元也は実兄。

 2015年12月25日、岩上安身は、民主党の岡田克也代表に対し、緊急事態条項について直接質問をぶつけた。この時岡田代表は「色々と解釈はある」と、煮え切らない態度を示したが、インタビュー後、岡田代表の発言に変化があらわれ、2016年1月16日にBS朝日で放送された番組内では、緊急事態条項の創設に対し、「法律がなくても首相が政令で国民の権利を制限できる。これは恐ろしい話だ。ナチスが権力を取る過程とはそういうことだ」と述べている。

(※6)ワイマール憲法:ワイマール憲法は、第一次世界大戦敗北を契機として勃発したドイツ革命によって、帝政ドイツが崩壊した後に制定されたドイツ国の共和制憲法である。1919年8月11日制定、8月14日公布・施行。

 ワイマール憲法は、国家主権者を国民とする、財産に制限をつけない20歳以上の男女平等の普通選挙をおこなう、国民の社会権を承認するなど斬新性があったが、同時に有権者の直接選挙で選出されたドイツ国大統領に、憲法停止の非常大権、首相の任免権、国会解散権、国防軍の統帥権など、旧ドイツ皇帝なみの強権が授与されていた。

 ヒトラー内閣成立後間もない2月22日、国会議事堂放火事件が発生。 ヒトラーはヒンデンブルクに迫って民族と国家防衛のための大統領令とドイツ国民への裏切りと反逆的策動に対する大統領令の二つの大統領令(ドイツ国会火災規則)を発出させた。これにより、ワイマール憲法が規定していた基本的人権に関する114、115、117、118、123、124、153の各条が停止。この状況下で制定されたのが『全権委任法』だった。ヒトラーは憲法改正立法である全権委任法の制定理由を「新たな憲法体制」を作るためと説明した(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1DssMuN)。

(※7)先生は新聞に広告出されていますよね:2015年10月、升永氏は新聞各社に麻生太郎氏の「ナチスの手口に学んだらどうか」発言を取り上げ、自民党憲法改正草案の「緊急事態宣言」条項の危険性を訴える意見広告を掲載した。

(※8)ナチスの憲法、あの手口を学んだらどうか:2013年7月29日、国家基本問題研究所が開いた憲法改正についてのセミナーで、麻生太郎氏は改憲積極派に向けて、ナチス政権を引き合いに出し、「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。あの手口を学んだらどうか」と発言。

 この発言について各新聞社が報道し、麻生氏に対する批判が相次いだ。この発言は、海外の一部メディアやユダヤ系人権団体らが一斉に批判。7月30日、ユダヤ系人権団体サイモン・ヴィーゼンタール・センターが『Which ‘Techniques’ of the Nazis Can We ‘Learn From'”?(一体どんな手口をナチスから学べると言うのか)』と題して声明を発表。発言の真意を説明するよう求めた。8月1日、麻生は「誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示として挙げたことは撤回したい」と述べた(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1E9LLeB)。

<ここから特別公開中>

国会議事堂放火事件をきっかけに出された緊急事態宣言を利用し、一挙に独裁体制を確立したヒトラー~プロイセン州だけで約5000人が逮捕・拘禁された

岩上「ナチス・ヒットラーは緊急事態宣言を使って独裁国家を作ったと。今、一部はもうお話になられましたが、これについて順を追ってお話いただけますでしょうか」

升永「はい。私も二ヵ月前まで誤解をしていたんです。先ほど話しかけておりましたが、全権委任法(※10)というのは何か。国会だけじゃなく、行政府の立法権を立法することができるというのが全権委任法なんですね。それができたのは、1933年の3月23日なんですよ。3月23日。この時にナチスは全権委任法のおかげで独裁に成功したと、私もずっとそう思っていたわけです。

 その全権委任法というのは国会で一応正々堂々と多数決で、全権委任法が国会を通ったので、これは民主的手続きで独裁を取ったんだと、私はずっと二ヵ月か三ヵ月前まで思い込んでいた。ところが実はそうじゃない。ナチスは全権委任法によって独裁をしたのではなく、緊急事態命令なんですね。それが、2月28日に出されるわけです」

岩上「前日に、国会議事堂放火事件(※11)という有名な事件が起こっていたと。これが、共産主義者のせいではないかというふうにレッテルを張られて、十分な捜査も、それからきちんとした裁判もないまま、もうすぐにその翌日に、この緊急事態宣言が発令されたわけですね」

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▲炎上するドイツ国会議事堂

升永「そうですね。だから翌日に緊急事態宣言が発令されて、どういう緊急事態宣言かというと、それによって反政府活動を緊急事態、ドイツの公の秩序に反するような行動をした人間を、プロイセン州だけで5000人、逮捕・拘禁したわけです。逮捕というのは今の日本もやっていますが、すべて逮捕状に裁判官の令状がついて初めて逮捕できるところを、司法手続きなしで断行しました」

 一つの州だけで5000人ですから、他の州はどれぐらいなのか、私は情報を持っておりませんけれども、1州だけで5000人、司法手続きなしで予防拘禁されたと。それは、共産主義者が5000人の多くの分は共産党支持者だけでしたが、それだけではもちろんなくて、それ以外のナチス反対派の人も5000人のなかに含まれていたわけです」

岩上「社会民主党(※12)も含まれていましたね」

升永「ところが、予防拘禁だけじゃなくて、言論の自由も同時に禁止されたので、ナチスに反対する情報は国民にはもう届かなくなったわけです。5000人というと、まあ私もその程度かなと、多いなとは思ったけれども、それほど深刻に考えなかった。しかしよくよく考えてみると今の日本で、この緊急事態宣言に反対という声を上げている人が日本に5000人いるのかといえば」

岩上「いませんね。いません。明らかに」

升永「5000人といえば、相当多くの人がやられているということですよ。幅広くやられる。だからそういうふうに言っている人が全部強制収容所に入れられ、逮捕拘禁されて、強制収容所に入れられるということになると、それ以外の人であえて緊急事態宣言に反対という人はいなくなっちゃいます。

 日本は1億2000万人人口がいるから、5000人なんてごく一部でしょうと。他の人がやるんじゃないのというと、そのほかの人たちは情報がない。だって言論や報道、通信、すべて禁止されるわけですから。政府のやっていることを批判する情報が何もない。

 これまでもそういうふうに反対している人は、強制収容所に入れられちゃっているわけだから、もう発信できない。そうすると残った人が発信できるかといえば、いない。誰もとは言わないけど、もういなくなる。

 だから、簡単にこの日本には1億2000万も人がいて、いろんな人がいるから、緊急事態命令が出て5000人が逮捕されても大丈夫だよと一見思うけれど、これは実はその発信力のある国会議員やジャーナリストが5000人、言論人5000人、日本で収容所に入れられたら、これは残っている人でじゃあ発信していくかというと、発信手段も持っていないし。だって発信しちゃいかんとなっている」

岩上「そうですよね。これに逆らってなお、できるかと」

升永「いや手段がないじゃないですか。ラジオは使えないしテレビも使えない」

岩上「ネットはなかったわけですし」

升永「今はネットがあるけど、ネットは禁止されるでしょう。今やれば当然。電話も禁止されるわけです」

岩上「たぶん、海外からやるしかない。海外からの発信でやるしかない。ただそれを受信できるかどうか分からない。ネット規制もかかるでしょうね」

升永「そうなってくると、緊急事態命令でもしナチスばりのことをやったとしても、こんな近代国家である日本だし、人口は1億2000万人もいるし、昔のドイツとは違う、独裁国家なんて起きないよ、という考えは現実的じゃないと僕は思います。

 この日本のような、これだけ言論の自由で国民も民主主義を学んで身についているとはいえ、そんなことを言えば1933年時代のドイツだって、民主主義のワイマール憲法で十何年もやっていたわけですから」

岩上「そうですね」

升永「民主主義のなかで生活していたわけです。それが一気に数日間であのようになってしまった。当時のヒットラーは首相だったわけですが、それ以外にもパウル・フォン・ヒンデンブルク(※13)という大統領がいた。しかしヒットラーはヒンデンブルグを非常にうまく使って、自分が望む緊急事態命令を大統領命令の形で出させたわけです。

 ヒンデンブルグもヒットラーの言う通りにしたということになって、結局ヒットラーが緊急事態命令を出すことによって、数日間でドイツは6000万人の民主主義国家が独裁された。その独裁ぶりがどれだけすごいかというと、これも私は気が付かなかったんだけれども、1932年11月6日に選挙があって、ナチスは33.1%。これは共産党とか社会民主党に比べれば多いんです。社会民主党が20数%、共産党も20%少し割るぐらいだったですかね、他に比べればナチが一番多くて、だけどナチに対する反対が66%です。だから決して過半数じゃないんです、多いとはいえね。

 ところがそれから一年後の選挙です。11月12日といえば、ちょうど1年と6ヵ月でしょう 。1年と6ヵ月でもう一回選挙やって、ナチスが92%得票した。ということは66%の反対の人が、あとは無効票ですから、ナチ反対だったほとんどの人がナチ賛成に変わっているわけです。これはたとえば日本で自民党支持者が1年の間に共産党支持者に変わるということは、普通ないんじゃないですか」

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▲ヒンデンブルク大統領と握手するヒトラー(1933年3月)

岩上「ないですね。あり得ない」

升永「これがなぜ起きたか。これは殺されるという恐怖です」

岩上「そうですよね」

升永「それ以外ない。これが緊急事態命令で5000人逮捕された。そのあと7月にナチ以外の政党は全部存続することを許さんと命令が出るわけですから、全部解党になる」

岩上「一党独裁ですよね」

升永「一党独裁になっちゃう。もう完全になっているんです。これで」

岩上「すさまじい勢いですよ、これ。この一年。1932年の8ヵ月間のあいだ」

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▲「緊急事態宣言」の発令から全権委任法成立に至るスケジュール

升永「7月にはナチ以外の政党がいなくなるわけですから、たとえば日本であれば自民党以外なくなる、あるいは民主党以外なくなるという。民主党が政権をとれば、民主党以外は全部なくなる」

岩上「民主党は解党しちゃうんじゃないかなと思うんです(※14)。日本では」

升永「いや、民主党が政権を取れば、民主党以外の政党は自民党も全部解党させられるわけです。ナチスはそういうことをやったわけです。自分のところ、政権を取ったところ以外は全部解党させる命令を出して一気にそうなる、実際になったわけです」

岩上「4月、プロイセン州にナチスは秘密警察、ゲシュタポ(※15)を設けました。国民の一部は秘密警察に密告をした。自分が助かるために回りの人間の密告もした。そういうことで国民の多くは密告を恐れた。どんどんお互いが疑心暗鬼に駆られて、密告しなければ密告される。そういう状態のなか、ナチへの忠誠をどんどん誓い合う競争になっていって、あげくはこんな数字になった。

 1932年の11月6日の総選挙の時点でナチが3割。それが国会放火事件があって、たくさんの反対派を逮捕して、総選挙開いたら43%になっている。そこで全権委任法をやって、大変な力を得て、そしてもう一度選挙をやったら92%になっていた。その前はもちろんナチス以外の政党は存続・新設禁止。8ヵ月、すごいですね。緊急事態宣言を許したら、ここまでいっちゃう」

升永「そういうことですね。今の日本の政治家がヒットラーと同じことをやらないという可能性はというと、やらないという保証はありませんが、やるという保証もない。それはどうか分かりません。だけど歴史的に見れば、緊急事態宣言を使って、一気に数日間で独裁体制を作る。もうこの時点で、勝負は決まっている」

岩上「そこで勝負は決まっていた」

升永「あとはもう付け足しでお化粧ですよ、これは」

岩上「とどめを刺しただけと」


(※10)全権委任法:全権委任法は、ドイツ国において1933年3月23日に制定された法律で、アドルフ・ヒトラー首相が率いる政府に、ヴァイマル憲法に拘束されない無制限の立法権を授権した。この法律によって、ナチス・ドイツがすでに手中にしていた権力に一応の合法性が与えられることとなった。法律の正式名称は「民族および国家の危難を除去するための法律」。

 この法律は授権法と呼ばれる、立法府が行政府に立法権を含む一定の権利を認める法律の一種で、ドイツ語および英語では、他の授権法と用語上の区別がなされていない。このため日本語においても単に「授権法」と呼ばれることがある(Wikipedia、2015年11月13日【URL】http://bit.ly/22tVolT)。

(※11)国会議事堂放火事件:1933年2月27日の夜にドイツの国会議事堂が炎上した。2月27日の午後9時30分頃、議事堂のそばをとおりがかった帰宅途中の神学生が、火のついたものを持った人影を見て、警官に通報。現場には国会議長兼プロイセン州内相ヘルマン・ゲーリングが向かい、議事堂財産の避難と捜査に当たった。あたりを捜索したところ、焼け残った建物の陰に半裸でいたオランダ人でオランダ共産党員のマリヌス・ファン・デア・ルッベが発見された。ルッベは放火の動機を「資本主義に対する抗議」と主張。しかしヒトラーはこの事件を「共産主義者による反乱計画の一端」と見なし、単独犯行であるとする意見を退けた(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1We8Mb3)。

(※12)社会民主党:ドイツの中道左派・社会民主主義政党で、ドイツ最古の政党。イギリス労働党、フランス社会党などと共に欧州の社会民主主義政党の中核的存在であり、中道右派のキリスト教民主同盟 (CDU) と並ぶ二大政党の一つ。ドイツ社会主義労働者党を前身とする。

 度々政権を担当しており、ドイツ再統一後では1998年から2005年11月までは同盟90/緑の党と連立を組んで政権を担当。2005年から2009年までと2013年以降にCDU/CSUと大連立を組んで連立与党となっている(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1We8Mb3)。

(※13)パウル・フォン・ヒンデンブルク:ドイツ国(ヴァイマル共和政)第2代大統領。第一次世界大戦のタンネンベルクの戦いにおいてドイツ軍を指揮してロシア軍に大勝利を収め、ドイツの国民的英雄となった。第一次大戦後は共和制となったドイツにおいて大統領に当選。アドルフ・ヒトラーを首相に任命し、国家社会主義ドイツ労働者党(ナチ党)政権樹立への道を開いた(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1fzn7h9)。

(※14)民主党は解党しちゃうんじゃないかなと思うんです:本インタビューが収録された二か月半後の2016年3月27日、民主党・維新の党、両党が合併して『民進党』結党大会が開催され、「民主党」の党名は消滅した(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1VUcszB)。

(※15)ゲシュタポ:ナチス・ドイツ期のプロイセン州警察、ドイツ警察の中の秘密警察部門。1939年9月以降は親衛隊の一組織で警察機構を司る国家保安本部に組み込まれた。第二次世界大戦中にはドイツ国防軍が占領したヨーロッパの広範な地域に活動範囲を広げ、ヨーロッパ中の人々から畏怖された。その任務はドイツおよびドイツが併合・占領したヨーロッパ諸国における反ナチ派やレジスタンス、スパイなどの摘発、ユダヤ人狩りおよび移送などである(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1VUcszB)。

災害発生時に対処できる法律がある日本に緊急事態条項は必要ない~自民党の真の狙いは9条でなく緊急事態条項の創設

岩上「私はこの緊急事態宣言を考えるときに日本の、自民党の緊急事態宣言、このドイツの全権委任法の内容で立法府の権限を兼ねるという内容が入ってくるわけですけれど。今日本で自民党がやろうとしていることの緊急事態宣言には、それが入っていますよね」

升永「入っていますね。全権委任法は、行政権が、政府が立法できるというのは自民党の改憲草案(※16)の98条、99条に入っていますから、そういう意味じゃ全権委任法と同じ効果が入っちゃっている。しかも憲法のなかで。全権委任法は憲法じゃない」

岩上「法律ですよね」

升永「単なる法律なんですが、自民党改憲草案では全権委任法が憲法のレベルまで格上げされて、全権委任法と同じ、政府が立法できる権限を憲法のなかに入れられちゃう。だけどそういう議論をして、だから自民党案が悪いのだと言う必要はないと僕は思う」

岩上「そうですか!? 僕は悪いと思います。とんでもない悪だと思います」

升永「いやいや、そこが悪いんじゃないんだよ。緊急事態が悪いだけで」

岩上「とんでもない悪だと思いますが」

升永「いやいや。憲法にするから悪いとか、全権委任法と同じ内容を憲法に乗っけるのが悪いとか、だからけしからん、だから反対だというその論理の組み立てがですね。

 一番の問題は緊急事態命令が出せるということです。出したら終わりなんだから。僕は緊急事態命令っていうのが、ナチスは少なくとも独裁に使ったんだから、これを入れてはいかんということに論点を絞るべきだと思うんです」

岩上「緊急事態命令ということになりますと、例えばパリ同時多発テロ(※17)で、フランスは非常事態宣言(※18)というのを行ったのですが、実際、何が起こっているかということについての報道はきわめて少ない。報道の管制が敷かれていますから。

 フランス在住の人たちが我々の特派員をやってくれているので、IWJには報じられていないことに関しても情報が入ってくるんですけれど、かなりの数の人々が令状なき捜索をやられている。かなり強引なことがやられている。ところがこれが大きく報じられていない。これが大問題だということが国際世論でもあまり言われていない。

 実は昨日のことなのですが、今回升永先生をお呼びしてこの問題を討議しますと言ったところ、ツイッターの用語で『メンション』と言うのですが、私に宛ててツイッターを介してメッセージを打ってくる人がいました。

 なんと言ってきたかというと、フランスだってアメリカだってどこの国だって、国家緊急権を持っているじゃないか、非常事態宣言を出せるようになっているじゃないか、緊急事態宣言を出せるようになっているじゃないか、それを日本が持って何が悪いんだ、という言い方です。

 けれども、日本の緊急事態宣言というのは、これは先にも触れましたが、とてつもない権限を、立法府も兼ねてしまう。それからなによりも解除時期の問題ですね、ある一週間なら一週間だけそういう緊急事態に置くけれども、必ず解除するとか、あるいはそこでやったことは事後に国会で審議して承認するだとか、政令を出していても、国会承認がなかったらそれを取り消されるだとかといったことが何にも入っていない。

 つまり、大日本帝国下の非常事態宣言(※19)よりも強烈で、独裁性の非常に強いものではないかということです。だから、これをやられたらもうおしまいだというのはもちろん、かつ一発目からこの内容が入っているという、かつてないようなとんでもない代物ではないかと。私はすごくびっくりしているんですけど」

升永「だけど、緊急事態といっても、いい緊急事態命令と悪い緊急事態命令とがあって、日本は最悪だから反対だと。ということであれば、いい緊急事態命令ならいいんだ、というふうに私には聞こえる。では期限を付ければいいのだろうかと。でもナチスのものでも、『暫定的』という条項は入っていた」

岩上「入っていましたね」

升永「それでも実際に1933年の2月28日の緊急事態命令が45年まで、つまりドイツが敗戦するまで続いた。だから、期限などいくら入っていたとしても独裁国家だから関係ないわけです」

岩上「なるほど、なるほど」

升永「だから、じゃあ日本でも緊急事態命令に期限を付ければそれでいいんですか、と。こういう議論になるでしょう」

岩上「なるほど」

升永「それでは困るわけです」

岩上「甘い。岩上安身は甘いと」

升永「全然甘いですよ。フランスのようなやり方だったらいいんだと。フランスが持っているから日本もと。日本の現状の案はフランスよりひどいからいかんのだと。それじゃあフランスのようなやり方で緊急事態命令を、日本でも同じものを作りましょうと言ったら、その時反対できなくなっちゃうじゃないですか」

岩上「なるほど」

升永「確かに、フランス法というのは緊急事態宣言を持っています。歴史的に持っている。ところがアメリカはどうかといえば、アメリカにはない。アメリカだって民主主義国家で近代国家だし、世界最強の国家ですよ。アメリカと比べればフランスなんて吹けば飛ぶような国です。現代で最強の国が緊急事態命令がなくたって、アメリカは堂々と民主主義国として覇権をとっているじゃないですか。

 だから、緊急事態命令がなければ国家というものが成り立たないなんてことはあり得ない。だからフランスは持っている。それはわかった。じゃあアメリカはどうか、アメリカは持っていないじゃないか。それを知らない人が言っている」

岩上「アメリカには戒厳令(※20)はないんですか?」

升永「戒厳令はあります。憲法にはないんです。憲法にない」

岩上「ああ、なるほど」

升永「戒厳令は憲法にはない。憲法なくして作ればいいんですよ、そんなもの、戦争になったら。憲法で作ることはないんです」

岩上「憲法に入れるか入れないかで大きな違いがある?」

升永「大きな違いです。イギリスにもない。憲法のなかに緊急事態宣言がなければ、近代国家として成り立たないなんて大嘘です。そういうことを知らないで色々議論しているからおかしなことになるわけです」

岩上「なるほど。先生、基礎的な質問で申し訳ないんですれけども、これを憲法に入れると入れないとではどのぐらいの違いがあるのでしょう」

升永「それは、基本的人権を侵害しても最高裁が違憲無効と言えなくなるんです」

岩上「なるほど。これが」

升永「アメリカは法の支配があるから、基本的人権を制限するにも限度があって、最高裁は違憲無効と言う可能性があるんです。権限が残っているわけです」

岩上「ありますよね」

升永「だからいくら戦争になってもやりたい放題にはできない」

岩上「例えば戒厳令、マーシャルローを敷いても、それが違憲であった場合には、違憲無効というのが出せますか?」

升永「出せます。人権を侵害すればね」

岩上「それが憲法の中に書き込まれてしまったら出せなくなる?」

升永「出せない」

岩上「緊急令、アメリカ大統領令(※21)というのは出していますよね。アメリカは」

升永「いや、僕は大統領が今までどういうことをやったかというと。テロの事件のときには出しましたよね」

岩上「愛国者法(※22)というんでしょうか」

升永「そういうことでは出せるんです。だけどそれも限度がありますよね。憲法に基づいてやっているわけじゃないんですよ」

岩上「立憲主義的な復元力があると」

升永「あるんです」

岩上「ここは大きな違いですね」

升永「それは大きな違いですよ。裁判で争う余地があるわけですから。だから必要を超えて人権を侵害することについて、裁判で争えるわけです」

岩上「なるほど。とにかく緊急事態宣言を憲法の中に書き込むことがとんでもないというお話ですね。ドイツの場合、ワイマール憲法の中に入ってしまっているんですね」

升永「入っていたんです。もう、決定的な欠陥なんですよ。民主主義と言いながら、私に言わせれば欠陥なんです。そういう意味ではフランスもそうなんですよ」

岩上「なるほど」

升永「だから、英米法とフランスやドイツの大陸法が違う(※23)というのはご存知でしょう。その中の一つです。非常に大きな差ですね」

岩上「これは英米法のほうが優れている?」

升永「人権を保護することについては、英米法が優れていますね。人権を守るという点では」

岩上「なるほど」

升永「だから、アメリカではもう建国以来、230年ぐらい経っているんですかね。でもアメリカではドイツのような独裁国家はできていないでしょ。やっぱり法の支配、裁判所がしっかりしている。憲法にしたがって、人権を侵害するような法律を無効にしますから」

岩上「なるほど。この緊急事態宣言、言葉面は似ているけれども、これを例えば、憲法に基づいてではなく出しているとしたら、それはその効力というものは別の形でひっくり返すことができる」

升永「今だってそういう意味じゃ、緊急事態宣言と名前はついてない、緊急事態にあれこれできることはいっぱい、日本の法律であるじゃないですか。永井幸寿先生が議論されていた(※24)でしょ。災害緊急事態特別法っていうのは、日本にもあるわけですよ」

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▲永井幸寿弁護士

岩上「災害時に実際に何をするかという」

升永「それはやんなきゃいけないですし、それはやっているわけです。日本にだってある。緊急事態に対処する法律は。それに加えてやる必要、憲法に入れる必要はないでしょうと」

岩上「独仏を真似るなということですね」

升永「そういうことです」

岩上「重要な指摘ですね」

升永「独仏がアメリカ以上の成功をした国であれば、それは考えようがある。だけどどう考えても、フェアに考えると、アメリカが嫌いな人は日本にたくさんいらっしゃると思いますけど、世界全体、地球上を見渡しても、やはりアメリカが一番強国であることは否定できない。

 そんな欠陥の法体系を持っている国が、世界でもっとも富を集めた国を作れるわけがないじゃないですか。だから、緊急事態命令がなくたって、国が成り立つんですよ」

岩上「なるほど。これは本当に大事なご指摘でした。憲法に書き込むことで、もうすべて人権でもなんでも停止させることができる。うっすらとしたものであってもやってはならないと」

升永「しかも、憲法というのは変えられますからね。独裁者になれば選挙をやって改憲できるじゃないですか。短期だというけど、いくら憲法に付けたところで。フランスみたいに、短期で一ヵ月だとかなんとか憲法の中にちゃんと書き込めばなんとかなるんじゃないの、という発想がみなどこかにこびりついているんだと思うんです。

 だけど、そんなものは独裁者になってしまえば、選挙をやったとしても92%、みんなが賛成とやるわけだから、憲法自体を変えるのは簡単です。そうだとしたら、二ヵ月という期限を取っ払うことも、憲法を変えちゃえばいいんだから、独裁者になったらお茶の子さいさいですよ」

岩上「9条を守りさえすれば、緊急事態条項を認めてもいいじゃないかと考えている人はたくさんいると思います。そういうふうに書いているメディアもたくさんあります。つまり緊急事態条項をいいとは言わないけれども、本丸は9条でしょうと。だからこの緊急事態から入っていって、9条に向かっていくんじゃないか、その時になったら初めて戦おうみたいなことを言っている人が多いんですけれども、これを認めちゃったらアウトということですよね」

升永「アウトです」

岩上「なるほど。みなさん本当にここ、心して聞いていただきたいと思います」


(※16)自民党の改憲草案:現在自民党のホームページには改憲草案として、平成二十四年四月二十七日に決定されたものがPDFでアップされている。詳しくはリンク先のPDFを参照(参考:自民党公式サイト【URL】http://bit.ly/1cfeboK)。

(※17)パリ同時多発テロ:2015年11月13日、フランスのパリ市街と郊外のサン=ドニ地区の商業施設において、イスラム国(別称ISIL、IS)の戦闘員と見られる複数のジハーディストのグループによる銃撃および爆発が同時多発的に発生した。

 事件発生時、サン=ドニにあるスタジアムスタッド・ド・フランスでは、男子サッカーのフランス対ドイツ戦が行われており、オランド大統領とドイツのシュタインマイアー外務大臣が観戦していたが、現地時間午後9時ごろ、同スタジアムの入り口付近や近隣のファストフード店で爆弾とみられる爆発音が3回鳴り、実行犯とみられる人物が自爆テロにより4人死亡したほか、1人が巻き込まれて死亡した。

 その後、午後9時30分ごろより、パリ10区と11区の料理店やバーなど4か所の飲食店で発砲事件が発生。犯人らはイーグルス・オブ・デス・メタルのコンサートが行われていたバタクラン劇場で観客に向けて銃を乱射した後、観客を人質として立てこもった。14日未明、フランス国家警察の特殊部隊が突入し、犯行グループ3人のうち1人を射殺。犯人グループのうち2人は自爆により死亡し、観客89人が死亡したほか、多数の負傷者が出た。

 発生直後、オランド仏大統領は非常事態を宣言し、この事件ののち、日本にも国家緊急権が必要だという議論が産経新聞などで沸き起こった:パリ同時多発テロを受けて2015年11月19日の産経新聞は、国家緊急権が必要だという論旨の記事を掲載している(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1PQkKV9)(産経ニュース、2015年11月19日【URL】http://bit.ly/240wv16)。

(※18)フランスの非常事態宣言:オランド仏大統領はテロ後に非常事態を宣言。美術館や図書館が閉鎖され、集会やデモの許可が取り消され、住民には不急の外出を控えるように通達された。

 フランス憲法では国家の非常時、大統領に強大な権限が集中する「非常措置権」や、秩序維持の権限が行政から軍隊に移される戒厳状態が認められているが、パリ同時多発テロ後の「非常事態宣言」はこのどちらでもなく、憲法にも明文規定はない。

 この「非常事態宣言」の根拠は1955年に制定された「緊急状態法」という法律で、アルジェリア独立戦争を受けて制定されたものである。大きな特徴は、警察権限の強化で、内務大臣には「公の秩序と安全に対し危険な活動をしている人々」を自宅軟禁することができる権限が与えられたり、政府は裁判所の令状なしに、昼夜問わずに家宅捜索したり、武器を押収したりすることが可能となるほか、公権力の行為を妨害しようとする者に対し、地域の全部または一部の滞在禁止を命じることもできる。2015年11月20日の上院で、バルス首相はこれまでに164人を自宅軟禁状態としたことを明かしている。バルス首相によると、これまで793件の家宅捜索がなされ、174件の武器押収があったという(参考:The Page【URL】http://bit.ly/23Pww7R

(※19)大日本帝国下の非常事態宣言:大日本帝国憲法では、天皇が国家緊急権を行使する規定が制定されていた。緊急勅令制定権(8条)、戒厳状態を布告する戒厳大権(14条)、非常大権(31条)、緊急財政措置権(70条)などである。

 なお、非常大権は一度も発動されたことが無く、戒厳大権との区別は不明瞭であるとされている(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1WL7bvc)。

(※20)戒厳令:戒厳とは、戦時において兵力をもって一地域あるいは全国を警備する場合に、国民の権利を保障した法律の一部の効力を停止し、行政権・司法権の一部ないし全部を軍部の権力下に移行することで、本来は極端な治安悪化や暴動を中止させるために行われる。しばしば、非常事態宣言と共に、軍部によるクーデターで活用される。

 フランス革命中の1791年にフランスで施行された「戦場及び防塞の維持区分、防御工事等の警察に関する法律」がもとであるとされている。英語圏ではマーシャルロー(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1NbfRR4)。

(※21)アメリカ大統領令:アメリカ合衆国大統領が行政権を行使することにより発令されるアメリカ合衆国の行政命令。大統領命令、大統領行政命令、執行命令ともいう。君主国や立憲君主国における勅令に相当する。

 アメリカの大統領は、1789年以降、行政官による任務遂行の命令に助言するために大統領令を発してきた。大統領令は連邦議会の制定する法律に従い、その法律による大統領への委任を受けて発することもあり、その場合法的強制力が付与される。1907年から大統領令に番号が振られはじめ、リンカーン大統領が1862年に発令した『奴隷解放令』まで遡って番号を振った。

 大統領令が連邦最高裁判所に違憲とされたのは過去に二度ある(1つはトルーマン大統領が朝鮮戦争時にストライキしていたオハイオ州の製鉄工場を強制接収した大統領令10340号)(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/24Ljw1N)。

(※22)愛国者法:正式名称は『2001年のテロリズムの阻止と回避のために必要な適切な手段を提供することによりアメリカを統合し強化するための法律』(英: Uniting and Strengthening America by Providing Appropriate Tools Required to Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001)。正式名称の頭文字をとってPatriot Actとして知られる。2001年10月26日、ジョージ・W・ブッシュ大統領によって署名され、発効したアメリカ合衆国の議会制定法。

 愛国者法は、テロリストによる2001年9月11日の攻撃に対応するため、特に法執行機関のアメリカ国内における情報の収集に関する規制を緩和し、財務長官が持っている資産の移動、特に外国の個人または存在が関与している場合に対する規制の権限を強化し、当局がテロ行為に関係があると疑われる人物の拘留または移民を国外に追放するための規制を緩和するもの。

 同法施行後、アメリカ政府は国内で交わされる全通信に対して、当局による盗聴を開始。国民の個人情報は一元化され、約5億6千万件のデータ・ベースを50の政府機関が共有した。通信業者や金融機関は顧客情報や通信内容を、図書館や書店は貸し出し記録や顧客の購買歴を、医師達は患者のカルテを、政府の要請で提出することが義務づけられた。

 そのほか、デモ参加者に警察が催涙弾や音響手りゅう弾を使用し、200人を逮捕するなどの事態が起きたが、その逮捕理由は「公共の秩序を乱した罪」だった。また、ACLU(米国自由市民連合)により、警察のテロ容疑者リストには「反増税」「違憲政策反対」運動等に参加する学生たちをはじめ、30以上の市民団体名が載っていたことが暴露された。

 愛国者法通過後、米国内のジャーナリスト逮捕者数は過去最大となり、オバマ政権下では7万以上のブログが政府によって閉鎖されるなど、プライバシーや言論の自由、人権が大きく制限された。

 2013年6月にNSAとそのPRISMプログラムによるアメリカ人の通話記録の収集が明らかになった。米国愛国者法の濫用が疑われ、2001年に愛国者法を議会に提出したウィスコンシン州選出、共和党所属のジム・センセンブレナー下院議員は、国家安全保障局はその限界を超えてしまったと述べている(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1J8IVOo

(※23)英米法とフランスやドイツの大陸法が違う:英米法型マーシャル・ロー(戦時法規)は不文法であり、国民が軍の法規命令や刑罰権に服し、通常の裁判権の排除と法の支配停止に至る。

 フランス、ドイツの大陸法型は国民主権に対抗し、国王の権力を例外的に保留するために生まれた制度で、支配する側から見る構造となっている。ワイマール憲法、大日本帝国憲法、自民党の国家緊急権は、大陸法に当たる。

(※24)永井幸寿先生が議論されていた:冒頭に紹介した2015年12月19日に岩上安身が行った永井幸寿弁護士のインタビューのこと。

 永井弁護士の解説によれば、日本国憲法を作る時には、ナチスの体験もあり、大日本帝国憲法の体験もあったので、そうした経験からあえて国家緊急権の規定は設けず、災害の時のために制度が作られたという。「参議院の緊急集会」や「政令の罰則」などがこれにあたる。

 参議院の緊急集会とは、衆議院が解散されている時に大災害が起きた場合、衆議院議員の総選挙ができなくなるが、そうした国会が動かない場合に、参議院に一時的に国会の代わりをさせる制度。

 「政令の罰則」とは、議院の緊急集会も請求できない時に、内閣が政令を定めて対処するための制度。この場合罰則を設けられないと事実上の効力が発揮できないが、それには濫用の危険性がある。このため、法律の委任がある時にはじめて内閣が罰則付きの政令でできるという制度が作られた。

5000人を逮捕・拘禁して恐怖政治を実現したナチス~ナチスの独裁体制実現は政策を成功させたためでも、国民の支持を得たためでもない

岩上「1932年11月6日の総選挙の時には全投票人の33.1%がナチスに、66.9%がナチス以外に投票しました。この66.9%の人々のうち、ほぼ全員が一年後の33年11月12日の選挙で真逆のナチス支持に投票している。

 その理由の一つは緊急事態宣言下での反ナチスに対する大量の逮捕、拘禁、その後の行方不明を知って生まれた恐怖心と無力感と諦観であろうと。やっぱりそういう目に遭ってしまうと、みんなあとが続かない。ずっと抵抗してくれるわけじゃないということですね」

升永「というのはさきほども話に出ましたように、たとえば現在の日本であれば人口は1億2000万人いますよね。そのうちの5000人が強制収容所に行っちゃうとなると、一般の人々は発言できないですよね。

 それまで発言して、政府に反対していた人たち、意見広告を出したり、テレビでなどでの発言力があって、身銭を切ってでもやろうと言う人、そういう人たちが強制収容所に入って、いなくなっちゃうわけでしょ。

 残された人たちには、全然報道されない。政府支持のプロパガンダ報道しかなくなるわけです。テレビを見てもインターネットを見ても。インターネットも反政府に対する言論は統制されるわけですから。反対しようという情報がないんだからしようがないよね。しかも投票する政党がないんだから」

岩上「ないんですよね。ナチス以外の政党は存続禁止、新設禁止(※25)。それでここに一票投じたよと明らかにしなければ、どんな目に遭わされるか分からない。ナチスってずっと反共、反共って掲げておきながら、結局は一党独裁の共産党と同じ状態になっているわけですよね」

升永「共産党以外も全部やられちゃったんだよね。ナチスに協力って、連立を組んだ人たちも解党させられちゃった」

岩上「そうですよね。右派の連立があったんだけど。ナチスっていうのは新興右翼勢力だけど、オールド右翼も全部解体されちゃった」

升永「なくなっちゃった」

岩上「すごいことですよ。本当に。でもこれ、日本でも起きかねないと思わないといけませんね」

升永「100%起きないと保証することはできないですね」

岩上「だって、憲法に書き込んじゃうわけですから。先生は憲法に書き込むことと、ただの法律であることは桁違いに意味が違うことなんだ、とおっしゃっています。法律家にそこまでビシッと言われるまで、そんなに違うのか?と思っていました」

升永「それと緊急事態宣言は日本だけが持っていなくて、他の近代国家は持っているというような言われ方。さきほどおっしゃっていたネットの方もそういう趣旨でしょ?」

岩上「そうですね」

升永「平和ボケしているのは日本だけじゃないかと。強国はみんな緊急事態宣言を持っているじゃないのと。お前ら本当に平和ボケだね、という議論です。あの世界最強のアメリカの憲法に緊急事態宣っていうのはないのだと知らない人が言っているわけですね。そう言われると反論できないから。岩上さんもそうですよね。そういう情報がないから」

岩上「マーシャルローというものは・・・」

升永「違う。マーシャルローは憲法じゃない」

岩上「国家緊急権の一つだと思っていました」

升永「いやいや、そういう意味じゃ日本だってあるじゃないですか。緊急事態の法律が」

岩上「そうですね。災害時の緊急事態の法律がある」

升永「ある」

岩上「いや勉強になりました。升永先生に怒られながら勉強して。でもみなさん、怒られながら勉強していくのも今のうちです。6ヶ月後に怒られたって、もう間に合わないですから。今のうちに怒られながら勉強してください」

升永「いや、僕は全然怒っていませんよ。興奮しているだけの話で。私は興奮症だから」

岩上「でも先生に怒られるというのは迫力があるから、なめたこと言っている人は本当に戦慄したほうがいいですよ。繰り返しになりますが、32年11月6日の選挙で、ナチス以外の政党に投票した全投票人66.9%の人々のうち、ほぼ全員が一年後の33年11月12日の選挙では、真逆に、ナチス支持の投票をした」

升永「そうです」

岩上「すごいですよね。そこでちょっと先生のご著書を紹介させてください。一人一票訴訟(※26)をテーマにした先生のご本『一人一票訴訟上告理由書 憲法を規範と捉えた上での判決を求める(※27)』。これは本当に最高裁に出したものなんでしょ?」

升永「そうです」

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▲升永英俊著『一人一票訴訟上告理由書』

岩上「この本の中に幾つかの言葉が大きく取り上げられています。『最高裁判事』、『裸王様』など。フォントがものすごい。『是正』、『正統性』とかも大きくね。『規範』。国会活動をする『正統性の無い人』。もうすごい。『目から鱗』って。これで出したんですね。この文字の大きさで」

升永「それは二色刷りですけれども、実際には五色ぐらいつけているんじゃないかな」

岩上「多色刷りで?」

升永「うん。ピンクとか赤とか。これは茶色ですけどね」

岩上「このデザインをしたのは先生ということで、驚いちゃうな、本当に。これは誰もやったことがないことで」

升永「僕が15年ぐらい前から始めた」

岩上「これを裁判所に出しても、書式に則ってないとか怒られることはないんですか?」

升永「やろうとする人が、私しかいなかったですから、禁止する人もいなかった」

岩上「でも、この『鱗』とか。先生のセンスがすごいですね。ものすごい迫力がある。こういうフォントの使い方、僕にはすごいインパクトがあって、人に訴えるセンスがあるなと正直思います。

 では戻りますが、『その理由の一つは、緊急事態宣言下でのナチスに反対する人々に対する大量の逮捕・拘禁、その後の行方不明を知って生まれた恐怖心と無力感と諦観』、『恐怖心と無力感と諦観』も文字を大きくしてありますね。これぐらいアピールしないとダメなんだな。人に届かないもんな」

升永「私がここで言いたいのは、恐怖心と無力感と諦観、ということなんです。ドイツでは1933年の2月28日に緊急事態宣言が出たわけです。数日の間に、プロイセン州だけで5000人が裁判所の関与なしで逮捕され、強制収容所に入れられた。

 そうすると発言する人がいなくなっちゃうわけです。残された人は情報を持っていないんです。発言する人が5000人というと相当大きいんですよ。岩上さん級のジャーナリストがダーッといなくなる。上からドーッと、目障りな人からやっていくわけだから」

岩上「政治家も入れられましたからね」

升永「政治家も、国会議員も入れられちゃうわけです。そうすると残っている人には情報がない。しかも通信、表現、集会とか、そうしたことがみんな緊急事態宣言で禁止されるわけですから」

岩上「そうですよね」

升永「発言したくてもできないわけです。電話もできないし」

岩上「その時にはリーダーは逮捕・拘禁されている」

升永「新聞も、意見広告もやりようがない。そうするともう諦観するよりしょうがない。ナチス以外の政党はみんな解党させ、立候補できないわけだから。そしたらナチス以外入れようがないじゃないですか」

岩上「そうですよね」

升永「よくナチスの成功例が挙がりますよね。私も2週間ぐらい前に、さる高名な弁護士さんと議論した際、『升永先生はそう言われますが、ナチスの政策は悪いことばっかりでもなかった。たとえば失業率を下げた(※28)、あるいはアウトバーン(※29)を設けた、一家に一台フォルクスワーゲンという車(※30)を作らせ、国民に夢を与えた。

 それからベルリンオリンピック(※31)で、ドイツがアメリカを大きく抜いてメダルの数で世界一。それはナチスのおかげだ』と。『いいこともナチスはやったんじゃないですか、そして国民が支持したんでしょう』と。こう高名な弁護士さんがおっしゃる。ベルリンオリンピックは1936年ですよね」

升永「アウトバーンの建設って、オリンピックの後の話なんです。失業率が下がっている、これも後の話です。独裁したあと善戦した分はある。ドイツは第一次世界大戦に負けましたよね。それでベルサイユ条約(※32)で、フランスやイギリスなどの大戦戦勝国が被った損害をドイツは全部しょい込まされたわけです。損害賠償請求されて。

 国民はそのために塗炭の苦しみを味わう。それをナチスが破棄したことをドイツ国民は支持したんじゃないか、と言う人がいますけど、これはすべて独裁完成後にやったことです。私が先ほどから言っているのは、5000人逮捕です。日本だって5000人逮捕すれば日本を独裁できます。岡田克也さんとかを逮捕しちゃえばいいんだから」

岩上「岡田さんはあまりぴんと来ないですね。逮捕はあるかもしれないけど」

升永「岩上さんを逮捕するとか」

岩上「志位和夫(※33)さんは逮捕されるだろうなとか、山本太郎(※34)さんが逮捕されるとか。山本さんは今、活発に発言されていますから」

升永「具体的なことではなく、論理的に言えばという話です。こんなに危険な憲法改正はやらないほうがいいでしょう、ということです。緊急事態宣言が今の憲法に書かれていなくても、第二次世界大戦で負けても、日本人はここまで民主主国家を作ってきたわけですから。

 かつてのドイツ国民が良心まで曲げちゃって、ナチス反対の人がナチスに賛成したことを考えてみてください。人間としてみじめじゃないですか?良心まで独裁者にねじ伏せられてしまった」

岩上「そうですね」

升永「やっぱり独裁ってそんなもんで、たとえば私が北朝鮮に生きていたらこういうネットの報道もできないし、言えない。たまたま日本で生まれて生活しているからできているわけで、独裁国家になったら岩上さんだって、こんな商売やっていけないでしょ」

岩上「まあ、そんな簡単なことじゃないですよね」

升永「独裁国家ができちゃえば簡単なことじゃない。だから独裁国家っていうのは、しかも近代国家の1933年のドイツでこういうことが数日で起きてしまったというのは、全権委任法の議会で賛成したのでもなんでもなく、緊急事態宣言一発でここまで持って行けたんだと。その破壊力によって、選挙で一ヶ月の間に、何々党反対の人が支持にまわるっていうことになる。支持せざるを得なくなっちゃう。現にそれは歴史として起きているわけです」

岩上「升永先生、そのお手元にあるのは、もしかしたら、石田勇治(※35)先生の本ですか?」

升永「ああ、これですね」

岩上「この石田勇治先生の『ヒトラーとナチ・ドイツ(※36)』を升永先生がご覧になり、そうかここが重要だったんだとお気づきになったということですね。この時にドイツの共産党も社会民主党も逮捕されていくわけじゃないですか。そのリーダーたち、国会議員も幽閉されて、国会に登院できない。登院しないのに議決されてしまうわけです。

 何人かはドイツ国外に亡命し、そこでナチスへの抵抗運動(※37)をしようとしたそうですね。それがどれだけ功を奏したのかはちょっと分かりませんが」

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▲石田勇治著『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社現代新書)

升永「功を奏してない。亡命してまでというのは、それは立派な人です。だけど、その人の力によっては止められてないんです」

岩上「しかし、考えちゃいますよね」

升永「だから岩上さんがいくら亡命してワーワー言ったって、これは止められないんですよ」

岩上「いえいえ、今のうち5ヶ月ワーワー言いましょう。7ヶ月、6ヶ月だな。6ヶ月ワーワー、先生と共に言いたいと思いますけどね。大変危険だということをみなさんにもお分かりいただけたと思います」


(※25)ナチス以外の政党は存続禁止、新設禁止:国会議事堂放火事件のあった1933年の6月21日、社会民主党の活動が禁止され、財産も没収された。この頃から他の政党も「自己解散」の道を選び、ドイツ国家党(6月28日)、中央党(7月3日)、バイエルン人民党・ドイツ人民党(7月4日)が次々と消滅。

 ヒトラー内閣の与党も例外ではなく、6月21日に鉄兜団はナチ党に吸収され、6月27日にはフーゲンベルクが閣僚を辞任し、国家人民党は解散した。

 7月14日にはついにナチ党以外の政党の存続・新設が禁止され、11月12日にナチ党のみを対象とする国会議員選挙が行われ、一党独裁体制が確立した(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/21lsl1v)。

(※26)一人一票訴訟:2015年7月30日、升永弁護士は外国特派員協会で記者会見を開き、安保法案の審議に対する見解を述べた。この中で升永弁護士によれば、この会見の前の6年間、一人一票に関する裁判が高等裁判所に64回提起されている。その後の最高裁判決は4度出ており、そのうち最高裁判決では4つとも、「選挙は違憲状態であるが、有効だ」という結論であり、現在では「違憲状態の選挙」で選ばれた議員たちが立法活動をし続けていることになる。

 最高裁の裁判官15人のうち、「違憲状態だけど選挙は有効」と言った裁判官は11人いたが、そのうちの5人は判決の補足意見で、「違憲状態の選挙で選ばれた国会議員は国会の活動をする正統性がない」と言い切っている。

 こうした選挙で当選した議員が現実には立法をしたり、総理大臣を選んだり、総理大臣になって行政権を行使しているという現状がある。なお、升永弁護士はこれまでにも法学館憲法研究所とともに、この問題について、名古屋高裁への提訴などを行っている(参考:法学館憲法研究所【URL】http://bit.ly/1UiRA2A)。

(※27)升永英俊 著『一人一票訴訟上告理由書 憲法を規範と捉えた上での判決を求める』(日本評論社、2015年7月)紹介文:2015年内に最高裁で言渡されると予測される2014年12月14日衆院選(小選挙区)・一 人一票訴訟は、憲法の規範性が問われる判決となる。本書は、最高裁に提出した著者渾身の上告理由書を書籍にした一冊。

 平成26(2014)年12月14日衆院選(小選挙区)・一人一票訴訟についての、年内に言渡されると予測されている最高裁判決は、(1)憲法56条2項、(2)憲法1条、(3)憲法前文第1文前段の定める『人口比例選挙の保障の規範』どおりの、“一人一票の保障のある国民主権国家”を誕生せるか否かを決する判決となる、など著者の意見が紹介されている(参考:amazon【URL】http://amzn.to/25X1XBV)。

(※28)ナチスは失業率を下げた:ヒトラーの経済政策については評価する向きもある。ヒトラー政権は前政権からの雇用増加政策と、経済相兼ライヒスバンク(ドイツ中央銀行)総裁ヒャルマル・シャハトの指導による新規の計画等によって失業を改善し、1937年にはほぼ完全雇用を達成した。

 恐慌からの回復に関しては、同時期にアメリカで行われたニューディール政策よりも効率的であったという仮説も近年有力になってきているが、その回復は賃金の増大や民間消費拡大も伴わない景気回復であった。しかもドイツ経済の足かせであった外貨不足や、輸入困難による資源不足は解決されなかった上に、軍備拡大のために膨大な国家債務を抱えることになった(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1VYy7GI)。

(※29)アウトバーン:ナチス政権下では、アウトバーン関連に1935年6月までに4億マルクが投資され、最大12万人の雇用が行われた。ただしアウトバーン関連労働者の一部については少額の手当と衣食住の支給が行われたのみで、賃金と呼べるほどの額は受け取っていなかったとされている(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1VYy7GI)。

(※30)フォルクスワーゲン:フォルクスワーゲンの設立は1937年となっているが、旧フォルクスワーゲン製造会社は第二次世界大戦前にナチス政権の国策企業として設立された。ヒトラーが1934年のベルリンモーターショーで提唱した国民車計画に従い、著名な自動車設計者であるフェルディナント・ポルシェによって、進歩的なメカニズムを備えた流線型のリアエンジン小型車が開発された。

 当初ヒトラーはこの車を「フォルクスワーゲン(国民車)」と称していたが、最終的に1938年に、「KdF-Wagen(歓喜力行団の車)」と命名した。歓喜力行団とは、ドイツ労働戦線の一部局で労働者の余暇活動を活性化させる組織を指し、文字通り「ナチス政権下の国民車」としての意義を強調するものであった。

 この国民車の大量生産を期し、歓喜力行団の車を生産する街までもが新しく建設された。しかし1939年9月に第二次世界大戦が始まるとフォルクスワーゲン製造会社は軍需生産に移行、歓喜力行団の車をベースにしたキューベルワーゲン等の軍用車両を生産、民需のフォルクスワーゲンを生産することはなかった。

 フォルクスワーゲンを購入するために労働者は余暇活動組織「歓喜力行団」を通じて積立金を支払っていたのであるが、民需生産の中止により実際の納車はなされなかった。

 戦時中のフォルクスワーゲン製造会社の生産ラインにはポーランド、ウクライナ、ロシア、ベラルーシ、イスラエル、オランダ、フランス、オーストリアなど、近隣諸国からの約2万人の強制労働者や戦争捕虜、のちにはアウシュヴィッツ収容所の収容者が送り込まれ、過酷な労働を強いられて、死に至る者もいた(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1UbIVSw)。

(※31)ベルリンオリンピック:1936年8月1日から8月16日にかけてドイツのベルリンで行われた夏季オリンピック大会。ヒトラーは、当初オリンピックを「ユダヤ人の祭典」であるとしてベルリン開催に難色を示した。しかし、側近から大きなプロパガンダ効果が期待できるとの説得を受けて、開催することに同意した。

 オリンピックの開催を決めた後、ヒトラーはオリンピックを「アーリア民族の優秀性と自分自身の権力を世界中に見せつける絶好の機会」と位置づけ、ベルリンだけでなくドイツが国の総力を挙げて開催準備を進め、短期間でオリンピック・スタジアムや選手村、空港や道路、鉄道やホテル、さらに当時まだ実験段階であったテレビ中継などの受け入れ態勢の整備を進めた。

 開催国であるドイツの金メダル取得数は33、銀メダルは26、銅メダルは30、合計89のメダルを獲得し、2位のアメリカを大きく引き離した(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1XW7l3R)。

(※32)ベルサイユ条約:1919年6月28日にフランスのベルサイユで調印された、第一次世界大戦における連合国とドイツの間で締結された講和条約の通称。ドイツ政府は賠償金の捻出に苦しみ、さらに「トランスファー問題」の発生でマルク相場は急激に下落した。

 賠償金支払いは困難を極め、インフレがじわじわと進行した結果に賠償金支払いが滞り、フランスのルール占領を呼び込むこととなった。ルール占領によってインフレーションは破滅的な規模に拡大し、ミュンヘン一揆等、左右両翼の暴動・反乱が相次いだ。

 しかしグスタフ・シュトレーゼマン内閣以降はドイツ経済と政情も一時的に安定し、ロカルノ条約の締結と国際連盟加盟実現により、ドイツは事実上国際社会に復帰した(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1gMiocm)。

(※33)志位和夫:日本共産党委員長。集団的自衛権の行使が閣議決定された折に、志位氏はTitter上で「ナチス・ドイツが国民を戦争に動員したやり方と、安倍首相の物言いが何と似ていることか!」と、かつてのナチス・ドイツの高官、ゲーリングの発言を引用するかたちで批判を展開している(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1j4Bqvh)(Livedoor News、2014年7月8日【URL】http://bit.ly/21lGDiF)。

(※34)山本太郎:生活の党と山本太郎となかまたち所属の参議院議員。憲法9条改正と集団的自衛権の行使に反対しており、日本の核武装についても、将来にわたって検討すべきでないとしている。靖国参拝についても総理はすべきでなく、村山談話・河野談話を引き継ぐべきとしている。

 2012年12月1日、第46回衆議院議員総選挙への出馬後に落選した折、山本氏は報道陣の前で「このままでは極右化が進んでしまう。日本から脱出した方がいい」と述べている(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/21lHWxY)。

(※35)石田勇治:歴史学者、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授。専門はドイツ近現代史、ジェノサイド研究。日本でホロコースト否認論が問題となった1995年のマルコポーロ事件の際には、『サンデー毎日』の取材に答えてコメントを出している(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/21lHWxY)。

(※36)石田勇治 著『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社、2015年6月)紹介文:ヒトラー政権時代の数々の疑問に、最新研究をふまえて答えた入門書であり、当時の歴史やその背景を知るための決定版の一冊(参考:amazon【URL】http://amzn.to/1Uj0A7Q)。

・2016/06/17 村山首相談話を継承し発展させる会 特別講演会「なぜ文明国ドイツにヒトラー独裁政権が誕生したのか?」講演 石田勇治・東大教授

 

 

(※37)ナチスへの抵抗運動:ナチ党の権力掌握後の強制的同一化の進行は、ナチ党に反発する者を多く生み出した。ナチ党はそれに対して反対者の結社を禁止し、各地に強制収容所を設置することで反対者に厳しい弾圧を加えた。

 多くの反対者は公然とした活動を行えず、彼らの勢力は地下活動や国外活動を余儀なくされた。ナチスによって最初に弾圧されたドイツ社会民主党やドイツ共産党は、亡命組織を作ってナチスに抵抗しようとしたとされている(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/261JYXx)。

緊急事態法が憲法に書き込まれてしまえば、裁判所も違憲無効と言えなくなる~総理はたった一人で閣僚を任命できるので、閣議決定は一切ハードルにはならない

岩上「1933年のドイツの政治のスピード。11月、2月、3月、1934年11月という感じで、あっという間に。そしてこちらは2013年から15年、日本の政治のスピードだと。秘密保護法、これがホップ。安保法、これがステップ。そしてジャンプが緊急事態条項という気がします。

 2013年10月25日、特定秘密保護法案(※38)を閣議決定。そしてその後の43日間。2013年12月6日、忘れもしない師走でした。同法成立。SEALDs(※39)のみなさんはこの頃、SASPL(※40)という団体名でした。SASPLの人たちが泣いているのを僕は中継して、本当に胸打たれました。

 2015年5月14日、安保法を閣議決定。4ヶ月強で、2015年9月19日、あの熱い夏を経て同法成立と。43日と4ヶ月。そして、半年で憲法となってしまうかもしれない。怖いですね。ホップ・ステップ、でも次のジャンプはこれまでのレベルのものじゃない」

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▲ドイツの政治スピードと日本の政治スピード

升永「こんなもんじゃない。憲法だから。もう裁判所は、違憲無効と言わない。さっき言った治安維持法(※41)がどれだけ怖いかは、知らない人がけっこう多いじゃないですか。僕は73歳だから、治安維持法が怖いというのは、もう体に染み込んでいる。治安維持法というのがどんなに戦前の日本を支配して、言論の自由を押さえつけたことか。民主主義者でも逮捕されたわけですから。

 なぜかというと、ここに治安維持法一条一項とあって、『国体を変革しまたは私有財産制度を否認することを目的として結社を組織しまたは情を知りてこれに加入したる者は10年以下の懲役または禁錮に処する』と。たったこれだけの非常に簡単な法律でしかないんですよ。この法律が制定されたのは1925年ですから、大正末期にできた法律なんですが、これによって民主主義者も取り締まられたわけです。なぜなら国体というのは天皇制ですから、天皇制を否定するのは共産主義だけじゃないわけですよ」

岩上「共和制(※42)主義者だってそうですよね」

升永「そういうことです。だから民主主義者でも逮捕するということになる。戦前(第二次世界大戦前)の日本の思想弾圧の法律はこれなんです。『今の政治秩序を変革し、または私有財産制度を否認することを目的として結社を組織し、または情を通じて、これに加入した者は10年以下の懲役または禁錮に処す』と。これとまったく同じ条文を立法でポンとするわけです。過半数で。過半数取ればできますから。そうすると我々が抵抗するには、裁判所に、憲法違反だ、無効だと、こう言うしかもう手はないわけです」

岩上「そうですね」

升永「じゃあその時に、自民党の改憲草案21条がどうなっているかというと、まず現行憲法の21条、表現の自由。『集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する』と。自民党案には『これ』という言葉がなくなっていますけども、同じ言葉ですね。保障すると」

岩上「現行憲法と同じことが」

升永「書いてあるんですよ。これは」

岩上「安心しますよね。一瞬」

升永「ところが、今回の自民党案には二項があります。『前項の規定にかかわらず、これに何を書いてあろうが』ということなんです。つまり第一項の規定、『前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い』。だから活動もいかんというわけです。

 『並びにそれを目的として結社をすることは認められない』。認められないっていうのは禁止っていうことですよ。憲法で禁止するってことでしょ。だから言論の自由がいくらあったって、公益及び公の秩序の害することを目的とした活動ってことで、記事を書いたり、ツイッターで流したり、インターネットで配信することも活動だから認められない。禁止されるってことです。

 じゃあ、公益及び公の秩序っていうのは、裁判官はどう判断するか。国会の多数決で決めたことを裁判所は尊重します。そうすると、最高裁で治安維持法と同じような法律を国会の多数が『国体を変革しまたは私有財産制度を否認することを目的として、結社を組織しまたは情を通じてこれを加入した者を10年以下の懲役または禁錮に処す』とした。

 こういうふうに国会が多数で決めたのであれば、公の秩序を害することを目的とした活動を行い、結社することは認められないと判断して法律にしたんでしょ。これが憲法だとなっちゃうと、この条文をもとに治安維持法を違憲無効であるという判決を最高裁は出せない」

岩上「ただ単にこういう法律を作るのであれば、自民党が今多数を占めていますから、衆参でこういう法律を出すことはできなくはない。可決することはできなくはないだろうけども、憲法を変えない限りは違憲だとひっくり返される可能性がある。だから、今はそこまではしてない。

 けれども、もし改憲も可能になってしまい、こうしたことが入れられるようになった暁には、こんなこといくらでもできる」

升永「法律的には可能ですよね。実際にやるかどうかは、私は論評しませんけども」

岩上「いや、いくらでも可能というので、もう十二分に怖いです。今みたいに解説していただくと、治安維持法だって悪法だって成立したら最後、自民党の改憲案がこのような形で通ってしまった暁には、公益及び公の秩序を害する者は処断すると。そういう悪法が通ってしまうということですね」

升永「というか最高裁がそれを違憲無効することはできないですよね。憲法がそうなっているわけだから」

岩上「すごいことですよね、本当に」

升永「すさまじいことです」

岩上「すさまじいことですよ、これ。98条、99条、この改正案と現行憲法が書いてあって、ちょっと改正案については小さいんですが、ここが問題だというところ、ありますか?」

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▲自民党改憲草案第98・99条より

升永「まず、日本国憲法で緊急事態宣言は、内閣総理大臣一人で出せるんです。内閣とも書いてないんだよね」

岩上「内閣でもない」

升永「内閣総理大臣一人で、緊急事態だと自分が認めるときは、閣議にかけて緊急事態の宣言ができる。そうだ、閣議にかけることは必要ですね。閣議にかけて緊急事態宣言を発せられる。だけどイニシアティブはあくまでも、内閣総理大臣にある。

 内閣総理大臣が緊急事態にあるということを認めて閣議にかけて、緊急事態宣言ができるという憲法になるわけです。ということはどういうことかというと、緊急事態はどういうときに認められるかというと、何も災害だけじゃない。外部からの武力攻撃、それから『内乱等』だから、内乱でなくてもいいんですよ」

岩上「内乱でなくてもいいんだ」

升永「『等』だから。社会秩序。例えば、十何年か前、新宿の西口で騒動があったでしょ。騒乱みたいなことが」

岩上「昔の話ですか?」

升永「昔。20年ぐらい前」

岩上「新宿騒乱事件(※43)というのは70年安保の頃だったと思いますね。68年、69年ぐらいだと思います」

升永「あれも社会秩序の混乱でしょうね。地震、これはまさに身近ですよね。3.11の地震に、等。これも『等』と書いてあるわけだ。だから地震だけじゃない。大規模な自然災害。その他法律の定める緊急事態。これもその他法律っていうのは多数派が作れますからね。その多数派を持った政党が法律を作っちゃえるわけです。内閣総理大臣が緊急事態だと認めたときは、法律の定めるところによって、手続きにしたがって閣議にかけて緊急事態宣言を、自分の名前でできるんですよ。内閣総理大臣の名前でやっちゃうわけだ」

岩上「その他の法律で定める緊急事態とは、これは今は一応、社会秩序の混乱とか内乱とか、外部からの武力攻撃とか、地震等による自然災害。それよりももっともっと」

升永「広がるわけ」

岩上「広がることがあるわけですね」

升永「容易になる憲法になっているわけだね。多数派を取れば広げられるんだよ。この憲法は」

岩上「想像力の世界ですけれど、想像次第では恐ろしいことになりますよね」

升永「恐ろしいこと」

岩上「特定思想にあらかじめ網をかけてしまって」

升永「それもやろうと思えば、憲法上は許される。あらかじめ網をかけたからと言って、憲法違反だと最高裁判例は出ないね」

岩上「すさまじい。絶対認めちゃダメですよ、これ。本当に。これはお試し改憲じゃすまないですから。本当にやっちゃいけない」

升永「もう一つ。閣議ってなにかすごいハードルがあるんだなと思うと大間違いで、内閣総理大臣はたった一人で閣僚を任命できるんです。日本国憲法では。議会の多数の同意も何もいらない。一人で、誰々ちゃん、あなた今度、なになに大臣ねと、一人でできるのが日本国憲法なんですよ。だから、閣議というのは自分のお友達ですよね」

岩上「そうですね」

升永「誰々大臣、と自分が任命するわけです。国会の多数決の同意を得て任命するんじゃないんですよ。だから閣議にかけて、ということは全然ハードルにならない。自分が任命した奴が閣議を構成しているだけですから。これはなんのプレッシャーにもならない。だから、やりたい放題の規定になるわけですよ。

 それから、そういう形で内閣総理大臣は自分一人の名前で緊急事態宣言を発した場合、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定する。だから政令というけども、法律と同一の効力を持っちゃうわけだね」

岩上「法律ですよね」

升永「法律です」

岩上「だからこれは、行政府が立法府の権限を奪い」

升永「三権分立じゃなくなる」

岩上「そうですね。これがさっきのドイツにおいては全権委任法で初めて入れたのを、初っ端からやっちゃうわけですね」

升永「ですね。やっちゃう」

岩上「そして、財政上必要な支出その他の処分を行い、ってことは予算権も持っちゃうというか、予算に国会の承認がいらなくなるってことでしょ。国会いらないですね」

升永「そんなもう、お金の話どころじゃない。命の話だからね」

岩上「地方自治体の長に対して必要な指示…」

升永「地方自治体とかそんな、自治権がどうこうというレベルの話じゃない。もっともっと深刻な話なんです。基本的人権の話なんですよ。だからいろんな悪いことがあるよと色々理屈を言うよりも、本質的なことを一個だけ言ったほうがいい」

岩上「なるほど」

升永「僕はもうそういう議論をしたくない。これも悪いあれも悪いと言いすぎると、本当に怖いところが出てこなくなっちゃう。地方自治体の破壊が起こるとか予算権がなくなるとか、そういうことが悪いんじゃなく、ナチスの、ヒトラーの独裁が起こることがいかんのです。予算がむちゃくちゃになるとかいうレベルの話じゃない」

岩上「でも大変なことですよね」

升永「いや、そういうふうになると、怖さが出てこないの」

岩上「なるほど」

升永「この案はこういう面からも悪いああいう面からも悪いって、10も20も30も言いたいですよ。100ぐらい言えますよ。でもそれを言っちゃうと、独裁するっていう怖さが出てこなくなっちゃう」

岩上「どこが一番怖いことですか」

升永「独裁ですよ」

岩上「独裁。独裁というのは、一番怖いというのはここですか?『何人も法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない』。これ、一番ストレートなんですけど」

升永「ストレートですね」

岩上「ここですか。一番恐ろしいところっていうのは」

升永「もう言葉面の話じゃない。緊急事態宣言がなくたってアメリカはやっているわけだし、憲法になくたってアメリカは建国230年、国は運営できている。

 日本だって、たとえば明治憲法(※44)はすごく長く続いているように思うけど、たった56年しかやっていない。ところが今の現憲法(※45)は、戦後もう71年続いているでしょ。明治憲法より今の憲法のほうが長いんですよ。

 そのことも理解しないで、議論しているからおかしい。国民の身体の一部になっているのは明治憲法より今の憲法のほうなんです」

岩上「なるほど。定着していると」

升永「定着して、しかもなにも緊急事態がなくたって、七十何年間、日本は潰れないで生きてきているわけじゃないですか。変える必要ないじゃないですか」

岩上「ないと思いますね」

升永「そういう議論なんですよ。その条文のどこが悪いんですか、じゃあそれを変えましょうと。それを変えたらやっていいですか、なんてことにはならない」


(※38)特定秘密保護法案:正式名称は特定秘密の保護に関する法律。日本の安全保障に関する情報のうち「特に秘匿することが必要であるもの」を「特定秘密」として指定し、取扱者の適正評価の実施や漏洩した場合の罰則を定めたもの。2014年(平成26年)12月10日に施行された。法施行5年後の見直し規定を盛り込まれている(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/KOiLDi)。

(※39)SEALDs:自由と民主主義のための学生緊急行動(Students Emergency Action for Liberal Democracy – s)。メンバーの多くは10代後半から20代前半の若者であり、所属する学校は多様。

 特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認によって日本国憲法の理念が危機に瀕しているとして、立憲主義に基づかない政治に対して反対の姿勢を打ち出し、国家による社会保障の充実と安定雇用の回復を通じた人々の生活の保障や、対話と協調に基づく平和的な外交・安全保障政策を求める。すなわち立憲主義、生活保障、平和外交を掲げるリベラルな政治勢力の結集を求めている。

 SASPLは前進団体でStudents Against Secret Protection Lawの略であり、特定秘密保護法に反対する学生有志の会とも呼ばれていた。IWJも折にふれてSEALDsの活動を取り上げている(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1hOriH3)(IWJ【URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/sealds)。

(※40)SASPL:SASPLはSEALDsの前身団体であり、Students Against Secret Protection Lawの略。特定秘密保護法に反対する学生有志の会とも呼ばれていた。

 SASPLはは第2次安倍内閣によって提出された特定秘密保護法が参議院本会議で可決された2013年12月6日に、同法の成立以前から学内勉強会を開催していた首都圏の大学生メンバーが発起人となって設立された団体。IWJでも、これまでSASPLの活動を複数回にわたり報道している(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1hOriH3)(参考:IWJ【URL】http://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/saspl特定秘密保護法に反対する学生有志の会)。

(※41)治安維持法:1925年に大正14年4月22日法律第46号として制定され、1941年に全部改正された。国体(皇室)や私有財産制を否定する運動を取り締まることを目的として制定された法律。とくに共産主義革命運動の激化を懸念したものとして発足したといわれているが、宗教団体や、右翼活動、自由主義等、政府批判はすべて弾圧・粛清の対象となっていった。

 1945年(昭和20年)の敗戦後も同法の運用は継続され、むしろ迫り来る「共産革命」の危機に対処するため、断固適用する方針を取り続けた。10月4日GHQが人権指令「政治的、公民的及び宗教的自由に対する制限の除去に関する司令部覚書」により廃止を要求。東久邇内閣は両者を拒絶し総辞職。後継の幣原内閣時に同法は廃止された。また、同時に特別高等警察も解散を命じられた(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1tqaYS9)。

(※42)共和制:人民または人民の大部分が統治上の最高決定権を持つ政体。一般には、政府の大半の意思決定が元首の裁量によってではなく、成立した法を参照して行われる体制のこと。このため現在では君主制は共和制ではないとされる場合が多く、現代の一般的な定義では「共和制とは君主ではない元首を持っている政体」である(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1U83J87)。

(※43)新宿騒乱事件:1968年10月21日に東京都新宿区で発生した新左翼暴動事件。事件が起きた10月21日は国際反戦デーにあたり、反戦運動諸団体はベトナム戦争に反対する集会を各地で開いていた。

 新左翼諸派も例外ではなく、1967年8月8日に新宿駅で発生した米軍のジェット燃料タンク車爆発事故を捉えて、「新宿米タン闘争」と称して新宿駅での暴動を計画していた。この暴動では騒擾罪(現在の騒乱罪)が適用されたが、「騒擾罪をはねのけて闘うぞ」とアジるなど、始めから騒擾罪(犯罪)を覚悟しての犯行であった。

 前日の20日、駅東口でベ平連・国際文化会議を中心とする街頭時局講演会が開かれ、小田実らによる抗議運動が行われていたが、これはあくまでも順法的なものであった。

 対して新左翼の方は既に10月8日「羽田闘争一周年」の集会後、燃料タンク車の移動妨害のため中核派・社学同・ML派とともに新宿駅構内に侵入し、144人が逮捕される事件を引き起こしており、二度目の騒擾でもあった(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/21lZiuO)。

(※44)明治憲法:いわゆる大日本帝国憲法。1889年(明治22年)2月11日に公布、1890年(明治23年)11月29日に施行された、近代立憲主義に基づく日本の憲法。短期間で停止されたオスマン帝国憲法を除けばアジア初の近代憲法である。1947年(昭和22年)5月3日の日本国憲法施行まで半世紀以上の間、一度も改正されることはなかった(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1tsbKhC)。

(※45)現憲法:日本国憲法は1947年(昭和22年)5月3日に施行されている。1945年(昭和20年)8月15日に、ポツダム宣言を受諾して連合国に対し降伏した日本政府は、そこに要求された「日本軍の無条件降伏」「日本の民主主義的傾向の復活強化」「基本的人権の尊重」「平和政治」「国民の自由意思による政治形態の決定」などにより、事実上憲法改正の法的義務を負うことになった。

 そこで連合国軍占領中に連合国軍最高司令官総司令部の監督の下で「憲法改正草案要綱」を作成し、1946年(昭和21年)5月16日の第90回帝国議会の審議を経て若干の修正を受けた後、同年1946年(昭和21年)11月3日に日本国憲法として公布され、その6ヶ月後の1947年(昭和22年)5月3日に施行された。

 国民主権の原則に基づいて象徴天皇制を採り、個人の尊厳を基礎に基本的人権の尊重を掲げて各種の憲法上の権利を保障し、戦争の放棄と戦力の不保持という平和主義を定める。また国会・内閣・裁判所の三権分立の国家の統治機構と基本的秩序を定めている。

 「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の3つは、日本国憲法を特徴付ける三大要素と呼ばれる。なお、日本国憲法は施行されてから現在まで一度も改正されていない(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1LGZOig)。

最高裁は選挙に違憲判決を下している~国会活動をする正統性のない人間が法律をつくり、総理大臣になっている現状

升永「岩上さんはどこにお住まいですか?」

岩上「港区です」

升永「すると、一票ないんですよね」

岩上「そうですね」

升永「参議院選挙では発言力が0.2票しかないんです。だから緊急事態宣言条項反対と一票入れたところで、その発言力は一票に満たない」

岩上「実は0.2票」

升永「反対と言ったところで、発言力は0.2票しかない」

岩上「それはちょっとなあ」

升永「東京だと、0.22票しかない。東京の人は都会でいい思いをしているんだから、その程度損をしてもいいじゃないかと。田舎の人はオペラも東京まで行かなきゃ聞けないし、えらい苦労しているんだから東京の人は0.2票で我慢したほうが公平なんじゃないですか、という田舎の人の意見をよく聞くんですよ。

 ところが、田舎中の田舎、北海道が0.21票。東京よりももっと悪いんです。なにも札幌だけの話じゃないんです。宗谷岬とか、襟裳岬に住んでいる人も0.2票しかない」

岩上「北海道は0.43票に変わっている」

升永「0.43票になっている。今度新しい法律ではね。東京は0.36に変わっています。だけどいずれにしたって一票ないわけです」

岩上「どこが多いんですか」

升永「福井ですね。福井が一票になっている。新しい法律では。10増10減(※46)でしょ。今度の参院選の話。過去は0.2票なんですよ。今度の選挙ではこう変わったというだけの話で、今までの選挙では北海道は0.21票しかなかったわけだし、国会議員はそういうレベルで選ばれているわけですよ。それで今度の参院選は、10増10減になるわけです」

岩上「参議院ではですね。選挙区、はい」

升永「総人口が4100万の選挙区から、全有権者の40%の人が過半数(74議席)を取っちゃうわけです。残りの有権者は1億ちょっといますから、その残りの6200万人が有権者の60%になるわけです。その人たちが72議席しか選べない」

岩上「少ないんだ。逆に」

升永「だから多数決になってないわけです。多数の選挙区であるはずのところ、6200万の有権者を登録されているところから選ばれている人が、72議席しか国会議員を選べない。で、4100万だから2100万も人口が少ないところが74議席も過半数を取ってしまうと。

 なぜそういうことが起こるかというと、東京は0.2票だったのが今度は0.36票になりますけど、なってもなおかつこれは変わらないわけ。今度の参院選でもね。だからいくら選挙で戦うとか言ったって戦えない、これじゃあ。ね」

岩上「なるほど」

升永「これが現実ですよ。だから、憲法は憲法56条二項(※47)で、両院の議事は出席議員の過半数でこれを決すと。だから多数決でこれを決めることになっているわけ。ところが、国会議員が国家権力の主権者とは憲法には書いてなくて、国民が主権者と明確に書いてある。

 今の憲法1条(※48)の前文には、『日本国民は、正当に選挙された国会議員を通じて行動し』と書いてある。そこが書き出しなんですよ。一番重要なとこなんだよ。日本国民が主権者なんですよ。

 1条で主権者と書いてある。主権者である日本国民は正当に選挙された国会議員を通じて行動する。憲法上の権利を行使するときに、国会議員を通じて行動する。ということは、両院の議事は国家権力の行使のため、法律を作り、総理大臣を任命する。そういうことを国会議員を通じてやる。その時の56条の二項で多数決で決めると言っているわけ。

 それはなぜかというと、正当に選挙されたというのは、国民の多数決、人口に比例して多数の国民が多数の国会議員を選べるような選挙で国会を通じて投票するということですよ。日本国憲法明文で明確に書いてある。ところが相変わらず直っていない」

岩上「人口に比例してない。そして多数がむしろ少数の議員しか選べていない状態」

升永「全体から2100万人も少ない地域から選ばれた代議士が74議席の過半数を取ってしまう」

岩上「過半数取ってしまっている」

升永「だからこの56条二項と、憲法1条の主権国民と、正当に選挙されて国会議員を通じて行動するというのは、国家権力を行使する、すなわち両院の議事を決定する、あるいは総理大臣を選ぶとか。

 しかし多数で選ばれていないわけですよ、総理大臣も。国民の多数で選んだ国会議員によって選ばれていないんです」

岩上「国民の多数が選んだとは言えない。そういう首相が憲法改正して、自分に絶大な権限権力を与える。これはあってはならないことじゃないですかね」

升永「あってはならないですよね。しかも、そういうこと以上に、最高裁判決は選挙は違憲状態だと、つい2015年11月、二ヶ月前の判決で出たばかり(※49)じゃないですか。現総理大臣も違憲状態の選挙で選ばれた。違憲状態選挙で選ばれたってことは、国会活動の正統性がないというふうに5人の最高裁判事が明言している(※50)んですよ。金築誠志判事、櫻井龍子判事、山崎敏充判事、岡部喜代子判事、山浦善樹判事。

 この5人の裁判官は、参議員選挙についての判決で、違憲状態選挙で選ばれた国会議員は国会活動の正統性がない、だから速やかに平成28年、つまり今度の選挙までに憲法に合うように改正しなきゃいかんと、そう言っています。なぜなら、国会活動の正統性がないんだからと、こう言いきっている。

 もっとも櫻井さんは前回2014年12月の衆議院選挙については、合憲判決に変えちゃった(※51)。しかし櫻井さんを外したとしても、残りの人は違憲状態選挙で選ばれた議員たちには国会活動の正統性がないと言いきっちゃっているわけです。この判断はすでに最高裁は確定的にしちゃっているわけでしょ。

 そうすると今の衆議院議員も、参議院議員も両方違憲状態と言われているわけですから、国会活動の正統性のない人たちが法律をつくったり、総理大臣をやっているわけです。もう憲法の想定外ですよね。

 そもそも国会活動の正統性がないという違憲状態の選挙で選ばれた衆議院議員、小選挙区の衆議院、それと選挙区制で選ばれた参議院については、いずれも国会活動の正統性がないんだから議員活動をしてはいけない。やっていいのは比例代表で選ばれた人で、その人以外やっちゃいかんわけです」

岩上「こういう判決が下って…」

升永「だから、そういう人が憲法改正するなんて論外中の論外ですよ」

岩上「ですよね。もちろん」

升永「国会活動の正統性がない人が憲法改正するなんて、もう気が狂いますよ」

岩上「あってはならないこと。どうしたらいいんですか。何かこれを食い止める手だてってあるんですか。

 最高裁が判断を下しているのに国会が動こうとしない。もしくはそれを聞き入れないまま正統性のない議員に選ばれた内閣、そのトップである安倍晋三さんは、今度の選挙で3分の2を改憲勢力で取り、この緊急事態条項を入れると、はっきり言っている(※52)わけです。繰り返し言っている」

升永「それはできないですね。私たちはここ6年間裁判をやっていましたけれども、最高裁判決は出ない。最高裁判決が今度の7月の選挙前にあるかというと、それはないと。違憲無効判決が出るチャンスはないです。

 となると我々に残されている手としては、3分の2の改憲勢力の選出を防ぐよう草の根運動をするよりしょうがない。私もだから今でもやっています。毎日毎日。草の根運動というのは口コミですよね。岩上さんも口コミでこの状況や情報をみなに知らせてください。野党統一候補に一票入れて、参議院の3分の2の改憲勢力を防ぐということに」

岩上「全力を結集するしかない、ということですね」

升永「そうでしょうね。それ以外方法ないですね」


(※46)10増10減:2015年7月28日、2016年夏の参院選から、鳥取と島根、徳島と高知の選挙区を統合する合区などで定数を「10増10減」する改正公職選挙法が、衆院本会議で成立した。

 1947年以降、都道府県単位だった選挙区の変更は初となる。改正法では宮城、新潟、長野の定数が2ずつ減らされ、北海道、東京、兵庫が2ずつ増やされる「6増6減」に加えて、鳥取と島根、徳島と高知を合区し2ずつ減らしたうえで、愛知と福岡を2ずつ増やして「10増10減」とする。

 「一票の格差」は、最高裁判決で「違憲状態」とされた2013年参院選の4・77倍から2・97倍になる(朝日新聞、2015年7月28日【URL】http://bit.ly/1rrgyCy)。

(※47)憲法56条二項:日本国憲法 第56条は、日本国憲法第4章にあり、議院の定足数、表決について規定している。第二項は『両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる』である(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1Orn5s1)。

(※48)憲法1条:日本国憲法の第1章「天皇」にある条文の一つ。天皇の地位と国民主権について規定している。『第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く』(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1YsR4lk)。

(※49)選挙は違憲状態だと、つい11月、二ヶ月前の判決で出たばかり:「一票の格差」が最大2・13倍だった昨年12月の衆院選小選挙区は、憲法違反だとして、二つの弁護士グループが選挙無効を求めた17件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は2015年11月25日、選挙は「違憲状態」だとする判断を示した。一方、選挙無効の訴えは退けた(朝日新聞、2015年11月25日【URL】http://bit.ly/1QHmotZ)。

(※50)国会活動の正統性がないというふうに5人の最高裁判事が明言している:平成26年11月26日の議員定数不均衡訴訟 参議院選挙区違憲状態判決について、裁判官櫻井龍子,同金築誠志,同岡部喜代子,同山浦善樹,同山崎敏充らが意見を補足している。

 『投票価値の不均衡の是正は,議会制民主主義の根幹に関わり,国権の最高機関としての国会の活動の正統性を支える基本的な条件に関わる極めて重要な問題であって,違憲状態を解消して民意を適正に反映する選挙制度を構築することは,国民全体のために優先して取り組むべき喫緊の課題というべきものである。様々な政治的困難を伴う作業であるとはいえ,国会自身が平成24年改正法の上記附則において主権者である国民に対して自らの責務の遂行の方針として宣明したとおり,今後国会において具体的な改正案の集約と収斂に向けた取組が着実に実行され,同附則の前記の定めに従って,平成24年大法廷判決及び本判決の趣旨に沿った選挙制度の仕組み自体の見直しを内容とする立法的措置ができるだけ速やかに実現されることが強く望まれるところである』。

 全文はリンク先を参照のこと(参考:京都産業大学「議員定数不均衡訴訟 参議院選挙区違憲状態判決(平成26年)」【URL】http://bit.ly/1UaAu4L)。

(※51)櫻井さんは前回の2014年12月の衆議院選挙については、合憲判決に変えちゃった:2014年12月の衆院選の「1票の格差」をめぐって、「違憲状態」と判断した25日の最高裁大法廷判決で、3人の裁判官が「違憲」の反対意見を付け、うち2人は選挙を「無効」にすべきだと踏み込んだ見解を示した。

 一方で、桜井龍子判事と池上政幸判事は「合憲」とし、国会の取り組みを認めたうえで、「現在の区割り基準を見直し、投票価値の平等を一層実現するよう希望する」と注文を付けている(日本経済新聞、2015年11月26日【URL】http://s.nikkei.com/1MRYnua)。

(※52)安倍晋三さんは、今度の選挙で3分の2改憲勢力を取り、この緊急事態条項を入れると、はっきりそこまで言っている:安倍首相は改憲と緊急事態条項についてこれまで何度もその必要性を語ってきた。また、今年に入ってからも改憲を在任中に行いたいという意思を明確に示している(産経ニュース、2015年11月12日【URL】http://bit.ly/1MKTbaq)(毎日新聞、2016年3月2日【URL】http://bit.ly/25Z8POU)。

麻生氏の「ワイマール憲法もいつの間にかナチス憲法に変わっていた。あの手口を学んだらどうか」発言は本心なのではないのか~改憲を食い止めるために野党は共闘して統一候補の擁立を

岩上「先生から見てこの参院選の諸テーマ、いろんなテーマがあると思うんですけれども争点というのは何でしょうか。私としてはこの緊急事態条項について、まずみなさんに知っていただいて、そのうえでこれでも是と言う? これは非ではないの?と問いかけています。

 すべての国民の身の上に降りかかる問題ですから。一部の人にだけ降りかかるような話じゃないので、まずはこれが最大の問題ではないですか。これをおかしいと思う人は改憲勢力にストップを、ここで歯止めをかけましょうと言うべきだろうと思いますし、そういうふうに日々語りかけているんですけれども。先生はやっぱりそれが最大の争点だと思いますか?」

升永「だと思います。一番岩上さんにおやりになっていただきたいと思うのは、もう一回岡田さんをここに呼び出して、議論していただいたらいいんじゃないでしょうか。岡田さんがここで、『ああそんなことなのか』とおっしゃったと言うけれども、テレビ番組が最大の争点はやはり憲法9条だといまだにおっしゃっているようであれば、この緊急事態条項、つまり言論の自由の否定の条項による壊滅的な打撃ということを理解しておられないのだと思いますから.

 ここでむしろ草の根運動として、岩上さんにお願いしたいことだと思います。もう一回岡田さんに来ていただいて、この議論を岡田さんと一緒にお話されるのが、一番効果的だと思う。岡田さんが変われば、それはそれなりの効力はあると思いますよね」

岩上「SEALDsの集会にもたびたび顔を出して演説をして、昨年の安保法制で活躍していた反対派の筆頭のような立場におられた福山哲郎(※53)さんが、京都市長選に絡めて、『共産党とは徹底的に戦う』とか言いだしちゃっているわけです。そういうことでは、これは参院選にはつながらないと。

 北海道では鈴木宗男(※54)さんはこれまで民主党と足並みをそろえていた。宗男さんの娘さん、鈴木貴子(※55)さんが民主党から比例で選挙に出ていますからね。しかし新党大地は今度の参院選では自民党を応援する(※56)と。安倍さんと直に会って、コロッと180度姿勢を変えたということも起きています。そういうのを見ていると、こうした方々、みなさん緊急事態条項の怖さを分かっていますか?と本当に言いたくなります」

升永「いや、お分かりになってないと思いますよ。少なくともナチスの緊急事態の利用をご存知ないから、字面だけ見るとまあしょうがないかなと、私も三ヶ月前ぐらいまでそう思っていました。法律の言葉面だけ見ると一見、そんなに悪くないんじゃないのと、思う人は多いだろうと。

 だけどナチスが独裁した歴史を調べてみるとそうじゃない。言葉じゃない、字面じゃない。それと近代国家はみんな緊急事態条項を持っていて、憲法の中に持っているけど、日本だけがアメリカから押しつけられた憲法だから持っていないと。そのようにみな誤解していると思います。

 岩上さんが、『アメリカにはないんですか』と、今お聞きになったぐらいですから。岩上さんみたいに、このことをもう三ヶ月ぐらい一生懸命やっている人であっても気が付かない。緊急事態が憲法に載っていると思ったら大間違い」

岩上「そうですね。いい勉強させていただきました。本当に。これ、広めていかなきゃいけないなと」

升永「自分ができないことを人に頼む、期待するというのは私自身非常に不本意ですけど、残念ながら私にはその力がない。もし可能なら、岩上さんにはそういう方々をここにお呼びになって、ここで議論していただいて、緊急事態条項はアメリカではどうなっているのか、ナチスはこうだったんだという点を議論していただければと。

 京都の話があった民主党の議員さん、鈴木宗男さんについても、またそういう情報があれば、彼らもそれなら話は別だと思う可能性があるわけですから。そういうことを私は期待しています」

岩上「分かりました。彼らにはぜひ自分で考えていただいて、自分で変えていっていただきたいんですけれども、やはり直接言わないと偉い人たちの耳には届かないものなのかもしれませんし、できるだけ直にそういう機会を作っていきたいと思います」

升永「ここで話を聞きたいと言えば、政治家だから、大衆からの接点になるようなこういうメディアにはご登場される可能性はあるんじゃないでしょうか。小沢一郎(※57)さんなんかもお呼びになって。小沢さんもこういうことは知らないんじゃないかな」

岩上「新年に、小沢一郎、山本太郎、二人揃っての会見(※58)があったんですが、緊急事態条項は危険だとおっしゃっていました」

升永「要するに頭のなかで危険さを分かるのと、ナチスの怖さを知ったうえで言うのとでは違うんですよ。それとやっぱり私がこれほど怖がっている理由は、麻生さんがナチス発言をしたことが私の議論のポイントなんです。しかも麻生さんが、こうおっしゃっているんですよね。『だから静かにやろうやというんで、憲法もある日、気がついたら、ドイツのこともさっき話しましたけども、ワイマール憲法がいつの間にか変わっていて、ナチス憲法に変わったんですよ。誰も気づかないで変わったんだ。あの手口、学んだらどうかね』と。こうおっしゃったわけでしょ。

 これを2013年7月29日の公開の講演会でおっしゃったわけです。閣僚ですよ、この時すでに。単なる代議士じゃなく財務大臣だった。今もこの方が財務大臣。このことを簡単に考えてはいけない。大変なことをやっているわけですよ。それをあの手口を学んだらどうかねって。これは」

岩上「あの時はみな、ほらまた放言がと言って、一過性のものだと思っていたんですけど、本当にやろうとしているんだということですよね」

升永「まあそれは私には分かりませんが、要するにこういうことを言った人が現閣僚。総理大臣もこのナチスの手口発言について責任を取らせたり、決別したりしていないでしょ」

岩上「そうです。もちろん」

升永「これは『手口を学んだらどうかね』と本心で思っている人ではないかと。これは国民が疑う正当な理由があります。失言では済まないですよ。あれは本音かどうかです」

岩上「言ったことが失礼だったというレベルの話じゃないですからね。こういうことを考えているという話ですから。それはもうとんでもない話だし、この流れを見ると同じじゃないですか、やっぱり。手口を真似ているんだろうと思います。

 しかも大日本帝国憲法下の天皇制国家に回帰するんだって、そういうことを目指しているんだろうと。そうじゃなく。天皇大権でなく、首相が独裁を行なえる国家になる」

升永「なりうるリスクがある。私は必ずやると言っているわけでもなんでもないですよ。そういう断言を私がする気はないです。ただそういうリスクが今回の改憲案には含まれているから、何もやることはないんじゃないか、ということです」

岩上「いずれにしても参院選まであと半年です。そしてもし改憲ができるような状態になったら、それには参院で3分の2の改憲勢力を取るということですけれども、自公プラスおおさか維新の会(※59)など、改憲勢力の議席をカウントすれば、あとたった11議席です。たったの11議席ひっくり返せば、改憲の発議が可能になる。衆議院はもうとっくに3分の2以上。参院はあと少し、たった11議席ですね。よほど国民自身が踏ん張らないと、そうした改憲の発議が可能なライン、クリアされてしまうというふうに言わざるを得ないですね」

升永「国民は頑張りようがないですよね」

岩上「でも国民が一票一票投じるわけですから」

升永「いやいや、それは頑張りようがないですよ。だからそのためにはまず野党で統一候補を立てる以外に方法がないと、既存の政治家を説得するほかない。我々がいくら口角泡を飛ばして危険だ、危険だと言ったところで、それはもう知れたものです」

岩上「まあ知れています。でも知れていることを少しでもやらないとしょうがありませんから。また実際問題として、野党で統一候補をするかしないかとか、まとめられるかどうかというのは、共産党排除をやめるかやらないかに大きくかかわっていると思うんです。

 共産党を排除したとして、共産党もじゃあしょうがないから独自候補を出そうと。それぞれ自分たちは自分たちで出そうとやっている限り、共倒れになる。だから共産党と話をつけて手を合わせて一つの候補を作ると。それでどうにか太刀打ちできるかどうかだと思うんですね」

升永「おっしゃる通りでしょうね」

岩上「民進党のなかでこれを徹底排除と言っている人たちがたくさんいる。そうしたら候補は乱立する。乱立するってことは負ける。そうなってしまったらお話にならないというふうに思いますね。ポイントはそこじゃないでしょうかね」

升永「だからそうしちゃいかんという声を上げるしか方法はないんじゃないでしょうかね。統一候補以外に方法がないと。今回の選挙で負けた場合どうなるか、緊急事態条項が法律になる。ナチスの例があるよということを知らせる。それから麻生さんの失言。そこに本音があるのか。

 だけど国民としては何割かのリスクはあるんじゃないのかと疑ってかかるべきです。それは健全な疑いだと思う。民主主義を国家にしようという人間にとっては。そのリスクがたとえ1割、いや1%だって怖いわけです。99%は大丈夫だと思っても、1%のリスクがあるのであれば、それはやっぱり排除すべきじゃないのかと。麻生さんが100%そういうつもりでやっていると私は断言しているわけじゃないですが、麻生さんがやらなくたって他の人が」

岩上「そういう考えを持っている方、他にもいますからね」

升永「今じゃなく10年後にやるかもしらんし、5年後にやるかもしらんし。そういうリスクっていうのは、あまりにも怖いリスクだし、必要ないわけだから。

 さっき言った、フランスがやっているのに日本がなくていいのかと。日本の安全をどう考えているんだ、けしからん。こういう議論に関して、アメリカの憲法には緊急事態条項なんかない。アメリカはちゃんと国として成り立っているじゃないですかという反論をすべきだと思いますね」


(※53)福山哲郎:民進党所属の参議院議員(3期)、民進党幹事長代理。参議院環境委員長、参議院外交防衛委員長、参議院内閣委員会理事、民主党政策調査会会長、外務副大臣、内閣官房副長官などを歴任。SEALDs とは2015年9月、10月のSEALDs主催のデモに参加するなど、両者の関係は友好的だった。

 2016年1月京都新聞が、福山氏が連合京都旗びらきにおいて「(注:現職で自公推薦の)門川氏を推薦する民主党の福山哲郎幹事長代理も『共産党と徹底的に戦う。力添えしてほしい』と支援を呼びかけた」と報道した。

 民共共闘を信じていた層の間では、自公推薦の議員を応援するのかと大きな議論を呼ぶこととなった(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1Lzu75V)(参考:福山哲郎公式サイト【URL】http://bit.ly/24Sc0SP)(参考:Youtube【URL】http://bit.ly/23da7Rx)(参考:togetter【URL】http://bit.ly/1PvaizG)。

(※54)鈴木宗男:元衆議院議員(8期、懲役刑確定に伴い2010年〈平成22年〉9月15日に失職)、2005年8月18日、松山千春とともに新党大地を結成し代表に就任。現在、新党大地代表。長女は衆議院議員の鈴木貴子(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1Lzu75V)。

(※55)鈴木貴子:2012年の第46回衆議院議員総選挙に、公民権停止中のため立候補できない父・鈴木宗男に代わり、NHKを退職して北海道7区から新党大地公認で出馬したが、落選。

 2013年5月21日、比例北海道ブロック選出の石川知裕が衆議院議員を辞職すると、同年5月31日、中央選挙管理会が比例北海道ブロック次点の鈴木貴子の繰り上げ当選を決定した。

 2014年の第47回衆議院議員総選挙では、民主党に入党し、同党公認で北海道7区から出馬。自民党前職の伊東良孝を猛追し、225票差で敗れたが、重複立候補していた比例北海道ブロックで復活し、再選を果たした。

 2016年2月26日、4月に実施される北海道第5区の補欠選挙において日本共産党と共同歩調を取る民主党の対応を「国家観が全く異なる。今のままでは地元有権者との約束を果たせない」と批判、民主党に離党届を提出するも、党は受理せず、3月1日に除籍処分を受けた。

 民主党幹事長の枝野幸男は、比例代表での当選は民主党の党名を書いた有権者の議席だから議員辞職せよ、との旨を伝えたが、拒否された、と述べている(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1KS6lV6)。

(※56)新党大地は今度の参院選では自民党を応援する:朝日新聞は北自民党は民主党の鈴木貴子衆院議員(比例北海道)を自民に引き抜き、次の衆院選で候補として擁立することを検討していると報じている。

 宗男氏は安倍晋三首相と昨年末に会談し、長女で議員である貴子氏を民主から離党させる用意はできていると伝え、安倍首相は「自民で育てたい」と応じたとされている。

 なお、新党大地は4月の衆院北海道5区補選で、自民公認候補の推薦を決めていると報じられている(朝日新聞、2016年1月30日【URL】http://bit.ly/1WOqjbG)。

(※57)小沢一郎:衆議院議員(16期)、生活の党と山本太郎となかまたち共同代表。2014年12月に施行された第47回衆議院議員総選挙の結果、小沢が代表を務める生活の党は政党要件を失った。

 しかし、12月26日に無所属の参議院議員山本太郎が入党し、政党要件と政党交付金の受給要件を満たし、党名を「生活の党と山本太郎となかまたち」に改めた(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1ZA1KRI)。

(※58)二人揃っての会見: 2016年1月4日、生活の党と山本太郎となかまたちの小沢一郎氏、山本太郎氏はそろって記者会見を開いた。その模様がYoutubeに公開されている(参考:Youtube【URL】http://bit.ly/1UQauxy)。

(※59)おおさか維新の会:2015年11月に維新の党から離党した議員・首長らによって結成された政党。現在、民進党、日本共産党に次ぐ野党第3党である。

 憲法改正に熱心で、「幼児期から大学までの教育完全無償化」・「統治機構改革」・「憲法裁判所の設置」を三本柱とした憲法改正原案を2016年3月26日の党大会で決定した(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1Ndivwz)(参考:おおさか維新の会公式【URL】http://bit.ly/1UQbLVz)。

中国の憲法にそっくりな自民党改憲案~次の選挙の結果次第では日本が中国のようになってしまう危険性が

升永「次は中華人民共和国の憲法です。まず自民党の憲法と日本の現行憲法、まずこれらはどう違うかというと、現行憲法の21条1項には次のように書いてある。ちょっと読みますと、『集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する』。これで終わりです。これ以外何にもない。非常に簡単なんです。

 ところが自民党の憲法改憲案を見ると、21条1項と、今までなかった2項、今ないものがついちゃうわけ。1項は同じです。だから安心するじゃないですか。

 しかし2項というのが、なんとこれがちゃぶ台返しなんです。『2前項の規定にかかわらず』1項に何が書いてあっても関係ないよと。『前項の規定にかかわらず』、日本語ではそういう解釈をされますね。前項の規定がどう書いてあろうと、そんなこと知ったこっちゃないよと。

 『公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない』と。前項の規定にかかわらずというのは、1項にどんなにいいことが書いてあっても、なんの意味もない。全否定なんですよね」

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▲自民党改憲草案と中華人民共和国憲法の比較

岩上「そうですね。書いてあることに意味がないですよね。『前項に関わらず』って書いてあったら」

升永「結局は、『公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない』。認められないっていうのは、いくら言論の自由と言ったって、韓国人を殺せだとかいうようなヘイトスピーチデモをやっているようなのは、それは言論の自由を超えているから、しょうがないんじゃないのと。だから憲法でそういうことをちゃんとはっきりさせたほうがいいんじゃないのと。ある意味じゃもっともらしきものに見える」

岩上「なるほど」

升永「ところが『認められない』と言うと、それはそうだよねとみな言うだろうけれども、法律の言葉というのは怖い。例えば他人のものを取ってはならないと、お父さんが子供に言う。お母さんも子供に教えるわけだ。先生も同じことを言うし。それは当たり前だ。人のものを取っちゃいけませんよと。何も言っていることはおかしなことでない。ところが、日本ではそれを刑法に書いてある。だから取ると刑務所に行くでしょ」

岩上「そうですね。窃盗ですね」

升永「人を殺めてはいけないと先生が言っている。それはそうだよなと小学5年生は思う。それは当たり前でしょう。誰も殺していいとは思いませんと。それは真っ当なことを言っていると。刑法にそういうふうに書いてある。人を殺めると刑務所に行くわけ。これも同じだよ。

 公の秩序を害することを目的とした活動を行うことは認められない。公の秩序を害することを目的とした活動は認められないんだから。犯したら刑務所に行く。いや、公の秩序は害していません、そんなつもりはなかった。そんな目的じゃなかった。ただ騒いだだけで。騒いだというか、気が滅入ったから言っただけですと、こう言い訳しても憲法に書いてある以上、裁判所は救ってくれない。裁判所が救ってくれなきゃ、誰が救ってくれるの」

岩上「最後のよりどころですからね。憲法」

升永「憲法がこんな風に変わったらもう救いようがない」

岩上「救いようがない」

升永「救いようがない。こういうことになると公益及び公の秩序を害することを目的とした活動かどうかを、本人が判断するのではなく、内閣総理大臣が判断するわけですよ」

岩上「行政が判断しちゃう」

升永「行政が判断する」

岩上「行政権力が。自分たちの現行秩序のことですもんね」

升永「そう。共産党が違憲状態で総理大臣になり、共産党の秩序が害されるということになれば、活動してはならないということになるよね。その一番いい例が、中華人民共和国」

岩上「中華人民共和国」

升永「中華人民共和国の憲法(※61)がどうなっているかというと35条。僕も知らなかったんだけど、これもインターネットのおかげで、一週間前に分かったんですけどね。『中華人民共和国の公民』。公民っていうのは国民のことだね。『公民は、言論、出版、集会、結社、行進、示威の自由を有する』と。日本よりもっと厚く保護。デモもいいよと。示威で気勢を上げてもいいよと、こうなっているわけだ」

岩上「なるほど。進んでいますね」

升永「中国のほうが、もっと言論の自由を保障しているんですよ」

岩上「バラエティに富んでいますよ」

升永「ね?ところが51条はどう書いてあるか。別の条文。これは2項に書いてあるから、セットだと分かるけど」

岩上「はっきり言って1項は意味ないからって言っているんですからね」

升永「だけどこれはちゃんと独立してあるのに、かなり離れたところに51条を持ってきたわけ。これがセットになっているのはなかなか気がつかないよね」

岩上「なるほど」

升永「だけど51条には、『51条 中華人民共和国公民は、自由と権利を行使するときは、国家、社会、集団の利益および他の公民の合法的自由や権利を害してはならない』、これでアウトなの」

岩上「アウト。現状の中国を見れば、この51条が35条よりはるかに優先していると」

升永「そう」

岩上「ここに党って書いてないですよね。本当は党の利益とか、党のトップの利益を侵してはならないとか入っていてもよさそうだけど、これでもう十分なんですね。『上記51条により、反政府的な言論(例えば民主化)を、国の利益、社会の利益に反する言論だとして統制できる』と。こんなことになっちゃう。天安門事件も起こるわけです。なんかあったら弾圧くらっちゃうし、インターネットは切断されちゃうということですよね」

升永「だからね。これ、自民党とね」

岩上「すごいな自民党」

升永「中国共産党って言ったら怒られるかもしれないけど、中華人民共和国の憲法と同じでしょ、これ」

岩上「そっくりですよ。おんなじで、しかもこれは35条と51条が分かれていますけど(自民党の改憲案のほうでは)ワンセット」

升永「もっと露骨に制限しているじゃない」

岩上「そうですね。これは誰が読んでも間違えないように一つのセットになっている。2項の文言が1項の文言に優越し、1項の文言を全否定する。これが最優先ってことですよね」

升永「自民党支持者に、これ見てもらいたいよね」

岩上「自民党支持者及び自民党のサポーターズの皆さん、ネットサポーターズ(※62)の皆さん、ネトウヨの皆さん。どうですか?皆さんの言論の自由は認められないんですよ。公の秩序に逆らうことは俺たちはないからいいのさとか言ってる人たちも、何が公の秩序かを判断するのか分かりませんからね。いやあ、恐ろしいと言いますか、なんと言いますか。ネトウヨの、さっき打ち合わせで先生、徴兵がないなんてバカなことがあるかとおっしゃっていたじゃないですか。ネトウヨの皆さんの傾向としては」

升永「ネトウヨってなんなの?」

岩上「ネット右翼。要するに安倍信者。安倍総理のシンパとほぼイコールと言ってもいいくらい、安倍総理好きが多いんですよ。安倍総理を批判すると、わーっと湧いてくるわけですね」

升永「湧いてくる」

岩上「湧いてくるんです。基本的には安倍総理の進んでいる路線はOK。それ以前は麻生さん大好き。麻生大好きと安倍総理大好きが重なっている。かなり重なっていますが、たとえば誰かが『この先には徴兵が待っているよ』と言うと、猛烈に叩いてくるんです。『そんなことあるわけないじゃないか。誰がそんなこと言ったんだよ』と言って、徴兵には非常に敏感で」

升永「徴兵嫌いなの?」

岩上「徴兵嫌いっていうか、『徴兵なんて安倍さん言ってないじゃないかよ』と言って、『勝手に言うなよ』と、徴兵されないことになっているんです」

升永「徴兵を喜んでないの?ネトウヨは」

岩上「自分の身に及ぶんですから。自分の身に及ぶことは起こらないんですよ」

升永「そうなの?」

岩上「そうなんです」

升永「ネトウヨって人殺したくて仕方がない人たちかと思っていたけど」

岩上「そんな乱暴者じゃありません。先生。ネトウヨの名誉のために言っておきます」

升永「人殺しっていうのは語弊あるけど、要するに日本人は一切殺さないけども、中国人と韓国人は殺すと」

岩上「殺すっていうか、そんなつもりもありませんよ、彼らは」

升永「そんなことないの?」

岩上「在特会(※63)の一部の過激な人たちのなかには、朝鮮人を殺せとか、皆殺しにしろとか言っているけど」

升永「あれとはまた違うわけ?ネトウヨって」

岩上「あれはいくらなんでも言い過ぎだろうってことを分かっている人たちですから」

升永「あ、そう。それがネトウヨなの?分かってない人がネトウヨかと思っていた」

岩上「いやいやいや、もっと賢いネトウヨも。かなり広くいますからね」

升永「あ、そう」

岩上「徴兵はされないと。徴兵が行われると言うと、『嘘つけ』と。『そんなこと誰が言ったんだ』と言うんですよ」

升永「あ、そう」

岩上「例えば南沙諸島(※64)、尖閣(※65)あたりで、地域限定型の小さい戦闘が、対中国で行われても、それは普通、戦争のことを少しでも歴史を学べば、戦域を限定するとか期間を限定するとか、対戦相手とそのリングに登場する兵士の数を限定するなんてできないと思うじゃないですか。だから普通いつまでも期間が延び、戦域が拡大していくと思いますよね。だからどこまでも終わりのないことになるんだと書くと、猛烈にたかってくる。

 『誰がそんなこと言った』と。『岩上って好戦的なんだね』と言って。戦争が始まったら、最終的な相手の領土を押さえるなりなんなりして、とにかくどこかで決着を見るまでやらなきゃいけないんだと書くと、『それは気が狂ってんじゃない?』『誰がそんなことやりたいって言ったの?』みたいなことを言ってくるんですよ。

 だからこういうことが書いてあっても、自分の身に及ばないと思っている人が多いんですけど、先生がここに書いたみたいに、ここまでほとんど中国と同じだと、あの中国みたいになっちゃうわけですよ。彼らネトウヨたちが嫌いで侮蔑し、批判している中国の」

升永「ネトウヨは中国が嫌いなの?」

岩上「中国は嫌いですよ」

升永「あ、そう」

岩上「それはそうですよ」

升永「彼らは独裁が好きじゃない ?」

岩上「いや反韓反中で。でもそうですね、僕もその点は不思議です。彼らの頭の中では、まだ今は日常のなかの自分たちの生活の小さな自由があるじゃないですか。それは守られながら戦争になって、自分たちの生活社会から離れた場所で自衛隊と米軍が戦争をやってくれると考えている。

 つまり自分たちの生活は戦場にならず、南西の沖合で日本海海戦のように決戦が行われ、彼らはそれを見物することができて、自分たちの身に降りかからないと思っているんだと僕は思います」

升永「おかしいんじゃない?」

岩上「おかしいんですよ、それが。いや、それは必ず拡大して自分の身に降りかかりますよと言うと、SNS、ツイッター、フェイスブックでもものすごく荒れますよ」

升永「あ、そう。全然、僕は荒れないよ」

岩上「そうですか。それは先生まだツイッターであまり書いてないからじゃないですか(※66)」

升永「僕は小物だから、全然」

岩上「僕は一応15万人フォロワーいます(※67)ので、先生のことをご紹介しておきます。ネトウヨさんに。

 でもこれはもう明らかですね。本当に、中華人民共和国の憲法を模範にしたとしか思えません。これね、そっくりですよ。これだけ見ていてもひどいねと思うんだけど、どこまで行くか、現実が分かんないですね。先生はプロだから、法文を見るとそれがどのように使われるか、想像できると思うんですよね」

升永「それはもう簡単に分かります」

岩上「推測できるわけですよね。我々普通の人間は中華人民共和国の憲法を見ると、中国にそんな自由はないと。あるとはとうてい言えないだろうと。そういう状態になるっていうのは分かりますね。中国とおなじことになるわけでしょ?」

升永「そう思います」

岩上「公安(※68)に連れて行かれちゃうわけですよ。共産党に対して批判的な言辞は何もできなくなるわけですよ。すごく目くじら立てるじゃないですか。あれだけの権力を持っているんだから、多少の言論の自由ぐらいよさそうなもんですけど。ああなっちゃうんですね。怖いですね」

升永「怖い。では次に行きましょう。現憲法の言論の自由を否定することは、憲法9条の改悪の比どころではない。その悪の程度は、憲法9条改悪の悪の1垓(ガイ)。垓って分かるでしょ。垓は10が20個つくわけよ」

岩上「これはでも、よく分かんないですよね。一、十、百、千、万、十万、百万、一千万、一億、十億、百億、千億、一兆、十兆、百兆、千兆、その次」

升永「京、一京、十京、千京、その次、垓なんだよ」

岩上「なんで先生こんなすごい数字を出してきたんですか?」

升永「僕はやっぱり知識人だから(笑)」

岩上「分かりやすくするためですね」

升永「憲法9条が悪いと思っているのは大間違い。だって憲法9条を改正されたって別に独裁は来ないじゃない。9条あったって、軍隊持つだけだもん」

岩上「9条2項だけだったら」

升永「9条を変えたところで軍隊ができるだけの話で、言論の自由を失うわけでもないし、独裁と瓜二つなわけでもない。ところが、今回の言論の自由をなくすということは、まさに独裁なんですよ」

岩上「電気消しちゃうのと同じですよね。暗闇になっちゃうんですからね」

升永「『なぜなら、現憲法の保障する民主主義国家が否定され、日本が独裁国家になるからと。民主主義国家を辞めることになる』」

岩上「いやあ、本当ですよ」

升永」「だから憲法9条を改悪したところで民主国家が変わる場合もあるけど、そうでないことだってあるわけでしょ。だって世の中で軍隊を持っている国で民主主義である国はけっこう多いじゃない。

 アメリカも民主主義だし、ドイツも民主主義だし、フランスも民主主義、イギリスも民主主義。むしろ民主主義と軍隊というのは別に相性が悪いわけでもないわけですよ。

 だから、日本が別に憲法9条改悪になったところで、民主主義を辞めるわけじゃない。だけど、言論の自由をなくしちゃったら、これは独裁だよ。だから言うんだよ。10が20個つくぐらい、倍の垓。垓倍だよ」

岩上「垓倍。垓倍っていうのは新しいですね」


(※61)中華人民共和国の憲法:1949年9月、北京で中国人民政治協商会議が開催され、統一戦線の代表により新しい政権建設についての話し合いが行われ、臨時憲法にあたる「中国人民政治協商会議共同綱領」が採択され、9月29日に公布された。同年10月1日に、中華人民共和国が成立。この「共同綱領」では、中華人民共和国を「新民主主義すなわち人民民主主義の国家」と規定した。

 このことは、同綱領第1条が「中華人民共和国は新民主主義、すなわち人民民主主義の国家であって、労働者階級が指導し、労農同盟を基礎とし、民主的諸階級と国内諸民族を集結した人民民主主義独裁を実行し、帝国主義・封建主義・官僚資本主義に反対し、中国の独立、民主、平和、統一、および富強のために奮闘する」と規定していたことからもうかがえる。

 この定義は現在も承継されている。1982年12月4日、第5期全国人民代表大会の第5次会議において「中華人民共和国憲法」への改正がされた(82年憲法)。これが現行憲法となる。

 中国では憲法が制定されてから1年から数年で制憲時の政治的基礎が根本から失われるという事態を繰り返してきたが、この82年憲法の実質的寿命は際立って長い。

 54年憲法以下3つの憲法はいずれも社会主義法建設時期に制定されたものであり、本82年憲法だけが、改革開放時期に制定されたものである。54年憲法は社会主義社会へ至る過渡期に制定されたものであるのに対し、75年憲法と78年憲法は社会主義段階の憲法という違いがある。しかも後者の2つの憲法は文革の後期に制定されたものであり、改革開放時期の政策とはまったく正反対の内容を有していた。

 このような関係から、本82年憲法は、文革の影響を完全に払拭した内容をもち、内容的には54年憲法を、基本的に継受しつつ、発展させた憲法と位置付けられる。82年憲法の大きな特徴として、それまでの3つの憲法とは異なり、第2章に「市民の基本的権利および義務(公民的基本权利和义务)」を第3章「国家機構(国家机构)」の前に置き、前者を後者より重視する姿勢を示していることがあげられる。

 しかし、1980年代にはいってからは、計画経済から市場経済へという経済改革が急速に進展したため、後追い的な修正が必要となり、4回にわたり改正されている(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/23jcimy)。

(※62)ネットサポーターズ:自民党ネットサポーターズクラブは、インターネットを介して組織する日本の自由民主党(自民党)後援会。会員数、約1万人。

 自民党が2度目の野党転落で政権奪還に向けて党勢拡大、若者を中心とした新たな支持層の開拓や将来のネット選挙に備え設立された。

 規約には次のように謳われている「1 党のパンフレット・ビラの配布およびポスティング活動」、「2 インターネット等を活用した各種広報活動・情報収集活動・会員相互の交流活動」、「3 党への提言」。(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/24Z0uFh)。

(※63)在特会:日本の市民団体。在特会は略称。在日韓国・朝鮮人が保持しているとされる「在日特権」を無くし、普通の外国人と同等の待遇に戻すことを綱領として設立された。

 保守的・右派的スローガンを掲げ、各地で「反日的」とみなした個人や団体への街宣・デモ・集会などを盛んに開催。しかし、特権問題にとどまらず、しばしば在日韓国・朝鮮人の排除・殺戮を主張することから、国内外の公的機関から排外主義団体、あるいは人種差別団体と看做されることがある(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1nHS6F7)。

(※64)南沙諸島:南シナ海南部に位置する島・岩礁・砂州からなる島嶼群である。岩礁・砂州を含む約20の小島(およそ島と言えるものは12)があり、これらの多くは環礁の一部を形成している。

 1945年第二次世界大戦終結まで領有していた日本が、敗戦に伴う戦後処理において1952年(昭和27年)4月28日発効のサンフランシスコ講和条約により、新南群島(南沙群島)および西沙諸島に関する権利、権原および請求権の放棄を国際社会に向けて明言した。

 しかしこの条約において領有権の放棄を明言したものの、具体的な帰属先については明言されていなかったため、この空白地域を巡って近隣諸国間での領有権問題が発生している。

 2016年1月2日、中国外交部が、ファイアリー・クロス礁で建設していた飛行場の完成と滑走路を使用して試験飛行をしたことを明らかにした。これに先立ちベトナムは、試験飛行に抗議する声明を発表している。

 アメリカのCSIS(戦略国際問題研究所)は2016年1月の報告書において、中国の空母打撃群保有の可能性と併せて、「2030年までに南シナ海が事実上中国の湖となる」と警鐘を鳴らしている。

 4月15日、中国国防部が、軍制服組トップの范長龍・中央軍事委員会副主席が南沙諸島を視察したことを明らかにした。4月17日、中国の新華社通信が、ファイアリー・クロス礁に中国海軍の哨戒機1機が着陸したと報道。中国が軍による南沙諸島での飛行場利用を明らかにしたのは初めてである(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/24XAme3)。

(※65)尖閣:日本、台湾(中華民国)、中国(中華人民共和国)がそれぞれ領有権を主張している。

 尖閣諸島は琉球王国から中国大陸への航路上にあり、その存在は古くから琉球王国や中国歴代王朝で知られていた。近代以前は琉球人が航路の標識として利用する程度で、人の住む地から遠く離れていたため動力船の無い時代は漁に来ても魚を持ち帰ることができず、島そのものにも利用価値はなく、漁に来たり、上陸居住する者はいなかった(参照:Wikipedia【URL】http://bit.ly/1Mph5vO)。

(※66)先生まだツイッターであまり書いてないじゃないですか:升永氏はTwitterアカウントを持っている。なお、升永氏はFacebookアカウントも所持している(参考:升永英俊Twitter【URL】http://bit.ly/1PzD5Dj)(参考:升永英俊Facebook【URL】http://bit.ly/1Uhf7UB)。

(※67)15万人フォロワーいます:2016年6月現在、岩上安身のツイッターアカウントのフォロワー数は16万人を超えている(参考:岩上安身Twitter【URL】http://bit.ly/1PzD5Dj)。

(※68)中華人民共和国の公安:中華人民共和国の警察を担当する官庁。管轄下の公安機関たる人民警察と人民武装警察部隊

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