【IWJブログ】事実無根の主張をばらまきながら人を傷つけるレイシストデモ〜足立区で初となる排外差別デモとそれに対する抗議 2013.11.14

記事公開日:2013.11.14取材地: テキスト
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(記事 ぎぎまき/文責 岩上安身)

「ついに来たか、西新井にも」ーー。

 突如、街中に現れたデモ隊を見つめていた地元在住の男性は、苦々し気な表情でIWJの取材に対しこのように答えた。

 2013年11月10日(日)、東京都足立区で初となる排外差別デモが行われ、集合住宅に囲まれる保木間公園を出発した約30人のデモ隊は、「外国人の生活保護不正受給を許さないぞ」などのシュプレヒコールを唱えながら、地元住民で賑わう日曜日の西新井駅に向かって行進した。

▲「生活保護にたかる外国人を許すな」と書かれた横断幕を掲げるデモ隊

▲「生活保護にたかる外国人を許すな」と書かれた横断幕を掲げるデモ隊

 今回の主催団体は日本人差別をなくせデモ実行委員会。日侵会(日本侵略を許さない国民の会)の菊川あけみ氏が先導した。

 デモの呼びかけ文には、以下のような趣旨が書かれている。

「足立区は外国人生活保護費が東京で800件(2012年)とダントツ。生活保護費も420億円で区民税収374億円を超し、受給者は約2万5000人で都内23区では最も多く、なんと生活保護費が税収を上回る体たらくの、足立区でデモを行います。今や日本の生活保護は大きな問題です。

 憲法25条が定めた”国民が最低限度の生活を営む権利”であるにもかかわらず、当の日本国民がなかなかもらえない生活保護。これこそ、日本人差別ではないでしょうか?」

安田浩一氏、「デモの主張が全く分からない」

 彼らは、生活保護費目当てに来日する外国人が足立区に多く存在し、不正受給者が多いがゆえに、税収を上回る生活保護費を区が負担しているかのような暴論を主張しながら練り歩いた。

「デモ隊のシュプレヒコール自体が破綻している」と語ったのは、取材に訪れていたジャーナリストの安田浩一氏である。

「外国人が生活保護を受給するのがいけないのか、不正受給がいけないのか、デモの主張が全く分からない。おそらく彼らは生活保護制度というものをまるで理解していないのだろう」

 安田氏はそう批判した。

外国人が生活保護を受給するのは「違法」ではない

 今回のデモのタイトルは、「違法!外国人 生活保護不正受給糾弾デモ in 足立」というものだが、安田浩一氏が指摘する通り、外国人が生活保護を受給すること自体が違法と言いたいのか、不正受給をしている外国人がいると言いたいのか、判然としない。

 仮に、外国人が生活保護を受給すること自体が違法であり不正だとするならば、それは全くのデマである。

 在日外国人が生活保護費を受給することは違法ではないからだ。

 厚生労働省によれば、外国人であっても、生活拠点を日本においている永住者、定住者、それらの配偶者や特別永住者などは、生活保護法に準じて生活保護を受ける資格があり、一方で、在留資格があったとしても短期滞在の場合は、受給資格が認められず、簡単に支援を受けることはできないのだ。

 外国人が不正受給しているケースが多いという指摘も、電話取材をしたところ、足立区は否定した。国籍の把握は不要であるとの認識から、外国人の方が不正受給しているというデータは一切存在していないという。根拠がそもそもないのである。

 一方、区の税収と生活保護費とを並べて「収支」を論じることにも意味がない。

 市町村及び都道府県が支弁した生活保護費の4分の3は、国が負担しなければならないと法律で定められているほか、残りの4分の1も東京都との合算であり、足立区が生活保護費を全額を持ちだしているわけではない。区の税収と同区内における生活保護受給者への支出はダイレクトに結びついているわけではないのだ。デモ隊らの主張は事実無根なのである。

▲「あれが今、ニュースで話題になっているヘイトスピーチを行っている団体です。私たちは人種差別に反対しています」と沿道の市民に説明するカウンター参加者

▲「あれが今、ニュースで話題になっているヘイトスピーチを行っている団体です。私たちは人種差別に反対しています」と沿道の市民に説明するカウンター参加者

デマを認めた直後のデマの上塗り

 これまでも、在日外国人に対するヘイトスピーチには、虚偽の宣伝や悪質なデマのプロパガンダが数多く含まれてきたが、10月31日、中野ゼロホールで開かれた「行動する保守運動の矜持とは何なのか?『行動する言論』の責任」という緊急シンポジウムの場で、在特会の広報局長の米田隆司氏が、ネットで出回っている「外国人は生活保護がすぐに手に入る」といういわゆる「在日特権」はデマであったことを認め、是正していく必要があると語っている。

 デマをデマである、と認めた点では、一歩前進ではあろう。しかし、在特会主催のデモにおいて、これまで、こうした「在日特権」についてのデマがさんざん行なわれてきたのは事実だ。プラカードでも、シュプレヒコールでも、そうした言葉が飛びかい、在特会幹部らはそれを放置してきた。今さら何を言っているのだろうかと鼻白む向きも多かったに違いない。

 今回のデモが悪質なのは、「在日特権」のデマ宣伝を在特会が認めてから2週間もたたないうちに行なわれたデモで、外国人の生活保護受給は不正であり、憲法違反であるというデマの上塗りをした点にある。合法の社会制度を違法であると事実無根の主張をばらまきながら公道を練り歩き、人を傷つけることは許されない。

地元男性、「みんなでうまくやっているのに」

 デモコースとなった竹ノ塚から西新井周辺には、新大久保でいうところのコリアンタウンのような町並みはないが、足立区は都内では新宿区と江戸川区に次いで外国人が多く居住するエリアだ。

 デモが散会した後に地元の男性に話を聞いた。

「(新大久保で行なわれているデモが)ついに来たか、西新井にも。この地域には外国人が多く住んでいる。問題が全くないわけではないが、それでもみんなでうまくやっているのに」とそう答え、眉をしかめた。

 これまで、新大久保の排外差別デモに抗議してきた足立区在住の男性も、カウンターとして参加した。

「自分の地元ということで、いつにも増して怒りと嫌悪感があった。次回も行なわれるのであれば、デモの前になんとか止めたい。区役所や警察署に苦情を入れたり、周囲にもこんなひどい連中がいるということを地元の友人などにも周知し、差別主義者を増やさないように声を高めていきたい」

 約1時間ほど続いたデモでは、「在日ゴキブリ朝鮮人」、「朝鮮人を叩きだせ」など、新大久保での排外差別デモと変わらない差別的なヘイトスピーチも飛び交っていた。先日、京都地裁が在特会に対し1226万円の支払いと街宣の差止めを命じる判決を出したにもかかわらず、何の反省もない。

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「【IWJブログ】事実無根の主張をばらまきながら人を傷つけるレイシストデモ〜足立区で初となる排外差別デモとそれに対する抗議」への1件のフィードバック

  1. あのねあのね より:

     殆どの人が感じているのはこのレイシスト団体の気持ち悪さだ。理由は簡単で、デモをしている彼らが集団ヒステリー状態だからです。集団ヒステリーになっている理由は事実に基づいてはおらず、デマに基づいています。4年前に論拠が崩れているデマを根拠に、憎悪感情と他民族に対する猜疑心だけが強くなった連中が集団ヒステリー状態でデモを行い各地を練り歩くという異常な集団なので、マトモな人は気持ち悪くて当然なのです。
     いつまでたってもこの集団のデモが行われるのは大脳を使う理論に基づかず、憎悪感情と猜疑心という前頭葉の働きに基づいているので論理的に話をしても理論対感情で話が噛み合わないのです。この感情と猜疑心に基づく集団ヒステリーは、つまり魔女狩りです。この世に存在しない魔女を見つけて、みんなで魔女狩りをしているわけです。
     では、彼らの行動が全く何の意味も意義も無いかと言うとそうではなく、徳島県教職員組合の事務所に侵入し業務を妨害したときは公安の情報を元に行動を起こしたと言われているし、反原発デモでの在特会の行動は公安と一体で街頭での行動なんか互いに事前に打ち合わせているとか、「目指す会」のリーダーが、公安に誰々を「排除しろ」とか「マスコミをどかせろ」なんて指令しているといわれています。全て週刊金曜日に鈴木邦男氏が語った内容です。公安警察と「在特会」がかなり近い関係があったことがわかったそうで、公安警察にとっては意味がある行動のようです。
     彼らの大久保や新大久保の行動は地上げの先兵である可能性が高く、足立区での行動もオリンピック再開発利権に関する地上げ目的の可能性が有る。生活保護世帯が多い都営住宅からの立ち退きへ世論を誘導する目的が有ると思う。全ては、オリンピック施設建設利権の為であると考えられる。猪瀬都知事や麻生副総理のこのデモに対する冷たい姿勢がそれを物語っている。
     
     
     
     

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