先月22日に大混乱の中、強制撤去されたN1ゲート前テントに続き、「N1裏」に設置されたテントの撤去期限8月5日から2日が過ぎた。ヘリパッド建設に反対する市民の最後の砦と言われる「N1裏」テント。撤去に警戒する市民の間では今も緊張が高まる。
平行して、N1ゲート前ではダンプカーが砂利を搬入し、着々と建設工事が続けられている。今後、「テント撤去阻止」のほか、「砂利搬入阻止」に行動を広げていくことができるのか。その為には、今の何倍もの数の市民の参加が必要となる。
(取材・原佑介、阿部洋地、北野ゆり 文・原佑介 記事校正・ぎぎまき)
特集 高江ヘリパッド
※8月10日テキストを追加しました!
※2016年8月7日午後6時段階のツイートを加筆して掲載しています。ご承知おきください。
先月22日に大混乱の中、強制撤去されたN1ゲート前テントに続き、「N1裏」に設置されたテントの撤去期限8月5日から2日が過ぎた。ヘリパッド建設に反対する市民の最後の砦と言われる「N1裏」テント。撤去に警戒する市民の間では今も緊張が高まる。
平行して、N1ゲート前ではダンプカーが砂利を搬入し、着々と建設工事が続けられている。今後、「テント撤去阻止」のほか、「砂利搬入阻止」に行動を広げていくことができるのか。その為には、今の何倍もの数の市民の参加が必要となる。
■山城氏囲み取材~
■プレ集会
■集会
■集会後のインタビュー
■テントコンサート
2016年8月7月、日曜日の午後6時前からテント内では集会が開かれ、県内外から100名を超える参加者が集まった。機動隊はいつ動きを見せるか分からない。沖縄平和運動センターの山城博治事務局長は、長引く運動に備え、次のように呼びかけた。
「緊張が続き、月曜日も火曜日も機動隊がこないとなると、市民の数が少なくなります。暫時、何曜日を設定するかは状況をみることになります。情勢の中で判断も変わることをご理解ください。
もし今夜、機動隊に動きがあれば、皆さんに車のクラクションやマイクで合図をしますので、対応できるようにしておいてください。緊張は続きますが、眠れないといけないので、『来たときに対応すればいいや』という思いでいてください」
先月22日の機動隊との激しい攻防で、肋骨を折られるなど、3人の市民が救急搬送されている。山城氏はそれ以上の怪我人を出さないよう、抗議の中断を決断した。
「機動隊と乱闘し、怪我人や逮捕者が出ることは極力控えないといけません。その時点で抗議行動が終了しなければいけないかもしれません。指揮者の指示に従ってください。22日に『やむ終えずここまで』と判断したのは圧倒的な機動隊の暴力があったからです。
辺野古では抜かれて抜かれて、それでもめげずに毎日、毎日、毎日、毎日100名、200名、300名が座り込み続け、ここまできた。無力のようで無力ではない。奴らは我々の整然とした抗議を怖がっています。混乱はいけません。逮捕者が出る事態は避けたい。
ここの主力は団塊世代です。わかりますね?あの頃の恨みを晴らそう、などということはしないでください(笑)」
ユーモラスに山城氏は、話を締めくくった。ここには、若かりし頃の団塊世代がかぶった赤や黒のヘルメットも、角材も、投石のための石も、火炎瓶も何もない。若い頃に激しいが癖運動を闘った経験のある人もここではすべて、非暴力の抗議にしたがっている。興奮しそうになったらまず座る。
これは沖縄の歴史に根づいた長い長い「伝統」だ。沖縄の非暴力の抵抗のあり方を、本土から来た参加者が学ぶ、ここは「教室」のようでもある。
座る、言い分を聞く、話す、そして歌う、踊る。沖縄の、そして本土の人々が楽しく学んでいる「民主主義」のあり方が、ここにある。それは力の対決では絶対に勝てない「絶対弱者」の、そして誇りある異議申し立てのあり方である。
次に、沖縄平和市民連絡会の北上田毅氏がマイクを握った。
「7月22日の戦いで状況は変わった。東京などで講演しても、大手メディアがきて、市民からは『私も(沖縄に)行きたい』と声をかけられる。防衛局も22日と同じことを繰り返すことは躊躇しているのではないか。
なぜ防衛局がテントを撤去できるのか。道路管理者である県の職員にも検問を敷いて、中に入れなかった。防衛局は何から何まで違法行為の連続です。2011年に防衛局が提出した図面では、ここは民有地になっているんです。しかし、今、『国有林』としています。
県職員に『以前の書類と違う』と追及すると、『前回のは錯誤だ』と言われました。22日の教訓から学び、もう違法行為をさせないことが重要です。防衛局に違法行為がないか調べた結果、様々な違法行為が明らかになった。防衛局は今かなり行き詰まっている」
10年の闘いを続ける「ヘリパッドいらない」住民の会のメンバーもスピーチ。沖縄選出の国会議員や県議会議員もその後に続いた。
住民の会・宜保氏「住民の会は代表を置いていない。代表を置くと国に訴えられるからです。(強制排除の行われた)22日は悔しい思いをしましたね。撤退のときは涙が出ました。女性2人が救急車で運ばれました。
国家権力、機動隊の暴力が現実的に襲いかかってきました。法治国家なら法律で我々をどかせばいいのに、それができないから暴力で排除する。まだまだN1表でも止めなければ、工事が進んでいきます。なんとか皆さんと力を合わせ、止めましょう」
目取真俊氏「テントを守ることも重要ですが、やはりトラックで砂利を運ばせないことが重要です。砂利が運ばれれば、確実にヘリパッドは作られます。どうすればトラックを止められるのか、一人ひとりが考えてほしいと思います」
赤嶺政賢議員「沖縄選挙区6人の国会議員みんなが高江のヘリパッドにも辺野古の新基地建設にも反対しています。そして沖縄県民に選ばれたら必ず県民と一体となって国会で活動を行う。この信念で活動しています」
狩俣のぶこ沖縄県議「沖縄県議会で、最長老、75歳です。戦後沖縄を見てきた。何としても基地は許されない。戦後、どれだけ人権を無視され、圧力をかけられてきたか。絶対にこれ以上の基地はいらない。
6歳の女の子がレイプされ、ゴミ捨て場に捨てられていたことも覚えています(*)。多くの沖縄県民が不条理の中で命を落とし、苦しめられてきた。私たちは議会の中で県警の過剰警備も追及した。これからもしっかり高江、辺野古の問題を取り上げていきます」
*1955年9月3日、永山由美子ちゃん(6歳)が、嘉手納高射砲隊所属の米兵に拉致され、強姦された上、惨殺された。(石川市)
福島みずほ議員「沖縄の民意をどうして政府は無視するのか。民主主義を取り戻す戦いをやっていきたい。なぜ防衛局が勝手にテントを撤去できるのか、今質問趣意書を出しているが、根拠はないはず。これは緊急事態条項の先取り、戒厳令です」
山本太郎議員「どうして米国内でできない訓練を沖縄ではできるのか。自国でできないことを他国でやるなという話。安倍さんに聞いたんです。日米地位協定を作ったお祖父さんの売国条約を変えないのか、と。すると、委員会の審議が止まったんです(*)。
*2015年9月14日、参院特別委にて安倍総理への質問で「日米地位協定」による米軍の特権性に山本議員は言及。「日本の主権を売り飛ばしたような『売国条約』を、総理は変える気ないのか」との問いに、鴻池祥肇委員長は「不適切」であると釘を刺し、安倍総理は「一歩一歩着実に進んでいる」と回答した。
『売国』という言葉が不当だと言われたんです。しかし、検察したら、これまで国会の中で200回以上使われているんです。これからもデッドボールを当てるつもりで頑張ります。不当な暴力が行われないように、自分の身体で止めていきたいと思います」
翌8日も早朝5時から集会が開かれ、200人をゆうに超える市民が集まった。N1裏のテント撤去を阻止する運動が続けられる中、N1ゲート前からはこの日もダンプカーの列が進入、工事現場に砂利を搬入している。