2014年5月1日13時より、東京電力本店にて、「原子力改革監視委員会」記者会見が開催された。凍土壁は政府主導だが、きちんと調査、試験し、「ベストでないならば、東電から政府にその旨申し入れるべき」との考えを示した。
2014年5月1日13時より、東京電力本店にて、「原子力改革監視委員会」記者会見が開催された。凍土壁は政府主導だが、きちんと調査、試験し、「ベストでないならば、東電から政府にその旨申し入れるべき」との考えを示した。
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2014年5月1日13時より、東京電力本店にて「原子力改革監視委員会」記者会見が開催された。
デールクライン委員長は、1日午前に開催された改革監視委員会を、「生産的なミーティングであり、非常に評価できる部分と、問題があり、指摘された部分があった」と振り返った。高く評価できることとして、福島第一原発4号機の使用済燃料の取り出し、炉心の冷却維持、廃炉推進カンパニー設立、地下水のバイパスといった点を挙げた。
一方、問題がある点として、水管理が不充分であること、安全文化の浸透が不充分であること、過去の過ちから学び、手順を順守することを挙げた。
その上で、デールクライン委員長は東電に対し、「安全に注力し、コミュニケーションが開かれた、透明性を維持するよう改善」を要求した。
バーバラ・ジャッジ副委員長は、NSOO(原子力安全監視室)と、SC室(ソーシャル・コミュニケーション室)を特に高く評価した。
NSOOは取締役会に対し、安全に関する10項目の提案を示していた。取締役会はこの提案を受け、自らが安全について、当事者意識をもって取り組んでいくことをコミットしているという。
また、SC室は室長に女性を起用し、室長のリーダーシップのもと、コミュニケーション力を強化、情報の発信を戦略的かつ能動的にすることを狙っている。透明性、タイムリー性については、「かなり改善がみられる」とバーバラ・ジャッジ副委員長は評価しており、東電の中で最優先にすることを期待している。
櫻井正史委員は、汚染水に関するトラブルが続いているが、いくつか共通する原因があると指摘。「基本的には、リスクに対する予想がどこまでできているかについて、若干の危惧を持っており、今後、リスク予測能力を上げていくことが大きな課題だ」と述べた。
「原発の廃炉に関する技術と、運転する技術とは異なったスキル、技術が必要」だとして、廃炉を専門的に行う「”廃炉カンパニー”の設立は好ましい」と委員用も副委員長も評価している。
今発生している汚染水に関するトラブル、事象を防止するためにも、「十分な教育が必要だ」とクライン委員長は述べ、全く新しい廃炉の分野について、「社員はスキルを習得しなければならない」とジャッジ副委員長は考えている。そうした中で、安全文化を浸透させるのに時間がかかっていることに触れ、「長い旅路の中で、安全文化はより深く理解されていくと思っている」と副委員長は語った。
これまでの東電のアプローチは、トラブルの発生後、事後的に対応するもので、事前に能動的に対策をとるアプローチではなかった。原子力産業において、「もしこういうことが起こったらどうなるのか、”What”、”If”というような、不測の事態を常に考えないといけない」と委員長は苦言する。続けて、「それが安全文化であり、まだ不充分なことを示しているのがALPSだと考えている」との考えを示した。
過去の核施設における事故では、例えばTMI(スリーマイル島)も燃料は溶けたが、1F(福島第一)の方がより顕著に燃料の溶融が起きている。「1Fほど、燃料が溶融した原子炉というのはあまりない」と委員長は言う。
それでも、溶融燃料については、「TMIの経験を1Fでも反映することができる。地下水の汚染の発生という事故も英米ともに経験しており、除染する技術はある。だからこそ、東電はそこから学び、ベンチマーキングする必要がある」と述べた。
凍土壁自体は、世界で使われているので技術としては確立している。しかし、「発電所周辺の地下水が十分に解明されていないという疑問がある」とクライン委員長は凍土壁での汚染水対策に懸念を示した。
「凍土壁で凍らせれば、そこは水は通らないということは分かっている。しかし、凍土壁を作ることで、意図しなかった影響が出るのかどうかは分からないこと」だという。「そこを充分に調査する必要性を感じている」とクライン委員長は語った。
さらに、凍土壁が政府主導なのは認識しているが、「政策ではなく、科学が優位に立つことを願う」とし、東電としても、「試験を通じて、凍土壁がベストな解決策ではないということが示されれば、それは、東電から政府にその旨を申し入れるべきだ」との考えを示した。
改革監視委員会としては、凍土壁を実際に施行する前に、充分な調査をするべきだと考えているようだ。