【第105・106号】岩上安身のIWJ特報!「地球温暖化と原発ルネッサンス―地球温暖化問題で、なぜCO2ばかりが取り上げられるのか?~横浜国立大学・伊藤公紀教授インタビュー 第2弾」 2013.10.2

記事公開日:2013.10.2 テキスト独自
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(岩上安身)

 9月末、およそ6年ぶりにIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が報告書を発表する。

 ロイターの報道によると(※1)、報告書の原案では、「1950年代以降に見られる地球温暖化は、95%以上の確率で、人間活動を主な原因とするものである」としており、また温暖化によって「21世紀末までに最大で82センチの海面上昇が起こる可能性がある」と指摘している。

記事目次

  • ツバルが沈むのは温暖化のせいだけではない
  • 1、2度の気温上昇では、むしろGDPの損害は減る
  • 海面温度の上昇は自然変動によるもの
  • 太陽は地球の気温・雨量にどういった影響を与えるのか?
  • 太陽から注がれる宇宙線が雲のできる原因?
  • IPCCのモデル計算と実際の観測値はまったく違う
  • 惑星の配置が太陽活動に与える影響
  • 火山が噴火すると気温は下がる
  • エアロゾルや植生は局所的な気候に大きく影響する
  • 地球温暖化の原因として「温室効果ガス」ばかりが言われるのはなぜか
  • 視聴者からの質問コーナー

 9月23日からストックホルムで開かれる政府関係者と専門家らの会議で報告書の最終版が承認されることになるが、おそらく多くのメディアはその中身の最もセンセーショナルな部分を取り出し、より一層CO2をはじめとする温室効果ガスの削減を訴えるだろう。当然、それが原発再稼働のあと押しにもなる。

 9月25日にお送りしたIWJ特報「伊藤公紀教授インタビュー第1弾」では、地球温暖化の根拠とされた「ホッケースティック曲線」に統計解析の明らかな間違いがあることや、IPCC報告書の著者らが意図的なデータ操作を行っていたことなどを紹介した。

 つまり、IPCCの報告書は無条件に信頼するべきものではなく、元となる研究データの中には、「地球は絶対に温暖化している」「温暖化は人為的なもの」などの結論ありきで作られたものがあるということだ。

 第1弾のメルマガでは、ここ20年で海表面温度が上昇していることについて、その原因が地球温暖化ではなく自然変動(海洋の垂直方向の熱移動によるもの)の可能性が高いことを伊藤教授は指摘した(※2)。気候変動の原因が、すべて「地球温暖化」で説明できるわけではないのである。

 今回お送りするIWJ特報「伊藤公紀教授インタビュー第2弾」では、さらにその他の自然変動による気候への影響を紹介している。例えば太平洋では、海水温や気圧がおよそ10年単位で大きく振動する現象が起こり、「太平洋十年振動」と呼ばれている。

 そのほかにも、太陽活動と地球の気温・降水量との関係や、局所的な土地利用の変化が気象に及ぼす影響、またエアロゾルと呼ばれる大気中の微粒子が地球規模の気候にどう影響するかなど、気候変動を起こすさまざまな要因を、伊藤教授は指摘している。

 その上で、伊藤教授は、温暖化の原因として温室効果ガスばかりが取り上げられる理由について、西洋人と東洋人の考え方の違いに言及し、地球温暖化の研究には多角的な見方が重要だと強調した。

 地球温暖化は、テレビや新聞では、「温暖化によって極地の氷が解け、海水面が上昇する。気温も上がる。だから、CO2削減が必要だ」などと単純な構図で語られることが多い。しかし、本号で伊藤教授が説かれているように、気候変動に影響を与える要因は数多くあり、温室効果ガスはそのひとつに過ぎない。

 科学的言説は、すべてが正しいとは限らない。うのみにする前に、冷静に、批判的に検討すること。それこそが科学的な態度であり、求められるべき情報リテラシーの作法であろう。

 地球温暖化について考えるきっかけのひとつにしていただきたい。

(※1)REUTERS「Experts surer of manmade global warming but local predictions elusive」、2013年8月16日
http://www.reuters.com/article/2013/08/16/us-climate-report-idUSBRE97F0KM20130816

(※2)2012年に、W.G.LargeとS.G.Yeagerが発表した論文『Observed Trends and Changes in Global Sea Surface Temperature and Air-Sea Heat Fluxes(1984-2006)』によるもの。

ツバルが沈むのは温暖化のせいだけではない

伊藤「前回のインタビューで、ツバル(※3)の海面上昇の問題や、北極圏のシロクマ(※4)の話が出たので、今回是非紹介させてください。

 まずツバルの問題です。1993年~2003年の海面上昇の大きさを見てみると、均質に海面が上昇しているわけではありません。ツバルはちょうど海面が上がる所にあります。一方で、モルジブ共和国(※5)は下がっています」

▲93年~03年の海面上昇の変化

(※3)ツバル:南太平洋に浮かぶ島国で、フィジーの北約1000キロに位置する。島全体として海抜が低く、温暖化による海面上昇で沈むのではないかと話題になった。

(※4)シロクマ:個体数は約22,000頭。正式な名称は「ホッキョクグマ」だが、今回のインタビューではシロクマと呼んでいる場面が多かったため、シロクマで統一した。
(参考:「WWF Japan HP」http://www.wwf.or.jp/activities/wildlife/cat1014/cat1050/

(※5)モルジブ共和国:北インド洋にある島国で、インドの南西約800キロに位置する。ツバルと同じく、地形が平坦で、海抜の最高点は2.4メートル。

伊藤「海面上昇の原因の内訳は、海水の熱膨張が半分ぐらいだと言われています。グリーンランドなどの陸氷も融けている。最近分かったことでは、汲み上げた地下水の流入が海面上昇の原因の約30%を占めていると言います。自然変動が大きいため、温室効果ガスが海面上昇にどれくらい寄与しているかはよく分かっていません。

 クワジェリン環礁(※6)におけるここ50年間の海面変動を見てみると、プラスマイナス10センチから20センチの間に収まっています。実際には、毎日の潮汐で数メートル変わります。さらに、気圧変化で数十センチ変わる。また、エルニーニョ(※7)では、西太平洋で海面が大きく下がります」

▲過去50年のクワジェリン環礁における海面の変動

(※6)クワジェリン環礁:太平洋のマーシャル諸島共和国にある環礁で、ハワイの南西約3900キロ、ツバルの北西約2500キロに位置する。クワジェリン島には米軍の弾道ミサイル試験場があり、約3000人の米軍関係者が居住している。

(※7)エルニーニョ南方振動(El Niño-Southern Oscillation、ENSO):太平洋赤道域の日付変更線付近から南米ペルー沿岸にかけての広い海域で、海面の気圧と水温とが連動しながら周期的に変動する現象のこと。一般的に、上記の海域で海水温が平年より高くなるのをエルニーニョ現象、その反対に低くなるのをラニーニャ現象と呼んでいる。

伊藤「エルニーニョというのは、太平洋の西と東の温度の上下なので、一方が上がれば、もう一方は下がります。このように、海面変動は場所や日によって大きく変わる」

岩上「しかし、メディアを通して、私たちはツバルが水浸しになっている映像や写真をよく見せられています」

伊藤「国立環境研究所の高橋潔氏は、原因は単純ではなく、特に社会的要因が重要だと述べています(※8)。70年代以降、ツバルは人口増加に伴い沼地を埋め立てて居住地を拡大しました。今までは高潮のときに海水面以下になるため、住んでいなかった(土地です)。また、もともと地盤がサンゴ礁で、スポンジのように穴が開いているため、季節によっては満潮時に水が滲み出してきます。

 実は、実際に調査をした人に聞いたのですが、アメリカ軍が飛行場をつくるときに、砂を掘って持って行ってしまい、埋め戻さなかったところがある。そこは広場になっているのですが、もともとの高さよりも低く(なってしまい)、満潮時には水が滲み出してきて、洪水のようになる。その様子がテレビによく出る。

 先ほど言ったように、人口増加で居住地を拡大するのは政府です。これはある意味、自分たちの失敗なんです。だから、『我々のところは温暖化で水没してしまう。先進国のせいだ』と言うほうが彼らにとっては都合がいい」

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