第2回「原発Yes or No? 公開討論会」 2012.9.8

記事公開日:2012.9.8取材地: テキスト
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 2012年9月8日(土)、東工大蔵前会館で、第2回「原発Yes or No? 公開討論会」が行われた。原発推進派と反対派の2人ずつ、4人が最初に自身が持つ原子力に関しての意見を述べて討論会がスタートした。

  • 登壇者 原発容認派:奈良林直 澤田哲生 原発反対派:後藤政志 小倉志郎
    司会:マエキタミヤコ(サステナ代表)

 まず反対派の後藤氏は、格納容器の設計を踏まえ「昔はベントのようなものがなかったが、それは当たり前。放射能は漏れてはいけないもの。再稼働をするならフィルターをつけなくてはいけない。ただし、他の壊れ方をする。フィルターをつけるのが重要なのではない」と、発言した。

 これに対し推進派の奈良林氏は、今回の福島の事故について「格納容器が破損され、飯舘村が汚染された。チェルノブイリの後にフィルター付きベントがつけられるようになったが、これがあれば飯舘村はこんなに汚染されなかった。安全対策を3.11まで取っていなかったのが問題である」と、あくまでフィルターがあれば今回のような甚大な事故が防げたとし、技術者などを批判した。

 反対派の小倉氏は「事故の実態の場合、原発の敷地内と外の住民の住んでいる区域と分けて考えないといけない。国民が判断するにはそこが大事。敷地内は事故現場の線量が高すぎるので、調査のために入れないと東電が言っている。しかも調査する予定もない。普通の事故なら現場で実物を見られるがそれが出来ない。敷地の外は広い範囲に放射性物質がばらまかれたり、避難をしたり食べ物を選ぶのに悩んでいる人がいる。事故の確率と被害の大きさをリスクと呼ぶが、今の事故の大きさはどのくらいか。私は無限大だと感じる。つまり許容出来ない大きさ。だから反対派の席にいる」と自身の立場を述べた。

 推進派の澤田氏は「事故の後、最終的に誰が責任をとるかを決めておかないといけない。結果、今も16万人が困っているけれど、除染で逃げようとしているとしか思えない。格納容器からどれだけ出てもいいのか。どこを安全の目標するのか。この問題は3.11以前に決められなかったが、いずれ決めなくてはならない。民主党のエネルギー政策をみると、この事故の責任の在り方をどうしているのかわからない」と政権に対しての不満を口にした。

 後藤氏は放射線の影響は難しいが、今回の事故の桁は何桁も違う。しかし、2号機を除いて爆発していないのがまだ良かった。今回の事故では、格納容器の圧力温度がなんで上がったのかもはっきりとわからない。そういう分析が必要なのに原因を津波のせいにするのは良くない。確率で判断するのは間違っている。事故の規模について考えなくてはいけないという。

 一方、奈良林氏は「今回の原因は津波」と真っ向から対立。事故調もだが、福島第一のレビデンスを見て分析すると津波が原因だとわかった。格納容器と圧力の記録はちゃんと残っているという発言に、会場からは「津波を事故の原因と明確に語ってもいいのか」という反論もあった。この意見について奈良林氏は、15時47分に津波が到着したと思われる。アイソレーション・コンデンサーがきちんと機能していたので、70から40気圧まで下がった。運転員が慌てて冷やしすぎた。つまりアイソレーション・コンデンサーがどのくらい大事なのかが共有されていなかったことが原因と発言。観客が失笑する場面があった。

 続いて「なぜヨーロッパに素晴らしい原発があるのに日本は真似をしなかったか」という問いに対して奈良林氏は「日本は災害に対しての考えが低かった。これは反省事項で、安全神話に乗っかって胡坐をかいていたのではないかと思う」と危機意識の低さを改めて指摘。自身が石油などの資源の問題があるから推進派であり、自分にとって何かメリットがあるから原子力を推進しているわけではないと言いきった。また、使用済核廃棄物に関しては3000年とか5000年、ミイラが保管されている。埋設するよりしっかりした貯蔵をすればいい。実際に青森でもやれている。たくさんディスカッションして、世界最高水準の発電所を作っていきたい。原子力は高いというが、風力などもコストがかかると述べた。

 小倉氏は、今回の地震は想定外だった。実は2007年に柏崎原発の近くで地震が起きて、7機とも設計用の地震化速度を超えていたことがわかった。2006年の新指針の解説に基準を決めておきながら、これを超える地震が来るかもしれないと書かれている。2009年の安全フォーラムでは、地震学者は「今後起こる地震の大きさはわからない。確率もわからない」と言った。そういう状況で、普通の感覚なら原発を止めると思う。3.11の前に一度原発を止めて、確認するのを怠ったのが原因だ。原発の安全は科学や技術ではない。普通の感覚を持った人が判断すべきだという。

 最後に澤田氏は、今回の事故で学びとるものがあるから、それを反映させなくてはいけない。原子炉は危険だけど上手く使えばいい利用も出来る。そういう認識を持たなきゃいけない。危険性は技術と人の力で抑え込めると思うと、原子力を上手に使うべきという発言し、閉会した。

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