【岩上安身のツイ録】ISISの出現と世界情勢4つのねじれ 日本もすでに巻き込まれている〜内藤正典・同志社大学大学院教授への緊急インタビューを振り返って 2014.6.20

記事公開日:2014.6.20
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(岩上安身)

※6月19日の岩上安身の連投ツイートを加筆・リライトして再掲します。

 内藤正典教授への緊急インタビュー。ISISが席巻し、大混迷のイラクおよびシリア情勢が世界に与える影響についてお聞きした。印象に残っている点はいくつもあるが、そのひとつは、シリアとウクライナ情勢を一体ととらえていたこと。ウクライナでの出来事を「意趣返し」とも表現された。

 米国がウクライナの内政に露骨に手を突っ込んで悪化させているのは、昨年夏、シリア攻撃をロシアの巧みな外交によって止められた「意趣返し」の要素が多分にある、ということ。シリア・イラク情勢とロシア・ウクライナ情勢はつながっている。

 そのことをありありと示すニュースが、インタビューを終え、京都から東京へ戻ってくる間に入ってきた。ウクライナ東部に、空爆までして攻撃を加えていたウクライナ大統領が、一転して、数日中に軍事作戦停止することを表明したのだ。

 ウクライナにとって最も深刻な問題はロシアに依存している天然ガスの供給がストップしてしまう問題である。2ヶ月に渡りロシアと交渉を続け、値引きも引き出したが、価格で折り合わず、交渉は決裂し、ガスの供給を止められたばかり。

 ガスの元栓を締められて音を上げたようにも見えなくはないが、そうであるなら、交渉を粘って継続していたはず、とも思える。ここへ来て、ロシア相手に強気一辺倒の姿勢から一変したのは、イラクにおけるISISのあっという間の台頭と無関係ではないのではないか、と思えてならない。

 昼間、内藤教授が言われていたように、ISISの台頭によって、敵同士が手を握り合わなければならないねじれがあちこちで起きている。まず、第一に、スンニ派の過激派であるISISにより、シーア派のマリキ政権が脅かされ、それに隣国のイランが反応して、ISISに対する戦いを呼びかけている。

 マリキ政権の後ろだてとなっていた米国は、これまでイランを攻撃すると脅していたのに、一転してイランと接近する姿勢を見せている。敵の敵は味方、というねじれ現象の、その一である。

 ねじれ現象のその二。ISISはその名前「イラクとシリアのイスラム国家」が示すとおり、イラクとシリアで活動している。

 ISISは、シリア国内では世俗政権であるアサド政権に反対し、戦っている。アサド政権の後ろだてとなって長年支えてきたのはロシアである。アサド政権はヒズボラ、ハマスを支援しており、イスラエルにとっては目の上のたんこぶだったため、イスラエルと米国はアサド政権の打倒を目論んだ。

 ところがISISを叩くと、これまで打倒しようと思っていたアサド政権をアシストすることになる。これが第二のねじれ。

 そして第三のねじれが、ウクライナである。ISISの掃討を優先してアサド政権の存続を一転、認めるとなると、米国としては、その後ろだてであるロシアと揉める理由も希薄になる。

 米国にとっては、キエフ政権の背中を押して、不必要にロシアを揺さぶり続けてきた意味がなくなる。昨年秋からキエフでやってきた工作は何だったんだ? ということになる。

 実際、ウォールストリートジャーナルは、自虐的に、「ロシアはきっと『だから言っただろう』と言うだろう」、というコラムを載せた。これがねじれのその三である。

 ちっぽけなジハーディストたちが、三つの大陸を股にかけて世界を振り回すこととなった。日本もこの渦の中にある。こともあろうに、米国の輸送艦が日本の民間人を救出して輸送するので護衛しなくてはならないなどと、首相が記者会見でおよそありそうにない想定を例にあげ、憲法解釈を一内閣で変更して、米国の言われた通りに自衛隊をペルシャ湾に出そうとする。

 ねじり鉢巻で飛び出そうとした途端、仮想敵がコロっと変わる。あれ? イランじゃないの? ISISってなに? アル・バグダディって誰? 何もわからず、パシリに使われる。余計な恨みを買いに行く。

 ついでに言っておけば、ねじれはまだある。その4。米国にとって、中東における最重要な親米イスラム国家サウジアラビア。そのサウジが「武装勢力に資金援助している」と、イラクのマリキ政権が非難声明を出したのである。

 米国はただちにこの非難声明をたしなめた。両者にもめてもらいたくないからだろうが、しかし、サウジがアルカイダ系の武装組織に援助を行っているという情報はこれまでも囁かれてきた話。今回、マリキ政権は、自分たちの政権の基盤まで危うくなっていたたまれず、叫び声を上げたのだろう。

 イスラムの聖地を二つ抱え、世界最大の産油国でもあるこの国は、スンニ派の盟主をも自認しており、スンニ派の過激派であるアルカイダやその派生組織であるISISにひそかに援助を行ってきたと囁かれてきたのだ。

 サウジには謎が多い。およそ自由と民主主義とは相容れない国なのに、米国はなぜか、この国の専制体制には寛容である。ほかの独裁国家には目くじら立てるというのに。オイルショックのあと、溢れかえったこの国のオイルマネーは米国へと還流したし、80年代後半、サウジは石油を増産し、石油価格の低迷に貢献し、その結果、外貨獲得にソ連は苦しんで、ソ連崩壊への一因となった。

 現代史の折々に、米国をアシストしてきたのがサウジなのである。そのサウジが、こっそり、スンニ派過激派を支援してきたという疑惑は、何を物語るのだろうか。

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「【岩上安身のツイ録】ISISの出現と世界情勢4つのねじれ 日本もすでに巻き込まれている〜内藤正典・同志社大学大学院教授への緊急インタビューを振り返って」への1件のフィードバック

  1. @megumegu1085さん(ツイッターのご意見より) より:

    シリアとウクライナ情勢を一体ととらえていた

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