2月9日に投開票を迎える東京都知事選挙。この都知事選の争点のうちの一つに、「国家戦略特区」の是非がある。舛添要一候補、細川護熙候補の2人が、「国家戦略特区」を東京都に設置することを政策に掲げている。
昨年12月の臨時国会で可決された国家戦略特区関連法案。1月22日、安倍総理は「世界経済フォーラム年次会議」(ダボス会議)で、「既得権益の岩盤を打ち破るドリルの刃になる」「春先には、国家戦略特区が動き出す。向こう2年間、そこでは、いかなる既得権益といえども、私のドリルから、無傷ではいられない」、と各国首脳や企業のトップを前に宣言してみせた。「マイ・ドリル」は凄いんだぜ、とマッチョに誇ってみせたのである。
では、その「国家戦略特区」の内実とは、いかなるものなのか。
政府は昨年の10月18日、日本経済再生本部の「国家戦略特区ワーキング・グループ」において、「国家戦略特区」の具体策を決定した。
- 国家戦略特区において検討すべき規制改革事項等について(pdf・2013年10月18日 国家戦略特区ワーキング・グループ)
この指針は、医療、雇用、教育、都市再生・まちづくり、農業、歴史的建築物の活用、の6分野で構成され、それぞれ「国家戦略特区」における規制緩和の方向性が示されている。
なかでも注目しなければならないのが、6分野のうち真っ先に名前があがっている、医療である。
日本では承認されていない医薬品を使う自由診療と保険診療を併用する「混合診療」を拡充する他、外国人医師・看護師の受け入れ促進、病床規制の特例による新設・増設の容認など、大幅な規制緩和を盛り込んだ内容となっている。「国家戦略特区」においては、医療は病院や保険会社が利益を追及するビジネスとなってしまう可能性が高い。
医療のビジネス化をいち早く取り入れているのが、米国である。では、現在の「米国医療」の実態とはどのようなものなのか。以下、私が2012年4月に、ツイッター上で呼びかけを行った際に寄せられたツイートを紹介する。
岩上安身からの呼びかけ
@iwakamiyasumi
米国医療の現実について、エピソードをお持ちの方、ハッシュタグ #米国医療 をつけて、できれば私あてのメンションをつけて、つぶやいてください。金がなければまともな医療を受けることができない米国の現実が、TPP参加によって、他人事ではなくなります。
@iwakamiyasumi
知人(日本人)の体験談。昨年、米国に滞在中、友人(同じく日本人)と山登りをした。そこで友人の具合が悪くなり、救急車を呼んだが、救急車が辿り着けず、ヘリを呼ぶことに。無事、病院に搬送されたが、その搬送費用として300万円請求された。#米国医療
寄せられたツイート
@Yurihiranuma さん
#米国医療 米国の高い医療費が誰のポケットに入ってるか。医師から見ると、保険会社の重役や病院経営の重役にしか思えない。保険会社が多種多様で同会社の中の保険プランも様々なので、請求を出す側も、人材と経費にお金がかかる。
@RicknLika: さん
#米国医療 法外な治療費を要求されたり、保険の水増し請求をしていることも多い。不正な請求をされたら、その州での一単位の治療費を調べプリントアウトの上、病院側としっかり話し合いをしないいと泣き寝入りをすることに。
@buybestkonacoff さん
保険で賄えない分は交渉次第です。私の知り合いで、違法で滞在し、交通事故、病院費用「払えない」といったら、いくらなら払えると。で、なんと、何十分の一に。普通の保険も保険会社が交渉し、金額が下がります。請求はあくまで請求額。#米国医療
@stmatthew70: さん
米国駐在中、駐在ママの子が肺炎に。2週間の入院で200万円とられたと。後から会社に返してもらえるにしても一時的に自分で支払わねばならず工面に奔走したと聞きました。 #米国医療
@mm_dayafterさん
妹がアメリカ留学中、ルームメイトが40度の高熱を出したので「病院に連れていこうよ」と友達に言ったら、「この子を破産させる気か!」と激しく怒られ、以後、お金持ちの子とレッテル貼られてたいへんだったらしい。#米国医療
@au_r さん
精神科の持病持ちで留学した際に急性症状が出て1週間入院して薬物治療だけだったのに130万円払わされました #米国医療
@sakakiyayoi: さん
#米国医療 健康保険自体が高額。私は一人分安価な物で月$360。友人は1家族(4人)で,月約$2000-。腰痛でERで注射1本と,NSAID,処方箋で,保険が提携外の病院と判明し$700の請求。保険は医療を受けるに不可欠
@aozorarin: さん
スーパーに多数の医薬品。市販薬と自力で治している印象。病院に行く前に自分の保険が使えるかどうか確認。眼科処方の目薬が70ドルも。20年前に腹腔鏡オペをした時は日帰り。友人も出産して翌日退院。体力と気力勝負!加入してる保険次第で格差が #米国医療
@b_vinegars17 さん
15年前、友人(日本人)が誤って包丁で指を深く切り、病院にかけこんだ時、病院に現金で2000ドル(約20万) 揃えてから来いと言われ、血がだらだらのままATMを探した。医療保険の更新料を払えなかったせい。 #米国医療
@b_vinegars17 さん
女の子が交通事故で重症。移民系の母親が救急車を呼ぶ。緊急車は来たが、隊員は症状を見て、救命手術を受けられる高い保険に加入していないことを確認、そのまま帰ったとのこと。女の子は死亡。(在住26年の日本人に聞きました) #米国医療
@rkerneiさん
♯米国医療 交通事故で、スタンフォード大の病院に入院しましたが、何もしなくても1日8万円かかり、人は点滴をしながら、退院していましたね、25年も前の事ですが。保険は絶対必要と。
@777CHACO:
この間は、40になっていないライフガードの友達が、とつぜんビーチで意識不明に成ってICCU緊急集中治療室に入っていたんですが…一日15000ドルかかるため家族はプラグオフ
@merdeka2670さん
#米国医療 数年前、娘がラスベガスで発熱し、診察を受けたところ、待ち時間3時間、診察時間2分。イチゴ舌なので溶連菌ではとの質問に、そうだね。で診察終了。たったそれだけで10万円でした。ちなみに会計待も1時間半でした。
@Tabikuma1:さん
今から20年程前。私の亡き祖父。アメリカの叔母宅で怪我をし、暫く入院生活(半身不随)。祖父は高額保険に入っていたから良かったものの、入院中、隣室の人とか慢性的な病気の人達が続々と治療費を払えなくなって治っていないのに退院する様を目撃 #米国医療
@yuyujiai: さん
知り合いが不妊治療スタート時ご主人と検診を受けて、医者はご主人の玉ちゃんを軽くモミモミしただけで請求書200ドルだったと聞いたことがあります(汗)#米国医療
@sakakiyayoi: さん
保険を定期購入の際,診療はCo-Pay(自己負担)のみ。同じ保険会社のプログラムを継続購入していないとCo-Payは割高。特別な手術等は保険適応外要注意(破産するケース多)。健康保険と車保険はとても必要ながら掛け捨てに近い感覚 #米国医療
@lovepicaso:さん
#米国医療 処方薬も保険会社が設定した条件があり、あるニキビの薬は高校生まではカバーするけどそれ以上の年齢はダメとか、先月までカバーしていた薬が今月からはダメだから別なのを処方してもらえということもあり、即日薬が欲しくても貰えないこともある。
@katagiriccsr:さん
救急車を呼ばなくてはいけなときは、死にそうでもですね、自分の保険証を片手にもって、この保険がきくところに行ってくれと、死にそうになりながら頼むのですよ。冗談ではない。#米国医療
@katagiriccsr: さん
室謙二さんの話①:ヘルニアで手術。一時間以内、麻酔が数時間でさめ退院予定、ところが麻酔の副作用で、偏頭痛がはじまり10時間ほど身動きできずに吐くばかり、結局、一泊の入院に。それで昨日、病院から請求書が。これが本題。#米国医療
@katagiriccsr: さん
室謙二さんの話②:請求書の総額は、36,946.54ドルです。約3万7千ドルですよ。一時間の手術、それで偏頭痛の発作をおこして一泊。その病院代です。ここには医者の費用は入っていません。#米国医療
@katagiriccsr: さん
室謙二さんの話③:脱腸治療の総費用は、全部で4万ドル弱になると思う。病院は特別なところではなくて、歩いてすぐのアルタ・ベイツ病院。泊まった部屋はカーテンで仕切ってある二人部屋。食事だって普通の病院食。#米国医療
@katagiriccsr: さん
室謙二さんの話④:サービスが8000ドル(何だか分からない)。麻酔3000ドル。薬代1500ドル。リカバリールーム(手術の後に一時的に入れられる、カーテンで仕切った大部屋)9500ドル(数時間だけ)。
@katagiriccsr: さん
室謙二さんの話⑤:そして一泊の入院の部屋代が9500ドルです。あとは雑費、それで全部で約37000ドルです。もっとも保険に入っている。毎月3万円ぐらい払っているので、「たったの5000ドル」が支払わなくてはいけない分です。#米国医療
IWJでは、米国医療の問題点を描いたマイケル・ムーア監督のドキュメンタリー映画「シッコ」をテーマに岩上安身がトークした「シネマトークカフェ」をPPV(ペイ・パー・ビュー)で配信する準備を進めています。詳細が決まり次第、こちらのページでお知らせします。
重要な指摘、貴重な情報をありがとうございます。職場で同僚につぶやいています。
2008年頃だったか、医療崩壊が言われ本田宏先生の「誰が日本の医療を殺すのか」(洋泉社)や李啓充先生の「市場原理が医療を滅ぼす アメリカの失敗」(医学書院)の本を読みました。李先生の講演も2回聞きました。
つまり貧乏人はマトモな医療を受けられないということです。記事内に医療のビジネス化を進めたアメリカの実態も書かれてます、必読。