いつ大規模噴火が起こってもおかしくない、鹿児島県・桜島。
2015年に入ってから桜島は、活動を活発化させるマグマと、それにより発生した大量の火山ガスに起因するとみられる山体膨張を続けており、鹿児島県地方気象台は「噴火が起きれば、火口から約2キロの範囲では噴石や火砕流に注意が必要」と呼びかけている。
火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東大名誉教授)は、「長いこと山頂が膨脹しているようにみられるので大きな噴火になるかもしれない。一両日中に噴火の可能性もあるが、いつということは難しい(※)」と警告している。
今回、桜島の山体膨張が確認されてからすでに1週間が経つが、2014年9月27日に噴火した御嶽山(長野・岐阜の県境)の場合、噴火が始まる約7分前(※)に、山体がわずかに膨らむ変化が観測されていたことが、事後的に分かった程度であった。噴火直前のごく小規模な変化だったため、予知につなげるのは困難だった。
これが現実なのだ、ということを私たちは忘れず、肝に銘じておいた方がいい。巨大噴火の「予兆」に気づいた時には、もう噴火が迫っている。時には、噴火の前ではなく、「事後」になってから、「あれが予兆だったのか」と確認される。その程度のものかもしれないのである。
しかし、原発から燃料を取り出して安全な場所に移すには、昨日書いた通り、運転を停止するだけではなく、燃料を冷却してからでなくては取り出せず、それには5年もかかるというのである。「予兆」をつかんでも、噴火の「7分前」だったら、燃料を取り出しようがないのだ。
- 朝日新聞:噴火7分前、山体の膨張を観測 気象庁、予知は困難か(2014年9月29日)※当該ページ削除
規制委の挙げる火山予知の唯一の根拠を揺るがす「火山学の権威」
噴火の予知には「ムラ」がある。それが今の火山学の限界――。
桜島の噴火となると、地元住民の安全とともに、鹿児島県・川内原発の安全性が案じられる。しかし規制委は、「川内原発に影響を及ぼすほどの巨大噴火は予知できる」として、まるで火山の影響など存在しないかのように、あっさりと適合性審査に「合格」のハンコを押してしまった。
規制委が巨大噴火を予知できるとする、ほぼ唯一の根拠は、「ドルイット論文」という、海外で書かれたたったひとつの論文である。「ドルイット論文」とは、サントリーニ火山で約3500年前に起きた超巨大噴火「ミノア噴火」について、「噴火直前の100年の間にマグマが急にあがった」と報告する論文である。
「議論になっていないですね。バカバカしい。私も個人的にドルイットさんを知っていますが、ドルイットさんは、『特定の噴火に対する自分個人の意見だ』と言っているんです」
このようにドルイット氏本人の言葉を代弁して語ったのは、日本火山学会の元会長で、噴火予知連の元委員でもある東大名誉教授・荒牧重雄氏である。火山学の権威と言える存在だ。2014年10月7日、岩上安身のインタビューに答えた荒牧氏は、巨大噴火を予知できるとする規制委の見解を「それはもうサイエンスではない」と一蹴した。
さらに、荒牧氏は不愉快そうに続ける。
「次の噴火もドルイットのいう通りに予想できるのであればバンザイだけど、誰も予想できるとは思わないんじゃないですか。一般化できると信じるのは、その人の頭がおかしいと思わざるをえません。議論はそこで終わり。あまりにもバカバカしいので、取り合いたくもない」
規制委の持ちだす唯一の根拠を、根本から揺るがす荒牧氏。火山を予知するには地下に眠るマグマ溜まりを観察しなければならない。地球から月までの40万kmの道のりを制し、月面への着陸に成功した人類でも、地球の半径6370kmのうち、わずか12kmしか掘り下げられていない。到底、マグマには到達できない。
言葉を慎重に選び、わからないことは決してわかったようには言わず、火山学の限界を説明する荒牧氏。インタビューは「ドルイット論文」だけでなく、噴火の頻度を増す桜島への見解や、東日本大震災と全国の火山の連動性、「富士山噴火のシナリオ」など、広範におよんだ。
1月9日20時から、会員限定でタイムリー再配信する荒牧氏インタビューの模様を、是非ごらんいただきたい。
※荒牧重雄氏インタビューの元記事はこちら