日刊IWJガイド・非会員版「インドのナレンドラ・モディ首相が訪米! 国賓として招いた米国の思惑は、中露印3国同盟が成立するのを阻止するためか!?」2023.6.24号~No.3936号


┏━━【目次】━━━━
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■はじめに~インドのナレンドラ・モディ首相が訪米! 国賓として招いた米国の思惑は、中露印3国同盟が成立するのを阻止するためか!? 他方、モディ首相にとっての訪米の真の目的は、全米No.1の富豪、イーロン・マスク氏との会談だった!?

■IWJは創業以来、最大の経済的危機に直面しています! 第13期の累積赤字は毎月増え続け、8月から5月まで10ヶ月間の累積の不足額は、1868万2900円となりました! 6月は23日までの23日間で、85件、178万4000円のご寄付をいただきました。ありがとうございます! これは、月間目標額390万円の46%にあたります。そして、月間目標額の達成にはあと54%、211万6000円が必要になります。6月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成し、また累積の不足額を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!

■【中継番組表】

┠【本日のニュースの4連撃!】

■【第1弾 ロイター、16日ほか】NATO加盟国防衛担当閣僚会議でトルコの反対で、冷戦後初の「新地域防衛計画」合意できず! リトアニアの国防大臣は「(反対理由は)軍事的なものではない」と強調! 7月のNATOビリニュス首脳会議を控え、フランスがウクライナのNATO加盟支持に方針転換!! 停戦を求めるマクロン大統領の姿勢と分裂するフランス!

■【第2弾 沖縄タイムス、23日ほか】「沖縄慰霊の日」の沖縄全戦没者追悼式で玉城デニー知事、岸田文雄総理を前に「県民に大きな不安が生じている」と訴え! 石垣島ではPAC3が民間港湾施設に展開!! 台湾有事への「地ならし」か!?

■【第3弾 スプートニク、22日ほか】ウクライナ軍がヘルソン州とクリミア半島の境界にあるチョンハル橋を英国から供与された「ストームシャドー」で破壊! クリミア東部では、ロシア本土との鉄道の結節点を破壊! 前線のロシア軍への補給を断つ狙い!

■【第4弾 読売新聞、21日】バイデン米大統領が日本の防衛費増額で、自分が岸田総理を説得したと表明! 財源が争点となった国会が閉会したと同時に「日本も巻き込むことができると思っていた」と自慢!!

■【スタッフ募集・事務ハドル班】事務ハドル班は、岩上安身によるインタビューのアポ取りとスケジューリング、各種リサーチ、公共コンテンツの取材のためのアポ取りや、中継スタッフやテキストスタッフと連携して、IWJの活動予定を組み立て、指示を出す、重要な役割を担っています。翌日以降の中継・配信予定と、撮影後に記事化された動画の情報を整理し、翌日の日刊IWJガイドの番組表へ反映する、IWJコンテンツ構成の要となる部署です。

■【スタッフ募集・テキスト(赤反映担当)班】記者として日刊IWJガイドや記事の執筆、エディターとして編集業務を行っていただける方を募集します。特に深夜業務での校正作業を厭わない方は、優遇し、最優先で募集します! 深夜に及んだ場合は、社用車での帰宅が可能です。時給はスタート時は1300円から、能力・実績次第で昇給します。深夜業務は法にのっとった割り増し残業代を支払います。『サビ残』は一切ありません!
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■はじめに~インドのナレンドラ・モディ首相が訪米! 国賓として招いた米国の思惑は、中露印3国同盟が成立するのを阻止するためか!? 他方、モディ首相にとっての訪米の真の目的は、全米No.1の富豪、イーロン・マスク氏との会談だった!?

 おはようございます。IWJ編集部です。

 20日(現地時間)から米国を公式訪問中のインドのナレンドラ・モディ首相が、22日午前(日本時間22日夜)に、ホワイトハウスでバイデン大統領と会談しました。22日午後(日本時間23日早朝)には、連邦議会で、演説を行いました。

 バイデン政権下で、国賓としてホワイトハウスに招かれるのは、フランスのマクロン大統領、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領に続き3人目です。

 このモディ首相の国賓待遇について、22日付『ガーディアン』は次のように論評しています。

 「公式な国賓訪問は、外国首脳に行われる外交上の招待の中で最高位のものであり、中国に対抗するパートナーとしてインドを重視する米国大統領の国家安全保障上の優先順位の表れでもある」

※Biden announces raft of new deals with Modi amid calls to address human rights concerns(ガーディアン、2023年6月22日)
https://www.theguardian.com/us-news/2023/jun/22/joe-biden-narendra-modi-visit-washington

 インドは、BRICSにおいても、上海協力機構においても、グローバルサウスにおいても、中国・ロシアを中心とする経済・軍事同盟に連携する大国ですから、米国がインドを西側同盟に取り込み、中露印の3国の間で真の同盟が成立するのを阻み、分断しようとするのは、外交戦略上、当然なことです。

 では、インド側が、米国とパイプを太くするメリットは何があるのでしょうか?

 地政学的な視点から見渡す限りでは、インドと米国は敵対関係には至っていないものの、インドは、ウクライナ紛争に際して、対露制裁に加わることを拒否し、ロシアから輸入する原油の量を増やすなどして、米欧日とは正反対の姿勢を見せています。

 実際の問題として、インドはクワッドの一員とはなっていても、このところは、中国・ロシアとの関係の方が良好で、米国と関係に特別の上積みは見られません。

 ところが、インドと米国の貿易関係を見ると、まったく違う一面が浮かび上がってきます。

 2021-2022会計年度におけるインドの最大の貿易輸出相手国は、実は米国なのです。

 米国は、インドにとって、最大の輸出相手国(761億ドル)なのです。インドにとって第2位の輸出国である中国の、なんと3.5倍以上の輸出額を記録しています(インドの中国への輸出額は212.5億ドル)。

 インドから米国に輸出されている主な品目は、「貴石および半貴石、医薬品、石油製品、綿織物、衣料品、海産物、鉄鋼製品、電気機器、自動車部品」だということです。

※US Emerges as India’s Largest Trade Partner in FY 2022, Surpasses China(INDIA BRIEFING、2022年6月6日)
https://www.india-briefing.com/news/us-emerges-as-indias-largest-trade-partner-in-fy-2022-surpasses-china-25190.html/

 一方で、インドの貿易輸入相手国は中国が1位となっています。インドの輸入に占める中国のシェアは、2000年の2.9%から2019年で14.1%へと約5倍弱に拡大しています。

※中国のカウンターパワーとしてのインド(一般財団法人国際貿易投資研究所、2020年12月11日)
https://iti.or.jp/flash/476

 2017会計年度から2022会計年度までの、対前会計年度比での米国への輸出額の増加推移を見ると、なんと、2021-2022会計年度において、47.44%も増加しています。それ以前の増加率は、-2.76%(2020-2021会計年度)、1.30%(2019-2020会計年度)、9.46%(2018-2019会計年度)程度なのです。

 ただし、インドンの全輸出額に占める米国の割合は、2018会計年度から7%前後と変わりません。つまり、インドの輸出額全体が2021-2022年会計年度から急増した、ということです。

 いずれにしても、インドにとって米国は、一番の輸出相手国であり、インドとしても米国と対立関係に陥るのは避けたいところなのです。

 これを米国側のデータで詳細に見ると、ロシアとウクライナの紛争が始まった2022年2月を境にして、米国のインドからの輸入額は、顕著な増加傾向にあることがわかります。この時点からの米国の輸入の急増は、政治的な色合いの濃いものではないか、という仮説も生じます。

 細かく検討していく必要がありそうですが、現時点ではその点の仔細な分析はおいておきます。

※Trade in Goods with India(United States Census、2023年6月23日閲覧)
https://www.census.gov/foreign-trade/balance/c5330.html

 いずれにしても、現時点では、米国にとっても、インドは、2023年4月の輸出入総額のデータを見ると、トップ15ヵ国の第8位にランクされた重要な貿易相手国となります。

 1位はカナダ、2位はメキシコ、3位が中国で、4位はドイツ、5位が日本、6位が韓国、7位が英国となり、その次の8位がインドなのです。インドは、台湾やオランダやイタリア、フランスよりも上位なのです。

※Top Trading Partners – April 2023(Unaited States Census、2023年6月23日閲覧)
https://www.census.gov/foreign-trade/statistics/highlights/topcm.html

 インドにとっても、米国にとっても、米印関係は、非常に重要な関係になりつつあることがわかります。

 この両国の経済関係の今後を象徴するのは、「対立と分断」や「デカップリング」を明確に否定するイーロン・マスク氏です。

 マスク氏は、2022年度、フォーブスの世界長者番付で世界1位にランキングされていました。2023年度は1位の座から陥落し、世界2位と評価されています。マスク氏の推定資産は1800億ドル(2022年2190億ドル)、2022年は米ツイッター社の買収に440億ドルを費やしたことや、テスラの株価が下落したことが影響した、とされています。

 とはいえ、マスク氏が米国では1位の富豪であることには変わりありません。ちなみに、マスク氏を抜いたのはフランスの高級ブランド最大手であるモエヘネシー・ルイヴィトンのベルナール・アルノー会長兼最高経営責任者(CEO)です。

※世界長者番付、マスク氏トップから陥落 米誌フォーブス(日本経済新聞、2023年4月6日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN05E4A0V00C23A4000000/

 モディ首相は、ホワイトハウスでバイデン大統領に会うより早く、20日にニューヨークに到着するとすぐに、イーロン・マスク氏と会談しています。

 モディ首相は、マスク氏にインドへの多額投資を要請したと伝えられています。

 21日付『ロイター』によると、「マスク氏はこの日(20日)、訪米したモディ首相とニューヨークで会談。記者団に対し『非常に良い』会話をしたと述べ、可能な限り早期のインド進出を目指す考えを示した」といいます。

 ※マスク氏、テスラはインドに「多額投資」検討 モディ首相と会談(ロイター、2023年6月21日)
https://www.msn.com/ja-jp/money/markets/%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%AF%E6%B0%8F-%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%81%AF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E3%81%AB-%E5%A4%9A%E9%A1%8D%E6%8A%95%E8%B3%87-%E6%A4%9C%E8%A8%8E-%E3%83%A2%E3%83%87%E3%82%A3%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%81%A8%E4%BC%9A%E8%AB%87/ar-AA1cPfj9

 実は、モディ首相は、ニューヨークで、マスク氏一人に会ったわけではなく、健康分野、産業界、起業家、技術、経済などの米国の一流専門家のグループと会談したのですが、その中にイーロン・マスク氏がいたのです。

 もちろん、このニューヨーク会談の大きな目的が、マスク氏との会談だったことは間違いないでしょう。

 その証拠に、インド公共放送の『DD News』は、モディ首相とマスク氏の会談を2回にわたって「ニュース」として報じており、しかも、この2つのニュースを、インド外務省がホームページにリンクして紹介しているのです。インド側がこの会議を「重視」していることがわかります。

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■IWJは創業以来、最大の経済的危機に直面しています! 第13期の累積赤字は毎月増え続け、8月から5月まで10ヶ月間の累積の不足額は、1868万2900円となりました! 6月は23日までの23日間で、85件、178万4000円のご寄付をいただきました。ありがとうございます! これは、月間目標額390万円の46%にあたります。そして、月間目標額の達成にはあと54%、211万6000円が必要になります。6月こそは少なくとも月間目標額390万円を達成し、また累積の不足額を少しでも減らせますよう、緊急のご支援・ご寄付・カンパのほど、どうぞよろしくお願いします!

 いつもIWJをご支援いただきまして、誠にありがとうございます。

 6月に入り、昨年8月1日から始まったIWJの第13期も、残り2ヶ月を切りました。

 厳しい経済状況の中、ご寄付をお寄せくださった皆さま、誠にありがとうございました!

 しかしながら、今期第13期5月末までの累積の不足額は、1868万2900円となりました。この累積の不足額を少しでも削れるように、引き続き、どうぞご支援をお願いします!

 6月は23日までの23日間で、85件、178万4000円のご寄付をいただきました。ありがとうございます! これは、月間目標額390万円の46%にあたります。そして、月間目標額の達成にはあと54%、211万6000円が必要になります。

 ぜひ、皆さま、今月6月こそは、まずは月間目標額を達成できますよう、どうぞ緊急のご支援をお願いいたします!

 また、現状の会員数をお知らせします。

 5月末時点での会員総数は2648人(前年同日比:1113人減)でした。会員の方々の会費と、ご寄付が、IWJの運営の二本柱です。ご寄付も、連日お伝えしているように、目標額を下回っていますが、会員数も会費も減少しています。

 経営は本当に赤字が連続し、厳しい運営状況が続いています。

 どうぞ、皆さま、IWJを知人・ご友人、地域の皆さまへIWJの存在をお知らせいただき、独立系メディアの意義と、米国に忖度する日本政府、大手主要メディアの「情報操作」の恐ろしさについて、広めてください。

 IWJの内部留保も底を尽き、キャッシュフローが不足したため、私、岩上安身が、個人的な私財から、IWJにつなぎ融資をいたしました。

 私がこれまでにIWJに貸し付けて、まだ未返済の残高は約600万円。これにつなぎ融資1000万円と合計すると、IWJへの私の貸し付け残高は約1600万円にのぼります。近いうちに、また私がIWJにつなぎ融資をしなければならない見込みですが、本当に貯金が底を尽きます。

 私の貯えなどたかがしれていますから、この先も同様の危機が続けば、私個人の貯えが尽きた時、その時点でIWJは倒れてしまいます。

 皆さまにおかれましても、コロナ禍での経済的な打撃、そしてこのところの物価上昇に悩まされていることとお察しいたします。

 しかし、会費も減少し、ご寄付までもが急減してしまうと、たちまちIWJは活動していけなくなってしまいます。

 ウクライナ紛争に続き、「台湾有事」を口実とする米国の「代理戦争」が、東アジアで画策されている今、私、岩上安身とIWJは、破滅的な戦争を回避すべく、また、ウクライナ紛争報道で明らかになった、偏向マスメディアの不誠実な「情報操作」に代わるべく、少しでも正確な情報を皆さまにお届けできるよう走り続けたいと存じます。

 その結果として、日本が戦争突入という悲劇に見舞われないように、無謀な戦争を断固阻止するために、今後も全力で頑張ってゆきたいと思います。

 2月、ピューリッツァー賞を受賞した経歴をもつ、米国屈指の独立調査報道ジャーナリストであるシーモア・ハーシュ氏が、米国が、ノルウェーと協力し、ドイツとロシアを直接つなぐ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したという驚愕のスクープを出しました。日本の新聞・テレビなどのメインストリーム・メディアは、一切このスクープを報じませんでした。

 IWJは、全文の仮訳を進め、全4回を号外でお送りしました。

※【IWJ号外】ドイツとロシアを結ぶ天然ガスパイプライン・ノルドストリームを爆破したのは、米国だった! ピューリッツァー賞を受賞した米国の最も著名な独立調査報道ジャーナリスト、シーモア・ハーシュ氏が大スクープ!(その1~4)
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e3%82%b7%e3%83%bc%e3%83%a2%e3%82%a2%e3%83%bb%e3%83%8f%e3%83%bc%e3%82%b7%e3%83%a5

 私は、ロシア軍がウクライナに侵攻して1年となる2月24日の岸田総理会見で、ハーシュ氏のスクープについて岸田総理に直接、質問しました。

 私が「日本政府は、このノルドストリーム爆破疑惑について、独自に検証や調査を行なっているのでしょうか?」と質問したのに対し、岸田総理は、「米政府は完全なるフィクションであるという評価をしております」「ノルウェー外務省もナンセンスと言っています」「多くの国においてこうした記事に関しては、否定的な評価がされている」とはぐらかし、日本政府・日本国総理としての独自の判断を示しませんでした。

※【IWJ代表:岩上安身質問】ノルドストリーム爆破疑惑について、日本は独自に検証や調査を行なっているのか?岸田内閣総理大臣記者会見-令和5年2月24日(Movie IWJ)
https://www.youtube.com/watch?v=9uUrTxr_Mss

※はじめに~岩上安身が岸田総理に対して会見で質問!~(日刊IWJガイド、2023年2月25日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230225#idx-1
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/51926#idx-1

 このウクライナ紛争は、ロシアを弱体化させるための米国主導の戦争です。

 ハーシュ氏のスクープが事実であれば、米国は、同盟国のドイツが多額の出資をしたノルドストリーム・パイプラインを爆破し、ドイツとロシアの仲を引き裂き、ウクライナを戦場にして、欧州とロシアの友好的な関係を完全に破壊し、ロシア産の格安の天然ガスが入らなくなって窮地に陥った欧州に、米国産の高値の天然ガスと石油を売りつけて市場を奪い取ったということになります。

 つまり、米国は「敵国」のロシアだけでなく、米国の重要な同盟国であるはずのドイツにも大損害を与えた疑いがあるのです。これが真実であるならば、同盟国への重大な背信であり、裏切りです。犠牲を払わされたドイツと同じく、同盟国とは言いながら、ジュニア・パートナー(主権のない従属国)扱いされている日本も、同じ目にあわされる可能性があります。

 IWJでは、独自のIWJ検証レポートによって、ドイツとロシアを直接結ぶノルドストリームの建設を米国政府・議会が何度も妨害してきた事実、そして、完成はしたもののウクライナ紛争の勃発と対露制裁によって使用できなくなり、さらに爆破テロに見舞われるまでの経緯を、お伝えしています。

※IWJ検証レポート!「米国が狙った独露間の天然ガスパイプラインノルドストリームの阻止!!」~2022.4.27
(その1)https://iwj.co.jp/wj/open/archives/505188
(その2)https://iwj.co.jp/wj/open/archives/508187

 お読みいただければわかりますが、この経緯を知ると、ウクライナ紛争以前から、米国はノルドストリームの完成と開通を何としても阻みたいと思っていたという事実が明らかになります。

 岸田文雄総理は、1月早々、昨年末に閣議決定した「改定版安保3文書」を携えて訪米、バイデン大統領と会談し、日本の軍拡をバイデン大統領から賞賛されて鼻高々でした。

 国会での議論と承認がなされなくても、米国からの要請があれば、「安保3文書」を閣議決定し、軍拡のアクセルを踏んでしまう岸田政権は、日本の主権を米国に丸投げしたも同然です。米国を守るために日本が身代わりに犠牲となり、日本はウクライナのように、米中の「代理戦争」の戦場とされてしまいます。

 上記の4月24日の岸田総理会見で、私は、「米国は誠実な同盟国なのかどうか、疑いの出ている中、日本の安全保障を米国に丸ごと委ねていていいのか」「有事の際の自衛隊の指揮権まで米国に渡してしまっていいのか」と問いました。

 岸田総理は「自衛隊及び米軍は、各々独自の独立した指揮系統に従って行動をする、これはいうまでもないこと」などと、自衛隊の指揮権はあたかも米軍から独立して存在しているかのように述べました。

 しかし、この総理の発言は、事実と異なります。従来の幕僚長を事実上廃止し、新たに米軍との「統合司令部」を設置する「安保3文書」の改定は、自衛隊を米軍の司令下におく「2軍」にしてしまうものです。

 自衛隊が米軍と司令部を統合してしまい、自身で状況判断するための目と耳(情報衛星他)をもたず、独自に判断する頭(内閣に直結し、米国から独立した司令部)をもたない、そんな日本が、安全保障において、米軍から独立した主権をもつ、といくら岸田総理が口先だけで言っても、自衛隊のおかれたリアルな現実を国民に説明していることにはなりません。

 3月28日、「安保3文書」の改定を踏まえ、防衛費を大幅増額した2023年度予算案は、政府案どおり成立しました。

※令和5年度予算(財務省)

https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2023/fy2023.html

 日本は、このまま米国追従を続け、米国の単独一極覇権を支えるために、日本自らは世界最悪の財政危機に直面しているというのに、米国の要請に従って、軍拡という重い財政負担を背負うのはあまりに愚かではないでしょうか!?

 ノルドストリームの爆破事件については、その後、新たな進展がありました。

 米『ワシントン・ポスト』が6月6日、「米国はノルドストリーム・パイプラインを攻撃するウクライナの詳細な計画の情報を(事前に)持っていた」とするスクープを出しました。同日、『ニューヨーク・タイムズ』が後追い記事を出しています。

 『ワシントン・ポスト』は、ノルドストリームを爆破したのは、ウクライナ軍の総司令官であるザルジニー将軍直属のウクライナ軍の一部であり、米政府はその爆破計画を事前に知っていたと報じたのです。

 しかし、ザルジニー将軍は現在消息不明、頭部を負傷して職務に復帰するのは困難などと伝えられ、このスクープ記事にコメントできる状況にありません。

 しかも、『ワシントン・ポスト』によれば、ノルドストリーム爆破計画は、ゼレンスキー大統領には知らされていなかったというのです。

 つまり、この両紙にリークしたそれぞれの情報源は、他人事のように「米政府は事前にウクライナの爆破計画について知っていた」とすることで、ウクライナ側に責任をすべて負わせ、シーモア・ハーシュ氏が暴露した「米国主犯説」を否定し、かつ、米国の望むままに紛争をエスカレートするゼレンスキー大統領を温存するもので、「主犯」役扱いのザルジニー将軍は消息不明で弁明もできません。この点は、まさしく「死人(負傷者?)に口なし」です。まことに米国に都合のよいストーリーになっています。

 ただし、仮にこの説が真実に近いとすると、米国は主犯ではなくても、無関係だった、無実だ、とは言えなくなります。むしろこのノルドストリーム爆破計画に、一定の関与をしていた疑いが濃厚です。

 事前に爆破計画を知っていながら、米政府はこの情報を秘匿し、ウクライナにテロをやめるように働きかけず、黙認したことになります。

 実際に爆破が起きた後は、誰が主犯か知っているというのに、米国政府は、「ロシアが自作自演の爆破を行なった」という、自国の資本を投じたロシアにとって何のメリットもない、まったくの濡れ衣を着せるデマ宣伝を続けたのです。

 これは西側政府や西側各国のマスメディア、御用知識人等々に大きな影響を与え、馬鹿馬鹿しいロシア自作自演説を喧伝する記事や番組、コメントなどが今に至るまで、溢れかえりました。

 『ワシントン・ポスト』のスクープは、ザルジニー将軍による爆破計画や実施の詳細も曖昧で、情報源は「あるウクライナ人」といった調子で、雲をつかむような内容でした。

 いずれにしても、この両紙のスクープによって、ハーシュ氏が彼の記事に書いた米国の犯行加担の疑惑が消えたわけではなく、ウクライナの犯行という疑惑も消えたわけではありません。両国の共犯という可能性もあり得るからです。

 IWJは、この件について、13日、林外務大臣の記者会見で問いただしました。

 その一問一答は、本日の日刊IWJガイドに掲載していますので、ぜひ御覧ください!

※「ノルドストリーム爆破はウクライナ軍によるもの!! CIAは事前にこの爆破計画を欧州諸国と共有していた!?」IWJ記者の質問に「報道のひとつひとつにコメントすることは差し控える」と林大臣!!~6.13 林芳正 外務大臣 定例会見 2023.6.13
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516594

 また、6月13日に、岸田総理の会見に出席した岩上安身は、同様の質問をする予定でしたが、当たりませんでした。このため、メールでその質問を官邸広報室に送り、総理の回答が後日送られてきました。

 総理の回答は次のとおりでした。

【岩上安身氏(インターネット協会)】

 ノルドストリーム・パイプラインの破壊に関する報道について

(回答)

 天然ガス・パイプラインという重要インフラについて生じた本件事案については、エネルギー供給や周辺海域への環境面でのあり得べき影響を含め、懸念をもって受け止めています。

 報道の一つ一つにコメントすることは差し控えたいと思いますが、いずれにせよ、当該事案の原因等については、引き続き、関係国が調査を続けているものと承知しており、その調査の行方を見守りたいと思います。

※令和5年6月13日岸田内閣総理大臣記者会見終了後の書面による質問に対する回答(首相官邸、2023年6月23日閲覧)
https://www.kantei.go.jp/jp/pages/20230613kaiken_shomen.html

 主体性のない事実上のゼロ回答です。関係国(米国の同盟国)の調査で、米国に不利な真実が究明されることは考えられません。

※はじめに~子ども未来戦略方針を閣議決定したことを踏まえ岸田文雄総理が記者会見! これだけの少子化対策を実際に実行すれば、実効性が期待できるものの、20~25年前にこれだけの対策を行っていれば第三次ベビーブームが起きていたはず! なぜ半世紀もの間、与党・自民党と日本政府は、少子化問題に取り組もうとしなかったのか!? 不作為の極み! 少子化は人災である!(日刊IWJガイド、2023年6月14日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230614#idx-1
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52394#idx-1

 IWJは、ノルドストリーム・パイプライン爆破について、検証記事を号外で出しています。どうぞこちらもお読みください。

※【IWJ号外】米『ワシントン・ポスト』が、「米国はノルドストリーム・パイプラインを攻撃するウクライナの詳細な計画の情報を持っていた」とスクープ! IWJはスクープ記事を全文仮訳! 2023.6.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/516462

※『ワシントン・ポスト』の報道を受けて『ニューヨーク・タイムズ』が援護射撃?!「ペンタゴン・ペーパーズ」の再現か!? 姑息な情報操作の連鎖か!? いずれにしてもノルドストリームを爆破して、ロシアの自作自演という嘘をついてきたのは米国かウクライナのどちらか、あるいはその両方。米国とNATO諸国政府が爆破計画を事前に知っていたことは否定できず!(日刊IWJガイド、2023年6月8日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230608#idx-4
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52371#idx-4

 そもそも日本が依存している米国は、誠実な、信頼に値する同盟国といえるのでしょうか!?

 4月12日の日刊IWJガイドの記事(※)も、ぜひあわせてお読みください。米国は、同盟国に対して、当たり前のように盗聴を仕掛けています。ドイツなどは米国政府に抗議しましたが、日本政府は、まったく抗議していません。

※『ニューヨーク・タイムズ』が報じた、ウクライナ紛争をめぐる米国とNATOの戦争機密文書漏洩事件! 漏洩文書に韓国政府内の議論が含まれていたことから、CIAによる韓国国家安保室盗聴が発覚! 謝罪を求めない尹政権に韓国与党も「卑屈極まりない」と批判! 2013年のスノーデン氏による盗聴暴露問題も再燃し、米国のダブルスタンダード、繰り返される同盟国への盗聴に韓国メディアが猛批判を展開! 日本も盗聴されているはずだが、沈黙し続けるのか!?(日刊IWJガイド、2023年4月12日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230412#idx-1
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52117#idx-1

 日本は、米国への依存から脱却をはかり、独立した主権国家として立つべきです。同時に、エネルギーと食料の自給ができず、資源をもつ他の国々からの海上輸送に頼らなければならない、孤立した「島国」であるという「宿命」を決して忘れず、国外にそもそも「敵」を作らない、多極的な外交姿勢をめざすべきではないでしょうか?

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◆中継番組表◆

**2023.6.24 Sat.**

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【本日のニュースの4連撃!】

■【第1弾 ロイター、16日ほか】NATO加盟国防衛担当閣僚会議でトルコの反対で、冷戦後初の「新地域防衛計画」合意できず! リトアニアの国防大臣は「(反対理由は)軍事的なものではない」と強調! 7月のNATOビリニュス首脳会議を控え、フランスがウクライナのNATO加盟支持に方針転換!! 停戦を求めるマクロン大統領の姿勢と分裂するフランス!

 6月16日付け『ロイター』は、15日、16日の両日、ベルギーのブリュッセルで行われていたNATO(北大西洋条約機構)の加盟国防衛担当閣僚会議で、「冷戦終結後初となる新地域防衛計画の策定を巡って合意できなかった」と報じました。

 この『ロイター』の記事は、「ある外交筋は、トルコがキプロスなどに関する地理的位置の表現を巡って決定を妨害したと非難した」と報じています。

 NATOは、7月11日と12日に、リトアニアの首都ビリニュスで首脳会議を開く予定です。

 リトアニアのメディア『LRT』は、16日付けの記事で、リトアニアのアルビダス・アヌシャウスカス国防大臣が、ブリュッセルでの記者会見で「異議を唱える国々は、本質的に(その異議が)軍事的なものではないことを強調しておきたいが、間違いなく、その異議を撤回するか、妥協点を見つけるかのどちらかの圧力にさらされるだろう」と語ったと報じています。

 この『LRT』の記事によると、「アヌシャウスカス氏は、防衛計画がトルコによって阻止されているかどうかを明らかにすることを拒否した」とのことですが、検討されている文書の90%は承認されており、「まだ承認されていない地域防衛計画が1つあるが、しかしビリニュス首脳会談までに承認される可能性はあると思う」と述べたと報じています。

 この「新地域防衛計画」について、『LRT』は、「ロシアがウクライナ侵攻を開始した後に策定された。NATOのイェンス・ストルテンベルグ長官は、この計画はウクライナ戦争の結果生じた「変化した現実」を反映しており、特定の領土の防衛とどの部隊がその地域を防衛するのかを明確に詳述するものになると述べた」と報じ、『ロイター』は「数千ページに及ぶ機密の軍事計画で、ロシアの攻撃に対してNATOがどのように対応するかを詳述する」と報じています。

 また、『LRT』は、上記とは別の22日付けの記事で、「リトアニア政府とNATOの東欧の他のいくつかの加盟国は、7月中旬のビリニュス首脳会議までに、ウクライナの具体的な加盟計画が合意されるよう求めている」とした上で、「首脳宣言の最初の草案はすでに作成されており、現在文言に関する議論が始まっている」と、複数の関係者が語ったと報じています。

 他方、6月20日付けフランス『ル・モンド』は、フランスが国防会議で、ウクライナのNATO加盟を支持する方針に転換したと報じました。フランスはこれまで、米国、ドイツとともに、ウクライナのNATO加盟には慎重な姿勢を示していました。

 フランスのマクロン大統領は、ロシアとウクライナを仲介するために、中国の協力を得ようとしていると報じられていました。4月18日付け『ブルームバーグ』は、マクロン大統領が大統領外交顧問のエマニュエル・ボンヌ氏に対し、中国の外交トップである王毅(おう き)氏と協力して、ロシアとウクライナの「今後の交渉基盤として活用できる枠組みの確立を図るよう指示した」と、匿名の関係者の非公開情報として報じています。

 マクロン大統領が4月上旬に中国を訪問した際には、習近平国家主席との会談で「ロシアを理性的にし、すべての人を交渉のテーブルに戻すうえで、あなたを頼りにしている」と習氏に伝えたと、4月7日付け『BBC』が報じています。

 ウクライナ問題で米国や他のEU諸国に相談なく、独自の取り組みを進めるマクロン大統領は、昨年6月には、フランスの地方紙のインタビューに「戦いが止まった日には外交を通じて出口が築けるよう、私たちはロシアに屈辱を与えてはならない」、「仲介者になるのがフランスの役割だと確信している」などと語り、東欧諸国の批判を浴びていました。

※NATO会合、冷戦後初の新防衛計画で合意できず(ロイター、2023年6月17日)
https://jp.reuters.com/article/nato-defence-plans-idJPKBN2Y21HD

※Some still oppose NATO’s regional defence plans – Lithuanian minister(LRT、2023年6月16日)
https://www.lrt.lt/en/news-in-english/19/2015082/some-still-oppose-nato-s-regional-defence-plans-lithuanian-minister

※NATO draws up first draft of Vilnius Summit Declaration, negotiations begin(LRT、2023年6月22日)
https://www.lrt.lt/en/news-in-english/19/2019250/nato-draws-up-first-draft-of-vilnius-summit-declaration-negotiations-begin

※France resolves to support Ukraine’s NATO membership(Le Monde、2023年6月20日)
https://www.lemonde.fr/en/international/article/2023/06/20/france-resolves-to-support-ukraine-s-nato-membership_6034362_4.html

※マクロン仏政権が中国に接触へ、ロシア・ウクライナ交渉探る-関係者(ブルームバーグ、2023年4月18日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-18/RTAV4TT1UM1401

※マクロン仏大統領が訪中 習氏に「ロシアを理性的にする」よう要請(BBC、2023年4月7日)
https://www.bbc.com/japanese/65210204

※はじめに~中国が今、世界史を動かしている! 習近平国家主席はフランスのマクロン大統領、欧州連合(EU)のフォン・デア・ライエン欧州委員長と3者会談を行う。李強総理は欧州を米国と切り離して一つの「文明圏」と見なし、中国という文明圏と手を結ぼう、と大胆な提案! 同時に、イランとサウジアラビアの外相が、この同日、中国の北京において会談し、それぞれの国の大使館と領事館を再開することに合意!(日刊IWJガイド、2023年4月8日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230408#idx-1
非会員版 https://iwj.co.jp/info/whatsnew/guide/52102#idx-1

※仏大統領の「ロシアに屈辱を与えてはならない」発言にウクライナ反発 東部では修道院燃える(BBC、2022年6月5日)
https://www.bbc.com/japanese/61693912

★東欧のポーランドとバルト3国は、ロシアとの対決を辞さず、という姿勢を見せてきましたが、フランスは西欧の中核をなす大国です。そのフランスの国防会議の主戦論的な決定が、今後、仮に全欧州と米国に波及してゆくなら、ロシアは多勢に無勢で圧倒的に不利となり、追いつめられたあげく、核を本当に持ち出すかもしれません。

 あるいは、ロシアは、自らを陰ながら支えてきた中国等、グローバルサウスの国々に、軍事支援や参戦を求めるかもしれません。

 核の使用で、戦争の質が一変してしまうか、あるいは戦争参加国が急増して第3次世界大戦が現実化してしまうのか、大きな岐路に立たされつつあります。

 フランス、そしてNATOの出方次第で、ロシアの反応も大きく変わるはずです。

 NATOや欧州に、理性はあるのか、見きわめなければなりません。

 停戦に向けて、思いつめたように欧州の中で、「単独走」を続けていたマクロンですが、何があったのか、その姿勢を修正する発言がなされたと報じられたのは、5月末のことでした。

 今年5月31日付け『ロイター』は、マクロン大統領がスロバキアで行われたシンクタンクのフォーラムでの講演で、「ウクライナ侵攻前からロシアの好戦的な姿勢について警告していた東欧諸国に、フランスはもっと耳を傾けるべきだったという認識を示した」、東欧と西欧の間に分断があってはならないと強調し、「『我々はあなた方の話を聞く機会を失っていたが、それも終わりにする』と語った」と報じています。

※マクロン氏、東欧への配慮欠如を後悔 ロシア対応巡り(ロイター、2023年5月31日)
https://jp.reuters.com/article/slovakia-globesec-macron-idJPKBN2XN23M

 マクロン大統領の言動は、ドゴール以来の、フランスは米国に追随しないという伝統的な対米自立・自主独立路線に立って、リーダーシップを発揮しようとしているようにも見えていましたが、ここにきて、EU内で東欧諸国を前に、ロシアへの姿勢が一貫せず、ブレが生じたようにも見えます。

 フランスの国防会議と、これまで速やかな停戦を求めてきたマクロン大統領との間に生じた分裂は、決して小さなものとは思えません。

 国防会議の主張する通り、ウクライナをNATOに加盟させれば、紛争当事国の加盟は認めないというルールを破る一方で、「加盟国一国への攻撃は、加盟国全体への攻撃とみなす」というNATOの原理原則を貫けば、ウクライナの防衛、そして越境してきたロシアを叩き出すために、NATO加盟国が一致団結して参戦することになります。先述したように、それはロシアの危機感を高め、激しい反発を招くでしょう。

 リトアニアのアヌシャウスカス防衛大臣は、「新地域防衛計画」の合意に異議を唱えたのがトルコだったかどうか、答えることを拒否したとのことですが、『LRT』はアヌシャウスカス防衛大臣の発言の直前に、わざわざ「2019年、トルコは当時の新たなバルト海防衛計画を阻止した」と書いており、NATO内でも、トルコと、バルト3国(リトアニア、ラトビア、エストニア)が、対立していることがうかがえます。

 NATO前事務総長のラスムセン氏が、6月はじめに「ビリニュスの首脳会議でウクライナのNATO加盟に進展がなければ、ポーランドがバルト諸国と本気で有志連合を組むだろう」と発言したことからも、ウクライナのNATO加盟をめぐって、7月中旬のビリニュス首脳会議までに、ポーランドやバルト3国と、トルコとの対立が際立ってくることも予想されます。(IWJ)

※はじめに~ラスムセンNATO前事務総長が、「ビリニュスで開催されるNATOサミットで、ウクライナに具体的な安全保障を提供しない場合、ポーランドとバルト諸国が有志連合を組んでウクライナに派兵する可能性がある」と発言、エストニア首相は派兵を拒否! 10日のロシアの攻撃で4台のレオパルト2戦車が破壊されたドイツの防衛最大手・ラインメタル社の株価の前週終値が急落! ロシア『RIAノーボスチ』は「新しい週は興味深いものになりそうだ」と指摘、「ウクライナはブラックホールと気づいた西側諸国が支援見直しを求めている」と報道!(日刊IWJガイド、2023年6月12日)
会員版 https://iwj.co.jp/wj/member.old/nikkan-20230612#idx-1
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■【第2弾 沖縄タイムス、23日ほか】「沖縄慰霊の日」の沖縄全戦没者追悼式で玉城デニー知事、岸田文雄総理を前に「県民に大きな不安が生じている」と訴え! 石垣島ではPAC3が民間港湾施設に展開!! 台湾有事への「地ならし」か!?

 昨日6月23日は、戦後78年目の沖縄慰霊の日でした。

 1945年6月23日、第二次世界大戦で南方守備にあたった大日本帝国陸軍の第32軍司令官の牛島満中将が、沖縄本島南部の糸満市摩文仁(まぶに)の司令部壕で自決し、沖縄戦での旧日本軍の組織的戦闘が終結したとされています。

 沖縄戦では、約20万人あまりが亡くなりました。

 1976年の沖縄県の調べでは、その内訳は、沖縄県外出身の日本兵が6万5908人、アメリカ兵が1万2520人に対し、沖縄県の一般住民が約9万4000人(推計)、沖縄出身の軍人・軍属が2万8228人とされています。

 このほかにも、朝鮮半島から連れてこられた人たちが、わかっているだけで300人以上亡くなっています。また、一般住民の餓死や、マラリアによる病死、イギリス兵や台湾出身者の犠牲者は、この数字には含まれていません。

 23日付け『沖縄タイムス』によると、糸満市摩文仁の平和祈念公園で、沖縄全戦没者追悼式が営まれ、玉城デニー知事や岸田文雄総理が出席したとのこと。

 この『沖縄タイムス』の記事は、「玉城氏は平和宣言で、昨年12月に閣議決定された安全保障関連3文書に沖縄の防衛力強化の記述が多いことなどに触れ、『県民に大きな不安が生じている』と述べた」と報じています。

 また、23日付け『東京新聞』は、北朝鮮の軍事偵察衛星発射に備えて、浜田靖一防衛大臣によって5月に出された破壊措置命令を受け、与那国島、石垣島、宮古島、沖縄本島の4か所に配備されたPAC3のうち、石垣島では基地内ではなく、民間用の港湾施設(国有地)に迎撃ミサイルが設置され、現在も居座っていると報じています。

 『東京新聞』の記事によると、「配備先の新港地区は旅客船ターミナルやマリーナ、人工ビーチ、石油・ガス関連施設の集約地、物流拠点など、さまざまな機能を持つ」とのこと。

 昨年末に改定された安保関連3文書では「有事の際の対応も見据えた空港・港湾の平素からの利活用に関するルール作り等を行う」と明記されたことから、台湾有事に備えた地ならしだとの見方もあると、この『東京新聞』の記事は報じています。

※沖縄戦終結78年、平和願う 慰霊の日、犠牲20万人追悼(沖縄タイムス、2023年6月23日)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1174992

※沖縄戦ってどんな戦争だったの?(琉球新報)
https://ryukyushimpo.jp/statics/html/okinawasen/mn1.html

※PAC3が沖縄で民間港湾地区に展開 自衛隊が市民の日常にじわりと「浸食」6月23日は「慰霊の日」(東京新聞、2023年6月23日)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/258362

★2018年9月8日に、岩上安身は、故・翁長雄志沖縄県知事の叔母の翁長安子さんに、インタビューを行なっています。沖縄戦当時、女学生だった翁長安子さんは、沖縄戦で首里城の地下に作られた、旧日本軍第32軍司令部壕に自ら志願して参加。米軍による艦砲射撃などの猛烈な攻勢を経験し、九死に一生を得ました。司令部が南部に撤退したあとは、徒歩で命からがら追いかけ、南部で沖縄戦の終結を迎えました。

 沖縄戦の語り部として、IWJのカメラの前で語った、貴重な翁長安子さんのお話を、この機会にぜひ御覧ください。(IWJ)

※「洗脳教育され、人間ではなくて『立派な国民』だった!」沖縄戦で首里攻防戦に15歳で従軍した凄絶な戦争体験と平和への思い!~岩上安身によるインタビュー 第907回 ゲスト 故・翁長雄志沖縄県知事の叔母・安子さん 2018.9.8
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/431671

■【第3弾 スプートニク、22日ほか】ウクライナ軍がヘルソン州とクリミア半島の境界にあるチョンハル橋を英国から供与された「ストームシャドー」で破壊! クリミア東部では、ロシア本土との鉄道の結節点を破壊! 前線のロシア軍への補給を断つ狙い!

 6月22日付けロシア『スプートニク』は、「ウクライナ軍がヘルソン州とクリミア半島の境界にある橋を攻撃した」と報じました。この記事によると、「攻撃は英国が供与した『ストームシャドー』(英仏共同開発の空中発射巡航ミサイル)で行われたとみられている」とのこと。

 この『スプートニク』記事は、「現場で回収されたミサイルの破片からは、ミサイルがフランスで製造されたことを示す刻印が見つかった」と報じています。

 また、23日付け『読売新聞』によると、破壊されたのは「チョンハル橋」とのことで、ウクライナ軍はロシア軍の補給に打撃を与える目的で、クリミアからヘルソン州への補給路にあたるチョンハル橋を攻撃したようです。

 この『読売新聞』の記事は、「ウクライナ国防省情報総局の報道官も22日、地元テレビで『軍や抵抗運動、ウクライナの統治回復を願う地元住民などの組織的な活動が続いている』と述べ、ウクライナの関与を事実上認めた」と報じています。

 この『読売新聞』の記事は、前日の21日に「(クリミアの首長が)クリミアと露本土を結ぶ鉄道の結節点になっている東部フェオドシアでは鉄道の線路が破壊されたと発表した。露軍の前線への補給を断つことを狙ったウクライナの地下組織による破壊工作とみられている」とも報じています。

※ウクライナ軍、クリミア半島との境界の橋を攻撃=現地当局(SPUTNIK日本、2023年6月22日)
https://sputniknews.jp/20230622/16338253.html

※ウクライナが長距離ミサイル、クリミア結ぶ橋損壊…ロシア軍補給に打撃か(読売新聞、2023年6月23日)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230622-OYT1T50187/

★英国はストームシャドーのウクライナへの供与にあたり、領土内でのみ使用するよう約束させています。クリミアは2014年の住民投票を経てロシアへの編入手続きを行なったことから、ロシアはこのチョンハル橋の破壊を、西側兵器を使ったロシア領への攻撃とみなしています。

 このインフラへの攻撃に対する、ロシア側の反撃は、クリミア橋を爆破されたあとの報復攻撃が、ウクライナ中のインフラを狙う激しいものとなったように、厳しい反撃が行われるのではないかと予想されます。

 ただ、ウクライナ側が、「住民」がレジスタンス活動を行っている、と公にするのは、ロシア側に、ゲリラ狩りを行うように拍車をかけてしまう恐れがあり、ゲリラと間違えられて、一般住民が被害を受ける可能性があります。ウクライナ側は、なぜ、このような発表をあえて行う必要があったのか、やや疑問に思います。(IWJ)

■【第4弾 読売新聞、21日】バイデン米大統領が日本の防衛費増額で、自分が岸田総理を説得したと表明! 財源が争点となった国会が閉会したと同時に「日本も巻き込むことができると思っていた」と自慢!!

 バイデン米大統領が、日本の防衛費増額について、岸田文雄総理を「3度にわたり説得した」ことで、実現したと、20日のカリフォルニア州での支持者集会で語りました。

 21日付け『読売新聞』は、NATOがGDP比2%の防衛費確保を求めていることをあげ、「日本も巻き込むことができると思っていた」と、バイデン大統領が語ったと報じています。

※日本の防衛費増額「私が説得した」、バイデン氏が岸田首相への働きかけ示唆(読売新聞、2023年6月21日)
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230621-OYT1T50196/

★21日に閉会した国会で、財源をめぐって最大の争点のひとつとなった防衛費の増額の理由について、岸田総理も政府も「厳しさを増す安全保障環境」などと繰り返してきましたが、実は「米国に強く言われたから」だったということが明らかになってしまいました。しかも、暴露したのは、圧力をかけた当のバイデン大統領自身でした。

 バイデン大統領は、国内で有権者の歓心を買い、支持をとりつけることに夢中になっており、他国との外交関係を損なうことなど、少しも気にかけていません。

 先日のブリンケン国務長官の訪中直後の、習近平氏に対して「独裁者!」という悪罵を投げかけたのと並ぶ、呆れるような放言です。

 しかし、今度の放言は、単なる悪態ではすみません。

 米国の言いなりになっている日本政府と岸田総理、という構図を暴露して、日本が米国の便利なATMとして使われている実態を表に出してしまい、しかもこれで米国内の有権者の支持が上がるようであれば、バイデン大統領は図に乗って、さらに日本に対して金を出すよう要求をエスカレートさせることでしょう。

 日本は、主権者である国民が抵抗する必要があります。米国の要求の言いなりになる下僕のような政治家は、次々と選挙で落選させるという「応答」を見せなければなりません。そうでないと、日本国民の生活は二の次、一番は米国の機嫌取り、という悪しき従属国の政治がますます深化していってしまいます。

 このままだと、米国の「カツアゲ」にいくらでも応じる便利なサイフ扱いから抜け出せなくなってしまいます。国民が主権者である、ということを、米国の政治家にも有権者にも、思い知らせる、合法的な抵抗が必要であり、それは米国に従属する政党以外の政党を選挙で勝たせること以外にないでしょう。(IWJ)

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 それでは、本日も1日、よろしくお願いします。

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