あるメーカーに勤めている大学の同級生から上海に赴任した、との葉書。今日、電話したら元気な声で、「おい、何か取材とかないのか、上海に来いよ」と。以下、友達との会話。10代の終わりからの付き合いなので、俺、お前の、ざっくばらんな口調なのはお許しを。

　岩上「あれ、中国語できたの？」。友人「いや、全然。ちょっとは勉強したけど」。岩上「ニイハオとか、シェーシェーとか、ウォーアイニーとか？」。友人「ウォーアイニーはまだ、早いな」。岩上「まだって笑。それにしてもなんで上海？ お前んとこの会社も、グローバル化？」

　友人「あのさ、うちの会社の去年の売上高1兆円だよ」。岩上「えっ⁉︎」。友人「社員20数万人だよ」。岩上「げっ⁉︎ その数は日本人も外国人も入れて⁉︎」。友人「そう。そのうち日本人は2万人くらいだけどね。ほとんど外国人。うち、今、国内生産は5%ぐらいだから」。

　岩上「グローバル化で、国内空洞化の典型じゃないか。じゃ、20数万人が社員と言ったって、外国人なんだから非正規なんだろ？」。友人「いや、正社員。今、中国では非正規で使えない。正社員で雇え、と言われている」。岩上「ええっ？」。

　友人「非正規で2年使い、もう2年使うと、正社員で雇え、となる。中国人は非正規で安く使えるなんて昔の話なんだわ」。岩上「お前の上に中国人の上司がいたりするの？」。友人「そりゃいない。みんな日本人」。岩上「少数の日本人が多数のアジア人を使う構図か」

　岩上「でもアジアで正社員の雇用を生み出しているなら、日本国内でも正社員の雇用を生み出せよ。安倍政権の産業力競争会議では、『日本人の雇用は9割非正規にしろ』と東大のトンデモ教授が言っていたりする。他方で日本資本が中国で正社員増やしているなんて世間の人間はほとんど知らない」

　友人「まあ、海外の現地法人だけどな。でも、正社員化は進んどるよ。岩上はどうなんだ？ テレビで出とるの、時たま見とるぞ」。岩上「ネット見てくれ、ネット。ぐぐれ」。友人「あ、俺、機械ダメなんだわ。ネット使えんの。この携帯もどうやって出たらいいんか、わからなかったりするの」

　岩上「ぐあーっ！この時代にネットもできない、ケータイもろくに使えない奴がグローバル企業の管理職なんかやってるな！ 日本には有能な若者が非正規でたくさん働いてるんだ、お前のかわりに日本の若者を正社員で雇えっ！」。友人「うははは。岩上、上海に来いよー。部屋広いから泊まれるぞ」

　岩上「え、社宅がそんな広いの？」。友人「広い、広い。楽々泊まれる」。岩上「上海のビル群は、名古屋、大阪は楽々追い越したと聞いているけど、どんな感じ？」。友人「いやいや、名古屋、大阪どころか、東京も全然かなわんだろ。高層ビルが林立している市街地の広さが違う。100km四方」。

　岩上「本当か？お前、昔っから話を盛るからなぁ」。友人「いやいや、三千万人ぐらい住んどるだろ。えらい規模だぞ。桁違いだぞ」。岩上、そういえば、中国のメディアから取材申し込みあったな。返事、まだしてなかった」。友人「中国でも見られてるの？」。岩上「ネットだからね」。

　岩上「大気汚染や水、食べ物の汚染は？」。友人「それはたしかにあるし、気をつけないかんけど、でもみんな生きて生活しとるからなあ。そんなもんだろ？」。岩上「たしかに、俺たちは昭和40年代に小学生だった公害世代だもんなぁ」。

　友人「岩上、来いよ〜」。岩上「お前こそ、ネタをくれ笑。なんでもいいが、やはり大ネタを。この前、台湾の立法院占拠の現場、取材に行ったよ。あのくらいの大ネタ、ないか」。友人「何それ、知らない」。岩上「え、何だって？ 台湾の立法院占拠の事件を知らない？」

　岩上「お前、ネットのニュースだけじゃなくて、テレビも新聞も見ないの？」。友人「そーんなことはないけどな。そんなこと、あったっけ？」。岩上「上海ボケかいっ。今度、そっちへ行って、お前のアパート拠点にIWJ上海支局を作るからな」。友人「おーおー、来てきて」。

　つーことで、近いうちIWJ上海支局が誕生するかもしれません。中国労働市場の現実も見てきたい。話を聞いていると、日本が一番ひどいのでないかと思えてきた。残業代ゼロ、非正規9割に、外人移民解禁、これまでやってよくメーデーに顔出せるな。呼ぶ方も呼ぶ方。糾弾会ならばともかく。