東日本で相次ぐ地震に、専門家の間では「巨大地震の前兆ではないか」と警戒する声があがっている。
2016年7月27日夜11時47分頃、茨城県で震度5弱の強い揺れを観測する地震が発生した。震源地は茨城県北部で、マグニチュードは5.4、震源の深さは57キロだったという。茨城県では5月16日夜に、小美玉市でやはり震度5弱を観測する地震が起きたばかりだった。
直近では、7月17日午後1時半頃、茨城県南部を震源とするマグニチュード5.0の地震が発生し、笠間市や下妻市で震度4を観測した。2日後の19日の午後1時頃には、千葉県東方沖を震源とするM5.2の地震が発生し、千葉県で最大震度4を記録した。そのさらに半日後の20日午前7時半頃には、茨城県南部で再び震源のM5.0の地震が発生。水戸市などで震度4を観測した。
これらの地震が「マグニチュード7以上」の地震の前兆である可能性を指摘するのは、立命館大学環太平洋文明研究センターの高橋学教授である。
熊本・大分大地震を受け、4月17日と5月16日に岩上安身のインタビューに応えた高橋教授は、「熊本大地震が引き金となって南海トラフが動くことはない。しかし、南海トラフは周期的に必ず動くので、今回はその『予兆』である可能性がある」と指摘している。
▲岩上安身のインタビューにこたえる高橋学教授――2016年4月17日
今回、高橋教授は、6月初旬の時点で、岩上安身に情報提供くださり、「千葉・茨城沖に地震が集中し始めました。とりあえずカウントダウンに入ります。約2ヶ月後を中心に1―3ヶ月ご注意ください」と警戒を呼びかけ、「震源が西にずれると深さが20ー30kmと深くなります。そして、見かけ上、内陸直下型地震になります」と見解を示した。
「異常な地震が認識できて1〜2ヶ月後に本格的な活動が始まる傾向は、かなり高い」
まもなく8月に入り、まさに高橋教授が警戒を呼びかける時期に差しかかる。
本当に巨大地震が東日本を襲うのであれば、最大限警戒し、大震災に備えなければならない。高橋教授の専門家としての分析があまりにも公共性が高く、重大な内容であるため、ご本人の許可のもと、高橋教授による情報提供を本稿で公開する。
・高橋教授→岩上安身 2016年7月21日 0:52
地震徐々に本格化しはじめました。以下は非常に親しいディレクターとのメールです。およそ1―3ヶ月前に地震の前兆がみられます。福島南部―茨城―千葉では、数日中に大きな地震が発生する可能性があります。震源が沖合いの場合は、深さ10kmくらい。震源が西にずれると深さが20―30kmと深くなります。そして、見かけ上、内陸直下型地震になります。
以下4件は、高橋教授がいう「ディレクターとのメール」である。高橋教授は6月4日の段階で、「約2ヶ月後を中心に1―3ヶ月ご注意ください」と警鐘を鳴らしている。
ちなみに6月2日には22時半頃に千葉県東方沖を震源とし、千葉県市原市などで最大震度3を観測する地震が発生。その後も震度1程度の地震が連続し、6月12日には、茨城県南部を震源とする、水戸市などで最大震度4を観測する地震が発生していた。
・高橋教授→ディレクター 2016年06月04日 00:10
○○様
今日、千葉・茨城沖に地震が集中し始めました。とりあえずカウントダウンに入ります。約2ヶ月後を中心に1―3ヶ月ご注意ください。潜り込む太平洋プレートの、影響ですから、千葉・茨城の内陸部の30―50kmの深さということもあります。とうぶん様子見です。
高橋 学
・高橋教授→ディレクター 2016年06月27日 21:59
○○様
ようやく熊本の余震が減り、福島―茨城―千葉、それに太平洋プレートがフィリピン海プレートにもぐり込む影響で、福島―茨城―千葉、伊豆―小笠原―北マリアナーグアムあたりが動き出しましたね。東京湾の多摩川沖は太平洋プレートがフィリピン海プレートに沈みこむところなので要注意ですね。
また、そのあおりで、長野県北部―新潟県上越地方に地震が顕著になってきましたね。
北海道襟裳岬西部も気になるけれど、やはり、上越が危なそうですね。
今年の夏、野外実習で地震と火山の噴火体験にいく予定です。学生は遊び気分。怖がっているのは、ぼくだけかも。
高橋 学
・高橋教授→ディレクター 2016年07月19日 18:46
○○様
ご無沙汰しています。変な梅雨明けで気持ち悪いですね。
6月27日に差し上げたメールで、福島―茨城―千葉の地震活動が活発化しつつあると書きましたが、7月17日、19日あたり、この地域の地震規模が少し大きくなりつつあります。
長野県北部―新潟県上越地方は、このあとになるのでしょうか?
地震の傾向をみつけて1―3ヶ月と言っているのを、もう少し絞れないかと考えています。熊本は2月後半に予測できそうになり、地震が本格的に起きたのは4月14日、16日でした。
2004年10月23日の中越地震は、9月4,5日頃に傾向がみえました。
2014年9月27日の木曾御嶽の噴火も9月4,5日頃には異常がみえていました。
異常な地震が認識できて1〜2ヶ月後に本格的な活動が始まる傾向は、かなり高いと思います。
最近、より確かな気がしてきています。
高橋 学
・高橋教授→ディレクター 2016年07月20日 11:49
○○様
分かりにくいメールですいません。
経験則1、ある特定の地域で地震の活動の活発化が見られた場合、一時的に地震が起きなくなり、2か月後を中心に、1―3ヶ月後にM5以上の地震が発生しやすい。その1―3日前にM1―3程度の地震が前震的におきる。
(現在の福島―茨城―千葉の場合、長野県北部―新潟県上越の場合、豊橋―浜名湖周辺は、もう少し後で)
経験則2、経験則1の数日以内に、震源がわずかにずれてM7以上の地震が発生することがある。(東北地方太平洋沖地震や熊本地震、中越地震もはいるかも)
経験則2にあてはまると、数日中に福島―茨城―千葉で巨大地震になる可能性がある。
豊後水道―伊予灘の地震は、琉球海溝の地震に属すると考えられ、次の南海トラフ―東海地震とフィリピン―台湾―琉球海溝の地震も連動する可能性が高い。しかし、今すぐというわけではないと思われる。
これらはすべて、琉球海溝―南海トラフ―東海地震の前段階になる。
大雑把に言うと、以上のことが言えそうです。経験則1は可能性がかなり高いと現段階では判断しています。
高橋 学
マグニチュード7に警戒を!「後出しジャンケン」にならないよう事前に警戒を呼びかける高橋教授の矜持!
高橋氏の一連のメールのキモは、やはり「経験則1」の、「特定の地域で地震の活動の活発化が見られた場合、一時的に地震が起きなくなり、2か月後を中心に、1―3ヶ月後にM5以上の地震が発生しやすい」という点だろう。
2016年7月27日夜に発生した、茨城県で震度5弱の強い地震は、まさに高橋教授が警戒していた大きめの地震だったのだろうか。岩上安身は7月28日、高橋教授に確認した。
「高橋先生がおっしゃっていた『大きな地震』がこの震度5弱の地震と断定してよいものでしょうか?それとも、さらに大きな地震が今後、この一帯で発生する可能性もあるのでしょうか?」
以下が高橋教授の解答である。
・高橋教授→岩上安身 2016年7月28日0:51
今考えているのは、M7以上の地震です。
経験則によるデータでは、少なくともM5以上と表現していますが、M5程度では、ほとんど住宅や住民の方々への被害がないので、震災としての予測は意味がありません。
今回、皆様にお伝えしたいのは、私の考えているのはモデルが、でたらめでもないし、後だしじゃんけんではないことです。まず、そのことを納得していただくために情報を流しています。いわば実積作りというかアリバイ作りです。
これまで、何度言ってもマスコミに載るのは地震がおきたり火山が噴火してからです。そのためにネット上では後だしじゃんけんと不本意な批判をされてきました。また、東大の地球物理の外国人教授(ロバート・ゲラー:twitter)からは、アルゴリズムがわからないのに予測するのは意味がないと言われてきました。私は、経験則でもある程度予測は可能だと考えています。専門が地球物理なら予測は意味がないと言っていても許される?のかもしれませんが、災害を研究するものとしては、たとえ蜘蛛の糸にすがっても災害を小さくする努力が必要だと考えています。
福島南部、茨城、千葉、これらが内陸で起きれば首都直下型地震にみえることあり。
岩手県北部、青森県太平洋岸、内浦湾、十勝(襟裳岬)周辺も。
東日本では特に危ないところです。
中部日本では、長野県北部―新潟県上越地方、愛知県豊橋市―静岡県浜名湖周辺
西日本では、紀伊半島南端、室戸岬南端、足摺岬南端―豊後水道―鳥取県西部
九州では、大隅半島南端、薩摩半島南端
琉球海溝沿い台湾―フィリピン東部
中部日本以西はバラバラに一見みえますが、中央構造線とフィリピン海プレートの移動に関するものです。
太平洋プレートがフィリピン海プレートにもぐり込む東京湾多摩川河口(火山関連で伊豆大島北西部)、伊豆諸島、小笠原諸島、マリアナ、グアムも動きがみられます。これらは大平洋プレート関連で、十勝―内浦湾―青森県太平洋岸―岩手県北部、福島県南部、茨城県、千葉県と関連します。
結局のところ、大平洋プレートの動きが影の黒幕、フィリピン海プレートは黒幕、この二つが日本列島の地震と火山の活動の原因で、それ以外は、その部分的表現といったことだと思います。
さらに高橋教授は、「2か月後を中心に、1ヶ月の前後幅を想定しておいてください。細かくデータ分析が終わり、結果がでたら、また、ご連絡いたします」と重ねてきている。
また、7月31日には、「長野県北部―新潟県上越地方は、1週間〜1ヶ月が危ない可能性がでてきました。M5以上が。まだ、充分な検討はできていませんが、取り急ぎ」と、新たな情報も提供していただいている。
災害研究者としての矜持を示し、「後出しジャンケン」にならないよう事前に警戒を呼びかける高橋教授。予測が外れれば、バッシングを受ける可能性もあるが、災害研究に取り組んできた研究者として、被害を最小に食い止めたいという思いから、あえてリスクを取って情報の公開に踏み切った、という。
警告を受けとった我々は、複雑な矛盾した思いにとらわれている。2、3ヶ月内にマグニチュード7の地震が起こる可能性がある、という高橋教授の予測が当たらないことを祈る一方、我々は遠からず起きるであろう大地震に備え、後手後手にならないよう、専門家の警告を真摯に受け止めて、備えなければならない。個々人でも、家族の単位でも、企業でも、行政のレベルでも、だ。警告に当たり外れがあっても警告は防災意識を高めるためにいかさなければ意味がない。