いよいよ今週末に迫った東京都知事選挙。「孤軍奮闘」を訴えながら、実は自民党に在籍のままの小池百合子氏の優勢が伝えられる中、野党統一候補の鳥越俊太郎氏には文春・新潮両誌によるネガティブキャンペーンが張られ、失速が伝えられるなど、予断を許さない状況だ。
そんな中、7月26日(月)、新宿駅東口にて、鳥越候補の演説会が行われた。
応援には、沖縄から伊波洋一議員をはじめとし、早稲田大学教授・浅倉むつこ氏、作家の鎌田慧氏、落語家・古今亭菊千代氏、作家の澤地久枝氏、安保関連法に反対するママの会・諸星牧子氏、法政大学教授・山口二郎氏、作家の雨宮処凛氏等々が訪れた。
「安倍政権にNOをつきつけ」「都民の声をきく都政にするために」鳥越氏に投票を呼び掛ける応援弁士たちの話のあと、鳥越氏が現れた。
- 応援弁士 雨宮処凛氏(作家)、浅倉むつこ氏(早稲田大学教授)、鎌田慧氏(作家)、古今亭菊千代氏(落語家)、伊波洋一議員、澤地久枝氏(作家)、諸星牧子氏(安保関連法に反対するママの会)、山口二郎氏(法政大学教授)
- 日時 2016年7月26日(火) 18:00~
- 場所 JR新宿駅東南口(東京都新宿区)
待機児童をゼロに!待機高齢者をゼロに!
開口一番、鳥越氏が口にしたのは、「4つのよし」の公約。「私は、住んでよし!働いてよし!学んでよし!環境によし!の4つのよしを公約します」。石原慎太郎とその流れをくむ都政が17年も続いてきたことに触れ、「私は住んでよかったと本当に思える都政を取り戻す」と鳥越氏は語る。
続いて「ふたつのゼロ」を公約した。
ふたつのゼロとは、待機児童をゼロに。そして待機高齢者をゼロに。このふたつは東京のみならず現代日本が抱える深刻な社会問題でもある。「少子高齢化に待ったをかけるべく今すぐ手を打たねばならないこと」。
待機児童をゼロにするための取り組みとしてまず掲げるのが「保育士の待遇」。「保育士の給与は全産業の平均賃金の10万円も安い」。「まずこの現状を変えることから始めるべき」と鳥越氏は語る。
「保育所を訪問し、そこで3人のゼロ歳児の面倒をみていた28歳の青年にきいたところ、保育士の資格はまだとっておらず、給与は手取りで13万円ほどだという。28歳の青年がこれでちゃんと生活できるか、無理でしょう。都政がまったくこの問題に手を打ってことなかったことの証し」。そして「少なくとも保育士の給与は5万円アップさせる」と述べる。
▲街頭演説を行う鳥越俊太郎氏
団塊の世代800万人が後期高齢者になる10年後までに、福祉介護体制の徹底した整備を!
続いては待機高齢者の問題。「私もそろそろ、そういうことを考えないといけない歳だけれど、残念ながら私は元気」と、健康問題で揶揄されたことを逆手にとって会場の笑いを誘ったあと本題。
現在、日本は女性86歳・男性80歳の世界一の長寿国。しかしいわゆる健康寿命は、そこからマイナス10歳くらいで、要介護になる人が多いが、こうした要介護のひとをケアしていくシステムはまったくお粗末といわざるをえないのが現状。
「昭和25年前後に生まれた、いわゆる団塊の世代と呼ばれる人たちが現在800万人ほどいらっしゃる。この世代の人たちが2025年に75歳になって後期高齢者になる。2035年になれば85歳だ。しかし介護福祉施設は十分でないし、介護士の人数も足りてない。一人で独居していればそれをフォローできる体制が必要だが、それも整っていない」
「これは今までの都政がずっとサボってきたこと。今すぐに、こうした10年20年後の高齢化社会に向けて、介護体制を作っていかないと間に合わない」
働いてよし!学んでよし!若年層への公約
鳥越候補の公約、4つのよしの2つ目は「働いてよし!」。日本では残念ながら、非正規雇用者が全体の半数近くを占めてしまっているのが現状。
先の28歳の保育士の青年ではないが、これでは結婚もままならず、子育てにいたっては何をいわんやだ。これは東京に限ったことではないが、東京都の未婚率は日本全国でもだんとつに高い。まずは「東京が率先して先頭に立って、これに取り組んでいかなくてはならない」と呼びかけた。
そして「学んでよし!」教育の問題。教育を受ける権利は均等・平等であるはずなのに、現代日本の「格差社会」では教育の機会は均等にはなっていない。鳥越氏は、「少なくとも高校・高専に行くために経済的事情であきらめなければいけない若者がいるなら、給付型奨学金をそこに導入することを公約します」と述べる。
半径250キロ以内の原発はすべて再稼働禁止、最終的には廃炉に
4つのよしの最後、「環境によし」。
鳥越氏は述べる。「私は東京を核兵器のない非核都市にすることを約束します」。 そして「私と対立する女性候補は、かつて雑誌のインタビューで『日本には核武装もありえる』と話していました(※)。日本は広島長崎であれだけの被害を受けてきたのに…核武装なんてありえない」と、対立候補との差を強調した。
※小池百合子候補が、雑誌『Voice』2003年3月号(PHP研究所)の掲載記事「日本有事3つのシナリオ」で発言した。記事は、現・日本会議会長の田久保忠衛氏と、現・東京基督教大学教授の西岡力との鼎談を収録したもので、小池氏は「東京に米国の核ミサイルを」という見出しがつけられた部分で、「軍事上、外交上の判断において、核武装の選択肢は十分ありうる…このあたりで、現実的議論ができるような国会にしないといけません」と発言している。
「非核都市宣言の中身はそれだけでないです。もうひとつ持たないもの、それは原子力発電です」と、鳥越氏は続ける。
「日本にはアメリカから無理やり買わされた原発が54基ある。東京を中心に半径250キロ以内に、北は福島第一第二、東海第二、新潟柏崎、静岡浜岡原子力発電があります。これらは何かあったら東京も被害を受ける発電所。これらに対し、再稼働をやめるように申し入れ、最終的には廃炉にしていけるようにする」と公約した。
最後に鳥越氏は、「平和憲法を守る日本でありたい」「私たちはもう二度と戦争をしてはいけない」と力説、現行憲法を守る候補であることを強調。そして「寝る前に鳥越はこんなことを言っていたなと、もう一回思い出し、今週末の選挙では、鳥越と書いてください」と聴衆に呼びかけた。
沖縄では安倍政権にNOを突き付けた。沖縄の風・東京にも吹け