「しぶとくて、うるさくて、めんどくさい女がどんどん増えればいい」――黙っていたら、自分たちの権利がなくなるだけ」 ~SEALDs 福田和香子氏が語る日本と政治と、女性 2016.3.5

記事公開日:2016.4.21取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・花山格章、記事構成:山本愛穂)

※4月21日テキストを追加しました!

 2015年夏、安保関連法案に反対して声を上げた若者グループの動きが、新たな市民運動の潮流を生み出した。今では多くの人が知る存在となったSEALDs――。デモや抗議集会で彼らが発するメッセージとともに、中心メンバーの姿や名前も、メディアやインターネット上で注目と拡散が繰り返された。それは、彼らを一気に「有名人」にした。その一方で、理不尽なバッシングにメンバー個人がさらされることにもなっていった。

 2016年3月5日、東京都渋谷区の道玄坂Cafeにて、アジア女性資料センター・ユースグループ主催による「SEALDs 福田和香子さんと語る政治と選挙──身近な問題から選挙で何が変えられるか考えてみよう!」が行なわれた。アジア女性資料センターは、ジェンダーや女性の人権問題に関わる活動を20年以上続けているNGOだ。この日は、SEALDsのメンバーの福田和香子氏が、安保関連法に反対する自分に向けられた、女性であるがゆえのバッシングの実態や、日本におけるジェンダーバイアス、夏の参院選へ向けての取り組みなどを語った。

記事目次

■ハイライト

  • タイトル SEALDs 福田和香子さんと語る政治と選挙――身近な問題から選挙で何が変えられるか考えてみよう!
  • 日時 2016年3月5日(土)14:00〜16:30
  • 場所 道玄坂Cafe(東京都渋谷区)
  • 主催 アジア女性資料センター・ユースグループ(詳細

福田和香子氏 「何か言いたいことを言うと、世間から大きくジャッジされてしまうのは自分が女だから」~それでも、政権を牛耳っている男たちがイラつくことをやっていく

 普段は文章を書くのが好きだという福田氏は、「デモに行ったり、政治のことを考えたりもするが、そんなことをやらなくて済むなら、そのほうがいい。熱意のこもりすぎた正義感が大きく傾いていき、世間から離れたら一番恐ろしいから」と話す。

 「だから、気楽にと言いつつ真剣にやっていこう、と思う。世の中は悪い方向に向かっているので、今は参院選に向けて『さあ、どうするか』というところ。投票率を上げなければいけないし、個人的には安倍を勝たせては困る、と思っている」――。

 SEALDsの女性メンバーを揶揄するような、ジェンダーバイアスのかかったバッシングについて、福田氏は、「何か言いたいことを言うと、世間から大きくジャッジされてしまうのは自分が女だから。男の子と同じことを話しても、内容よりも、まず、私の見た目についてのジャッジがなされる」と冷静に分析する。

 たとえば、女性メンバーがデモで「憲法を守れ、安倍はやめろ」と声を上げた時、男性メンバーへのバッシングと同じものが、同じ量だけ飛んでくるかというと、量は変わらなくても中身が全然違うのだという。

 「インターネット上で(批判してくる人間が)おまえのブラのサイズは、みたいなことを聞いてくる。何の関係があるのかという話だけど、男の子には言わないことが起きる。見た目のことを含めて、性的なバッシングは日常茶飯事です」。

 中には、弁護士に相談するような案件もある。「なぜ、こんなに馬鹿にされるのか。やっぱり悔しい。だから、私は私の喋る言葉を見つけて、いかにして癪(しゃく)に障ってやろうか、という結論にたどりついた。いかに、手なずけられないように動くか。メディアや政権を牛耳っている男たちがイラついて仕方ないことに、食いついてやろうと思う」。

 また、メディアの扱いについて、福田氏はこう指摘する。

 「SEALDsでテレビに出たり、新聞に載ることが増えたけれど、女性メンバーが前に立つと、男の子の時とカメラのフラッシュの量が違う。女性を映す方が、視聴率が取れるからだ。メディアでSEALDsの特集が組まれるときも同様で、『なぜ、こういう女の子が出てきたのか』、『戦う女特集』という作り方をされてしまう。結局、女が戦うのは珍しい、ということ。『戦う男特集』という企画は聞いたことないですからね。世間の扱いやメディアの捉え方の歪みがすごい。この活動を通して、そういうことに気がつくようになった」。

「デモに行くと、結婚できなくなるよ」との忠告――女性は『選ばれる性』ではない~日本における権利意識の低さは、投票率の低さにもつながっている

 女性と権利について、福田氏は次のように主張した。

 「私たちにはものを言う権利があるけれど、それに気づいている女の人は少ない。言いたいことは、いつだって言っていい。伝え方は自由。しかし、そうではない女の人たちがいて、権利意識が低いどころじゃないな、と思える場面がある」。

 こうした日本における女性の「権利意識の低さ」の例として、福田氏は、投票率の低さを上げる。SEALDsと関係のない、福田氏の同年代の他の友人たちは、ほとんどが選挙に行ったことがないという。

 「選挙にも行かない人が、デモに行くわけない。私なんか、『デモに行くと結婚できなくなる』と何度言われたことか。デモに行ったぐらいで結婚しないような男を(私は)選ばないが、(そう忠告してくる人たちは)女は選ばれる側だと思っていて、私に選ぶ権利がないかのように話をしてくる。そして、大半の女はそんなふうに言われてもムカつかない。なぜなら、その方が可愛いから。でも、『選択する』ことは、男の人のことだけでなく、政治家についても、自分の生きる道についても同じはず」。

 「政治」と「日常」という単語が乖離していることが恐ろしい、と福田氏は言う。

 「ここにいる人たちそれぞれに権利があって、人権は保障されている。もし、自民党によって憲法が変えられたら、今まで保障されてきたものが持っていかれる。多くの人に、それに気づいてほしいと思ってデモをするが、反応はさまざまだ。賛否両論あり、迷惑だと言われることもある。

 自分たちに権利があることを伝えるには、結局、不断の努力をしていかなければいけない。選挙の投票率を上げたいなら、自分がしゃべる女になるしかない。今までも、そういう人はいたと思う。誰に語り継がれたわけでもなく、そういう人が、どこかで何かをし続けてきた」。

政治家への不信感、自分には何も変えられないというネガティブな思い…「やっても変わらないかも。でも、やらなければ死んでも変わらない」

 福田氏は、空気を読む世代には、読ませる空気を作った方が早いと言う。

 「今ある権利が持っていかれるかもしれない。(自民党改憲草案を)ちょっと読んでみたら、それに気がつくはず。それを、仕方ないとのんびりしているのは、クールではない。今までは、そういう態度がクールだったのかもしれないし、『空気』を読まなければいけない世代なのかもしれない。でも、そもそも『空気』なんて、ない」

 政治家への不信感、自分には何も変えられないというネガティブな思い──。そういう感覚が若い世代の主流なのかもしれない、と福田氏は推察しつつ、「やっても変わらないかもしれないが、やらないことには死んでも変わらない。私はひとりの主権者として、ひとりの女として、ここまでできるというリスクを取ってみる。できるところまで、不断の努力をしてみる」と自らの覚悟を明らかにした。

ネガティブになっている暇はない~7月の参院選で劇的な変化がもたらされるとは思っていない。変化が起きたとしても、その後にやっていかなければならないことがある

 福田氏は7月の参院選について、「一度の選挙で劇的な変化がもたらされるとは思っていない。変化が起きたとしても、その後にやっていかなければならないことがある。私たちが政治を見て、あきらめず、しゃべり続けることが大切だ」と話す。

 SEALDsのデモや抗議活動では、いろいろなメンバーがスピーチを行っているが、日常の文脈に基づいた女性メンバーのスピーチは、特に評価が高い。福田氏は、女性によるスピーチの強みは、使い古されていない言葉を、いつでも使うことができることだ、と指摘する。

 「それは、ひたすらしゃべり続けること、やかましい女であり続けることのみでアップデートされていく。今は前を向くしかない。ネガティブになっている時間はない。とりあえず、私は7月まで走ってみようと思う。何かおかしいと思っても、『それが世の中。ま、いいんじゃない』、『自民党勝っちゃって仕方ないね』、『選挙行かなかったけど、仕方ない』という妥協やあきらめ。それらを、どんどん切り崩していかなければ。問題意識を持って1から10までギャアギャア言うと嫌がられるが、それでもやるしかない」。

アメリカなら『トランプ最低!』と平気で言えるのに~周りの目と空気が怖くて仕方がない――政治の話題を避ける日本と海外の違い

 福田氏は、海外と日本では、政治や社会に対する個人の関わりが違いすぎると言う。

(…会員ページにつづく)

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「「しぶとくて、うるさくて、めんどくさい女がどんどん増えればいい」――黙っていたら、自分たちの権利がなくなるだけ」 ~SEALDs 福田和香子氏が語る日本と政治と、女性」への1件のフィードバック

  1. @55kurosukeさん(ツイッターのご意見) より:

    SEALDs 福田和香子さんと語る政治と選挙――身近な問題から選挙で何が変えられるか考えてみよう!(動画) http://iwj.co.jp/wj/open/archives/290517 … @iwakamiyasumi
    よく言われることだが「政治に無関心でいても無関係ではいられない」のだ。世の中変えていこう。
    https://twitter.com/55kurosuke/status/714221758300041217

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