衆議院TPP特別委員会は10月26日、TPP承認案・関連法案の採決の前提となる「地方公聴会」を北海道と宮崎県で開いた。
このうち宮崎県の公聴会では、同県が誇る畜産業の海外輸出の増大が期待できるとする意見が出された一方、安価な輸入農産物の増加による地域経済への打撃や、食料自給率の低下、遺伝子組換え食品の輸入増大による、「食の安全性」への懸念などが、各公述人から表明された。
公聴会が行われた宮崎県西臼杵郡高千穂町の「ゆめゆめプラザ」前には、地元の農業関係者をはじめ、TPPに反対する市民が集まり、「ストップTPP」「国会批准絶対反対!」といったのぼりを掲げた。
▲地方公聴会会場前に集まった市民
- 日時 2016年10月26日(水) 13:15~
- 場所 ゆめゆめプラザ(宮崎県西臼杵郡)
「生産額の減少を懸念」「伝わってくる情報が少ない」――各公述人は次々とTPPへの不安を表明
この日の地方公聴会では、自民・公明の与党が推薦した河野俊嗣・宮崎県知事と畜産農家の興梠哲法(こうろぎ てつのり)氏、民進・共産の野党が推薦した藤原宏志・宮崎大学元学長とNPO法人「手仕事舎そうあい」理事長・蒲生芳子氏の計4人を公述人として呼び、それぞれの意見を聞いた。
河野知事は発言の冒頭で次のように述べ、TPPに対して賛否入り混じった複雑な考えを表明した。
「製品の輸出割合の高い企業や海外輸出に取り組もうとする企業、生産者にとっては追い風になると考える。その一方で、海外から安価な製品が輸入され、生産額が減少することも考えられる。特に本県の基幹産業である畜産をはじめとする農林水産業では、価格下落による生産額の減少を懸念している」
続いて発言した畜産農家の興梠氏は、次のようにTPPへの懸念をはっきりと語った。
「伝わってくる情報が少ないことが不安だ。攻めの農業、輸出ばかりを強調するが、そのようにできる農家は非常に少ない。経済とは人々の暮らしを守るものであり、成長発展のためだけにあるのではない。この中山間地では、『攻める』よりも『守らなければいけない』ことの方が多い」
また、民進党と共産党が推薦した元宮崎大学学長の藤原宏志氏も、次のように述べて、TPPへの反対を表明した。
「地方公聴会を全国でたった2カ所、たかだか4人の意見を聞いて、国民の声を聞いたとは言えないはずだ。公開されている資料だけでは全体像の把握も難しい。こういう状況で進められていることに非常に不安を覚える」
自民・西村康稔議員の「TPP交渉では、日本はギリギリのところで踏ん張った」という説明ははたして事実なのか!?
こうした様々な懸念の声に対し、元内閣府副大臣としてTPP交渉にあたり、現在TPP特別委員会理事でもある自民党・西村康稔衆議院議員は次のように述べ、政府・与党の立場を説明した。
「TPP交渉は非常に厳しかったが、日本の農業を守るためにギリギリのところで踏ん張ったと思っている。農業の基盤を維持するために、対策を講じて取り組んでいるところだ」
▲宮崎県高千穂町で行われた地方公聴会の様子。左側が公述人
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