【第129-130号】岩上安身のIWJ特報!秘密保護法強行採決を安倍政権の「終わりの始まり」にできるか 〜海渡雄一弁護士インタビュー 2014.3.5

記事公開日:2014.3.5 テキスト独自
このエントリーをはてなブックマークに追加

(岩上安身)

 現在、従来の憲法の解釈を変えることによって集団的自衛権の行使を容認しようとする動きが加速しており、4月に政府見解の素案を出すよう準備が進められている。

 それに先立って「天下の悪法」の制定を許してしまったことを、私たちは忘れてはならない。わずか3ヶ月前の出来事である。

 2013年12月6日、特定秘密保護法が強行採決によって成立した。

 この特定秘密保護法については、憲法が保障する国民の「知る権利」を侵害する悪法であるとして、反対の声が高まった。本法案の審議中、国会前では連日抗議行動が行われ、国連人権高等弁務官などからの懸念も表明された。しかし、安倍政権はそれらに怯むことなく、拙速に法の成立を進めた。その意図は何だったのだろうか。

 特定秘密保護法に先だって、2013年12月4日には、国家安全保障会議(日本版NSC)が発足している。そして、年が明けてからは、憲法解釈の変更によって集団的自衛権の行使容認をごり押ししつつある。特定秘密保護法の制定は、それらの動きとセットで進められたものなのである。つまり、安倍政権は、日本が『戦争できる国』になるために法的整備を着々と進めているのだ。海岸線に原発を無防備にずらりと並べたままの状態で、である。

 この特定秘密保護法の問題点は何なのか、また、法律の施行を差し止めることはできるのか。いま、私たちに何ができるのか。元日弁連事務総長の海渡雄一弁護士に話を聞いた。

記事目次

  • 「バーナムの森は動いた」
  • 特定秘密保護法を廃止に追い込むことができる
  • 法案に賛成した議員と反対した議員を覚えておくこと
  • 今後、反対勢力が出てくるか
  • やっと出てきた逐条解説
  • 審議の最後にやっと出された法令協議
  • 採決は失敗していた?
  • 法律の施行を差し止めることはできるのか
  • 世界的な懸念の声
  • 秘密を保護するための他の法律
  • 秘密の期間60年のインパクト
  • 特定秘密保護法と原発との関係
  • 特定秘密保護法は戦争の準備
  • 自民党改憲草案はどういうものか
  • メディアは真の問題点から目をそむけさせているか
  • 弁護士はどうやって弁護するのか
  • 特定秘密保護法に共謀罪が含まれている
  • この法律を作られてしまった屈辱感を忘れないことが大事

「バーナムの森は動いた」

岩上安身「2013年12月6日、特定秘密保護法が参院で可決され、成立してしまいました。翌日、海渡雄一さんは『バーナムの森は動いた!秘密保護法強行採決、安倍政権の終わりの始まりだ!』(※1)という檄文を出しました。『バーナムの森は動いた』という言葉は、シェークスピアの『マクベス』の中の一節です。有名なフレーズです。『あり得ないことが起こった。王は倒せる』という意味の言葉です。

 海渡さんがお書きになったのは本当に重要で、そして、たくさんの人を励ますような文章です。ただの檄文ではなくて、冷静な分析もされています」

海渡雄一弁護士(以下、敬称略)「はい。まず、『バーナムの森は動いた!』とはどういうことか、お話します。シェイクスピアの『マクベス』で、マクベス王は反乱が起きるかもしれないと怯えます。そのとき、魔女が『バーナムの森が動かない限り大丈夫だ』と言いました。反乱軍が王に近づいてくるとき、彼らは森の木々を身に着け、楯のように偽装して進軍してきました。それが、森が動くように見えたのです。それを見たマクベスは『もう俺は駄目だ』と精神錯乱状態に陥っていきます。

 今、特定秘密保護法が成立し、安倍さんたちは、勝ち誇ったように『もう法が成立した、日本国民はバカだから、これからどんどん忘れていってくれるだろう』、『あとはアベノミクスとオリンピックでバンザイだ』と思っているでしょう。ですが、私はこれが『終わりの始まり』だと思っています。そういう思いで、この題をつけたのです。

 一応言っておくと、法成立の日の夜、自由人権協会の理事をされている升味佐江子弁護士が、僕に、『これだけの人が集まってやってるのだから、これはバーナムの森が動いたんだ』と言ってくれたのです」

岩上「黒澤明監督も、シェイクスピアの『マクベス』を翻案して『蜘蛛巣城』という映画を作りましたね。王の役の三船敏郎さんが、ザワザワザワザワ森が動くのを見て、ウォーッと吠えながら怯えるのを演じています」

海渡「安倍さんがまもなく、その三船敏郎さんみたいになる。そうならなければいけないと思います」

岩上「安倍さんのセリフは『嵐が去った』でした(※2)。『嵐が去った』のか、『バーナムの森は動いた』のか」

海渡「『バーナムの森は動いた! 秘密保護法強行採決、安倍政権の終わりの始まりだ!』は、法律がいったん成立しましたが、これからどういうことがやれるのかを一緒に考えたいという内容のメールでした。僕は、時々、こういうメール上の発言をしますが、今回は、たくさんの返信や励ましのお便りをいただきました。『ありがとうございました』というメールが多かったです。それには感動しましたね。一緒に戦ったみなさんの気持ちに即していたのだと思います」

岩上「なるほど。あと、海渡さんは温厚な方として知られているのですけれど、なんと、この秘密保護法反対の集会の場で安倍政権に対して、『ふざけるな!!』とおっしゃいましたね」

海渡「確かに言いました。最初に言ったのは、11月21日に日比谷の野外音楽堂で行われた一回目の野音集会でした。そこには1万人集まりました。そのとき、僕は、主催者を代表して挨拶をしました。みんなの党と維新の会が作った『首相を第三者機関にする』という修正案について話したとき、『首相が第三者機関になるというのは、ありえない』と言ったのですが、それを言った途端に『ふざけるな!!』という言葉も発してしまいました。事前に用意した原稿にはなかった言葉ですが」

岩上「この集会には、本当に1万人集まりました。我々も中継しましたが、大変な熱気でしたね。そして、海渡さんのアジテーション、迫力のある演説はすごかったです。海渡さんはなんで政治家にならないのかなと思いました」

海渡「いや、政治家は一家に一人で十分です(笑)。うちに一人おりますので」

岩上「福島みずほさんがジャンヌ・ダルクというイメージでした。海渡さんはオリバー・クロムウェル(※3)でしょうか」


(※1)『バーナムの森は動いた 秘密保護法強行採決は安倍政権の終わりの始まりだ!』全文掲載記事

(※2)2013年12月7日、特定秘密保護法成立の翌日、安倍首相は、それまで連日抗議デモで騒然としていたことを踏まえて、「今朝、目覚めたら公邸の周りが静かだったので、嵐が過ぎ去った感じがした」と発言した。(時事ドットコム2013年12月7日の記事参照【URL】http://www.jiji.com/jc/zc?k=201312/2013120700379

(※3)オリバー・クロムウェル(1599-1658) イギリスの軍人で、ピューリタン革命(清教徒革命)の指導者。議会軍を率いて王軍を破り、チャールズ1世を処刑した。(デジタル大辞泉より【URL】http://bit.ly/1bqafBb

特定秘密保護法を廃止に追い込むことができる

海渡「ありがとうございます。11月21日と12月6日に行った日比谷の集会には、いろいろな人たちが来ました。実行委員会も非常に超党派的にできています。ああいうものが実現できたこと自体が、日本の政治の歴史の中でも大変画期的だと思います。法律ができてから廃止運動をした例は、過去に事例があるのです」

岩上「それは重要ですね」

海渡「私達が一生懸命反対運動をやった盗聴法(※4)ができたあとに、それに反対していた民主党と社民党と共産党の3党は、廃止法案を出し続けていました。これは通りませんでしたが。

 ですが、そういうことを通じて、たくさん盗聴が行われるような実務が定着するのを妨げることができました。 廃止にまでは至らなかったけれども、そういうことをやった意味はあるのです。国民の意思に反するような法律ができたときの反対運動は、効果があるのです」

岩上「それはとても勇気づけられますね。いったん決まってしまっても、変えたり廃止したりできないのではない、ひっくり返せるということ。今回の法律はまだ運用していませんからね」

海渡「あと、一年間は簡単に廃止できます」

岩上「どういうことですか?」

海渡「施行は一年後です。だから、その間に廃止すれば、その経過措置(※5)もいりません。仮に一年経って、施行されてしまったら、一年以内に選挙がないので、今の国会の構成を変えること自体がなかなか難しいのですが、もし仮に一年経って、この法律が一部施行されて、特定秘密が指定されるというような事態になったとしても、経過措置を設けて、いま指定された秘密をどう扱うかということを決めて、元に戻してしまうということは可能です」

岩上「特定秘密保護法を法的に変える方法があるのですね」


(※4)盗聴法とは、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」の通称。2000年に施行された法律。組織的な殺人、銃器や薬物の取引などの操作において、捜査機関が犯人の通信の傍受をする場合の要件や手続きが規定されている。(デジタル大辞泉より【URL】http://bit.ly/1cmVTld

(※5)経過措置とは、ある新しい法律や制度などに移行する際に、その移行中や移行後に発生する不利益や不都合を減らすための一時的な措置のこと。(実用日本語表現辞典より【URL】http://bit.ly/1lA1xdn

(…サポート会員ページにつづく)

アーカイブの全編は、下記会員ページまたは単品購入より御覧になれます。

サポート会員 新規会員登録単品購入 550円 (会員以外)単品購入 55円 (一般会員) (一般会員の方は、ページ内「単品購入 55円」をもう一度クリック)

「【第129-130号】岩上安身のIWJ特報!秘密保護法強行採決を安倍政権の「終わりの始まり」にできるか 〜海渡雄一弁護士インタビュー」への1件のフィードバック

  1. ゆーやです。 より:

    バーナムの森じゃなくて国会の森に差し替えてもいいのでは?すんません、こんな突込みで。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です