憲法の解釈見直しによって集団的自衛権の行使を容認しようとする動きが着々と進められている。3月25日には、自民党の総務会で、この問題を議論するための「安保法制整備推進本部」という新機関が設置されることが決まった。
また、集団的自衛権行使容認に向けて、安倍首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は、4月に報告書をまとめる予定となっている。この後に、従来の解釈を変更する閣議決定がなされると言われている。
集団的自衛権とは、ある国が攻撃を受けた場合、その国と密接な関係にある他国が共同して防衛することのできる権利である。従来、日本国憲法上、「容認できない」という見解が採られてきた。
1947年の施行から67年に渡って歴代の政権によって積み重ねられてきた憲法の解釈が、今、一内閣によって変えられようとしている。日本国憲法の三大要素のひとつである平和主義が大きく歪められようとしているのだ。
2014年2月5日、この集団的自衛権行使容認にかんする話題を中心に、防衛省のキャリア官僚の経歴を持ち、内閣官房副長官補を務めた柳澤協二氏に話をうかがった。柳澤氏は集団的自衛権行使は「日本の身の丈にあった軍事戦略」とかけ離れていると語る。
【インタビューのポイント】
・安倍政権の政策の特徴は、抽象的であること。安保政策も経済政策も、抽象的であり、そのために本質的な議論がなされないままに進められている。集団的自衛権の行使にしても、それによって何をしたいのか、何のために必要なのかが議論されていない。
・特定秘密保護法、国家安全保障会議(日本版NSC)、集団的自衛権は、『安保版アベノミクス三本の矢』と考えられる。これらによって日本は「戦争できる国」になる。
・安倍政権は、アメリカ追従なのか否か、はっきりしない。集団的自衛権の行使容認によって、日米同盟にもっと深くのめり込んで行くのかというと、そうではなく、アメリカとも対立する要因を孕んでいる。
・日本の強みは、戦争せずに何ができるかを示してきたということである。たとえば、武器輸出をしていないから軍縮や武器管理を国際的に主導することができた。今後日本が本当に世界をリードする大国でありたいのか考える必要がある。
・核技術抑止という幻想にとらわれているよりは、はっきりと核を持つという方針は捨てたほうがいい。
【インタビューの動画記事はこちら】安全保障のプロが語る、安倍「タカ派」外交の危険性~岩上安身によるインタビュー 第397回 ゲスト 元内閣官房副長官補・柳澤協二氏 2014.2.5