「はだしのゲン」問題 文科相、市教委の判断は問題なかったと強調 ~下村博文文部科学大臣 定例会見 2013.8.27

記事公開日:2013.8.27取材地: テキスト動画
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(IWJ・大西雅明)

 松江市教育委員会が小中学校に対して漫画『はだしのゲン』の閲覧制限を指示していた問題で、下村博文・文部科学大臣は27日、「それぞれの教育委員会が、それぞれ判断することがあってもおかしくない」と述べ、市教委の判断は間違っていなかったとする見解を示した。21日の会見で、市教委の指示を「問題ない」とした自身の発言を改めて強調したもの。

■全編動画

  • 日時 2013年8月27日(火)
  • 場所 文部科学省(東京都千代田区)

 松江市教育委員は26日に臨時会議を開き、これまで小中学校に求めていた『はだしのゲン』の閲覧制限を撤回することを決めた。

 市教委が閲覧制限を指示したことについて、下村文科相は「教育長が行った要請は適法であった、適切なものであったと理解しております」とした上で、問題のポイントは「市議会にかかった案件を教育委員に諮らずに決定したこと」であり、「(市教委の)配慮が足らなかった」との見解を示した。

 さらに、「表現の自由についてはもちろん担保すべき」と前置きした上で、各自治体が行う有害図書規制や映倫(映画倫理委員会)、ゲームソフトの年齢制限などを例に挙げ、学校図書の規制においても、「それぞれの教育委員会が、それぞれ判断することがあってもおかしくない」と述べ、松江市教委の判断は問題なかったとの認識を強調した。

 子どもの知る権利を侵害しているという批判があることについては、「教員、あるいは大人が同席の下で(閲覧可能であり)、一切読むことをさせないということではないわけですから、そういうこと(=知る権利の侵害)には当たらない」と説明した。

※以下、『はだしのゲン』に関する、下村文科相と記者とのやり取りの文字起こしです。

共同通信「はだしのゲンについて、松江市教育委員会が閲覧制限を撤回しましたが、そのことを受けとめを」

下村文科相「法律上は、教育委員会は教育委員会規則で定めることにより、その権限に属する事務の一部を教育長に委任することができるとされておりましたので、教育長が行った要請は適法であった、適切なものであったと理解しております。ただ、松江市の教育委員会としては、市議会にかかった案件を教育委員に諮らずに決定したことは、配慮が足らなかったという意味で、手続に不備があるものと承知しております。厳密に言えば、手続に不備があるというのは法的にはないと承知しておりますが、ただ配慮が足らなかったと。それはそういう判断だろうと考えるわけです。これは、私からすれば、学校の教育長に判断を任せるというのもいかがなものかと思いますが、しかし、松江市の教育委員会が判断したことでありますから、文部科学省が何らかの指導をするということではありませんし、別に法的に間違ったことをされているわけではありませんから、今後は、各学校において、児童生徒の発達段階も考慮し、適切な取り扱いが行われることを期待したいと思います」

共同通信「大臣自身のお考えは変わらないか?」

下村文科相「表現の自由については、もちろん、わが国は担保すべきだと思います。その上で、都道府県では、青少年保護育成条例、青少年健全育成条例をそれぞれ作っていて、その中で、有害図書規制というものもあります。これは、子どもにおける、発達段階の配慮です。映画なんかでも映倫というのがあるように、あるいはインターネットやゲームソフトにおける年齢制限という目安がある中で、学校図書においても、同じような教育的な配慮があっても、それぞれの主体がそれぞれの判断をすることも当然ありえることだと思っております」

共同通信「『はだしのゲン』がまるで有害図書に含まれると聞こえますが?」

下村文科相「そうではなくて、個別具体的な事例ということではなくて、都道府県で青少年保護条例、青少年健全育成条例がある中で、それぞれの教育委員会が、それぞれ判断することがあってもおかしくないと申し上げたんです」

中国新聞「子どもの知る権利についての関わりについては?」

下村文科相「知る権利そのものを否定しているわけではなくて、発達段階における教育的な配慮があっても、それは一つの考え方である、ということの中で、子どもに見させないということをそもそも松江の前教育長が判断したということではなくて、、教員が、あるいは大人が同席の下でと。一定の条件の下でと。一切禁止、読むことをさせないということではないわけですから、そういうことには当たらないと思います」

IWJ「校長の中には、教育委員会からの指示を圧力と感じる声もあるが?」

下村文科相「そもそも、法的にそういう権限を持っているのが教育委員会なんです。ですから、校長が現場で圧力と感じるか感じないかは校長の主観の問題ですが、それは圧力ではありません」

IWJ「こうした権限はまったく問題ではない?」

下村文科相「当然です。教育委員会は、学校に対して、それだけの権限・指導を持っているわけです。今回については、それぞれの校長の判断にまかせると。それも教育委員会で昨日、決定したということですから。別に教育委員会が、学校現場に対して強権的な圧力を行使するという組織ではなくて、法的に責任を持った組織であるということを理解していただきたいと思います」 

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