国籍法では総理大臣でも「二重国籍」は禁じられていない!? 法務省・総務省・内閣官房にIWJが連続取材!~民進党・蓮舫代表代行への執拗な産経の「ヘイト」報道を玉木・前原両陣営が全否定 2016.9.9

記事公開日:2016.9.9 テキスト
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(記事・城石エマ 文責・岩上安身)

 投開票日まで1週間と迫る民進党の代表選をめぐって、「最有力候補」と目される出馬候補・蓮舫代表代行の「二重国籍疑惑」が、ネット上やマスコミを騒がせている。産経新聞は、蓮舫代表代行の国籍が「台湾籍」と「日本国籍」の二重になっている可能性を指摘して、「根源的な資質の問題だ」とまで言い切った。

 「根源的な資質」とは何を意味するのか!? 血が違うとでも言いたいのだろうか!? そうであれば産経新聞は人種差別を行うヘイトメディアということになる。これはこれで問題である。しかも選挙戦のただ中であり、選挙妨害ではないかとの懸念もある。

 産経の報じ方は問題ではあるが、「二重国籍」問題そのものに論点を急ぎ移そう。

 報道を受けた蓮舫代表代行は、2016年9月6日、記者会見を開き二重国籍疑惑を否定した。だがその後も、「二重国籍叩き」がやむ気配はない。

 「二重国籍」問題とは何か。まずその「そもそも」から落ち着いて考えてみる必要がある。

 法務省にIWJが直接取材し、確認したところによると、これまで日本には、二重国籍が原因で日本国籍を失った人は1人もいないという。国会議員や閣僚、総理大臣にしても、「二重国籍であってはならない」とする規定はどこにもない。ということは、今、二重国籍があたかも違法行為であるかのように騒がれているのは、まったくの「空騒ぎ」ということになる。毎度のことながら、デマに踊らされてはならない。これが大前提である。

 であればなぜ、蓮舫氏の「二重国籍疑惑」がここまで取りざたされるのか?

 透けて見えるのは、民進党の内部分裂への期待と、「外国籍」という言葉に対する排外主義的な反発感情を煽る政治的な意図である。民進党の内部分裂と歪んだ排外主義の高揚で得をするのは誰なのか? よくよく考えてみる必要がある。

IWJが法務省を直撃取材! 「これまでに二重国籍が理由で日本国籍を失った人は1人もいない」との回答! 人の人生を左右する国籍剥奪に法務省は慎重

 国籍法は、20歳までに二重国籍となったものが22歳までにどちらかの国籍を選択しなければならないことを定めている。しかし、外国籍の放棄については,あくまで「離脱に努めなければならない(16条)」とする努力規定にとどまっている。

 IWJが、この国際法の運用について尋ねたところ、法務省の担当者は、次のように述べた。

 「法務大臣は、国籍を選択しない人に対し選択を催告(さいこく)することができます(国籍法15条)。催告されても従わない場合、その人は日本国籍を失います。しかし、これまで法務大臣が催告をしたことは、一度もありません。したがって、二重国籍によって日本国籍を失った人は、1人もいません」

▲国籍選択は義務だが、二重国籍が日本国籍の剥奪にかならずしもつながるわけではない(法務省ホームページよりhttp://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)

▲国籍選択は義務だが、二重国籍が日本国籍の剥奪にかならずしもつながるわけではない(法務省ホームページよりhttp://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html

 担当者は法務省の慎重な姿勢について、「国籍をなくすとご本人や関係者にとって、大変大きな影響を及ぼすことになるためです」と理由を語った。

 国籍は、最も重要な人権であり、簡単に剥奪できるようなものではない。人の人生を左右しかねないセンシティブな問題である。また、重国籍となった経緯は、個々人それぞれに事情があり、非常にプライベートな問題でもある。

 日本国内の国際結婚の比率は現在30組に1組。外国人と日本の国内外で「共生」してゆくのが当たり前のグローバル世界において、日本人と外国人の間での結婚、出産はそれほど珍しいことではなくなっている。

 重国籍者を排斥してゆくようなヒステリックな「バッシング」は、「世界に開かれた国・日本」の根幹を揺るがしかねない。

IWJが総務省と内閣官房にも直撃取材! 国会議員、閣僚、ひいては総理大臣も、実は「日本国籍があれば二重国籍であってはいけないことはない」

 とはいえ、蓮舫代表代行は公人であり一般人とは違う、というのも事実である。そこで、国会議員や閣僚としての立場で、二重国籍が法に触れるのかどうか、調べてみた。

▲「日本国籍を日本の法律のもとで選択しているので、台湾籍は有していない」二重国籍疑惑をきっぱりと否定した蓮舫代表代行(蓮舫氏のホームページよりhttp://renho.jp/)

▲「日本国籍を日本の法律のもとで選択しているので、台湾籍は有していない」二重国籍疑惑をきっぱりと否定した蓮舫代表代行(蓮舫氏のホームページよりhttp://renho.jp/

 公職選挙法第10条は、被選挙権について定めている。そこには、次のように規定がある。

 「日本国民は、左の各号の区分に従い、それぞれ当該議員又は長の被選挙権を有する」

 この規定によって、国会議員は日本国籍をもたなければならないと解釈されている。一方で、二重国籍について何か規定はあるのだろうか? 今度は総務省に問い合わせると、次のような回答があった。

 「国会議員の国籍については、公選法10条の他に規定しているものはありません。したがって、二重国籍を禁じるような法律もありません」

 驚くべきことではないか。

 9月7日付の産経新聞は、次のように報じているのだ。

 「国家公務員を指揮する閣僚として、他国籍を持ちながら職務していたならば、資質が批判されるのは必至だ」

 蓮舫代表代行は、民進党政権時代の2010年から2011年の間に、野田佳彦内閣、菅直人内閣で内閣府特命担当大臣を務めた。産経新聞によれば、もし蓮舫代表代行が二重国籍であれば、閣僚としての資質に疑問符がつくというのである。

 本当にそうだろうか? 今度は、内閣官房に直接取材した。IWJの問い合わせに応じた内閣官房の内閣総務官室担当者は、次のようにコメントした。

 「閣僚について定めた内閣法には、閣僚の国籍についての規定はありません。したがって二重国籍を禁ずる規定もありません」

 内閣官房も、はっきりと、「二重国籍を禁じる規定はない」と言いきっているのである。

 産経は、総務省や内閣官房に確認する程度の取材もしていないのだろうか? 記者クラブに加盟していて、省庁内の特権的な記者クラブ室に自由に出入りしながら、何を勝手な法解釈をたれ流しているのか。

 総務省の確認を怠るようなことは、さすがにあるまい、とも思う。しかし、そうだとすると、「意図」をもって、基本的な事実を踏まえた「言いがかり」をつけていることになる。

 産経新聞は民進党の代表になれば日本のトップを目指すことにもなるとして、蓮舫代表代行に「説明責任を求める」などと息まいている。だが、前述の内閣官房担当者は、IWJの取材に対し、総理大臣の国籍について、次のようにコメントしている。

 「総理大臣についても同様です。総理大臣が二重国籍であってはならないとする法律はありません」

 ・・・と、いうことなのである。産経は野党候補者に息まいているヒマがあったら、その前に、法律はどうなっているのかと、基礎的な事実を調べたらどうなのか。

 仮に蓮舫代表代行が二重国籍であったとしても、国会議員や閣僚、総理大臣の「資質が批判されるのは必至だ」などと個人攻撃に走るのは、お門違いである。現行法がおかしいというのであれば、そうした趣旨で記事を書くべきである。

 記事を書く際に、取材も確認もろくろくせず、前提となる基礎知識も持ちあわせない、というのであれば、この記事を書いた記者の「資質が批判される」のは「必至」であろうが、それだけでは済まない。そんなトンデモ記事をチェックもせずに掲載したデスク、編集局長らの資質も批判されて当然である。

 蓮舫代表代行の「二重国籍疑惑」を煽り立てる報道は、何を目的にしているのだろうか?

二重国籍報道でネット上に吹き荒れる「ヘイトスピーチ」

 産経新聞のこうした報道で、ネット上では蓮舫代表代行に対し、「日本国籍を剥奪しろ」「法律違反の犯罪者」「支那のスパイ」などといった誹謗中傷が噴出している。個人攻撃としても極めて悪質だが、特定民族に対する誹謗中傷を意図した「ヘイトスピーチ」にまで発展している事実は見過ごせない。

 ネット上で吹き荒れる「ヘイト」の風が、産経新聞の執拗で意図不明な記事によって掻き立てられたものであることは、明らかである。

「国籍問題で得をするのは誰か?」呆れる玉木・前原両陣営、産経報道をきっぱり否定

 民進党代表の座を狙う他候補は、この状況をどのように見ているのだろうか?

 9月7日付で産経は、蓮舫代表代行の「ライバル」でもある前原誠司元外務大臣、玉木雄一郎国会対策副委員長の両陣営について次のように報じた。

 「代表選で蓮舫氏と争う玉木雄一郎国対副委員長の陣営幹部は『ウソを重ねているように映る蓮舫氏に代表の資格はない』と断言。前原誠司元外相の陣営幹部も『きちんと説明すべきだ』と追及する構えをみせる」

 この「二重国籍問題」を期に、民進党内で「分裂騒動」に発展しているかのように報じられている。ああ、なんという愚かしさ…と一瞬、思いかけたが、報じている媒体は産経である。これは、ひょっとして、と思い、両陣営に確認することにした。何しろ「言いがかり」をつけている当事者の産経の記事なのだから、確認もせずに真に受けるわけにはいかない。すると、案の定というべきか、またしても驚くべき回答が返ってきた。

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