【岩上安身のツイ録】信任された? アベノミクス、その一攫千金の「夢物語」 〜語られない株価暴落リスクとバブル崩壊の記憶 2014.12.15

記事公開日:2014.12.15 テキスト
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(岩上安身)

特集 総選挙2014|特集 天下の愚策 消費税増税

※12月14日、衆院選投開票日深夜の岩上安身のツイートをリライトして掲載します。

 テレ朝の開票速報。途中でアベノミクスのおかげで潤ったという個人投資家たちを取り上げていた。「200万円が5000万円になった。アベノミクスのおかげ」とか、「去年の投資の儲けは7000万円」とか。リスクについての説明抜きに語られる夢物語。

 こんな夢物語を聞かされても、自分も同じように儲けられる、株を始めよう、と考える人はそんなに多くはないだろう。しかし、アベノミクスのチャンスに株で儲けられなかった自分が不甲斐ないのだ、としおれる人は決して少なくないに違いない。

 労働だけで金を稼ぐ者は愚鈍で、投資で稼ぐものは利発である。利発な者が著しい成功を収めるのは正しい。政治はそうした成功者の後押しをすればいいのだーーといった価値観が浸透してゆけば、労働の意欲やモラルは下がる一方だろう。虚無的になるのは避け難い。

 誰も彼もが投資で一律に成功するはずがない。買いがあれば売りがあり、浮き沈みがつきまとうのが相場だ。プロの投資家は別として、一般人は生活のための仕事を持ち、そのかたわら、余剰の資金や時間を投資に振り分けているのが現実であり、利益を上げ続けていくことは易しいことではない。

 利益を収めた人間の物語と同時に、損失を被った人間の物語も語られるべきである。80年代末のバブルの熱狂とその崩壊の痛手を、みんな都合よく忘れてやしないか。

 僕の同級の友人は、あのバブル当時、日経を毎日、愛読して、その指南通り、株に金をつぎ込み、一時的に大儲けしたが、バブル崩壊時に全てを失った。30歳前後で、家庭をもち、家もすでに購入していたが、その家を手放し、家庭も崩壊し、大きな借金を背負うはめとなった。

 僕自身は、親がバブル期に不動産投資を行った、その連帯保証人としてサインをしたために、バブル崩壊後、その負債を背負わなければならなくなった。すべて返済し終えたのは、近年のこと。働き盛りの30代、40代の、20年近い時間が、この借金の返済のために費やされた。

 「マネー敗戦」した僕の友人の場合、投資の才覚がなかったのだ、といえばそれまでだ。僕自身の場合、たとえ親に泣きつかれても、連帯保証人の判は押すべきではなかった、といわれたら、その通りである、と答えるしかない。だから、誰かに恨み言を言おうとは思わない。

 ただ、不本意にも投資が裏目に出て大きな負債を個人が背負った場合、人生を台無しにする可能性がある、ということだけは、言っておきたい。時に取り返しがつかないことになる場合もある、ということも。

 現在の株高は、80年代末のバブルの狂気じみた熱狂には遠く及ばないが、あの頃よりもずっと不健全に感じられる。あの当時、日本経済はまだ成長を遂げていた。今はすっかり成熟経済となってしまい、成長の余力がない。にもかかわらず、無理に無理を重ねて株価を吊り上げている。不自然だ。

 有権者の選択は、今日、示されはした。アベノミクスの異次元レベルの金融緩和も、それに伴う円安も、株高も、物価高も、増税も、実質賃金の継続的な下落も、有権者に信認された、と解釈されることだろう。しかし、唯一の取り柄の株価が下落するリスクが消えてなくなったわけではない。

 たとえば、原油価格の下落である。円安に伴う輸入原料価格の高騰を相殺する効果はある。大いに助かってはいるが、他方でこれが世界的に市場を混乱、低迷させる原因にもなりかねない。株価の上昇下落は複数の要因に左右される。日銀がバズーカをぶっ放せば、必ず株価が上がるとは限らない。

 円安についても、おかしなアナウンスがなされている。安倍総理は、「民主党が政権についている間に日本は中国に抜かれた。私が政権についていれば中国に抜かれることはなかった」と英経済紙の取材に答えて断言している。

 だが、各国の経済を測る共通の物差しは基軸通貨のドルである。円安政策を取っている安倍政権のもとで、ドルで測った日本の経済規模は猛烈な勢いで縮小しており、中国との格差は加速している。中国をことさらにライバル視するのはどうかと思うが、ライバル視しながらこの現実はどうなのか。

 中国との関係において、とりわけ安全保障面で張り合わなければならず、国力を競う必要があるというなら、なおのこと、円安でいいのか、そこに矛盾はないのか、様々な角度で検討がなされなければならないはずだ。

 いずれにせよ、ドル資産を持つものが円資産を持つものより優遇され、労働で得られる所得が抑えられて投資で稼ぐものが、税制面でも有利となるような不公正さは、是正されるべきだ。内需で生きる企業、個人からの収奪は、長期的に見れば、結局のところ日本経済そのものを縮小させる。

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「【岩上安身のツイ録】信任された? アベノミクス、その一攫千金の「夢物語」 〜語られない株価暴落リスクとバブル崩壊の記憶」への3件のフィードバック

  1. 業務連絡 より:

    鈴木邦男さんとの対談を拝見しましたが、「売国奴」という言葉をもう少し慎重に使用されてはいかがでしょうか。
    戦前を生きた人は「売国奴」という言葉にとっても敏感ですよ。
    20年以上前ですが吉本隆明さんの講演を聴きにいって聴衆のひとりがそういって、吉本さんが激怒して、そういう言葉を使わなくなったのが戦後だという発言をされていました。
    戦前、戦中生まれの人にとっては、たとえば「国賊」同様、厳しい言葉だと思います。
    右傾化のなかで、汚い言葉がはやっているのは承知していますし、大変とは思いますがご一考ください。

  2. hotaka43 より:

    親御さんの保証人かぁ、、。
    私は逆に両親が昭和21年に買った麻布の土地をバブル時の最後に、母親が売った資産で生き延びている人間ですから、文句なんぞは言えない人間です。それにしても今は売った時の10分の一以下の資産になってしまっています。
    自民党安倍政権がGPIFにまで手を付けてしまい、最早日本が長年築き上げてきた資産を食い潰し始めています。
    まぁ、大部分が元々自民党政権時代60年間に蓄えたものを吐き出しているのですから、元の黙阿弥に戻ろうとしているのだな、と思っています。
    更に今恩恵を受けている人々は国内だけでは有りませんよね。バブル時は日本国内だけで享受できたのに、今は外人にそうとう持って行かれてしまっています。国富の流出ですね。これを押し進めてしまっては、本当に困るのです。未来が有りません。特に貧困に苦しんでいる人々に巡ることは有り得ないのです。日本人で利益を上げた人間だって降り掛けないのに、外人は尚更日本の貧困層に戻す訳がないのですからね。
    問題はそれを隠蔽しようと戦争へ足を踏み入れる事によって誤魔化そうとしている態度なのだと思っているのです。
    この解決策は前に行って失敗した政策なのに、それを忘れたフリをして押し進めているのが気に入らないのです。
    この部分をしっかり指摘できる政治家と集団に私は票を入れました。他の人にもココに気付いてもらいたいものです。

  3. nami より:

    貴重な情報や提言ありがとうございます。
    IWJに触れる度、私自身の勉強不足を痛感致します。
    しかし、各分野どのような方が書いた本を読んだほうが良いのか考えあぐねます。
    各記事やインタビュー動画にリンクされている本の紹介は、とても参考になります。
    今後も、良書の情報下さい。お願い致します。

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