日刊IWJガイド「山上容疑者は真犯人ではない!? 安倍晋三元総理暗殺事件とウクライナ紛争をめぐる世界情勢の激変はつながっている!?」2023.4.11号~No.3862号


┏━━【目次】━━━━
■はじめに~山上容疑者は真犯人ではない!? 安倍晋三元総理暗殺事件とウクライナ紛争をめぐる世界情勢の激変はつながっている!? 昨日午後4時過ぎから岩上安身による元外務省国際情報局長・孫崎享氏インタビューをフルオープンで生配信しました!

■IWJは創業以来、最大の経済的危機に直面しています! 3月の最終日までのご寄付額が確定しました! 3月のご寄付件数は132件、175万5400円でした! 月間目標額390万円の45%に相当します! 毎月、累積赤字が増え続けている状況ですが、4月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成できますよう、また累積の不足分を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!

■【中継番組表】

■統一地方選2023前半戦、道府県議員、政令指定都市議会議員の当選結果! 県議会選挙で維新が124議席獲得! 対改選前議席で2.18倍という伸び率! 改憲は地方議会から確実に始まっている!

■<IWJ取材報告 1>国会で自民党推薦にもかかわらず「集団的自衛権容認の安保法制は違憲」と証言した長谷部教授が再び証言!「理のない」選択肢の多数決は「代表民主制の結論ではない」!~4.7 安保法制違憲山梨訴訟控訴審における長谷部恭男教授証人尋問後の記者会見

■<IWJ取材報告 2>伊勢崎賢治氏「『ロシアは侵略を止めよ。アメリカは代理戦争を止めよ』。この2つを同時に、同じ強さをもって訴えるのが『憲法9条の心』だと僕は思います」~4.5 広島G7サミットに集まる各国首脳へ向けて「今こそ停戦を」記者会見

■<岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』復刻連載(その50)>第三部 権力のはらわた「第九章 ロシアは独裁者を待っている―― 一九九二年三月 ――」(part5)

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■はじめに~山上容疑者は真犯人ではない!? 安倍晋三元総理暗殺事件とウクライナ紛争をめぐる世界情勢の激変はつながっている!? 昨日午後4時過ぎから岩上安身による元外務省国際情報局長・孫崎享氏インタビューをフルオープンで生配信しました!

 おはようございます。IWJ編集部です。

 岩上安身は本日午後4時過ぎから、予定時刻を1時間強遅れて、元外務省国際情報局長の孫崎享氏へのインタビューをフルオープンで行いました。

 当初、インタビューは、「ウクライナ紛争は、今年春から夏にかけてさらなる『激戦』へ!? それとも『停戦』!? 米国の覇権と威光が劇的に低下し、世界で「脱米国依存」が加速する中、日本はどう動くべきか?」というタイトルで行われる予定でしたが、孫崎さんのリクエストで急遽、IWJのスタッフが新しくパワーポイントのスライドを1時間強かけて作り直しました。

 そして、冒頭から驚くべき話の展開となりました。

 孫崎氏は、「今日は、安倍元総理の真犯人は山上容疑者ではないと主張します」と宣言したのです。

 「山上(容疑者)は一言で言うと、オズワルド」

 孫崎さんは、ジョン・F・ケネディ元大統領とロバート・ケネディ元司法長官の暗殺事件を持ち出し、ジョン・F・ケネディ元大統領の犯人とされるオズワルド、ロバート・ケネディ元司法長官の犯人とされるエルサレム出身のパレスチナ系アメリカ人、サーハン・ベシャラ・サーハンの例をあげ、「この二人が犯人ではなく、別に真犯人がいる」というのと同じ意味で、「山上(容疑者)は一言で言うと、オズワルド」と言ったのです。

 孫崎さんは、なぜ山上容疑者が安倍元総理暗殺の犯人ではないと言いきるのかを、安倍元総理の体にできた銃創の位置の問題から説明していきます。

孫崎氏「(7月8日に安倍元総理が銃撃された後、緊急搬送された奈良県立医科大学付属病院の福島英賢(ふくしま ひでただ)医師の記者会見で)この人(救急医学教授・福島医師)はものすごく的確にしゃべっている。(中略)銃創が二つ、首の前、鎖骨の上、間隔が5センチくらいで、真ん中よりもやや右、ということを言ったんですね。(中略)これが(安倍元総理の)立っているところなんですね。山上さんが後ろから撃ってくるわけなんですね。一発目ばーんという音がする、後ろからくるわけだから、ここ(首の前)には当たらない」

岩上「当たるわけないですね、背後から貫通したとかいうのなら、わかりますが」

孫崎氏「(病院は)銃創は背後にはないと言っている。(体に当たった)2つの弾丸の1つは心臓に行く。その銃弾がどうなっているかはわからない。もう一発は右から入って左の肩から出ている。

 1発目は後ろから来ているわけだから(首の前の銃創とは)関係ない。2発目も、1発目のあと、半分だけふり返っただけの安倍元総理のこの辺(首の前部)は、後ろに回っていないんです。ということだから、(山上容疑者が放った)2発目も当たっていないんです。もうこれはね、議論の余地がない。だから山上が殺したんではない」

 孫崎さんは、山上容疑者は「ダミー」だと断定します。

 断定しますが、山上容疑者の行動の動機や、その背後に統一教会問題があることは否定しません。

 では、誰が、山上容疑者の行動を把握し、ダミーとして利用しながら、安倍元総理を狙撃したのか?

 孫崎さんの推理は、ここからが真骨頂になります。

 孫崎さんは、西側リーダーの中で最も多くプーチン大統領に会ってきた安倍元総理のウクライナ紛争に関する発言を時系列的に並べて、その発言が、ロシアの侵攻直後から、G7のリーダー、元リーダーたちの中で際立って正確であり、まともだったことを指摘します。言いかえると、ロシアとプーチンを「悪魔化」したい米国のキャンペーンの中では、浮いていたことを意味します。

 2022年2月27日(ロシアのウクライナ侵攻は24日であり、その3日後)に、安倍元総理はフジテレビ『日曜報道THE PRIME』に出演して、プーチン大統領が米国とNATOの東方拡大に不信感を抱いていたことを明らかにしたのです。

孫崎氏「(プーチンが軍を動かしたのは)領土的野心というものではなく、ロシアの防衛・安全保障の観点から(ロシアが)行動を起こしたと解説しているんですよ」

孫崎氏「それから一か月も経たないうちに、ゼレンスキーが日本の国会でビデオ演説をした。この時点で日本で一番力の強い政治家は誰かというと、安倍さんですよ。安倍派の人たちは、ほとんどそれ(安倍さんの考え方)を知っているわけです。フジテレビで発言しているんだから。

 だったら、安倍派の人間は、ゼレンスキーの言っていることだけで話をつけていいわけじゃない、ということはわかっているわけ。それがなんでここ(国会)でもって、(ゼレンスキーのビデオ演説に対し)スタンディング・オベーションになるのか、ということなんです。日本で一番力のある人の、『私(安倍元総理)は、ロシアを全面的に支持するわけではないが、ロシアにも言い分がある、それを理解すべきだ』という声は、(2月)27日から消えるんですよ」

 もう一つ、孫崎さんが提示した安倍さんの発言は、5月に行われた英国の経済誌『エコノミスト』のインタビューでした。

 安倍元総理は、このインタビューの中で、『ゼレンスキー大統領が、ウクライナがNATOに加盟しないことを約束し、東部2州に高度な自治を与えられれば、戦争を回避できたかもしれない』と発言したのです。

孫崎氏「問題は、7月8日(安倍元総理暗殺日)に『エコノミスト』は、もう一回、記事をアップしているんですよ。安倍さんは、このインタビューの中で、『(日本は)核兵器を持つべきだ』とかさまざまなことを言っています。『エコノミスト』は、自分たちの記事というものが、安倍さんの殺害と関連したという感覚をもって、(再度)報道したんです」

 こうして、安倍元総理の暗殺事件が、ウクライナ紛争をめぐる世界情勢の激変とつながっていることが浮き彫りにされていきました。

 詳しくは、ぜひ全編動画を御覧ください。

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 3月のご寄付件数は132件、175万5400円でした。月間目標額390万円の45%に相当します。

 厳しい経済状況の中、ご寄付をお寄せくださった皆さま、誠にありがとうございました! しかし、3月は月間目標額の65%、214万4600円が不足となりました。

 ぜひ、皆さま、今月4月こそは、まずは月間目標額を達成できますよう、どうぞ緊急のご支援をお願いいたします!

 4月は、1日から10日までの10日間でいただいたご寄付は、31件、91万7000円です。これは月間目標額の24%にあたります。

 累積の不足額を少しでも削れるように、引き続き、どうぞご支援をお願いします!

 IWJの内部留保も底を尽き、キャッシュフローが不足したため、私、岩上安身が、個人的な私財から、IWJにつなぎ融資をいたしました。

 私がこれまでにIWJに貸し付けて、まだ未返済の残高は約600万円。これにつなぎ融資1000万円と合計すると、IWJへの私の貸し付け残高は約1600万円にのぼります。

 私の貯えなどたかがしれていますから、この先も同様の危機が続けば、私個人の貯えが尽きた時、その時点でIWJは倒れてしまいます。

 皆さまにおかれましても、コロナ禍での経済的な打撃、そしてこのところの物価上昇に悩まされていることとお察しいたします。

 しかし、ご寄付が急減してしまうと、たちまちIWJは活動していけなくなってしまいます。IWJの運営は会員の方々の会費(最近の流行語ではサブスク)とご寄付・カンパ(最近の用語でいえばドネーション)の両輪によって成り立っていますが、それが成り立たなくなってしまいます。

 2023年、「新たな戦争前夜」を迎えて、私、岩上安身とIWJは、少しでも正確な情報を皆さまにお届けできるように、その結果として、日本が戦争突入という悲劇に見舞われないように、無謀な戦争を断固阻止するために全力で頑張ってゆきたいと思います。

 2月、ピューリッツァー賞を受賞した経歴をもつ、米国屈指の独立調査報道ジャーナリストであるシーモア・ハーシュ氏が、米国が、ノルウェーと協力し、ドイツとロシアを直接つなぐ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したという驚愕のスクープを出しました。日本の新聞・テレビなどのメインストリーム・メディアは、一切このスクープを報じませんでした。

 IWJは、全文の仮訳を進め、全4回を号外でお送りしました。

※【IWJ号外】ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! ピューリッツァー賞を受賞した米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ!(その1~4)
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e3%82%b7%e3%83%bc%e3%83%a2%e3%82%a2%e3%83%bb%e3%83%8f%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a5

 私は、ロシア軍がウクライナに侵攻して1年となる2月24日の岸田総理会見で、ハーシュ氏のスクープについて岸田総理に直接、質問しました。

 私が「日本政府は、このノルドストリーム爆破疑惑について、独自に検証や調査を行なっているのでしょうか?」と質問したのに対し、岸田総理は、「米政府は完全なるフィクションであるという評価をしております」「ノルウェー外務省もナンセンスと言っています」「多くの国においてこうした記事に関しては、否定的な評価がされている」とはぐらかし、日本政府・日本国総理としての独自の判断を示しませんでした。

※【IWJ代表:岩上安身質問】ノルドストリーム爆破疑惑について、日本は独自に検証や調査を行なっているのか?岸田内閣総理大臣記者会見-令和5年2月24日(Movie IWJ)
https://www.youtube.com/watch?v=9uUrTxr_Mss

※はじめに~岩上安身が岸田総理に対して会見で質問!~(日刊IWJガイド、2023年2月25日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51926#idx-1
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230225#idx-1

 このウクライナ紛争は、ロシアを弱体化させるための米国主導の戦争です。

 ハーシュ氏のスクープが事実であれば、米国は、同盟国のドイツも多額の出資をしたノルドストリーム・パイプラインを爆破し、ドイツとロシアの仲を引き裂き、ウクライナを戦場にして、欧州とロシアの友好的な関係を完全に破壊し、欧州に天然ガスと石油を高値で売りつけて市場を奪い取ったということになります。

 つまり、米国は「敵国」のロシアだけでなく、米国の重要な同盟国であるはずのドイツにも大損害を与えた疑いがあるのです。これが真実であるならば、同盟国への重大な背信であり、裏切りです。犠牲を払わされたドイツと同じく、同盟国とは言いながら、ジュニア・パートナー(主権のない従属国)扱いされている日本も、同じ目にあわされる可能性があります。

 IWJでは、独自のIWJ検証レポートで、ドイツとロシアを直接結ぶノルドストリームの建設を米国政府・議会が何度も妨害してきた経緯から、完成したもののウクライナ紛争の勃発と制裁によって使用できなくなり、さらに爆破に至るまで、断続的に連載してお伝えしています。

 この経緯を知ると、ウクライナ紛争以前から、米国はノルドストリームの完成と開通を何としても阻みたいと思っていたという事実が明らかになります。

 岸田文雄総理は、1月早々、昨年末に閣議決定した「改定版安保3文書」を携えて訪米、バイデン大統領と会談し、日本の軍拡をバイデン大統領から賞賛されて鼻高々でした。

 国会での議論と承認がなされなくても、「安保3文書」を閣議決定し、米国からの承認があれば軍拡のアクセルを踏んでしまう岸田政権は、日本の主権を米国に丸投げしたも同然です。米国を守るために日本が代わりに犠牲となり、日本は米中の「代理戦争」の戦場とされてしまいます。

 上記の24日の岸田総理会見で、私は、「米国は誠実な同盟国なのかどうか、疑いの出ている中、日本の安全保障を米国に丸ごと委ねていていいのか」、「有事の際の自衛隊の指揮権まで米国に渡してしまっていいのか」と問いました。

 岸田総理は「自衛隊及び米軍は、各々独自の独立した指揮系統に従って行動をする、これはいうまでもないこと」などと、自衛隊の指揮権はあたかも米軍から独立して存在しているかのように述べました。

 しかし、この総理の発言は、事実と異なります。従来の幕僚長を事実上廃止し、新たに米軍との「統合司令部」を設置する「安保3文書」の改定は、自衛隊を米軍の司令下におく「2軍」にしてしまうものです。

 自衛隊が米軍と司令部を統合してしまい、自身で状況判断するための目と耳(情報衛星他)をもたず、独自に判断する頭(内閣に直結し、米国から独立した司令部)をもたない、そんな日本が、安全保障において、米軍から独立した主権をもつ、といくら岸田総理が口先だけで言っても、自衛隊のおかれたリアルな現実を国民に説明していることにはなりません。

 3月28日、「安保3文書」の改定を踏まえ、防衛費を大幅増額した2023年度予算案は、政府案どおり成立しました。

※令和5年度予算(財務省)
https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2023/fy2023.html

 日本は、このまま米国追従を続け、米国の単独一極覇権を支えるために、日本自らは世界最悪の財政危機に直面しているというのに、米国の要請に従って、軍拡という重い財政負担を背負うのはあまりに愚かではないでしょうか!?

 そもそも日本が依存している米国は、誠実な、信頼に値する同盟国といえるのでしょうか!?

 日本は、米国への依存から脱却をはかり、独立した主権国家として立つべきです。同時に、エネルギーと食料の自給ができず、資源をもつ他の国々からの海上輸送に頼らなければならない「島国」であるという「宿命」を決して忘れず、国外にそもそも「敵」を作らない、多極的な外交姿勢をめざすべきではないでしょうか?

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店番号 022
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 岩上安身


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◆中継番組表◆

**2023.4.11 Tue.**

あくまで予定ですので、変更、中止、追加などがある場合があります。また電波状況によっては、安定した中継ができない場合もございますので、ご了承ください。

【IWJ・Ch5】9:05~「西村康稔 経済産業大臣 記者会見」
視聴URL:https://twitcasting.tv/iwj_ch5

 西村康稔経済産業大臣による記者会見を中継します。これまでIWJが報じてきた経済産業大臣関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e7%b5%8c%e6%b8%88%e7%94%a3%e6%a5%ad%e5%a4%a7%e8%87%a3
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【IWJ・Ch4】16:00~「東京都医師会 記者会見 ―内容:新型コロナウイルス感染症対策~現在の感染状況と5類移行に伴う課題~ほか」
視聴URL:https://twitcasting.tv/iwj_ch4

 「東京都医師会」による記者会見を中継します。これまでIWJが報じてきた東京都医師会関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e6%9d%b1%e4%ba%ac%e9%83%bd%e5%8c%bb%e5%b8%ab%e4%bc%9a

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◆中継番組表◆

**2023.4.12 Wed.**

調整中

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◆昨日アップした記事はこちらです◆

国会で自民党推薦にもかかわらず「集団的自衛権容認の安保法制は違憲」と証言した長谷部教授が再び証言!「理のない」選択肢の多数決は「代表民主制の結論ではない」!~4.7 安保法制違憲山梨訴訟控訴審における長谷部恭男教授証人尋問後の記者会見
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/515247

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■統一地方選2023前半戦、道府県議員、政令指定都市議会議員の当選結果! 県議会選挙で維新が124議席獲得! 対改選前議席で2.18倍という伸び率! 改憲は地方議会から確実に始まっている!

 統一地方選の前半戦にあたる知事・政令指定市長・道府県議・政令指定市議の選挙が9日、投開票されました。

4月9日投開票

1)道府県知事(9件)
2)政令指定都市市長(6件)
3)道府県議員
4)政令指定都市議会議員

 後半は、4月23日投開票です。

5)市区首長 市区議会議員(4月16日公示)
6)町村首長 町村議会議員(4月18日公示)
7)衆院補選(4月11日公示)
8)参院補選(4月6日公示)

 統一地方選前半戦の9道府県知事選の投票率は、共同通信の10日午前1時現在の推計で46・78%でした。

 2015年の47・14%並みの過去最低水準となる見通しです。

 41道府県議選の投票率も低調で41・81%でした。過去最も低かった前回19年の44・02%をさらに下回る可能性が高いとされています。

 この低投票率の原因を分析した10日付『毎日新聞』は、「知事選投票率の低迷は、自民党と立憲民主党が推す候補の対決が北海道だけにとどまり、有権者の関心が高まらなかったことなどが背景にあるとみられる」としています。この分析を裏付けるように、保革の対立図式ができた北海道知事選の投票率は51・67%に対して、大阪市長選とダブル選となった大阪府知事選は46・98%となっています。

※知事選投票率、最低水準に 推計46.78% 道府県議選も(毎日新聞、2023年4月10日)
https://mainichi.jp/articles/20230410/ddm/002/010/130000c

 昨日、速報でお伝えした道府県知事選と政令指定都市市長選以外の道府県議員選・政令指定都市議会議員選の結果をお伝えします。

 政党別41道府県議選の当選者数(定数2260議席)

 自民党 1153議席(2019年の当選者数1158、改選前議席1251議席(-98議席))

 立憲民主 185議席(2019年の当選者数118、改選前議席200議席(-15議席))

 日本維新の会(大阪維新の会含む)124議席(2019年の当選者数67、改選前議席57議席(+67議席))

 公明 169議席(2019年の当選者数166、改選前議席161議席(+8議席))

 共産 75議席(2019年の当選者数99、改選前議席99議席(-24議席))

 国民 31議席(2019年の当選者数83、改選前議席34議席(-3議席))

 社民 3議席(2019年の当選者数22、改選前議席6議席(-3議席))

 参政 4議席(2019年の当選者数なし、改選前議席2議席(+2議席))

 れいわ 0(2019年の当選者数なし)

 諸派 23議席(2029年の当選者数28)

 無所属 493議席(2019年の当選者数536)

※開票速報・候補者一覧(朝日新聞、2023年4月10日)
https://www.asahi.com/senkyo/local/2023/koho/?iref=comtop_ThemeRightS_01

※41道府県議選、自民が過半数 維新は改選前から倍増(日経新聞、2023年4月10日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA082370Y3A400C2000000/

※社民党東京都連合へのIWJ取材

 県議会選挙の結果を見ると、非常に明らかな傾向が見られます。

 自民党や立憲民主党、共産党などを含む既存の伝統的な政党の全般的な退潮と、維新の会や参政党といった「新しい政党」の伸びです。

 とくに、維新の会の伸長は驚異的で、なんと改選前57議席の約2.18倍にもなります。

 しかも、これまで、大阪・奈良を中心にした地方議会で優勢だった維新の会が神奈川県(6議席)といった関東の地方議会でも議席を獲得し始めたことは注目に値します。

 関西においては、いったん、与党の位置を占めれば、大量の業界票が期待できますが、神奈川のケースを見ると、当選率で言えば、組織票を持っている共産党の当選率(15.4%)よりも維新の当選率(21.4%)の方が高いのです。

※神奈川県議選 各党議席(NHK、2023年4月10日)
https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/touitsu/14/19467/jyo19467.html

 つまり、神奈川において、業界票も労組票も宗教票もない維新の会が、これらの組織票をしっかり持っている自民、立憲、公明に次ぐ6議席を獲得したわけで、これは、大きな政治的地殻変動を感じさせます。

 政党別 17政令指定市議選の当選者数(定数1005)

 自民 292議席(2019年当選者数327)

 立憲民主 112議席(同99)

 日本維新の会(大阪維新の会含む)136議席(同74)

 公明 171議席(同171)

 共産 93議席(同115)

 国民 14議席(同33)

 れいわ 0(同―)

 社民 4議席(同4)

 参政党 3議席(同3)

 諸派 28議席(同33)

 無所属 152議席(同156)

 17政令指定市議選においても、維新の会の伸びは顕著です。獲得議席数では、立憲民主党を上回り136議席で公明党の171議席に次いで第三の勢力となっています。

 維新の会は、関西の大阪市議選や堺市議選、神戸市議選などだけでなく、関東においても、さいたま市議選や千葉市議選、横浜市議選など、関東においても確実に議席を獲得しています。

 維新の会は、改憲においては、自民党よりも急先鋒であり、経済的には、新自由主義政党であり、事実上、国会において、自民党の補完勢力の役割を果たしています。その党勢拡大の戦略は、地方議会で基盤を固める、というものでした。大阪を中心にした関西における維新の基盤作りは、明らかに、次の局面である関東進出に来ており、それが着々と地方議会で成功を収めていることがわかります。

※開票速報・候補者一覧(朝日新聞、2023年4月10日)
https://www.asahi.com/senkyo/local/2023/koho/?iref=comtop_ThemeRightS_01

■<IWJ取材報告 1>国会で自民党推薦にもかかわらず「集団的自衛権容認の安保法制は違憲」と証言した長谷部教授が再び証言!「理のない」選択肢の多数決は「代表民主制の結論ではない」!~4.7 安保法制違憲山梨訴訟控訴審における長谷部恭男教授証人尋問後の記者会見

 2015年成立の「安保法制」は違憲だとして、安保法制にもとづく自衛隊出動の差し止めを求める訴訟(差し止め訴訟)と、平和的生存権侵害等への賠償を求める国家賠償訴訟(国賠訴訟)が、日本各地で進められています。「安保法制違憲山梨訴訟」(2017年甲府地裁に提訴)は、国賠訴訟の一つです。

 2023年4月7日、この「山梨訴訟」の控訴審の中で、著名な憲法学者である長谷部恭男早稲田大学教授の証人尋問が東京高裁で行われました。同日、長谷部教授と原告団、弁護団が、東京都千代田区の司法記者クラブで記者会見を行いました。

※埼玉訴訟控訴審判決言渡し、長谷部恭男教授証人尋問のお知らせ(安保法制違憲訴訟の会、2023年4月5日)
http://anpoiken.jp/

 長谷部教授は2015年、安保法制の国会審議中、衆議院憲法審査会に自民党推薦で招致され、他の憲法学者2名と共に、集団的自衛権を認める安保法制法(案)は違憲だと証言。しかし結局、安保法制は強行採決により成立しました。

 会見で長谷部教授は、控訴審の証言について、「安保法制の前提となっている7.1閣議決定が、従来の確立した有権解釈であった『個別的自衛権のみが憲法の下では許される』という考え方を、全く論理的整合性もなく、しかも法的安定性を破壊する形で、『集団的自衛権行使が認められる』と変更したことの違憲性を強調した」と述べました。

 そして長谷部教授が「もう一点強調した」のが、「違憲審査権の中心的役割は、立憲民主性という政治過程を守ること」です。

 「安保問題は、代表民主制を通じて、最終的には政治部門が決定する」という考え方に対して、「国際的な憲法学の共通了解」として、「代表民主制で決められるのは、あくまで『理のある(reasonable)』選択肢の中から多数決でどれを取るかだ」と反論。「『理のある』範囲に入ってない選択肢が出された時」は、多数決でも「代表民主制の結論とはいえない」と述べました。

 そして、「『理のある』選択肢の範囲内に収まっているか否かを見張り、その範囲を守るのが、違憲審査制度の中心的役割」であり、「本件でも、その違憲審査制度の役割が期待されている」と証言で強調したといいます。

 長谷部教授の証言について、弁護団の棚橋桂介弁護士は、「憲法改正決定権、すなわち(国民が)憲法改正の手続きに参画する権利が、明白に侵害されている。それは選挙をやらないで国会議員が今の地位に居座るのと同じで、法的にはその通りだということを、憲法学の第一人者にしっかり証言いただいた意味は果てしなく重い。これで裁判所が無視するようなら、この国の司法は本当に終わりだ」と、強い憤りを見せながら語りました。

 会見について詳しくは、全編動画を御覧ください。

■<IWJ取材報告 2>伊勢崎賢治氏「『ロシアは侵略を止めよ。アメリカは代理戦争を止めよ』。この2つを同時に、同じ強さをもって訴えるのが『憲法9条の心』だと僕は思います」~4.5 広島G7サミットに集まる各国首脳へ向けて「今こそ停戦を」記者会見

 2023年4月5日、午後2時より、東京都・衆議院第一議員会館にて、「広島G7サミットに集まる各国首脳へ向けて『今こそ停戦を』」の記者会見が開催されました。

 日本は今年G7の議長国です。5月に広島で開催されるG7サミットに集まるG7首脳と日本政府に、「ウクライナ紛争の即時停戦」を求める宣言の発表でした。

 元アフガン武装解除日本政府特別代表で東京外国語大学名誉教授の伊勢崎賢治氏、青山学院大学名誉教授の羽場久美子氏、そして、東京大学名誉教授の和田春樹氏ほか7名の登壇者が、勃発からはや1年が経過しようとしているウクライナ戦争の即時停戦を訴えました。

 会見冒頭、和田氏が、2023年5月の広島G7指導者におくる日本市民の宣言「『Ceasefire Now!今こそ停戦を』『No War in Our Region! 私たちの地域の平和を』」を読み上げました。

※「Ceasefire Now!今こそ停戦を」「No War in Our Region!私たちの地域の平和を」2023年5月 広島に集まるG7指導者におくる日本市民の宣言(環境広告サステナ ウェブサイト)
URL: https://greenfunding.jp/sustena/projects/7234

 環境広告サステナによるこのウェブサイトでは、この「今こそ停戦を」の宣言の新聞広告を出し、G7広島サミット首脳に呼びかけ、実現するためのクラウド・ファンディングに参加することができます。新聞広告のためには、264万円が必要となるが、4月10日、14時50分現在、45万500円が集まっています。期限は5月7日です。

 「今こそ停戦を」の宣言に賛同される方は、以下のchange.orgのサイトで署名いただけます。

※#今こそ停戦を 賛同署名をお願いします(change.org)
https://www.change.org/p/%E4%BB%8A%E3%81%93%E3%81%9D%E5%81%9C%E6%88%A6%E3%82%92-%E8%B3%9B%E5%90%8C%E7%BD%B2%E5%90%8D%E3%82%92%E3%81%8A%E9%A1%98%E3%81%84%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99

 伊勢崎氏は、次のように訴えました。

伊勢崎氏『ロシアは侵略を止めよ。アメリカは代理戦争を止めよ』。この2つを同時に、同じ強さをもって訴えるのが『憲法9条の心』だと僕は思います。さもないと、前者だけ、つまり『ロシアは侵略を止めよ』だけでは、『ロシアもしくは中国は怖いからもっと自衛隊の軍備増強を、そして日米同盟の強化を』という、こういう勢力に元気を与えてしまいます」。

 羽場氏は、停戦へのプロセスについて、次のように説明しました。

羽場氏「今、バイデンは、民主主義対権威主義ということで、権威主義的な体制を持っているロシア、あるいは中国、あるいはアジア、アフリカの国々すべてに対して敵対するような、分断するような態度をとっています。(中略)

 ミンスク合意は、2014年と2015年に、当時のドイツのメルケルと、それからフランスの社会党のオランドによって締結された非常にレベルの高い合意であったと思います。これを破ったのは、ウクライナの側です。

 戦争が継続し、ミンスク合意が実現できなかったのは、OSCEという欧州安全保障機構が機能しなかったからです。中立軍を入れていれば、その後のウクライナ・ロシア戦争につながるような戦争が継続しなかったと思っています。

 今回、中国が停戦交渉を開始しました。中立軍として停戦交渉を提唱している中国、そして平和の維持を検討しているインド、及びASEANなど、アジア諸国が共同の中立軍を作って、国連中立軍として二者の間に緩衝地帯を設け、そこに入っていくということで戦争は停止することができます(後略)」。

 また、羽場氏は、メディアの現状について、「まさに今、日本の報道が戦争前状況になっていることを大変憂います。報道の公正化、多様なファクトの多様な報道が戦争の時こそ必要であり、それによってこそ私たちがその戦争をどう判断するかということの最終的な判断が皆さんの報道にかかっているからです」と訴えました。

 会見の詳細はぜひ全編動画をご視聴ください。

■<岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』復刻連載(その50)>第三部 権力のはらわた「第九章 ロシアは独裁者を待っている―― 一九九二年三月 ――」(part5)

 岩上安身は、1989年から1994年まで、29歳から35歳まで、足かけ6年かけて、崩壊前夜のソ連から、ソ連崩壊後の「民主ロシア」誕生の裏面まで、現地で取材しました。

 現地取材をまとめた著書『あらかじめ裏切られた革命』(1996年、講談社、講談社ノンフィクション賞受賞作)は、当時のソ連・ロシアの実態を記録した貴重な資料ですが、残念ながら絶版となっており、入手困難な状況となっております。

 ウクライナ紛争の長期化、そして西欧諸国が世界を支配してきた構造、米国による一極支配構造に揺らぎが見え始めた今こそ、改めて1991年のソ連崩壊前後に戻って、歴史を振り返る必要があると思われます。日刊IWJガイドで、『あらかじめ裏切られた革命』の復刻連載を進めていきます。ぜひお読みください。

 下記URLから、初回の復刻連載(その1)をお読みいただけます。

※<岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』復刻連載(その1)>序文「ゴーリキーパークの世界精神」(日刊IWJガイド、2022年11月20日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51557#idx-4
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20221120#idx-4

 直近の復刻連載は、下記URLからお読みいただけます。

※<岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』復刻連載(その48)>第三部 権力のはらわた「第九章 ロシアは独裁者を待っている―― 一九九二年三月 ――」(part3)(日刊IWJガイド、2023年4月9日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52105#idx-4
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230409#idx-4

※<岩上安身『あらかじめ裏切られた革命』復刻連載(その49)>第三部 権力のはらわた「第九章 ロシアは独裁者を待っている―― 一九九二年三月 ――」(part4)(日刊IWJガイド、2023年4月10日)
https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52109#idx-8
https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230410#idx-8
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◆ジリノフスキー「文句があるなら、北海道を占領してやる!」

 ジリノフスキーの思想的なポジションはともかく、彼自身がどんな人物か、実のところ本人と会うまで予備知識はほとんどもちあわせていなかった。日本の新聞・雑誌等で彼に直接取材をし、その肉声や人物像を伝えたものはほぼ皆無である(実際、私のこのインタビューが、日本の活字媒体では最初の、ジリノフスキーヘのロング・インタビューとなる)。

 演説では過激な言辞を弄するものの、会って一対一で話すと、礼儀正しくきちんと話す人物は珍しくない。極右団体「パーミャチ」のリーダー、ワシーリエフも、共産主義統一労働者党のアンピーロフもそうだった。漠然とながら、ジリノフスキーもさして変わらないだろうと考えていたのである。ところが、自民党本部へ向かう道すがら、ダーシャという通訳の女性が、ひどく不安気な口調でこう言うのだった。

 「ジリノフスキーは怖い。ものすごく乱暴で、凶暴な人らしいですから。本当に二人だけで彼らのオフィスヘ出かけて行って大丈夫かしら」

 大丈夫だよ。笑いながら、そう請け合ってはみたものの、旧KGB本部の裏手の路地を曲がり、ほとんど廃屋に近い荒れ果てた建物の玄関をくぐるときには、さすがに気味悪さを覚えた。電灯が壊れているため、真昼だというのに屋内はひどく暗い。壁ははげ落ち、床には穴があいている。年代物の鉄骨がむきだしのエレベーターは、故障しているらしく、ボタンを押してもウンともスンともいわず、仕方なく、ぎしぎしときしむ階段をのぼってジリノフスキーの待つ部屋へと向かう。入り口付近には、暇と体力をもて余したような迷彩服姿の若い男逹が、たむろしていた。ジリノフスキーの「親衛隊」なのだという。

 奥の部屋に通されると、ワイシャツの襟元をゆるめた「野性味」たっぷりの自民党党首が待ち構えていた。何が面白くないのか、おそろしく不機嫌な様子である。率直なところ、「怖い」とか「凶暴」とかいうよりも、単なる無愛想な中年男、というのが第一印象だった。

――まず、あなたと、あなたの率いる自由民主党のポリシーをお聞きしたい。

 「我々の立場は、民主主義者と一緒でもなく、共産主義でもない。第三の勢力を代表している」

――第三の勢力とは?

 「まず民主主義者と比べると、一番大きな違いは、国の分割に反対していることだ。それから経済改革を、外部のソースを利用して、国民の犠牲なしに行なうこと。外部のソースとは、外国から債権を取り立てることと、貿易である。東南アジア、アフリカ、ラテン・アメリカなどの国々に旧ソ連は多額のクレジットを与えてきた。無償で与えてきたのはソ連共産党だが、ソ連国家が与えたのは有償である。このクレジットを即座に返してもらう。そして、我々が西側から借りている債務は返さない。利子の支払いもストップする」

――貸しているカネは取り立てるが、借りているカネは返さないというのはあまりにも身勝手な態度でしょう。国際的な摩擦の原因になるとは思わないのですか。

 「我々にはカネがない! わが国の経済的現状の方が、もっと大きな摩擦だ! 貸したカネは一億ドル。借りたカネは七千万ドル。債務支払いをやめ、債権を取り立てれば一億ドルがまるまるわが国に入る。このカネを経済改革の資金にあてるのだ。わがロシアには、労働力も、才能ある人材も、天然資源も豊富にある。資本さえあれば、必ず経済改革に成功する」

――あなたの考える経済改革とは?

 「我々は共産主義者ではない。共産主義者は七十年あまりにわたって権力を握り、その結果、共産主義では国家を正しく統制することができないことを立証した。共産党の一党独裁、計画経済、そして階級闘争というイデオロギーはまったく無効である。私は政治でも経済でも、プルラリズム(多元主義)を訴えている。その点では民主主義者と同じだが、連中は国家を破壊に導こうとしている。そこが我々と違う。

 かつてロシア帝国が存在した。共産主義者がそれを破壊し、ソ連邦をつくった。その結果我々は、ポーランドとフィンランドを失ってしまった。そして今度は民主主義者がソ連を破壊し、国の半分の領土を失ってしまった。私はそれを絶対に許せない。我々の領土は数千年にわたって築き上げられたものだ。絶対に譲り渡すことはできない。民主主義者は他の共和国の主権を認めるが、私は認めない。我々はロシアの主権を主張するが、それはあくまで旧ソ連領土のすべてにわたる主権を意味している」

――しかし、各民族共和国の独立の意志はきわめて固い。バルト三国などは、すでに国際社会においても独立が承認されている。それを再びロシアの領土であると主張するのは、リアリティーがないのではないですか。

 「もし我々が権力を握ったら、バルト三国には経済的圧力をかける。バルトは鉄、木材、電力、石油、天然ガスなど、すべての資源をロシアに今も頼っている。これらの供給をすべて完全にストップすれば、バルトはたちまち経済的に破綻し、我々に泣きついてくるだろう。そもそも、わがロシアはバルト三国に対して、多大な投資をしてきたのだ。あそこには約一億ドルの資産がある。その資産を力ずくでも奪還すべきだ。我々が経済封鎖を断行し、なおかつ彼らが従わないようであれば、武力行使も当然辞さない!

 中央アジアの場合、カザフとキルギスは自動的にロシアの領土に併合する。ここは本来、ロシアの領土だからだ。現在でも、ロシア人が多数住んでいる。我々は絶対にここを手放さない。また、実際問題としてさして抵抗はないだろう。ここはツァーリの時代もロシアの支配に対して抵抗はほとんどなかった。ウズベク、トルクメン、タジクの三共和国については、その政治的動向を厳しく監視するつもりである! この地域がイスラム化の傾向を強めることを、我々は望まない」

――具体的にはどう対応するつもりなのでしょうか。

 「バルト三国同様、経済封鎖する。ロシアがすべての資源と物資の供給を止めれば、自立は不可能だ。この措置には、心理的な要因も含まれる。今のロシアの政権は弱腰なので、中央アジアの共和国はイスラム世界へ顔を向けている。しかし、偉大なるロシアがかつてのように強い宗主国としてふるまえば、これらの国々も、必ずやロシアのほうを向くだろう」

――しかし、イスラム系共和国の独立を、トルコやイランをはじめとするイスラム諸国がバックアップする動きをみせている。抵抗がないなどというのは、錯覚ではないのですか。

 「抵抗してみせてもらおうじゃないか! ここに、世界で一番強い軍隊がある! 三百万人の兵力がある。もしトルコが内政に干渉したら、我々もトルコの内政に干渉してやる。トルコには、クルド人やアルメニア人、ギリシャ人、ブルガリア人ら、自立を求めている少数民族がいる。その少数民族に火をつけてやる!!」

――ずいぶん過激な言葉だが、あなたは基本的にどのような外交方針、対外戦略を思い描いているのですか。

 「私は、東西の軸ではなく、南北の軸を重視する。つまり南ロシアの切実な利益を守ることに力を注ぐということだ。その基本戦略の延長線上に、中央アジアに対するロシアの影響力の強化がある。もっとも、ザカフカス地方は放棄する。あそこは、永遠の戦争地帯だ。ナゴルノ・カラバフをめぐってアルメニアとアゼルバイジャンは殺し合っているが、私は興味ない。両民族とも、殺して、殺して、殺し合えばいい。そのあげくの果てに、連中はロシアを思い出すだろう。

 グルジアも殺し合いをしているが、あれはシェワルナゼの陰謀だ。奴はキツネのような男だ。連邦を破壊し、民族をワザと分裂させ、故郷のグルジアが独立主権を手にしてから、大統領になるためにあそこへ帰った。しかし、奴の目論見ははずれることだろう。ガムサフルディアの支持者によって、奴はきっと殺されるに違いない」

――ゴルバチョフ外交は東西の緊張緩和に力を注ぎ、エリツィン政権もその基本路線を引きついでいるが、あなたの東西外交ヴィジョンはどのようなものですか。

 「ワルシャワ条約機構が解体され、ヨーロッパをNATO(北大西洋条約機構)が支配している状況は容認できない。我々はヨーロッパに新しいブロックをつくることを主張する。

 東西関係のもう―つの問題として、日本との問題も解決したい。はっきり断言しておくが、我々は絶対に南クリル諸島(北方領土)を渡さない。一島たりとも譲らない。その点をはっきりした上で、平和条約を結び、貿易しようじゃないか。私は自由主義経済の信奉者だ。ロシアに豊富にある石油や木材を日本が買い、日本は工業製品を輸出すれば互いにメリットが大きい」

――貿易は結構だが、北方領土問題の解決を抜きにしては、平和条約の締結も経済交流の拡大もありえない、というのが、日本政府の姿勢であり、また日本の国民の世論でもあるということをあなたは御存知なのか。

 「解決しないなどと言ってない。最終的解決は、我々が絶対に南クリルを渡さない、ということだ。その断固とした決意を日本に思い知らせるということだ。共産主義者も民主主義者も、島を譲り渡すかのような素振りをみせ、日本をだましているという点では共通している。

 連中は、今世紀中には島を返還するなどと、心にもないことを言って、実は日本をだましているのだ。そんなことも、日本人はわからないのか!? 私は率直に言う。島は絶対に返さない! 私でなくとも、ロシアで権力を握った者は、誰も返すはずはない。もしそんなことをしたら、国民の反感を買い、せっかく手に入れた権力を失うことになるからだ。それでも日本がわが国の領土を求めるなら、我々は逆に北海道を占領してやる」

――本気であなたはそういうことを言っているのか?

 「本気だとも! 脅迫しているのは日本のほうではないか! 我々、ロシア人の方こそ犠牲者なのだ。南クリルをよこさないなら平和条約も締結しないというが、平和条約を結ばないということは、日本が戦争を望んでいるということだろう。それなら、戦争しようじゃないか! 私が政権をとったらまず、太平洋艦隊で日本を包囲し、大演習を敢行する。大砲の弾丸の一つや二つは東京に落ちるかもしらんが、そんなことは知ったことではない。そして日本が抵抗するならば、即座に北海道に上陸、占領してやる」

――あなたは自分の言っていることが何を意味しているか、わかっているのか? ロシアが日本へ侵攻してきたなら、アメリカとの対決も避けられなくなるんですよ!

 「いいとも!! もし、仮にアメリカが介入してきて軍事紛争がエスカレートしてきたなら、とことんやってやろうじゃないか!! ロシアは広いから、我々は生き残れる。ウラル山脈にでも逃げこめば、少しは生き残れるだろう。現在の民主主義者と共産主義者はどちらも、アメリカといい関係を築こうとして弱腰になっているが、我々はそんな態度はとらない。湾岸戦争で痛めつけられたイラクとも外交関係を復活し、中東で再びロシアとのブロックを形成して、アメリカを追い出すつもりだ。不満があるなら、核戦争、やってやろうじゃないか!!

 だいたい、日本人は私のことをなめているんじゃないか? モスクワにたびたび日本の自民党の議員が訪れているが、私との会談の提案に応じたのは一人もいない。フィンランドは私を二回招待したし、ドイツにも招待された。私は世界中で認められた政治家であるというのに、日本を支配している与党の自民党は、私を黙殺している。同じ自由民主党という名前で、こちらから共感を表明してやっているというのに、何という失礼な連中だ。そっちが私を無視するなら、私もそういう態度でのぞんでやる!

 だいたい、日本人なんてのはそもそも、下手クソな英語しか喋れない馬鹿な民族だ。なぜ、自分の国に原爆を落としたアメリカの言葉を勉強しているのか? 英語なぞ勉強するのはやめて、ロシア語を勉強したらどうだ」

 さすがにこのあたりにくると、ジリノフスキーの言いたい放題のへらず口に、呆気にとられるのを通り越して、いい加減むかっ腹が立ってきた。

――あなたこそ、北海道を占領しにやってくるのなら、その日に備えて日本語を勉強しておいたらどうだ!?

 私がそう言うと、傍若無人の自民党党首は、にわかに激高して拳を振り上げ、机をどすん! どすん! と叩きながら吠えたてた。

 「私はモスクワ大学でトルコ語を学んだ! 東洋の言葉など、トルコ語ひとつでたくさんだ! 私は他にも英語、フランス語、ドイツ語ができる! 英語ひとつろくにできない日本人とは出来が違う! 私は日本人が嫌いだ! アメリカ人も大嫌いだ! しかし、私は真実を言う。絶対に南クリルは返さない!!」

 自民党党首を警護する屈強な男逹にとりまかれてのインタビューである。ジリノフスキーの見幕に、逐語訳していた通訳のダーシャが、心底おびえているのがわかったので、私は彼の怒りにはとりあわず、さっさと話題を変えることにした。

――ところで、あなたはエリツィンをどう思っているのか?

 「……エリツィンは左翼のラディカルだ。しかし実際には、国民的な社会発展のことを全然考えていない野心家だ。彼の目的は、連邦の中央政府を廃止し、ゴルバチョフを排除し、共産党を破壊することだけだった。彼は破壊以外に、いったい何をした? 何ひとつ建設的なことをしていないではないか。祖国を裏切ったゴルバチョフのチームを、彼は追い出したが、国民を裏切り、国家を破壊しているという点では同じである。ゴルバチョフ自身は、もはや年金生活者であり、政治的死体である。クーデター事件の裁判が始まれば、ゴルバチョフは犯罪者であることが明らかになるだろう」

――あなたは、危険な「ファシスト」であるという自分自身の評判をどう思うか。ヤコブレフも、あなたの存在をたいへん警戒している様子だったが。

 「そうだ! 私は非常に危険な人物なのだ! このことを日本人もよく頭に入れておくことだ。私を無視したり、軽く扱うと、あとで必ず後悔することになる。だが、私はファシストではない。そういう言い方は、私に対する中傷である。公(おおやけ)の場でそういう発言をする人間がいたら、私は名誉棄損で告訴してやる。私のイデオロギーは、柔らかい右派だ。私の理想は、フランスのド・ゴール、ドイツのビスマルク、ロシアのストルイピンであり、ヒトラーではない。だいたい、ヤコブレフのような人物は、アメリカかぶれの売国奴だ。アメリカ人のマネばかりして、ついに国家を破壊してしまった張本人だ。ああいう人間はロシアにいらない。

 ロシアに必要なのは、愛国主義者(パトリオット)だ。そして私こそ愛国主義者である。ルツコイが最近愛国主義者を名乗っているが、彼は元は共産主義者であり、その後、調子よく民主主義者に鞍替えした人物にすぎない。エリツィン・チームも、ゴルバチョフ・チームも、みんなそういう人間ばかりだ。私が権力の座についたら、国を崩壊に導いた犯罪で全員逮捕し、裁判にかけてやる」

――あなたが臆することなく過激な発言を繰り返し、派手な政治活動を展開できるのは、背後にKGBが存在するからだ、という人もいるが――。

 「それはデマだ。私はKGBとは無関係だ。もっとも、私はKGBが大好きだ。ミリツィア(民警)も、軍隊も大好きだ。すべての治安権力を、私は好ましく思っている。それらは強力な国家の基盤だからだ。

 私の支持者は、KGBにもミリツィアにも軍の中にもいる。しかしそれだけではない。強い指導者を待ち望む一般の民衆の中にたくさんいるのだ。私の支持者の中には、私の肖像写真をイコン(聖画)のように飾っている者もいるのだ! 三月十七日の集会を見たか? 私に対するあの歓声と拍手を聞いたか? 私は愛国主義勢力の中でも最も人気があるのだ! これから私の支持者はますます増えるだろう。

 ロシア以外の旧ソ連領土内に、たくさんのロシア人が住んでおり、連邦権力が失われてから彼らの生活権が脅かされている。それを私は保護するつもりだ。モルドヴァではロシア人達が殺されている。私が権力をとったらすぐに部隊を派遣して、ロシア系住民を保護し、モルドヴァを徹底的に弾圧してやる。ロシア人の血が流されるのは我慢がならない。

 ロシア以外の旧ソ連領土に住むロシア人は約二千五百万人。このうちの多くがロシアヘ逃げこんでくるだろう。家もなく、職もなく、カネもない。彼らは、東欧から引き揚げてきてみじめな境遇におかれている軍人逹とともに、私の新たな支持層と、なるはずだ!!

 歯をむきだし、拳を振り上げ、大声で吠えるジリノフスキーの過剰な身振りは、率直に言って政治家というよりも、プロレスの悪役外人(ヒール)を彷彿とさせる。実際問題として、ロシアの政界における彼のポジションは、おそろしいファシストというよりも、挑発的な道化師という役どころだろう。ロシア大統領選挙の際に、ロシア国民のかなりのパーセンテージがこんな人物に投票したことは、私達の想像を超えるものがある。とはいえ、まさか道化に政権を与えるほど、ロシアの民衆も愚かではあるまいと私は思っている(*)。

 *言うまでもないが、私の予測は、半分的中し、半分はずれた。九三年十二月の選挙でロシア国民は現政権への不満を投票によって表現した。この点はある程度予測できていたが、その不満票がジリノフスキーの自民党に集中することまでは予見できなかった。

 しかし仮にもし、教養も社会的信用もある人物が、ジリノフスキーの主張と同様の内容を、より洗練された言葉と物腰で大衆に訴えたらどうなるだろうか。エリツィン政権に失望している大衆の多くが、雪崩をうって傾くこともありうるのではないか。

 充分にありうることだ、と科学アカデミー東洋学研究所に勤める知人の政治学者のドミトリー・ストレリッツォフは私に語った。

 「ジリノフスキーはもちろん危険な人物です。しかし彼の主張の多くは、政治的混乱と経済の崩壊に疲れ果て、強権的な秩序の復活を待ち望む、ロシアの一般大衆の本音を代弁してもいるのです。ジリノフスキー個人は受け入れられなくても、別の、もっと受け入れやすい全体主義的イデオローグがあらわれれば、大衆は支持するでしょう。そういう気分がいま蔓延しています」

 ストレリッツォフは、政権交替の可能な二大政党制システムを議会制民主主義の理想と考え、それをロシアの土壌に根づかせるためにはどうすればいいかを研究テーマとしている。しかし、そんな彼も、理想と現実とのギャップに嘆息してこうもらす。

 「もし、かつての韓国のような軍事独裁政権がロシアに誕生したら、知識人はもちろん、多くの人々が抗議するでしょうが、それ以上に数多くの人々がとりあえずホッとして胸をなでおろすでしょうね。それが本音です。国民の忍耐ももはや限界に近づいています」

 九一年の夏、国家非常事態委員会を拒んだロシアの民衆が、今度は非常事態宜言の導入を積極的に受け入れる、そんな悪夢が現実にならないとは今や誰も断言できないだろう。私はあのクーデター事件直後の八月二十三日の時点で、いずれネオ・ファシズムの危険が迫ってくると書いたが(第一章)、その予測が次第に現実味を帯びつつあることを自分の目と耳で確かめて、苦い気分に襲われている。

(次回に続く)

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 世間を震撼させている連続広域強盗事件(「ルフィ」事件)発覚の3ヶ月も前に上梓された『ルポ 特殊詐欺』(ちくま新書、2022年11月10日)は、新聞社の報道部に身を置く著者の田崎氏が、綿密な取材にもとづいて書かれたルポルタージュです。

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 岩上安身は4月6日、田崎氏に3回目のインタビューを行いました。これまでの岩上安身による田崎氏へのインタビューは、下記から閲覧・ご視聴いただけます!

※「今の特殊詐欺グループは、自転車の車輪がいくつも存在していて、そのハブのスポークが、また別の車輪のハブになっているみたいな円環構造」~岩上安身によるインタビュー第1111回 ゲスト 神奈川新聞報道部デスク・田崎基氏 2023.3.7
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514596

※背後に「暴力団」が関与し凶悪化する「特殊詐欺」を「高齢者差別」が後押し! 岩上安身によるインタビュー第1112回 ゲスト『ルポ特殊詐欺』著者・神奈川新聞報道部デスク田崎基氏 第2回 2023.3.13
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/514705

※【4/6 15時頃~ライブ配信】岩上安身による『ルポ特殊詐欺』著者・神奈川新聞報道部デスク 田崎基氏インタビュー第3弾
https://www.youtube.com/watch?v=T1yqCboyuXQ

■【インターン(短期の方は無給実働なし研修見学のみ・中長期希望の方は実働、報酬あり)募集】IWJでは、テキスト班・パワポ作成担当班・動画班・WEB班など各部署で、ご本人の希望と適性を見た上での部署で、春休み期間中に研修したり、働いていただいたりするインターンを募集しています。

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 過去にも数々の大学生等が、インターンをつとめ、そのままIWJに就職した人もいますし、他のメディア(新聞社、通信社、出版社、etc)に就職試験を突破して合格したケースもあります。マスコミ志望であれば、受験指導もします。どうぞご応募ください。

 春休み後も継続的にアルバイトしたい人も歓迎します。

 入社ご希望の方は、下記のURLのスタッフ募集フォームにご記入の上、履歴書、職務経歴書(書式自由)を添付の上、admin@iwj.co.jpまでお送りください。

※スタッフ募集フォーム
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 それでは、本日も1日、よろしくお願いします。

IWJ編集部(岩上安身、六反田千恵、尾内達也、浜本信貴、木原匡康、前田啓)

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