東京・福島 国立病院機構北海道がんセンター西尾正道院長連続講演会「原発事故から2年“いま何を考え、何に備えるべきか”」 2013.2.1

記事公開日:2013.2.1取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・関根/澤邉)

※公共性に鑑み全公開します。

 2013年2月1日(金)10時30分より、東京都千代田区の参議院議員会館で「東京・福島 国立病院機構北海道がんセンター西尾正道院長連続講演会『原発事故から2年“いま何を考え、何に備えるべきか”』」が開催された。午前中は、参加者が報告会を行い、午後は、西尾院長の講演のあと、第二部として、原子力規制庁管理情報課の相良雅之専門職が、意見聴取を行った。

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■ハイライト

■全編動画 1/2

■全編動画 2/2

  • 参加者 青木一政氏(福島老朽原発を考える会《ふくろうの会》)、吉田邦博氏(安心安全プロジェクト)、加来健一氏(地球の子ども新聞)、垣内つね子氏(国連協議資格人権NGO言論・表現の自由を守る会)
  • 主催 西尾院長講演会実行委員会

■資料

 報告会は、青木氏から始まった。まず、ふくろうの会の活動を紹介した後、「内部被曝の状態は尿検査でわかる。しかし日本の検査機器のある病院は、子供の尿検査を受け付けない。自分たちは、検体をフランスの医療機関に送った」と話し、尿からセシウムが検出された子供のいる地域を図示した。その中で一番数値の高かった、一ノ関市の4歳の女児は、自家栽培のシイタケなどを摂取していたことがわかり、それを止めたところ、数値は下がったという。次に、ハウスダストでのセシウム汚染を説明した。「汚染された10軒の家庭を1年間、継続調査したところ、1軒だけ換気を頻繁にしていたため、数値が上昇した。1軒は、庭を除染した結果、数値は10分の1まで減少した」などと話した。

 次に、吉田氏が「環境汚染を考える」をテーマに報告した。吉田氏は原発勤務経験があり、発災直後から爆発の危険があったことを、すでに仲間の職員から聞いていたという。

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 吉田氏は除染についていろいろ試した結果を、「樹木は伐採しかない。インターロッキング、タイル、ゴム、プラスチックなどは交換するしかない。しかし、壁などの垂直方向への付着は少なく、木製の壁も少ない。トタン屋根は瓦屋根同様、洗浄が有効だった」などと報告した。続けてモニタリングポスト調査について報告があった。「各ポストは、数値が下がるように設置方法に工夫が見える。アルファ社の測定機器は数値が高いので、国から測定値を下げる指示があった。このメーカーは契約を破棄され係争中だ。衣服や頭髪の汚染の調査では、洗っただけではなかなか落ちないことがわかった」などと話した。

 途中、三宅雪子前衆議院議員、徳永エリ参議院議員が挨拶をした。

 次に、加来氏が登壇。「福島では現在、マスクは外してもいい、教師は放射能の話はするな、ということがいわれているのが実情。私は、実効線量(内部と外部被曝を足した値)5ミリシーベルト(内部2ミリ、外部3ミリ)で、汚染マップを作った」などと話した。

 続いて、国連特別協議資格を持つ人権NGOで、「フクシマは世界最大の人権侵害である」と、国連人権理事会に提言した垣内氏が登壇。看護師でもある垣内氏は、原発事故後のヨウ素剤配布の不手際を糾弾した。そして、国連の人権問題に対する取り組み方について報告、また、昨年10月30日に、国連公認UPRサイドイベント(国連協議資格人権NGO言論・表現の自由を守る会主催)で、日本が弾圧国家であることを告発し、当時の双葉町長の井戸川町長が、汚染マップを配布し、フクシマの問題を訴えたことなど、主に国連で行っている活動を報告した。

 休憩後、西尾氏の講演が行われた。西尾氏は「自分は日本で一番、放射線治療に当たった医師だ。日本の医師も国も、ICRPとIAEAを盲信しているのが現状だ。政府やマスコミが発表することを鵜呑みにする国民の割合は、先進国の2~3割に対し、日本人は7割だという。お人好し国民だ」と語った。次に、臨床例を紹介しながら、日本の放射線医療の現状を語った。「日本の医療は、医療経済が優先されている。利益のある手術や抗がん剤ばかり優先される。今、最先端の放射線がん治療を積極的に行っているのは、犬の医療界。犬の病気の半分ががんで、高額な放射線治療機器を使っている」と語った。

 次に、国に提出した要請書について次のように説明した。「医療費の負担の明確化、甲状腺エコー検診の画像データの提供、画像データの検査結果や画像の保持期限の延長(現在2年)、被曝検査健康手帳(仮称)の配布などを要望した。また、ホールボディカウンターは、性能に限界があるので、尿検査も要請している」。また、チェルノブイリでの被曝の疾病調査の結果を挙げながら、甲状腺がんの危険性、内部被曝について、政府の原子力政策の隠ぺい体質、ICRP、IAEAなどが掲げる放射能被曝の基準値の矛盾点を挙げた。また、低線量被曝によるがん発症に関する、権威ある国際的な医学論文を紹介し、被曝によって、急性心筋梗塞、脳腫瘍、白血病などの発症リスクがあること、原子力労働者の追跡調査によるがん発症リスクとその実態、政府や関連組織の隠ぺい工作の実態、チェルノブイリ事故の影響による異常児の発生、またダウン症児の多産が隠ぺいされている事実など、豊富な経験と知識から導き出された実態を述べた。

 第二部は、放射線医学総合研究所出身で、現在、原子力規制庁監視情報課の専門職である相良氏に対して、西尾院長が提出した要請書への意見聴取会を行ったが、相良氏はまったく答えられず、話がかみ合わない議論に終わった。

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