平城宮跡埋立て問題 国交省、文科省との質疑応答と記者会見 2012.10.16

記事公開日:2012.10.16取材地: テキスト動画
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(IWJテキストスタッフ・山之内/澤邉)

 2012年10月16日(火)15時から、東京都千代田区の参議院議院会館で、「平城宮跡埋立て問題 国交省、文科省との質疑応答と記者会見」が開かれた。平城宮跡の公園整備工事について疑問を持つ市民団体が、国交省と文化庁の担当者と面談し、計画の見直しを求めた。

■全編動画

  • 参加者
    • 寮美千子氏(平城宮跡を守る会代表、作家)
    • 松永洋介氏(同事務局)
    • 中村哲治氏(参議院議員、国民の生活が第一)
    • 舟引敏明氏(国交省都市局公園緑地・景観課)
    • 矢野和彦氏(文化庁文化財部記念物課・課長)
    • 草野純一氏(文化庁文化財部記念物課・専門官)
  • 主催 平城京跡を守る会
  • 日時 2012年10月16日(火)15時
  • 場所 参議院議院会館(東京都千代田区)

 はじめに、寮、松永両氏より、奈良市佐紀町の平城宮跡中央区朝堂院広場(第一次朝堂院跡)で、国交省が着手した整備工事の中止などを求める要望書と、4595筆の署名が国交省と文化庁の担当者に手渡された。

 まず寮氏が、国交省が着手した、平城宮跡第一次朝堂院広場の公園整備工事について、工事内容が土系舗装であることが住民に十分広報されないまま、9月20日の告知の5日後に工事が開始されたことに、疑問を呈した。さらに、国交省側が「土系舗装は国交省の裁量の範囲で、草刈りと同じことだ」と回答した点について、「朝堂院広場の草原は、多くの人にとって、かけがえのない固有の価値のあるものであり、全国からの工事中止の要望が上がっている点を国交省は理解すべきで、すでに土入れが始まり、自然環境の大きな変化を伴っている工事を一旦中止し、住民の承諾を得られるような見直しをするように」と求めた。

 これに対し、国交省の舟引課長は「本工事は、平成20年に文化庁が構想し、国交省が国営公園基本計画を作り、文化庁、奈良県、奈良市、奈良文化財研究所が一体となり、平城宮跡を活用、保存していくという趣旨で進めているものであり、当該朝堂院広場は、ある程度の利用活動を行うシンボルゾーンとして想定、一方で隣接する築地街道整備を同時に着工しつつ、多くの利用者が中に入って基壇を見て、往時の平城宮の広がりを体感できる空間として想定されているいる。遺構の上に土をかぶせることで遺構の保全にもなり、これ以外に保全を行う保全ゾーンを設け、現在の自然環境や現状の文化財を毀損することなくそのまま残す」ことなどの計画を説明した。

 中村議員が「法的に問題がなくても、住民の提案である合意形成をとる時間を設けたほうがいいのではないか」という指摘をしたところ、舟引課長は「県、市、文化庁、特に文化審議会の意見も聞き、手続きを進めており、土系舗装は後で発掘調査をする場合の一般的な手法であって工事中止は考えていない」と答えた。 

 また、文化庁の矢野課長は「基本計画の中に土系舗装まですることは書かれていないが、遺構展示と書かれており、平城宮跡の魅力を体感していただく必要があり、文化審議会でも遺構に問題ないと判断した」と説明した。

 松永氏が、文化審議会で埋立て舗装について審議された資料を提出するように要求したところ、文化庁の草野専門官は「審議会は非公開なので、出せる資料が限定される」と説明した。「土系舗装について、科学的な知見について審議されたことの確認がとれるか」との質問に対しては、矢野課長が「そういう確認はできないが、工事全体についての議論があった」と回答した。

 寮氏が「平城宮跡の空間を体感してもらう方法は、現代の技術では埋立て舗装ではない方法もあり、また自然の大切さ、都市の中の緑の貴重さもある」と発言したところ、矢野課長は「平城宮跡の草原は雑草であり、放火事件やゴルフの打ちっ放しが行われ、現状では管理が困難で、除草費用もかかる」と語った。寮氏は「現状で舗装が行われた朱雀門前は、自然の情報量が落ち、リピーターがいない、楽しめない空間になっている」として、自然を守りながら当時の空間を想像できる新たな方法についての再考を再度訴えた。舟引課長は、一定の広場の復元の必要を主張した。

 舗装によりリピーターが増えるというリサーチをしたかという点については、舟引課長は「舗装材質別の調査はしていないが、往時の広がりを体感しながら、イベント的なことに活用できる空間が必要である」と再度主張。市民側は「平城宮がなくなった後の草地の状態が、遺跡保存の上でも生態系の貴重さの点でも良いのではないか」と反論した。

 「工事を一旦停止し、直ちに住民説明会を開いてほしい」という市民側の要望に対しては、舟引課長は「その必要はないと考えている」とし、議論は平行線をたどった。

 続いて、同じ場所で、寮氏、松永氏、中村議員による記者会見が行われた。寮氏は「心を受け止めてもらえないと感じた。雑草という考え方が貧しい認識だ。県庁所在地でこれだけ豊かな緑を持っているところはない。生物多様性の点で、公園の芝生よりもはるかに豊かで情報量が多く、知識や喜びがあるものをないがしろにするのは時代に逆行している。ユネスコ世界遺産指定にも影響が出るのではないか」と語り、松永氏は「国交省では『都市に緑を』というキャンペーンをしているのに、政策に一貫性がない。合理性とは違う部分で計画が進んでいるのではないか」、中村氏は「倫理的な回答がなかった。このままでは官僚主導で工事が進んでしまう。国民の皆様に動いていただきたい」などと感想を述べた。平城宮跡を守る会では、今後も署名を続け、工事停止の声を継続して上げる運動を続けるという。

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