「ひっくり返るのは歴史か。それともあなたの常識か」というキャッチコピーとともに、あるドキュメンタリー映画が、4月20日の公開以来、全国の映画館でロングラン上映されている。日系アメリカ人ミキ・デザキ監督による『主戦場』である。デザキ監督は、櫻井よしこ氏、藤岡信勝氏、杉田水脈氏ら、従軍慰安婦問題を否定する右派論客と、元慰安婦側の支援団体関係者や学者を訪ね歩いてインタビューした。映画の中では、両者の主張が交互に展開されていく。
慰安婦問題否定論者たちの批判の的となってきた「20万人」という数字の問題、日本軍による強制連行はあったのか否か、「性奴隷か、売春婦か」など、双方の間で決して噛み合う事のなかった論点について、出演者は、時に雄弁に、時にためらいを見せながら、また時には薄ら笑いを浮かべながらインタビューに答えている。日本ではもはや「タブー」とされかけている慰安婦問題について真正面から切り込み、映画を観る者をも、論争の「主戦場」に引きずり込むような作品である。
5月30日、この映画に出演した日本会議の加瀬英明氏、櫻井よしこ氏、弁護士のケント・ギルバート氏、「新しい歴史教科書を作る会」の藤岡信勝氏、テキサス親父の名で知られるユーチューバーのトニー・マラーノ氏、テキサス親父日本事務局の藤木俊一氏、なでしこアクションの山本優美子氏の7名が連名で「映画『主戦場』の上映差し止めを求める~上智大学修士課程卒業制作を偽装し商業映画を制作した出崎幹根の違法行為について~」なる抗議声明を発表した。
そして同日、藤岡信勝氏、山本優美子氏、藤木俊一氏が、日本プレスセンターで抗議声明発表の記者会見を行った。