「核エネルギーを世界に売るということが、日本に経済的インパクトを与える」 ~デニス・ハスタート元米国連邦下院議長講演会(笹川平和財団主催) 2013.6.19

記事公開日:2013.6.19 テキスト
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(IWJテキストスタッフ・久保元)

特集:IWJが追ったTPP問題
※本講演は録画不可だったため、詳細なサマリーと全文文字起こしを掲載しました。

 1999年から2007年までアメリカ連邦議会の下院議長を務めた、デニス・ハスタート氏が19日、「米国政治の内側:第2期オバマ政権と米国議会」というテーマで講演を行った。笹川平和財団が招いたもので、共和党が下院の過半数を占め、政権運営に苦慮するオバマ民主党政権下での議会運営の課題や、日米関係への影響などについて見解を述べた。

 冒頭、ハスタート氏は、国会の多数派の手で内閣を構成し、「与党=政権」という構図が成り立つ議院内閣制による日本の国会と、議会選挙と大統領選挙がリンクせず、議会与党が必ずしも政権を担うとは限らないアメリカ議会との運営の違いについて、「日本の政党が持つパワーがうらやましい」と嫉妬している心境を吐露し、エピソードや苦労話を語った。

  • 内容
    講演:J デニス・ハスタート氏(元米国連邦下院議長)
    モデレーター:久保文明氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

 続いて、アメリカにおける選挙資金改革や、いわゆる「ティーパーティー運動」(保守派大衆運動)の影響力の拡大、共和党・民主党を問わず、穏健派や中道勢力が減り、保守色やリベラル色の強い議員が増えるという、アメリカ議会の分極化の問題について語ったほか、不法移民問題や債務上限問題、また、「財政の崖問題」などについても言及した。

 日米関係については、日米両国が、中国や韓国、北朝鮮、東南アジアなど、環太平洋諸国との対話を図っていくべきとしたほか、首脳間の対話を通じて日米の信頼関係の醸成を図っていくことの重要性を説いた。特に、日本のTPP参加について、「日米の経済ステージが整い、防衛協力関係にメリットをもたらし、強固な日米関係が環太平洋にもメリットをもたらす」と強調した。また、エネルギー政策で揺れる日本に対し、「LNGを安価で輸出することも可能である」とした。

 一方、米中関係については、「中国が、オバマ大統領と習近平国家主席との米中首脳会談の成果を意気高らかに強調しており、誤解に基づいて、これから勝手な振る舞いをするのではないか」との会場からの質問に対し、「アメリカでは『チャイナスピン』(中国の情報操作)と報道されている。中国は、なるべく良いところばかりを誇張しようとする。中国にあまりに行動の余地を与えてしまわないようにし、経済的にエンゲージメント(関与)を図っていくことも非常に有効」と私見を述べた。

 原子力についても言及し、「福島の除染活動を推進すべき」と強調したほか、除染活動や廃棄物処理について、「日本が一人でやろうとする必要はない。特にアメリカ、フランスなどにはコンソーシアム(団体)がある。私たちは日本のパートナーになりたい」と述べた。また、「福島の問題が満足な形で解決され、グローバルな信頼が寄せられる」という前提条件ながら、「これによって原発を推進していいのだと世界に自信を与えてくれる」とし、さらに、「日本の大きな能力として、核エネルギーを世界に売るということが、日本に経済的インパクトを与える」と語った。

【以下、全文文字起こし】

ハスタート氏:ありがとうございます。まず最初に、笹川平和財団に、今回これを主催してくださったことを感謝いたします。ここに立って、そして今のご紹介をいただいた時に、私の経歴を紹介する時に、子供時代にした悪いこと、いたずらなどが全然出てこない、それは幸いだと思いますが、今日私が話そうとするのは、アメリカの議会の政治と日本の国会の政治の違いということです。

 そして、そのスピーカー、議長の役割です。つまり、議長というのは、特にアメリカの下院の場合には、だいたいそのアジェンダそのものを方向づけていくという立場にスピーカーがなります。まぁ、上院の場合もそうですけども、それがいかにして、議会に回されるいろいろな問題に影響を与えるかということです。貿易ではTPPの問題がありますし、また、核の問題もある。そして、日本で今起こっていること、例えば福島原発事故、それがグローバルな、この核産業に関する見解を変えていくのか、そういう問題も採り上げられ、またワシントンでも、例えばいろいろ問題があります。

 移民、それから農業法案とか、そういういろんなものがあり、こうしたものが本当に議会を、その法令法案を成立させることができるかどうかということに、影響をおよぼしてきます。それから、また、ここで歳出・歳入のプロセスがあります。アメリカの議会にとってとても重要なのは、すべての税に関する法律あるいは歳出に関する法律は下院で始まります。で、下院の議長というのは、実際にこの税金と歳出の問題をコントロールする立場にあるともいえるでしょう。

 私は、まず最初に申し上げたいこととして、今日、私、日本の国会の方々とお目にかかりました。そのお話の中で、下院議長として、時に、私は、こうした党が日本の国会で持っているそのパワーに関して、嫉妬をしたこともあるというふうに言いました。つまり与党が政府であるわけですね。

 これは、アメリカは違います。私たちというのは、やはり政府が分断されている、分断されたプロセスです。ですから、議会のほうは行政府とは違うわけで、立法とも、それから司法ももちろんそれぞれと違うわけですけれども、多くの場合、私はその下院の議長として、この、例えば票の数のマージンが5席しか、2018議席(誤訳・正しくは218議席)あるわけですけれども、5人の人が別のほうの党についていってしまいますと、あるいはプレスに対して、彼らが自分たちの選挙区に帰る前に、この法案には自分はもう、自分は投票できないとか、そういうふうなことを言ってしまった場合には、にっちもさっちもいかなくなる。行き詰まってしまうのであります。

 ですから、ニュートギングリッチも先程ご紹介にありましたけれども、彼もその下院議長であって、彼はスピーカーでありました。私はリスナーでありました。私はリスナーでありました、スピーカーというよりも。私たちはいつも人の声に耳を傾けてきたんですね。そして、どうやったらこの問題を和解させることができるかと。こうした問題を和解させていかなければ、全然私たちの課題は進められないからです。5席というような、それぐらいの違いしかないと。でも今は違いますね。30も議席を、私たちは議席の数が野党(議会の野党=民主党)よりも多くなっています。ですから、今のその議会というのは、法律を成立させるには、前よりも簡単ではないかと思われるかもしれませんが、そうではないんですね。国会と、それからアメリカの下院についての違いです。

 例えば、日本の衆議院の場合には、誰が大臣になるのかだとか、誰が総理になるのかだとか、そういうことを決めるわけですね。そして、政府のトップの総理、まさに総理を決めていくわけで。でも、議会、アメリカの議会は違います。誰がそのスピーカーになるかということ、下院議長になるかということを決める。そして、そこには大統領があり、そしてアメリカの議会の中にも、行政府と渡り合うところはあるのですけれども、私たちはいろいろと法律を通していくということで、キャンペーンをしなければいけない。私は本当に、年間225ぐらいあちこちを回って遊説をしていました。もうほとんど地元に戻って、あるいは議会に戻ってと、いろいろ、もう私には余暇などないぐらい、私が8年やっていた間に、本当にたくさんあちこち選挙運動をいたしました。

 ですから、まず最初には、まず自分の下院議員が、また再選されるようにしなければいけない。新たな議員が選ばれて、まず今日の地位を守ることができるようにしなければいけない。でなければ、我々は力を持つことができないからですね。そしてまた、いろいろとお金を集めなければなりません。メンバーが、自分たちの選挙運動をするための選挙資金であります。

また、下院議長というのは、すべての法案のいわばコントロールもしていると。こうした下院を通ってくるすべての法案というのは、二つのことが必要です。まず最初に、本当に必要な票を、つまり(過半数の)218票を得られるということ。それがなければ法律として成立しないわけです。そしてまた唯一、下院議長の前にどの議題を先に取り上げるか、どれをあとに回すか、そういうことを決めなければいけないということで、非常に大きな権限を下院議長は持っているわけです。

 そうは申し上げましても、私、もう何年も、8年、下院議長をしていた時に、G8という、G20もいまはありますけども、G8のときに、いろいろ他の議会、国の議長ともお話しました。ドイツの下院議長、それから下院議員、フランスそしてイギリスの下院と、そういう人たちの議長とお話をすると、本当にパワーは全然ないということです、事実上の。彼らのその役割というのは、議会が会議をやっている時に、みんながちゃんと振る舞うべき振る舞いをするというふうに、いわば規律を守らせるという、そういうことが主な任務だといいます。

 でもアメリカの場合には、その議長は非常にパワフルな立場です。でも、もうすべての議長が、議会で自分のフットプリントを残したいと思います。そして自分の特徴はあります。私の場合、ギングリッチと随分違ったやり方でした。このギングリッチ氏はテレビにもしょっちゅう出てきたし、ダイナミックなリーダーで、ダイナミックなアイデアを持っていました。これはこうすればいいとか、時にはあまりにもダイナミックなアイデアだったので、問題が起こってきたのは、誰も後についてきてくれないという時もあったわけです。

 私の仕事としては、テレビにはあまり出ないと。あまり大きなアイデアは出さないけれども、むしろ人々をコンセンサスを作るためにまとめあげるという、それが私の役割です。ペロシ下院議長の時にもまた違いましたし、今のジョンベイナ―氏は、もっと対立的・対決的な役割をしています。ですから、それぞれ自分の独自のキャラクタリスティック、人格のようなものを持ってくるわけですね。役割として何をすべきかということ。そして時には、そのプラクティカルにどうやって物事をやっていくかというやり方も違います。

 日本の国会に関して、私がうらやましいと思うのは、その党がまさにパワーがあるんですね。自民党であったり公明党であったりした場合、あるいは民主党であった場合でも、その自分の票は党の指導部に属するんですね。その票に従わなければ、もうそこには次は選ばれないかもしれない。もう次は、自分は選挙人の候補にはなれないかもしれない。権力はすべて党に属しているんです。

 そして、党もいろいろ票を集めてきて、自分はいつもそこに出なければいけないんですね。あなたの票は期待されているからということで。でも議会の場合にはそうではないと。ここでまた、問題が違った、アメリカの問題が出てきます。アメリカ議会の今日の問題というのは、世界的に見ますと、例えば下院は今、もう行き詰まっていて何にもできていないと。そういうふうに言われますが、私はそうではなくて、ダイナミックであるということ。これはお金と政治ということですが、2002年、これは選挙資金改革法案が上院を通過し、これはマケイン氏、ファインゴールド氏などがスポンサーしたものであります。

 その結果、大統領選挙、2002年の場合には非常に変わりました。サウスカロライナの場合には、共和党のすべての支持、それからお金は、ジョージ.W.ブッシュの方に出し、そして、その予備選でマケイン氏を負かせました。あのときの予備選を、すべてを特徴づけたのです。ブッシュ氏がサウスカロライナで勝ったときに、共和党のノミネーションをもうそこで固めたということです。マケイン氏はこの状況に関して、あまりうれしくはなかったということで変えたかったんです。

 だから、党からお金とパワーを取り上げたいと思いました。党というのは、自民党や公明党や日本の民主党などと同じように、一般的には、これは統一意見を見つけていくものであるし、誰が一番いい候補か、そしてそれに支持を寄せるということ。日本の国会の場合には、そういう人たちをリスト化していき、そしてそれを公募のリストに入れてサポートするんです。お金もそれだけ与えて、メッセージが有権者に伝わるようにする。でも、マケイン&ファインゴールドの、あの法律というのは、その政治からそういうお金を取りにいって、これは連邦党だとか、州の党だとか、そういうところでお互いにサポートすることができない。

 そうではなくて、結局、政党からお金を取り上げてしまった。政党からお金を取り上げてしまうと、それがどこに行くのか。そしてアメリカの政策の場合、政治の場合にはリベラルなサイドにはお金はジョージソロスなどから来ましたし、そして当時は、本当に1000万ドルぐらいのお金を出していたと。そういう状況の中で、大統領選が戦われてきたと。共和党のサイドではお金はどこから来たというと、極右から来ています。

 もう何百万ものお金をこのプロセスに出していった。でも、外から来たお金、これは党の中から来たのではなくて、そうなっていきますと、党はどんどんコントロールを失っていきます。今日では、アメリカの議会は分極化してしまっています。つまり、そうした外のグループというのは、候補者のためのサポートを、お金を出さないと。その結果、私の友人が先日も言いましたけども、「私は今頃になると、自分の肩の後ろを向いて、自分の対抗馬は何になるのかということを考えるのだけれども、そうじゃなくて、今は、私たちは一緒にいる対抗馬よりも、まず、第一の対抗馬は誰なのかということを見る」というのですね。外の人がリベラルであれ保守であれ、非常に脆弱的な立場にある。

 そしてティーパーティー(保守派大衆運動)のような、そういう団体が、非常に大きな力を手にするようになるのです。それは、必ずしも普通の党の状況にはなくてもです。でも、連邦政府、アメリカのプロセスの中では、それを連邦政府が変えていく。そして、そこでまた、違った形での選挙資金改革が行われ、そして法律を変える。そして、法律があると、これはなかなか変えられないんですね。現状維持を皆さんは好みますから、そういう状況が続いていく。それが、非常に硬直状態を生み出していって、コンセンサスをなかなか生み出せないのです。

 私も、そのコンセンサスを見つけるのは非常に難しいとは思いますが、私が持っていた二百三十数席の中で、グループの中で200人ぐらいが、もしくは180人ぐらいが党の中道であったとして、彼らを中心として党の政治を邁進して参りました。20人ぐらいが、もう少しリベラル色が強く、また残りの20人が、保守色が強かったとしても、それらをまとめてコンセンサスを作っていくのが私の仕事でした。

 しかし、今日では中道の人々が減り、そしてまた、穏健派が減って、そしてまた、両極の方の人間が共和党でも、それから民主党においても増えてしまっています。リベラル側にも、それからコンサバ(保守)サイドにも同様であって、それは共和党・民主党ともに等しいことであります。ですので、保守的な、いわゆるブルドッグ的な民主党員は非常に少なくなって参りました。

 これが米国議会の動きなわけですが、移民問題ですとか、これなどは何らかの手を打たねばならないわけですが、イリノイなどでは、シカゴの40マイルぐらいのところでしょうか、ミシシッピ川のところにあるところですが、そこにおいては、その選挙区の2割3割はヒスパニックでありました。農業色も強く郊外色があって、そういった選挙区なわけですが、ハイスクール、私が住んでいるところでは45%がヒスパニックの子供です。

 ですので、移民法の改革は是非ともやらねばならないことであります。というのも、アメリカに暮らす人々がすべてレーダーにかかってくるように、不法移民が、いわゆる書類のない形でレーダーの下にいるようなことがあってはいけない。誰がどういった人であって、どこにいて何をしているのかというのを、つまびらかにしていくことが必要となってまいります。ただ、それに関してはコンセンサスがなかなか達成できない。

 というのも、こういった問題に関しては、国民の意見がわかれてしまっているからです。債務上限の問題もあります。この問題は、私が現職の時にもございました。連邦政府が常に債務をふやしてしまう。毎年、毎年、借金が増えてしまう。ただ、繁栄した政府であって多くの人々が社会保障費を出してくれ、そしてメディケアのお金を出してくれるとするならば、そのお金で賄うことができるわけですが、それがならないとなると、債務がどんどん増えていってしまいます。

 ですので、債務上限というのは、ある意味、人工的な天井であるわけです。ただ、予算を作る時には、この債務上限を作るとなると、それが自動的に設定されて決まりました。しかし、今日では債務上限をフックのような役割として、もしくはブロックのような役割として使ってしまい、そして、法案を阻止するような道具に使われてしまっています。

 例えば、税改革ですとかその他の改革、変化を起こしていこうとするときに、大きな変化を起こそうとするときに、グループを組んで、この債務上限の増額を阻止する。そうなってしまうと、それが離れるまで審議が進まないということになって、その反対派にとっては、とても大きなレバレッジ効果をもたらします。ですので、この債務上限の問題というのは非常に人工的な問題であって、これについて何らかの手を議会が打たなければならない問題だと思います。

 それからまた、財政の崖の問題、これも人工的な合意であると思います。大統領と議会の人工的な合意であります。債務を減らそう、そしてまた、歳出を減らそうということではなく、全面的に自動的に切ってしまうというやり方であります。こういった合意を作ってきたわけですが、自動的に、全面的に、歳出が削減されてしまっています。教育も、保険も、軍事も、同じような影響を受けてしまいました。

 ですので、その財政の崖問題は、どこから見ても、議会が何らかの妥協策を見いださなければなりません。そしてまた、皮肉なことに、例えば、飛行機が飛ばないだろう、電気がつかないだろうと、それからハイウェーが通れなくなってしまうだろう、というふうに言われていましたが、その閾値を超えたとしても世界はきちんと動いていました。ということから、こういった問題がアメリカの政治的なところにはあるわけです。

 二つのことについて、もう少しお話をしたいと思います。日米関係に関するお話です。今回来日をさせていただいた一つの理由、そしてまた、笹川平和財団と一緒にお仕事をさせていただいている理由でもありますが、アメリカの議会と日本の国会議員の交流の促進です。これは非常に重要な問題であって、20年にわたり議員でいました時に、私も国会議員の皆様と良い関係を築くことができました。こういった関係、議会の議員と国会議員の関係があると、対話が続けられます。

 そしてまた、互いの問題をより深く理解することができるようになります。そしてうまく協力体制を築いていくようになるのです。いくつか問題点について触れてみましょう。商業の分野において、中国と日本の、それから韓国やフィリピン、北朝鮮、そしてまた、ベトナムなどにも影響が出てくる問題ですが、一つの漁船と護衛船の衝突があったりすると、通商に大きな影響がもたらされます。ですので、私たちは対話を、日本とのみならず他の国とも、環太平洋で図っていく必要があります。そうすることで、こういった対立を回避していくためです。

 もう一つの問題は、福島の問題です。この福島の問題は、非常に重要な問題で、日本国民にとっても、どのようにこの問題を解決するか。なるべく満足度の高い形で、除染をしていくのが、日本の国民の皆さんの関心のあるところだと思いますが、今日、その時までは、3割、4割が原子力でしたが、現在のところ動いている原発は、わずか2基であります。

 安倍政権が重要な決断を下すことになれば、15%~20%の日本のエネルギー需要が原子力から来るということに戻りかねません。ということは、どういうことでしょうか。この福島の除染の問題ではなく、日本の人々の自信の問題です。日本にはエネルギーが足りない部分がありますが、日本のものづくり、世界の貿易商でもあり、そしてまた、日本はそれを行う力を持っています。ただ、それを行うためにはエネルギーが必要です。それができなければ、経済の立ち直りは遅れるばかりでしょう。

 それからまた、福島の問題は日本のみならずグローバルな問題です。というのも、アメリカにおいては、新規の原発を2基、3基作るということで合意が得られました。おそらく、造られることになるのではないかと思いますが、造られることは現状は難しい。というと、この信頼度の問題が起きつつあるからです。この原発の事故の汚染に対する自信度の問題です。また、日本の状況を見てみますと、日本の政府と協力し、また世界的にも協力し、そういった除染活動を推進していかなければいけません。

 三つ目の重要な理由としては、30年にわたり日本は研究を進めてまいりました。日本は六ヶ所その他の再処理施設を作ってまいりました。どのようにしてサイクルをまわしていくのかという研究を30年にわたってしてきたわけです。日本は、そういった核技術を世界に売る上で最前列にいます。この福島の問題が、満足な形で解決できれば、そのテクノロジーを世界中に売っていくという問題がようやく可能となりますが、現状ではそれがスタイミー(障害)化されてしまっています。

 それから、日米の問題でもう一つ挙げるとするならTPPです。これも福島と無関係ではありません。日本は、ますますLNGへの依存度を高めています。エネルギーミックスの中で。アメリカは過去30年、LNGの施設がいろいろと作られてまいりました。新規の発電容量が増やされてきたわけです。日本は、非常に高い価格で、石油関連のエネルギーを中東から買っています。ただ、自由市場において、このLNGでしたら、アメリカには豊富にございますので、LNGを日本に輸出することも可能ですし、より安価で輸出して差し上げることができます。

 そうなりますと、日本のエネルギー供給上だけでなく、みんなにとってプラスであります。これらの問題は、いずれも非常に重要な問題であり、また分かつことができない問題です。だからこそ、日本の議員とアメリカの議員、両国政府の対話を大統領と首相の間で進めていくことも非常に重要なのです。

 というのも、それができれば、日米の経済ステージが整うだけではなく、防衛の面においてもメリットがあるからです。日本がより大きな役割を国防で果たすようになったとしても、日米防衛協力というのはなくなるものではありません。ですので、信頼関係を互いに保っていくこと、これこそが問題解決を探る上での最善の道だと思います。それからまた、日米関係が強固であることによって、環太平洋全体にメリットがあります。これは非常に重要なことです。

 というのも、中国の脅威という問題もありますし、日本は「大統領が中国と距離が身近すぎるのではないか」という意味でのフラストレーションを、日本が感じてらっしゃったこともあるとは思いますが、日米間で強い関係を築いていく、これがこの地域全体に安定をもたらすのだと思います。では、ここで私の話は終わりにして、お集まりの皆さんから質問をお受けしたいと思います。

◆質疑応答

モデレーター(久保氏):有益なお話であったかと思います。日本の政党の力が非常に強いのがうらやましいというお話が印象的でした。ただ、日本の議院内閣制は、時々政党の力がそれほど強くなくて、造反議員がたくさん出たりして、実はそれほど楽ではないという部分も時々あります。さて、私のは、少し、今のハスタート議長のお話を受けて、いくつかの質問をさせていただきたいと思います。実は、本当はうかがいたいことが30ぐらいあるんですけども、時間の関係で四つぐらいに絞りたいと思います。

 本日、ここに来る前にアメリカの世論調査を見てまいりました。議会の支持率は、低い世論調査ではエコノミストだったでしょうか、議会を支持するのは10%、支持しない71%。リアルクリヤーポリティクスの平均値は、議会の支持率14%で支持しないが76%でした。どうして、オバマ大統領の支持率は、最近50%をちょっと超えていたところが、43~44%まで下がってきて、これはこれで、アメリカの中ではニュースになっておりますが、どうしてアメリカの議会の支持率がここまで低いのかということについて、あるいはアメリカ国民は気にしていないのかもしれませんが、この辺についてご意見をうかがえればと思います。

 もう一つは、アメリカの議会のイデオロギー的な分極化についてであります。この辺については、ハスタート議長からすでにお話がありました。デッドシーリングという言葉がありましたが、連邦政府が借り入れることができる限度について、議会が承認を与えない可能性が今年あります。ハスタート議長としては、これが争点になるということについてどのような評価をされていますでしょうか。

 結構、共和党の中に、ティーパーティーが2010年の中間選挙の後に台頭して、進出して、影響力を拡大し、デッドシーリングというのが2011年の夏に大きな争点になったという経緯だと思います。デッドシーリングというのは、議長がお話された通り、長らく争点ではなかったわけですが、最近急に争点になってきました。まさに人工的に作られた争点ということであるわけですが、これは、あまりここまで政治問題にすべきでないというのが議長のお考えでしょうか。

 あるいは、そういう意味では共和党の保守派、あるいはティーパーティーの人々は、少しイデオロギー的に行動しすぎているふうにお考えになっていらっしゃるのか、あるいはそうではないというふうにお考えになっているのか、その辺についてご意見をおうかがいできればと思います。

 三つ目は、アメリカの政治について、いろいろなところで話をしている時に、オーディエンスの方からも非常によく受ける質問なんですが、共和党の将来はどうなるのかというふうに心配している日本人が、結構多いような気がします。必ずしも共和党のファンではない人も心配しているのかもしれませんけども、つまりマイノリティーの人々、すでに今日のお話にもありましたように、ヒスパニックの人口がどんどん増えております。

 今日の話でも、ハスタート議長の地元の高校でも45%がヒスパニックだと。ただ、今の共和党の立場は、上院の共和党議員はやや妥協的になったようですけども、下院の共和党の議員は、移民法改革についておそらく賛成しないのではないかというふうに思われますが、他方でマイノリティーの票、人数、人口がますます増えていく中で、共和党はマジョリティーの政党としてとどまることができるのかどうか。この点について、やや中長期的な観点からお話をうかがえればというふうに思う次第であります。

ハスタート氏:どうもありがとう。もし、あと30分あれば、そうした質問は全部お答えしますよ。でも、まず最初に申し上げたいと思います。議会に対する支持率に関して、この議会への支持率というのは、私が議長をしていた時は56%だったんですね。70%ではありませんけれどもね。56%もあったんですよ。一番最高だったと思います。

 アメリカの有権者が望んでいるのは、議会がうまく機能することです。もう行き詰まり、お互いの非難のしあい、なすりあい、それは嫌なんですね。政府に機能してもらいたい、アメリカ人はプラグマチックなんです。ちゃんと仕事をして、そして成果を出してもらいたいと思っている。でも今、それが問題になっているんです。それから、議会の中での分裂というんでしょうか、こうした民主党、それから共和党といいますけれども、本当にもっと哲学的な思想的な違いが、共和党の考え方と民主党の考え方の間にあるんですね。それはつまり、時にこれが全面に出てくる。

 私の友人が、彼は、少数等のリーダー、ゲッパートさんでしたけれども、彼が言いましたね。「私たちと革命との唯一の違いは、私たちがライフルやピストルで戦うのではなくて舌戦だ」と。「言葉で戦っていることだ」と。そして、こうした舌戦をし、そしてディベートをして、そして投票する。その結果を私たちは受け入れるんですね。政府が交代する、そして法律法案が成立していくと。これが、民主主義の良いところなんです。でも、私たちは何についてその議論をするか。それは思想的な違いなんです。

 一つ感想を述べたいと思います。私は、何年間も日本の政党を見て来ましたけれども、もっとパーソナリティーに基づいていますよね。その人たち、人間、個人個人に基づいていると。でも、アメリカの政治的なスペクトラムから見ると、そうではない。個人の性格だとかそういうことではなくて、考え方、思想に基づいているんです。

 ですから、債務の上限ということを考えたときに、これはアーティフィシャルな状況だと申し上げましたが、こうした債務上限というのは、自分たちの法案を通すために、てこの力ともなりうるわけです。それも大きな法案のと。小さなものでは嫌なんです。減税をしたい、あるいは質を上げたい、あるいは税金の改革をしたいと。これは非常に大きなものであり、またそのためには犠牲も払わなければいけないと。それは債務の上限に。でも最終的には、債務の上限は交渉の後、成立すると。政府が機能しないということは許せないと。

 それから最後に、ティーパーティーですが、私、多くの人に話しました。ティーパーティーの人達ですよ。二十何年か前、1992年ですね。ま、本当に時間がどんどん早く過ぎ去るんですけども、1992年、私たちはペローの党がありました。ペロー党ってご存知ですよね。テキサスの人です。彼は総選挙で19%を獲得しました。そして、ビルクリントンは、ジョージ・H・W・ブッシュを負かしたのではなくて、ペローの党がブッシュのところから票を送ったわけです。

 ですからクリントンが勝った。これがアメリカのダイナミクスを変えたんです。でも、ティーパーティーの人達は、彼らはごく平均的なアメリカ人なんです。もう債務があるのも飽き飽きした。税金も嫌だ、増税も嫌だ、政府がどんどん進出してくる。自分たちにあれせよ、これせよと命令する、こういうことは嫌だと。もううんざりだという人たちなんです。そういう人たちがティーパーティーに入っていく。

 でも、ティーパーティーが最初に出てきたときは、まずオバマ氏への医療保険改革、こちらの方を焦点に当てていたんですが、今ではいろいろ争点が分極化しています。これは超党派的で、共和党も民主党もそうでした。でも今は、ティーパーティーはもっと共和党寄りになっていますけれども、でも変わっていきます。私は1974年ですか、私はまだ政治をやっておりませんでした。ニクソンさんがホワイトハウスを発った時、去った時で、共和党はもうこれで終わりだねと言ったんですが、6年後、ロナルドレーガンが大統領になりました。ですから時計の振り子のように動き、いずれ解決していくわけです。私はそういうふうに強く信じています。

 人々は政府に正しいこと、やるべきことをやってほしいと期待している。でも正しいことというのが何なのかということで、残念ながら、人々にはいろいろな意見の違いがある。でも、民主的なやり方ではこれは解決されていきます。それから、これからの共和党と、それからヒスパニック系ですけど、私はヒスパニック系というのは、共和党への一つの機会だと思います。ヒスパニック系の人は考え方が保守的ですね。それから、強い宗教的なベースを彼らは持っています。

 それから、アントレプレナーです。ビジネスをどんどんやろうとしている。これは共和党の価値観とよく似ているんです。共和党がしなくちゃいけないのは、私たちの党の一部になってもらいたいよ、ということをメッセージとして伝えたい。そのためには三つしなければいけないでしょうね。ヒスパニック系のサポートをやるために、まず三つのうちの一つ。特にヒスパニック系でも、この低所得層はヘルスケアが必要です。コミュニティヘルスケアでもいい。でも、そのような医療保険をヒスパニック系の人にも提供しなければいけない。自分たちの言葉で、スペイン語で診てもらえるような人です。

 それから、教育の機会も与えなければいけない。そして、アメリカに移民してきた人たちほとんどそうですけれども、そういう人たちというのは、より良い生活を求めてやってくるんです。もっと良い経済的な生活、家族のために、それを求めてやってくるので、ヒスパニック系の人たちに・・・【00:53:39 ここで途中の録音がばっさりカットされています】・・・この三つのことが重要です。共和党はそういう問題に対応していければ、共和党の将来はとても明るいと思います。

それから上院のお話をなさっていましたが、この上院の共和党というのは交渉がうまいと思いますね。というのも、多数党じゃないからこそうまいんです。なので、より右派の共和党上院議員などであったとしても、民主党とうまく折りを合わせようとする。というのもそれを動かしていく唯一の道であるからです。

モデレーター(久保氏):うかがいたいことはまだまだありますけども、フロアーの方からご質問を受け付けたいと思います。

サカモト氏:私の質問は、先日行われた、アメリカオバマ大統領と、中国の習近平氏の会談の内容についてであります。会談の後、中国側は非常に意気高らかに、世界の二大超大国の会談が実現したと言っています。しかし、アメリカの方からあまりニュースが聞こえてこない。私が恐れるのは、中国がこの会談の後、勢いづいて、会談の内容をミスカリキュレーションするんではないかと。特に尖閣問題に関しては、オバマ大統領は「主権の問題にアメリカは介入しない」しかし、「これは力ではなく外交で解決してくれ」と言ったと聞いております。

 しかしせめて、前の、マダムクリントンが「尖閣諸島は、日米安保条約の対象である」と、こう言っていただいた、そのくらいのことを言っていただかないと、何か中国がミスカリキュレーションして、勝手な振る舞いをするんじゃないかという気がするんですが、いかがでしょうか。アメリカではどういうふうに受け止められているんでしょうか。

ハスタート氏:アメリカの報道としては「チャイナスピン」と言われていますね。チャイナは、なるべく良いところばかりを誇張しようとするというものであって、まあ、これは政府の見解ではなく、私の個人的な見解で申し上げているんですが。私、もちろん大統領を批判するつもりはありませんが、大統領側も外交的な交渉が必要である、それが行くべき方向であるということを、オバマ大統領もいうべきだと思います。

 で、またここも私見ですが、中国にあまりに行動の余地を与えてしまわないようにしなければいけないと思います。中国を、経済的にエンゲージメントを図っていくということ、これも非常に有効なものであると思います。これができれば、そのためには、日米の強固な関係がまずは大切です。これによって、この地域に安定がもたらされます。それは先程申し上げましたし、だからこそ、これをやっていかなければいけないんだと思います。ケリー国務長官がぜひともその方向性に行ってくれることを望みます。

ケン・オータ氏:ハスタート議長、素晴らしいスピーチありがとうございました。二つうかがいます。ファインゴールド・マケイン法についておっしゃっていましたが、フォード大統領が、その法を通過する前に、「アメリカの大統領選がどんどんお金がかかるようになっている」と言っていたように思います。現在の選挙の資金がここまで増えてしまうと、新人もしくは第三極の大統領選参戦が難しくなってしまうと言われていますが、このお金と選挙、政治の問題、並びに利益団体との関係をどのように見ていらっしゃるでしょうか。

 小泉前首相がアメリカに行き、その時に彼が「アメリカ議会で演説をしたかったのだけれども、アメリカの議会の中で反対の声があったのでやめた」と聞きました。それについてはどうでしょうか。それから、久保先生もおっしゃっていましたが、ギングリッチ議長が出るまで40年間、共和党は議長職に就けませんでした。ブッシュ大統領、レーガン大統領も出たのにもかかわらずです。それはなぜでしょうか。

ハスタート氏:三つで一つみたいな質問ですね。まず最初。フォード大統領がそれを言ったかどうか、私は覚えていないですね。ま、ただ、言ったと思います。実際のところ、この政治というのはお金がかかりますし、それはアメリカだけではなく、日本でも政治にはお金がかかります。それが政治の一部なわけですが、そこでやるべきこととしては、すべての政治活動を全部政府が出すべきだというような意見の人もいます。

 ただ、それを行ってしまうと、民主システムが骨抜きになってしまうと思います。議会が少なくとも半額、自分の必要な資金を選挙区から資金調達をしていく。それと同時に、活動を行っていくことになれば、その選挙ごとに、資金調達をしなければいけない額も低減することができると思います。また1ドル資金調達をするごとに、それをインターネットに発表するなど、透明性を担保していくことが必要です。誰がどこから、どのお金を得ているのかというのを透明にし、インターネットで即時に発表していく。それを行っていけば、自動的に問題は解決すると思います。特にコスト削減、それからまた、透明性の担保という点においてです。

 それから、小泉首相が訪米したときのことを覚えています。非常に温かく、大統領からもそれから、議会からも歓迎されました。ま、議論はありました、物議はありましたが、常に物議を醸す人物であったと思います。私にそういったチャンスが与えられていたとしたら、ぜひ小泉首相にお話をしてもらう機会を準備をさせていただいたと思いますが、私のところにはそういったチャンスは生まれてきませんでしたので。

 次に、共和党について。この南の州が、民主党では非常に大きな役割を果たしました。北部の工業化されたところ、労組だとか大都市の政治は民主党色が強く、農村部は共和党色が強いわけですが、この南はずっと農村地帯であったにもかかわらず、民主党色が強かったです。南北戦争以来、ずっとそうです。

 ですので、南部の州が、もう少し保守党になってくるというはね返りが出てきたこと。いわゆるボーウィールドサウスと私たち言っていますけれども、本当の意味での共和党よりも、保守色が強いような民主党員というのもいます。ただ、非常に共和党を超えるような保守党であったとしても、民主党に投じたルイジアナその他の州の人々がいました。ですので、レーガン時代での変遷、その時に南部の州がスイング州(揺れる州)になったわけです。その時に、共和党が多数党になれなかったという事情があります。

モデレーター(久保氏):先程の共和党の将来と移民の問題について、私の方でもう少し追加でうかがいたい点があります。先程、ヒスパニックという人々は、共和党にとってオポチュニティー(機会、チャンス)であると。特にヘルスケアであるとか教育の機会であるとか、ジョブ、これがヒスパニックには必要であるというお話でした。この点は非常に理解できる点かと思います。

 今、例えば上院でコンプロマイズ(妥協)ができている、不法移民についての法案を共和党下院は通す必要があるとお考えでしょうか。それとも、これは通す必要がないと、否決あるいは投票に付さないほうがいいというふうにお考えでしょうか。あるいは、例えば、あまり日本では知られていないかもしれませんが、アメリカでは確かに広い意味の不法移民なんですが、大人が国境を越えると、確かに法律に違反したということになって、犯罪を犯したということになるわけですが、他方で、もし仮に、親が8ヶ月とか2歳のちっちゃな子供を連れていて、アメリカに一緒に入ってきて、ちっちゃな子供が小学校、中学校、高校まで育ってきて、大学に入る頃に、自分は広い意味では不法移民なんだということを聞き出すということがあります。これ結構、アメリカでは数が多くて、大きな問題になっているかと思います。ドリームアクト(夢の法律)という形で、アメリカでは一応、争点になっているかと思います。

 こういった問題について、共和党はどう対応すべきとお考えでしょうか。一方で、やはりこれも認めるべきでないという考えもあるかと思いますし、ただ、もう少し共和党はこういう不法移民の問題に、穏健な態度をとってもいいのではないかという考えもあるかと思いますが、この辺、ハスタート議長は、共和党の将来とも関係して、どのように分析されますでしょうか。

ハスタート氏:ドリームアクトに関しては、それは送るべきだと思っています、共和党は。でも、その他の別の問題が絡んできているんです。アメリカの不法移民の話をしますと、これは日本とは全然別なんです。私たちは1000万人あるいは1200万人あるいは1400万人、わかりませんね、どれぐらいの不法移民がアメリカにいるかということはわかりません。でも、そういうことが起こりますと、彼らはもうコミュニティーの一部なんです。アンダーグラウンド、地下のコミュニティーの一部です。彼らは参加はしない、投票もしない。まず最初に、だから、そういう人たちがいるということを認めなければいけないんです。グリーンカードです。

 グリーンカード、つまりそれは市民権を得る道ですけれども、こういう人たちすべてが、グリーンカードを取得すべきだと言っているのではありません。でも、オレンジカードでも何でもいいです。そういう形でのカードを与えるべきです。そこから市民権を得ていけるように道程ができていて、本当に実際に、他の人たちと同じような権限を享受できるようにしていくべき。じゃ、国境をどうやって確保するかということですが、次の問題は。私が、例えば、国境を越えてくる不法麻薬の70%は、南西部の国境から来るわけです。それは不法移民たちが20人、30人と一緒になって背中に、そういう人たちが運んでやってくるわけです。コヨーテというふうに私たちは呼んでいますけれども、彼らはそこから、そうした不法移民や、彼らが持ってくる麻薬からも非常に大きな利益を彼らは吸い取っているんです。この移民法ということ、その法律を正確に運用していくためにも、とにかくまず、南西部の国境をどうにかしなければいけない。そこで国境を確保しなければいけない。誰が入ってくるかということをコントロールするだけではなく、チェックポイントを設けて、誰が入ってきているのか、彼らはそのバッグに何を持って入ってきているのか、それが重要です。

 ですから、移民に関しては、私たちこの三つのことをしなければいけないと思います。思いやり、子供に対する、いわば思いやりの心、これは普遍的なものだと思います。でも本当の問題は、どうやって、この何百万人も入ってくる不法移民の人たち、そういう人たちと、どのようにして渡り合っていく、そのやり方を変えていくのか。それからもう一つは、その国境をどうするのかということです。共和党の多くの人たちは、本当の国境の確保を望んでいるんだといいます。彼が何を持って、誰が入ってきているのかということ、それをはっきりさせたいということを望んでいるんです。

NHK・OBのオヤマ氏:今日のテーマとは違うんですが、2年前に日本を襲った3.11について、どのように思われていらっしゃるか。それから、それに対する日本政府の対応について、どのようにお考えになっているか、お聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

ハスタート氏:二つの問題を提起されたと思います。津波への対応、巨大な津波だったわけで、世界も本当に日本の人たちに心を寄せました、あれが起こった時には。アメリカも他の国々も、我々ができるだけの支援をした。今もその支援に関わっています。それから、大体のアメリカ人もそう考えていると思いますが、非常な、日本人の強靱さというんでしょうか、あれだけの人たちが亡くなった。でも、力を持って戻ってきてるんですね。積極的な、前向きな態度で、これを克服して成功を成り立たせようという、そういう日本人の気構えというんでしょうか、これは本当に称賛に値すると思います。大半のアメリカ人も世界の人たちも、これはとても重要だと、そういうふうに考えています。

 そして、津波を福島の問題、これ私のスピーチでもちょっとだけ説明しようとしましたが、福島というのは決定的に重要であると。それは日本の経済のためにもとても重要である。それがまず1。それから、満足のいくような除染をするということ。そして日本の人々の信頼をまた勝ち取らなければいけない。また、原発を機能させようとするのならですね。操業させるのなら、それはしっかりとして見るべき、そのためのパフォーマンスをすべきです。だいたい500平方キロメートルでしょうか。誰ももう二度とここで住めないようなところができてしまったんですね。そこの土壌、それから植物、それから、そこにいる動物層など、そういうことに関しても、満足のいく形で対応しなければいけないんです。

 私はここに来たのは対話をしたいからであります。日本で権力を持っている人たちと。私はそういう人たちに言うんです。日本が一人でこれをやろうとする必要はないと。世界でも、特にアメリカ、フランスなどでは、コンソーシアムがある。私たちは除染をしている。それから軍のいろいろな廃棄物も、そういうふうにして除染をする、あるいは廃棄物の処理をしていると。私たちは日本の人達のパートナーになってやっていきたいと。

 そのためには、日本のグループの中で私たちはそれをやるつもりだと。そういうふうに言ってくる人達が必要なんですね。それが起こることを期待しています。そうすれば、これは世界にまた自信を与えてくれる。原発もこれは前進していいんだと。それから三つ目は経済的な重要性です。日本の国際通商のためだけではなくて、日本の能力の大きな部分、それから商業的な農業というのは、その核エネルギーを世界に売るということもあるわけですね。ですからグローバルな信頼が寄せられなければ、福島の問題が満足な形で解決されなければ、このような核の技術を売る、エネルギーを売るということは日本もできないわけで、それは経済的にも日本にインパクトを与えるんです。

モデレーター(久保氏):ありがとうございました。あとは3.11の後にアメリカの、特に米軍による支援、オペレーショントモダチと、それからアメリカの一般市民、政府、企業の方からいただいたいろいろなご支援、大変な規模のご支援に、改めて感謝の気持ちを表したいと思います。それでは他のご質問いかがでしょうか。

クリエイターズフォーラム・ホンゴウ氏:今の福島の除染、復興の話に関連して、福島をちゃんと戻さなければ、原発を世界に出していけないとのお話で、もう一つ、規制委員会が新しい基準を作っているんですけれども、日本の規制委員会の動きと言いますか、やり方について、どのようにご覧になっているか、これもやはり、日本のスタンダードをもう一回やり直して、世界に日本の原発の信頼性を戻すためのポイントしては大事なポイントかと思うんですが、その辺どのようにお考えでしょうか。

ハスタート氏:まず最初に申し上げますね。福島が完全に、そういった状況、すでに歴史として起きてしまったことなので、それを打ち消すことはできないと思います。ですけれども、日本のこの規制のシステムは、見てみますと、現在、日本のみならず世界が正視しているところです。日本の国会においても、それから日本の政府も、その問題にどうにかして対処しなければいけないし、現在進行形の問題だと思いますので、私はそれについて、何かこの時点において申し上げるつもりはございません。

 ただ、日本にとってこれは非常に重要な問題であって、また、環境省ですとか経産省ですとか、様々な省庁もそれに取り組んでいる。日本の政府がどうにかして、それを良い方向に解決する力は必ずお持ちだと考えております。

静岡県立大学の女性:共和党の将来ということがありましたが、ハスタート議員のお考えとして、次期共和党の大統領選挙の有力な候補としてハスタート議員はどなたをお考えか、それはどうしてかということをお伺いしたいと思います。

ハスタート氏:それは誰だかわかりません。本当に真面目な話そうです。面白い人物はいますね。ポールライアン氏ですとか注目を集めていますし、有能な人物だと思いますが、政策的な人物であって、政治的な人物ではないと思います。それから、フロリダの上院議員でも有力ですが、まだ新人です。もう1人のブッシュ、フロリダ前州知事は、入ってこないと思います。能力はありますし、それから認知度も高いけれども、アメリカの国民が3人目のブッシュを必要とするかというと、答えはノーではないかと思います。

住友商事・吉村氏:アメリカの議会がうまく機能しなかった理由の一つに、議員の方々のパーソナルリレーションが希薄になっているからということを語られていますが、実際、議長が下院議員でおられた頃と今と、そんなに違うのでしょうか。

ハスタート氏:ビジネスとかそれから、学校とか教職とかとは違いまして、政治というのは人間関係の仕事ですよね。どのようにしてお互いを理解し受容するかの問題です。また、信頼も非常に重要になってくる仕事です。

 現在はおそらく、この信頼問題ということではなくて、5年、6年、7年、10年ぐらい前は信頼問題もあったんだと思いますが、それにはちゃんと確固たる理由があったわけですが、議員間の関係が希薄になってくる、その一つの理由としては、議会の動静、例えば、かなり国会と同じだと思いますが、私が辞めて6年経ちますけども、それ以来、半分は新人議員です。なので、理念的な分断ということから考えても、今のほうが大きいので、その隔たりを狭めるというのも時間がかかる仕事だと思います。

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