【大義なき解散総選挙】「巨大企業が正しく納税すれば、法人減税も消費増税も必要ない」――『税金を払わない巨大企業』著者・富岡幸雄・中央大学名誉教授の直言!! 2014.12.1

記事公開日:2014.12.1 テキスト
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輸出戻し税という甘い汁――消費税増税の裏にある大企業の思惑

 11月18日夜、衆議院の解散を宣言するとともに、来年に予定されていた消費増税の先送りを明らかにした安倍首相は、同時に、3年後の2017年の再増税を必ず行うこと、「景気条項を削除する」ことを公約として掲げた。自公が再び過半数を占め、首班指名で再度、総理の座につけば、2017年にどのような経済状況であったとしても、再増税を決行するというのである。

 4-6月期に続き、7-9月期のGDPもマイナスを記録。さらに、4月の消費税増税以後、7ヶ月連続で消費支出がマイナスとなり、増税と景気の腰折れとの相関関係は明白であるというのに、安倍自民党は、再度の消費増税の断行を公約に掲げて選挙に臨もうとする。その裏には、法人税のさらなる減税と、消費税の増税をセットで望む財界の要求が存在する。

 消費税が上がれば、個人と中小企業にとっては、ダイレクトな負担増につながるが、輸出大企業やグローバル企業には痛みが少ない。グローバル企業は、子会社や生産拠点を法人税率の低い国に移し、現地であげた利益を配当で受け取るなどの様々な「避税」措置をとることができる。さらに、消費税率が高くなるほど「輸出戻し税」による利益を手にすることもできる。

 税金は輸出先の国の法律に従い、相手国から消費税を取ることはできないため、この不公平をなくすために、仕入れ原価に掛かる消費税分を国から輸出戻し税として還付される。仕入先の中小企業に消費税負担を押しつけてきた大企業にとって、まさに濡れ手に粟の儲けが得られる制度だ。

 一部のグローバル企業は「税逃れ」まがいの手法で負担を回避しているというのに、国際競争力の向上という美名のもと、法人税減税を強力に押し進めようとする安倍政権。12月14日に投開票日を迎える総選挙で、自公が大勝すれば、公約通り、2017年4月に再度の消費増税が行なわれ、海外のタックスヘイブンに所得を移すことなど不可能な一般庶民は、逃げ道もなくむしりとられることになる。そのあげく、消費は一段と冷え込み、不況は長引き、深刻化するだろう。負のスパイラルが続く。

 日本経済が奈落に落ちつつあるという時に、日本を代表するグローバル企業のトップから、神経を逆なでするような発言が飛び出したのは今年の5月8日のことだ。

 「一番うれしいのは、納税できること」。

 2014年3月期の決算会見でトヨタの豊田章男社長が語ったこの発言は、ネット上で「KY(空気よめない)」「傍若無人」として批判の的となった。豊田章男氏が社長に就任した2009年6月から、実に5年間もの間、トヨタが法人税を払っていなかった事実を、社長自ら、このようにあっけらかんと表明したのである。

 トヨタが利益をあげていなかったわけではない。事実はその正反対である。

法人税ゼロの衝撃――独走する強者トヨタの税回避

 2014年3月期連結決算によると、トヨタグループの世界販売台数は世界で初めて年間1000万台を突破した。売上高は前期比16.4%増の25兆6919億円、営業利益は6年ぶりに過去最高を更新し、73.5%増の2兆2921億円を達成。税引き前当期純利益は73.9%増の2兆4410億円を記録した。「世界一」の自動車メーカーとなった、トヨタの強者ぶりがはっきりと数字に表れた結果である。

 だが、トヨタがいくら業績をのばしても、日本の財政を潤すことにはつながらない。

 「一番うれしいのは、納税できること」。

 「社長になってから国内では税金を払っていなかった。企業は税金を払って社会貢献するのが存続の一番の使命」。

 「納税できる会社として、スタートラインに立てたことが素直にうれしい」。

 豊田章男社長の発言は、あたかも、これまで税を払いたかったのに払えなかった、とでも言うような口ぶりである。こうした厚かましい発言の裏には、「海外子会社配当益不算入制度」など、政府が主導してきた大企業優遇政策を徹底活用する巧妙な戦略がある。

 主な内部留保を意味する利益剰余金(連結)も2807億円にまで膨ませながら、中小企業、一般納税者をあざ笑うかのように「税逃れ」にひた走る巨大企業。この不公平な税制に真っ向から異議を唱えた本が、今、注目を集めている。元大蔵事務官で、日本租税理論学会理事の富岡幸雄・中央大学名誉教授の著した『税金を払わない巨大企業』(文春新書)である。

 富岡名誉教授は、同書のなかで、利潤に対する実際の納税額の負担割合である実効税負担率が低い大企業の実名を挙げながら、企業エゴによる利益至上主義を牽制し、公正な税制再構築への提言を示している。

 「具体的には、企業は法人税を法定正味税率どおりに納税し、受取配当金にも一定の税率を課し、優遇税制を見直すことです。現状での消費増税や再増税は、法人税を引き下げるためのバーターではなかったのでしょうか」

 「大企業の巨大な利益からすれば、法定正味税率で納税しても、企業の屋台骨はゆるぎもしません」

 富岡名誉教授は、こうした大企業優遇税制を見直すことが、単なる理想論ではなく、「借金まみれの日本の財政を健全化させ、活力と競争力のある企業社会に改造し、強い経済を創出して、国民経済を繁栄させ」るための手段となりうると考え、不公平な税制改革の必要性を積極的に訴え続けている。

 この富岡名誉教授に、12月1日(月)午後2時から、岩上安身が総選挙前の緊急直撃インタビューを行う。

 12月の衆議院解散総選挙においてアベノミクスの評価のみを争点に挙げる安倍首相。格差社会のさらなる深刻化が避けられない展望のなか、国民間に横たわる不平等の根源、ひいては長引く不況の原因となる税制もまた、主要な争点として挙げられなければならない。

 拡大する一方の格差の根源とも言える、不公平な税制への理解を深めるためにも、『税金を払わない巨大企業』は必読の一冊。岩上安身によるインタビューは、消費税増税を強行して景気を腰折れさせた安倍政権の政策判断と政治責任を正しく審判する上でも、見逃せない。

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